使い魔少女HOMURA★ほむら ~だが、誰が救い手を救うのか?~(完結) 作:曇天紫苑
見滝原のバスは、深夜は全く運行していない。大都会ならまだしも、この辺りはそれほど深夜の交通手段が必要じゃないんだろう。
でも、私はバスの上に有る座席へと乗って頬杖を付き、景色を眺めていた。
景色は綺麗でも醜悪でもなく、ただ、光が流れていく様に見えている。まどかが傍に居れば、きっとこれも美しく見えるんだろう。
『次は、見滝原二丁目、市立見滝原小学校へはこちらからお越しください、次、留まります』
アナウンスが鳴り、私はボタンを押す。けれど、こんな動作はきっと必要無い。
何故ならば、バスの中には他に誰も乗っていなかったからだ。そう、運転手すら乗っていない中、私だけが運ばれているのである。
運転席を見れば分かるが、ハンドルが勝手に動き、走っている。よく見れば魔力で操作されていて、目的地まで自動走行しているのだ。
私もタンクローリーを操った事が有るので、似た様な真似は可能だ。しかし、随分と魔力を無駄遣いする物だと思う。
「……ん」
気づけば、軽く自分の髪をかき上げていた。
まどかが解いてくれたお陰で、私の髪型はストレートロングになっている。三つ編みの時には出てこなかった癖が、自然に出ていた。
相変わらず、景色は勝手に流れていく。途中で通った人の内、何人かが驚いた様子で私の顔を見ているのが読み取れた。
このバスを外から見れば、私だって驚愕するだろう。運転席には誰も座っておらず、乗客席に長い黒髪の少女が居る。どう考えても異様だ。
明日には見滝原の都市伝説にでもなっているんじゃないか。ちょっとした愉快さを覚えつつ、私は目的地への到着を待った。
『バスが留まります。前方に立つと轢かれます』
アナウンスが鳴り響く。抑揚の無い女性の音声は、一人で聞くと何だか不気味だ。
だが、今の私にとってはどうでも良い事だ。席を立ち上がり、前方へ歩いていく。そのタイミングに合わせたかの様に、バスは動きを留めていた。
料金を支払う必要も無さそうだ。懐に用意しておいた小銭を仕舞って、階段を降りる。
私が出ると、バスは最初から存在しなかったかの様に消え去った。
「っ!?」
振り返って確認したが、やはりバスは完全に消えている。これ自体が一種の魔法で作られた物だったのだろうか。
そうだとすると、幻のバスが運んだ先となるこの場所は、本物の見滝原二丁目なのだろうか。
バス停は月の満ち欠けを表現した物となっていて、象徴的なデザインの門が有り、待合いには一つのテーブルが置かれている。
見滝原二丁目のデザインは、こんな異様さを漂わせた物だったか。もっと現実的な物だった気がするし、この場から感じる魔力は、何とも名状しがたき物だ。
とはいえ、これほど酷い魔力が漂うのだ、此処が待ち合わせ場所で間違い無いのだろう。それだけ分かれば、今の私には十分だった。
周囲の気配を探ってみても、どうも人が居る様子は無い。私が来るのが早かったのか、ならまどかともう少し寝ていたかった。そんな事を思いながら、用意されていたベンチへ腰掛ける。
「まどかとの添い寝は気分が良いでしょう?」
「……来ていたのね」
何時の間にか、私の隣にほむ魔と呼ばれた存在が座っていた。
驚きはしたが、ある程度は想像していたので、腰を浮かせる程の物ではなかった。私だって時間操作の魔法が使えたんだ、急に目の前に現れる事は不思議でも何でもない。
だからこそ、冷静に返事をする事が出来た。するとほむ魔はクスクスと笑い声を漏らし、愉快そうにした。
「ええ。勿論来ていたわ。バスの乗り心地はどうだったかしら?」
「それなりよ」
