ダンジョンの外に夢を見るのは間違っているだろうか   作:星見 優月

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5話 民を思う変態と容赦の無い聖女

「俺がガネーシャだ!!!」

といきなり叫んだ変態の頭をどこかから走ってきた女性が殴り飛ばした。そしてそのまま…

「相手は男性恐怖症の可能性があると聞いたばかりでしょう。なぜ貴方が挨拶に来ているんですか?確かに治安維持をしているファミリアの主神としての挨拶をするのは分かります。しかし男性恐怖症の子供の前で、それもエルフの王族相手にいきなり叫ぶとはなにを考えているのですか?」

説教が始まった。

私は変態の叫びに驚いて体を動かすことが出来なかったがエルフの少女達に周りが見えないように囲んでくれたことで少しだが安心することが出来た。

そして変態に説教をしていた女性が近寄ってきた。

「我らの主神が申し訳ない。私はガネーシャファミリア団長のシャクティだ。ダンジョンの中で辛い思いをしていたと聞いた。治安維持を担うファミリアとして謝らせてもらいたい。申し訳なかった。」

シャクティは私に対し一切躊躇うことなく頭を下げた。

「頭をあげてください。確かに辛い思いはしてきましたがそれは貴方達のせいではありませんし…私にとってはもはや普通のこととして諦めていたところを助けて貰え、外の世界に連れてきてもらえたんです。今この瞬間も幸せですよ」

私は本心を伝え、頭をあげさせた。するとシャクティは私の目線の高さに合わせるようにしゃがみ、私の頭を撫でながら

「ありがとうございます。何かあれば我々を頼ってください。必ずや力になりましょう。あんな神ですがガネーシャ様は民のことを一番に考えている。それに目立つから目印にするといい。」

「わかりました」

どうやらあの仮面を被った変態はガネーシャという神だったようだ。神は皆あの様な変人なのだろうか…そう考えた私は一気に不安になった。

「マナ。ついてきてくれ。念の為アミッドに診察してもらおう。この上の診察室をひとつとった。そこに行くぞ。」

私は少女達に囲まれたまま移動し、1つの部屋に辿り着いた。その部屋にリヴェリアとアミッドと3人で入る。

「病気などが無いか調べるので横になって力を抜いてください。」

私が横になったところで診察が始まった。アミッドは私に身体に違和感が無いか、痛いところや息苦しさなどは無いか、そして男性恐怖症の軽さを確かめるような質問をしながら関節やツボと言われる点を押してきた。質問が終わり立ち上がる時に

「肩の関節、肘の関節、脚の関節がおかしくなっているようですね…もう一度寝てください。関節をある程度戻しますから」

と言われ、寝ると

「少し痛いですからこれを噛んでいてください」

と布を噛まされた。そしてそのまま私の肩に手をかけるとゴギッという音と共に激痛。私は叫びそうになるのを耐え、涙を流しながら噛んだ布をより強く噛み締めた。それから5回同じ事が続いた。終わる頃には喋る気力すら残らなかった。最後に

「1週間は安静にしてください」

と言うアミッドの声だけ聞き私の意識は暗転した。


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