ダンジョンの外に夢を見るのは間違っているだろうか 作:星見 優月
「うぅん…んっ!?」
「目覚めたようですね。そろそろ行きますよ」
私は目覚めた時驚いてしまった。護衛の少女達が私の顔を覗き込んでいたからだ。私が目覚めた途端に切り替える切り替えの速さはさすがとしか言いようがない。
よく耳を澄ますと「寝顔が可愛かった」や「抱き枕にして寝たい」というような声も聞こえてくる。私は恥ずかしくなってしまい1番近くにいた山吹色の髪の少女の背後に隠れた。
「えっと…」
山吹色の髪の少女は困惑しているが他の少女達からは羨ましそうに見られている。
「あっ…ごめんなさい…恥ずかしくてつい」
「いえいえ…大丈夫ですよ。私はレフィーヤ・ウィリディスと言います。何かあれば頼ってくださいね。」
私が謝るとその山吹色の髪の少女…レフィーヤ・ウィリディスは私に笑いかけてくれた。
「ありがとうございます。レフィーヤさん。」
私はレフィーヤは落ち着きがあり、過度に構ってこないため仲良くなりたいと思った。しかし私には名前が無いためお互いに呼び合うことすらままならない。まだ外を知らず右も左も分からないような自分がこのようなことを考えるのはまだ早いかもしれない。それでも…それでも仲良くなりたいと思った。それならば…
「レフィーヤさん…いきなりで悪いのですが私に名前をつけてくれませんか?」
「私が…ですか?それなら少し考える時間を頂いてもいいでしょうか?」
「もちろんです。」
レフィーヤは少しの間私を見ながら考え、こう言った。
「『マナ』なんて言うのはどうでしょうか」
「呼びやすいし良い名前ですね。その名前にします。ありがとうございます。」
その後レフィーヤは他の少女達に質問責めにされていたがその内の1つ、【何故マナという名前にしたのか】というのは私も気になった。レフィーヤが私に聞こえない位の声でなにかをいうと他の少女達は私を見て納得するかのように頷いた。なおレフィーヤが言った言葉とは
「私みたいな年齢で言うのはおかしいし恐れ多いけどなんだか可愛い娘みたいに見えて…愛娘とか言うでしょう。そこからとってマナにしたの」ということだったらしい。
天幕の入口が開くとそこからリヴェリアとフィン、剣を携えた金髪の少女が入ってきた。その少女は無表情だが人形のような美しさがある。
「僕は先発隊を率いていかないといけないから前衛としてアイズをつけるよ」
「アイズ・ヴァレンシュタインです。よろしくお願いします。」
その少女…アイズは抑揚のない声で自己紹介をしてきた。
「えっと…マナです。よろしくお願いします。」
「マナ?あぁ、名前を貰ったんだね」
「誰がつけたかは分からないが本人は気に入ってるみたいだな」
私がマナと名乗ったことにフィンとリヴェリアは反応したが、その話はほとんどせず移動に関する話が始まった。
「最初に歩くかどうかだけど歩くのが辛い場合はカーゴに入っていてもいい。その場合は全員で移動することになるけど」
「いいえ。歩けます」
カーゴというのはモンスターや物資を運ぶために作られた丈夫な箱のことらしいがその場合は1人で暗い所にいなければならないようだ。私は1人で暗い所はもう嫌なので歩くことを選んだ。
「分かった。では先に行くよ。そっちのタイミングはリヴェリアに任せるよ」
フィンはそう言って天幕から出ていった。数分たつとリヴェリアが立ち上がった。
「そろそろ行くぞ。アイズがいるから問題ないとは思うがレフィーヤ、マナについておけ」
「はい。分かりました」
聞いたことによると私の護衛になった少女達はレフィーヤ以外並列詠唱(別の行動をしながらの詠唱)を習得しており戦闘時には走り回り私から狙いを逸らし、魔法で倒すらしい。そのため並列詠唱の出来ないレフィーヤが私を守ってくれることになった。
その日、私はまだ知らない世界を見るため踏み出した。