「なら結構。そこで一つクイズよ。あのバスは一体何で、この見滝原二丁目は何処でしょうか?」
唐突に、かつ冗談らしき口調で飛んできたクイズを聞いて、反射的に答える。
「……あのバスは、貴女が作った物で、この見滝原二丁目は貴女の空間を操作する魔法で作られた物、現実世界ではない」
「残念、どちらも間違いよ。私が製造に手を貸している事には違いないし、確かに現実世界ではないから、正解でもあるけれどね」
首を振って肩を竦め、また一つ笑い声をあげる。そんな態度に僅かながら苛立ちを覚えたが、彼女は私の反応を無視して、自分の着ている白いワンピースの胸元へ手を入れた。
取り出された手には、見滝原中学の制服が握られていて、私に差し出してくる。胸元に仕舞っておくには無理が有るので、別な空間から取り出したのだろう。
「不正解と正解のご褒美に、この上着をあげるわ。ちなみにクリーニング済みよ」
手渡された上着を見て、それが私の物である事に気づく。
そういえば、制服の上着をコンクリートブロックに巻き付けたままだった。まどかの怪我から添い寝に至る過程で酷く混乱していた為に、すっかり忘れていた。
「まどかに、怪我をさせたそうね」
「……ええ」
ほむ魔から追及と非難らしき言葉を向けられたが、反論する気は微塵も無かった。
あれは自分でも最低な行いだったと思っている。もし時間を戻したならば、私は容赦なく自分の頭を吹き飛ばすだろう。
「別に、責めている訳じゃないわ。まどかから直々に怒られたんでしょう? なら、それで解決よ。まどかの幸福に対しては、欠片の傷も無い。落ち込んでないで元気出しなさい、まどかが喜ぶから」
まどかが良いなら、責める気は無い様だ。ほむ魔は私の肩を軽く叩き、慰めてくれる。ただし、まどかの為に私を元気づけているのは明白だ。
「元気が出たわ」
「そう、それは良かった。とりあえず上着を……着せておいたわ。確認して頂戴」
言われるがままに自分の姿を見てみると、見滝原中学の制服を着ていた。
渡された上着が消えている所を見るに、魔法を使って私へ着せたのだろう。こんな事にまで使えるとは、実に応用性の利く便利な物だ。私も、こんなくらいの力が合ればワルプルギスの夜を単独で撃破出来たに違いない。
私の羨ましげな視線に気づいたのだろう。彼女は実にもったいぶった態度で胸を張り、「まどかの幸福実現に必要は力は有れば有る程良いに決まってる」と言い切った。
「さあ」
何かを決めたらしく、彼女は軽やかに立ち上がった。こういう部分にも、私や暁美ほむらとは少し違いが見て取れる。
この微かな違和感の原因は、私達の言動が魔法少女になり、かつ眼鏡を外してから作り上げられた後付けの物なのに対して、彼女の言動は生まれながらの物だからだろう。
立ち上がった彼女は、白いワンピースではなく、魔法少女の姿をしていた。前に見た時と同じく、暁美ほむらが持つ本来の、制服に似た格好だ。
客観的に見ると……ナルシスト的で好ましくない感情だが……それなりに、良い外見をしていると思った。無論、まどかの愛らしさの前には指先の爪一枚も及ばないが。
そんな私の思考を見抜いているのだろうか。彼女は心底愉快そうに笑みを浮かべて、私に向かって軽く手を差し出してくる。
「少し、歩きましょう。観光よ、観光」
「観光……って、そんな場合じゃないでしょう」
「良いから。少しくらい楽しみなさい。そんな風に眉を寄せて嫌そうな顔をしたままじゃ、まどかに『顔が怖い』って言われちゃうわよ?」
そう言われて、私は自分の表情が相当に険しい物となっていた事に気づいた。目の前の存在に対して、多少の警戒は覚えていたらしい。
すぐに表情を整えて、小さく息を吐く。吐息が思いの外白く見えたが、その場は決して寒くはない。
まだ、手は伸ばされたままだ。掴め、という事らしいが、私は目の前の存在を心から信用出来ると思った訳ではない。
「……貴女と手を繋ぐ趣味は無いわ」
「奇遇ね。私もよ」
笑いながら手を引っ込める。私の反応は、大凡想像出来ていたのだろう。一つも残念そうではなく、むしろ「手を繋ぐなら、まどかとの方が良いわよね」などと漏らしている。
「良いわ。手を繋がなくて良いから、歩きましょう」
言われるがままに、私は腰を上げた。すると、不思議な事にベンチは瞬く間に消えて無くなり、最初から存在しなかったかの様になる。
最早、驚く気にもなれない。勝手に歩き出したほむ魔の背中を追いつつ、私はこの空間の異質さを改めて確認する。
空の星には何故か線が引かれ、星座を勝手に作り上げている。足下の地面にも星座が描かれていて、奇妙な光景を作り上げていた。しかも、バス停のデザインは現実味が無く、道路は妖しげに光っている。
ここは、まるで現実とは異なっていた。だが、ほむ魔が言う所を信じるならば、この場所は彼女の能力で作られた物ではないらしい。
「風見野前まで行ってみましょう? 良い物が見られるかもね」
なら、此処は何なのか。幾らかの可能性を頭の中で浮かべつつ、私は彼女を追いかけた。どの道、真実を知るには彼女の言葉が必要なのだ。
忌まわしく蠢く背中のリボンを何の気も無しに眺めつつ、私はこの尋常ならざる空間の中を歩き、見回していた。
+----
私達は、ただ道を歩いている。街灯の異様な光が目立ち、漂う空気は不気味な物が含まれていた。
しかし、ほむ魔は気にも留めずに歩いていて、私もそれに従っている。堂々とした歩行を見せる背中は隙だらけだったけど、攻撃を仕掛けても無駄に終わる気がする。
何も話題が無いからだろうか、私達は互いに会話を交えず、ただ無言で歩き続けていた。
余りにも喋らないので、音を失ったのかとすら思える。そんな状態は流石に不味いと思ったのか、ほむ魔が僅かに私の方を見て、話しかけてきた。
「まどかは……」
やはり、共通の話題と言えばまどかの事だ。彼女の声は端から端までまどかへの深い愛に満ちている。
私も、負けてはいられない。声の中に全力で気持ちを込めて、返事をする。
「まどかが、どうかしたのかしら?」
「まどかは、本当に素敵な人よね」
何を当然の事を、と思った。まどかが素敵な人なのは、当たり前だ。けど、私の口はしっかりとまどかへの好意を表していた。
「……ええ。私みたいなのを、受け入れてくれて、あんなに優しく慈悲に満ちた存在を、私は他に知らないわ」
「そうね、同感するわ。彼女程に私達……いえ、貴女達、暁美ほむらを取り込み、依存させる物なんて他には無いでしょうね」
「当然よ。私にとって、まどかはたった一人の大切な人。他の何を犠牲にしてでも、助けたいわ」
「ふふ、そうよね。まどかは可愛くて、優しくて、どんな物より価値の有る子だもの。でなかったら、私もホムリリーも居なかったでしょうね」
私達の間に、若干の理解と共感が宿っているのが分かる。
こんなにも、まどかに対する気持ちを深く共有出来る存在が居るとは思わなかったし……それがどんなに嬉しいかなんて、考えた事もなかった。
自分にも、認められたいという気持ちが有ったんだ。恥ずかしいやら、嬉しいやら。まるでそんな素振りを見せないほむ魔が羨ましいやら、複雑な気分だ。
「ねえ、まどかの髪型はどれが好き?」
「勿論、全部よ。全部可愛くて、全部最高に決まってる。一番を決めるなんてナンセンス、まどかは全てが最高なんですもの」
「同意するわ。けど……やっぱり、ツインテールが忘れられないわ。この世界のまどかは、最初からポニーテールなの?」
「……いいえ。まどかにも、まどかなりの事情が有るの」少し言葉を詰まらせたかと思うと、ほむ魔は微笑んで見せた。
傍から見れば、同じ人間が同じ口調で話している様に見えるだろう。服装こそ違うが、外見も口調も殆ど同一。彼女が『暁美ほむらのコピー』である事には真実味が有った。
彼女は、まどかの話をする為だけに歩調を遅くして、私の横を歩いている。その横顔はすこぶる楽しげだ。だからか、私も遠慮無くまどかの話を振る事が出来た。
「今日、まどかの家で一緒に寝たのは知っているわよね?」
「勿論。見ていたわ」
「でしょうね。貴女なら、まどかと添い寝をする事の幸せを理解できるわよね?」
「そうね。あの暖かさ、あの表情。どれを取っても彼女は圧倒的に愛らしい女神よ。だからこそ、幸福にする価値と意義が有る」
「……羨ましい?」
「いいえ。前にマミにも言ったけど、私はまどかの寵愛が欲しくて彼女を愛している訳じゃないの。ただ、幸せになって欲しいだけ。その幸せを守りたいだけ」
『だから、私はまどかに何かして貰いたいとは思わない』
言葉には出さなくたって、心の声が聞こえた気がした。
あらゆる部分が、その言葉は真実であると証明していた。彼女がまどかに抱いているそれは、狂信に近い。いや、まさしく狂信だ。普通の人間では近寄れない程に強烈なオーラを感じる。
勿論、私も人の事は言えないし、言うつもりも無いので、まどかに関する雑談を続ける。
「ところで……まどかに髪を洗われた経験は有る?」まどかに関する幸せな記憶を引っ張り出して、問いかけてみる。
「まあ、数度くらいは有るわね」無意識なのか、ほむ魔が自分の髪をかき上げた。
「あれは最高よね、まどかは私の髪質を誉めてくれて、丁寧に丁寧に洗ってくれるの。あの手つきは忘れられないわ……」今思い出しても、嬉しくて転げ回りたくなる物だ。
「私の場合、そう頻繁じゃないのよねぇ……まあ、人間と違って代謝が無いから、老廃物を落とす必要も無いから、洗っても面白味が無いでしょうし」
「……その物言い、何だかあいつらみたいね」脳裏に、あの白い動物めいた外宇宙からのものが浮かぶ。
「ふふっ、言ってて自分でも思ったわ」
そう言うと、私達は同時に小さな笑い声をあげた。何だか、お互いの言葉が面白くて仕方が無い。瞬く間に仲良くなれた気がする。
何時の間にか、私達は殆ど打ち解けていた。前にも思ったが、目的を同じくする同志が居るのは、とても心強い物だ。
「さて……まどかのお話をするのはそれはそれは楽しいけれど……」
クスクスと笑いながら、ほむ魔が前を見る。それに釣られて同じ方向を見ると、また随分と異様な気配を放つ場所が広がっていた。
巨大な三叉路だ。いや、それはどうみても現実的な場所ではなく、異質な雰囲気が漂っている。廃ビルの様な巨大な建物がそびえ立ち、奇妙に曲がりくねった道路には標識すら置かれていない。
電柱は存在しているが、どこか異様だ。何かの絵にでも描いた様な、現実味の無さが目立つ。
「この三叉路を曲がると、風見野に行けるらしいわね。まあ……ふふふっ、この世界では無理だけれど」
謎の光景を前にして、ほむ魔がどこかしら面白がっている姿が何時に目立つ。
外から見た自分の顔は、こんな風なのか。そんな風に眺めつつも、私は内心で考えていた。
私は、既にこの存在が冒涜的だと思った理由に気づいている。
だって、彼女という存在そのものが、円環の理を……まどかを冒涜しているじゃないか。『魔女の使い魔』が円環の理を無視して存在している。それは、明らかに『冒涜的』と表現して差し支えの無い物なのだ。まどかの犠牲を無視してそこに在る、『許されざるもの』でしかない。
ともあれ、彼女は自分の存在など気にしてもいないか、考えてすらないのだろう。「面白いデザインね」などと言いながら、楽しげに道の電柱を撫で回している。
彼女は、笑っていた。深く、強く笑っている。『まどかの為のより強き愛有る世界』を作り上げようと戦っているとは思えない明るさだ。
雰囲気は暗いが、冗談めかした所や諸々の態度は、私とは比べ物にならないくらい明るい所を感じさせる。
本当に、同一人物なのだろうか。あらゆる面で私……いや、暁美ほむらとの類似性を感じるが、何処かの何かが遠く思える。
「貴女って、よく笑うわね。暁美ほむらは、そういう類じゃなかったと思うのだけれど」
尋ねてみると、ほむ魔は私の顔をそっと見つめて、何処かしら怪しげな含み笑いを浮かべる。その奥に蠢くおぞましき愛情が漏れ出して、背筋を寒くさせてくれた。
「そうかもしれないわ。ああ、まどかがそうあって欲しいと思っているからじゃないかしらね?」
「……まどかの望みによって、姿を変えるの?」
「ん、そうね……変だと思うかもしれないけれど、暁美ほむらと私の違いは、彼女を守るのか、彼女の幸せを守るのか、だから。そういう違いが、価値観の違いに繋がるのかもね」
至極冷静な調子で自己分析を口にしながら、彼女は道路から一歩足を踏み出す。途端に黒い道は消え去り、凄まじい勢いで彼岸花の花畑が広がった。
その赤色が何かの血を現すかの様に深い色彩をしていて、視界に入れるだけで酷く悲しく苦しい気分にさせられてしまう。どういう意味が有って、この花はこんなにも辛い雰囲気を漂わせているのか。私には判断出来ない物だ。
「綺麗だと思う?」私の内心を読み取ったかの様に、ほむ魔が聞いてくる。
「いいえ……悲しいと思うわ」
「……へぇ」
素直に答えると、ほむ魔は感心した様子を見せた。その余裕を持った表情は全く崩れず、賞賛の篭もった瞳を向けられた。
その視線や表情には何の意味が有るのか。気になっていたが、尋ねる事は出来なかった。
また風景が変わったのだ。私の内心を現す様な彼岸花が消し飛んだかと思うと、今度は飾り付けされた白い空間が見えてくる。
そこに置いてあった物を見て、私は驚愕が隠せなくなった。
まどかの、円環の理の像が有った。
この、圧倒的な存在感と、女神の慈悲が溢れ出す姿。ただ像を見ただけで神々しさに卒倒しかねない。何という造形だろうか、これを作り上げた者は、さぞまどかを愛し、まどかの全てを表現しようと命を賭けたに違いない。
この様な美しい物を目にする事を許された栄誉に強烈な感動を覚えながらも、同時に強い嫌悪感を覚える。巨大な像の足先には、大量の黒い手形が見えていて、それがどうしようもなく醜悪に映ったのだ。
まどかの像に欲望溢れる手で触れたのは、一体何処の誰なのだろう。そう思っていると、噛み殺した様な、哀れむ様な声をほむ魔が漏らしていた。
その像と対面する位置に貼り付けられた……あるいは浮かんでいる紙らしき物には、魔女が扱う独特な文字列が並んでいる。
よく見てみると、『Got ist tot』と書かれている事が読めてしまった。
ある意味、その文字が読めるという事実が何よりも私の正体を現している。気持ちが沈み込んだが、ほむ魔はその点に関しては何も言わなかった。
「女神像の鑑賞も終わった所で……さて、質問を言ってみなさい」
私がこの場をしっかり観察した事を確認すると、ほむ魔は本題を告げてきた。
彼女の纏う気配が、変わる。それまでの穏やかさが形を潜め、代わりに猛毒に等しい物が現れたのだ。だが、恐怖は覚えなかった。むしろ、親近感すら沸いてしまう。
そんな所も、自分の正体を現している気がした。いや、ヒントは有ったのだ。目の前の存在が戦闘中に見せたおぞましき力に気づいたのは、私だけだったではないか。
「私は……私は、魔法少女じゃなくて……貴女と同じ、使い魔なのよね」
半ば確信を覚えつつも、自分の中の恐怖を叱咤して黙らせ、指先に力を入れる。両手を強く握り、どんな真実であっても絶望を抱かない様に、心を強く持った。
すると、ほむ魔は私に何度か柏手を打って見せ、まどかの像を見る。そこに篭められた視線は何とも穏やかで、それから送られた私への言葉も、緩やかで柔らかな口調で告げられた。
「……その程度の事で動揺する辺り、貴女にはまどかへの『愛』がまだ備わっていないのね。最後のアイは来ないまま、かしら」
ほむ魔と名乗る存在は、感心した様子で頷いている。
それはつまり、肯定しているのと同じだ。やっぱり、私は魔法少女でさえ無かった。
「でも、その予想は半分外れよ」
だが、ほむ魔は嘲笑するかの如き頬の吊り上がった笑みを浮かべ、心なしか全身が真っ黒に見える程、邪悪な存在感を放った。
半分外れの意味を少し考えて、私は直感で出てきた答えを口にする。
「半分? 半分、という事は……私は、半分本物の暁美ほむら、という事?」
どうやら、その言葉は正解だったらしい。ほむ魔は面白がった態度で目を見開くと、瞬く間に笑い出す。
ああ、その笑い方は、あの悪魔の姿をした暁美ほむらと不気味な程に一致している物だ。
「ふふ……あはははっ……どうやら、真実に辿り着いた様ね。まあ、貴女なら出来ると信じていたわ……本当におめでとう、『暁美ほむら』」
改めて私の名前を呼ぶ口調には、ひたすらに寒々しい物と、熱狂的な物。矛盾する筈の二つが完璧なまでに纏め上げられていた。
この態度の変化を見て、私は、彼女こそが私の置かれている状況を作り上げた存在である、という確信を持った。
「……ほむ魔。やっぱり、貴女が」
「そう。それも私よ」
「……?」
「何でもないわ、言ってみたかっただけ」
誤魔化し笑いを浮かべつつ、ほむ魔は上機嫌に軽く床を踏む。そこに何故か転がっていた人形が踏み潰されているのだが、その人形は、私を模した様な姿に見えた。
何となく、自分の存在を踏まれている気がして、背筋にゾクリとした物が有る。が、彼女は、警戒する程に危険な存在ではない。むしろ安全かつ、友好的に接するべき相手だ。
私の中の感情が揺れ動く所など、彼女はとっくに理解しているのだろう。その両目が打算的な色で私を捉えつつ、彼女は、底意地の悪い笑顔で私という存在を受け入れた。
「さて、気になっているのは、貴女が今、どういう存在になっているのか、という事でしょう? その答えは、私が教えてあげる」
私を捉えるその瞳、眼球の奥底に秘密が宿っている気がして、私はその黒目を見た。
黒目の奥から、一種の映像が頭に浮かんでくる。どこか、砂漠の様な場所に沢山の不気味な機械が浮かび、その中央に寝台らしき物が有る。
空を浮かぶ丸形の機械には、忌々しい紅の瞳が存在していて、ひたすらに中央の寝台を見ていた。彼らの見ている場所へ意識を集中させてみると、そこには、私が眠っていた。
「……!?」
驚きと、微かな嫌悪感を覚えて、私は思わず眉を顰めた。寝かされた私の側にはソウルジェムが有ったけれど、まるで標本にされた哀れな昆虫の如く針を突き刺され、今にも割れる寸前の状態で何かに包み込まれていた。
「干渉遮断フィールド、よ」
ある程度の情報を得た事を見て取ると、ほむ魔が私の意識をこちらへと戻した。が、その光景は私の脳裏から決して離れず、いっそ嘔吐したくなるくらいの生理的嫌悪感を与えてくる。
そんな私に少しばかり気遣ったのか、ほむ魔の手が私の背中を撫でていた。まどかには遠く及ばない、比べるのもおこがましい優しさだが、今の私には有り難い。
私が何とか落ち着いたと判断したのか、彼女は話を続けた。
「インキュベーターの作り上げた干渉遮断フィールドが貴女のソウルジェムを包み込み、円環の理による干渉を妨害する事で、彼らはその結果を観察している」
「……実験」
その説明だけで、インキュベーターの狙いは読み取れた。アレらは、愚かにもまどかに手を出すつもりだ。その事実だけで、憤怒と呪いに心が爆発しそうになる。
私達の居るこの空間に、黒い何かが溢れ出した。それはまるで意志を持つかの様に周囲を取り囲んだが、まどかの像と、ほむ魔と私には干渉出来ない様だ。
そんな光景などほむ魔は一つも見ないまま、大きく大きく頷いていた。
「そうよ。実験。でも……彼らの好きにはさせない。世界は、まどかの好きにされる為に存在しているのだから」
ほむ魔が尋常ならざる気配を放った為に、私の意識から怒りが薄れる。すると、この空間を汚していた黒い泥か血液は消えて、真っ白い場所に戻った。
「私は、捉えられたソウルジェムの中身、貴女の魂だけをこちらに転移させ、肉体をHOMURAの物で補った。まあ、その影響で幾らか変に感じた事は有ったかもしれないわね」
私の肉体は、使い魔の物。だが、魂は本物の暁美ほむら。
それが、真実らしかった。
「その貴女を元の世界へ送り返して、インキュベーターの思考を挫いて、それで終わり……の筈だった」
「……筈?」
「ええ。残念ながら、限界までソウルジェムの濁った貴女の精神は、既に半ば魔女の物となっていた。自分で自分を誤魔化していたのよ。この本物の見滝原を偽物、魔女の結界だと誤認……いえ、自分自身に言い聞かせていたのね」
何がそんなに面白いのか、恍惚とした様子で言葉を続ける。紅潮した頬に、浮かぶ筈の無い汗が輝いていた。
「そんな状態の貴女を送り返したって、まどかを幸福にするには問題が多い。なら、他ならぬまどかの手によって、その記憶と想いを取り戻させる事にしたの」
「まどかが……私の記憶を?」
「そうよ。これなら、まどかが暁美ほむらを救える。まどかは、自分が暁美ほむらにとって必要な存在なのだと知り、満足する事が出来る」
予想していた事だったが、やっぱりまどかは私の正体を事前に聞いていたらしい。なら、他は誰が事情を知っていたのか。そう思っていると、答えが送られてきた。
「まどか以外にも、巴マミ、佐倉杏子、美樹さやか、そして暁美ほむらには事情を説明して、誤魔化して貰っていたわ。まあ、何。ある種の記憶喪失を起こした人を治療するんだと言ったら、皆快諾してくれたわよ」
「皆、知っていたのね……」
少し悲しくなる。これまでの一ヶ月が、私の記憶喪失を治療する為の嘘だった気がして。
沢山の思い出が、作り上げられた偽物だった様な気がして。
「彼女達を責めてはいけないわ」
私の心を読んだかの様に……いや、ある程度は読んでいるのだろう。ほむ魔は、緩やかに首を振り、私の考えに訂正を入れる。
「貴女に幸せな一ヶ月を与えてくれたのは、紛れもなく彼女達の好意と努力による物よ、そこには何一つ嘘は無いし、みんな、貴女を大切な友達だと思っている。記憶喪失の治療なんか、貴女と仲良くする為の建前に過ぎないわ。そこは、履き違えないで」
真剣に告げられた言葉を聞いて、彼女は意外とまどか以外の事も考えているのだな、と思った。恐らく、『まどかの周囲に居る人』は、皆、まどかの幸福を形作る為に必要な材料だと思っているのだろう。
日誌を読んだ私には、彼女の全ての挙動が、結局の所、まどかに繋がっているという事や、その人間味の薄さが、嫌でも理解出来た。
「……」
自分の正体が魔女である事実を飲み込んだ為か、身体の内部で変化が訪れている。使い魔という『魔女に近しい物』の肉を借りて、それが魔女の物に進化していったのだ。
もっとも、私はまだ暁美ほむらなのだろう。典型的な魔女の帽子や、生き物の様にのたうつリボンなどを除けば、外見的な変化は大きな物ではなかった。
そんな私の姿を見て、ほむ魔は実に嬉しそうにしている。『これが見たかった』と言いたそうな顔をしているんだ。
微妙な居心地の悪さを感じていると、この空間がまた変わる。塔の様な建物の内部だ。物々しい数の人形がガラスの中に入って、その出番を待っている。
「成る程ね……此処は……」
「あら、鋭いわね。そう、此処は貴女の結界の中。貴女の体内で広がる魔女の結界を、私の能力で具現化させているの」
彼女が持っている糸は、私に繋がっている。
操り人形にされている気分だけれど、抵抗しようとは思わない。彼女は、インキュベーターとは全く異なる目的を持っているのだから。
「私をこちらで療養させている間、貴女は、何をしていたの?」
「色々と、試させて貰ったわ。半ば魔女となった暁美ほむら、その心理状態はどれだけまどかによって揺らぐのか、どうすればその精神をまどかの為に使わせる事が出来るか……そして、この手段がまどかの幸福にどの程度有効なのか、もね」
随分と、観察されていたらしい。下手をするとインキュベーターより酷いのではないか。そう思ったが、責める気にはなれない。
「……貴女も、インキュベーターの様に私で実験をしていた、という事?」
「ええ、その通り」
恥ずかしげも泣く堂々と頷く姿を見て、いっそ見事な態度だと思えた。
彼女が、私に対して尊敬の視線を送られているのは変わらない。だが、その目の奥には実験室のモルモットでも観察するかの様な冷たさが感じられた。
私が寒気を覚えたからだろうか、周囲の空間が凍土となるが、空間操作の魔法とは便利な物で、体感気温は心地良い物に保たれている。
「言わなくても分かっているでしょうけど……勿論、これはまどかの為に行われた実験よ。まどかの為になる実験。暁美ほむらなら、喜んで受けるでしょう?」
私の感情の機敏をどう見て取ったのか、ほむ魔は実験の目的を告げてくる。歪んだ人格の持ち主だとは思っていたが、実際に聞いてみると、彼女の精神は想像以上の方向に飛んでいた。
「誰も損をしないし、誰も傷つかない。誰も泣かない。なら、まどかも眉を顰めたりはしない。喜びなさい、暁美ほむら。貴女は、まどかの役に立ったのよ」
何の疑いも無く、言い切っている。
『暁美ほむらなら当然、そう考える筈だ』。そういう確信を抱いている様だ。私が弱い人間である事など気にもせず、まどかの為に全てを捧げられる存在だと、勝手に定義している。
凄まじい存在だ。
彼女に比べれば、インキュベーターの方がまだ可愛げが有る。アレらは人間の感情を理解出来ないだけだが、彼女は人を理解し、人と友好を結び、人を大切にした上で、まどかの幸福の材料として躊躇無く使い、その事に対して後悔も絶望もしないのだから。
「何も知らない魔法少女を捕まえて、まどかの殉教者にするにはどの程度の行動が必要なのか、というのも実験してみたかったんだけれど……そういう事をすると、まどかが悲しむから無理ね。やっぱり暁美ほむらに限るわ、まどかの為なら何だってしてくれるから」
何か言ってるが、私には聞こえない。彼女の話を聞いてた為だろうか、頭が真っ白になる。
人間ではない彼女を、こう表現するのは間違いかもしれないと思ったが……それでも、彼女は狂っていた。どうしようもなく、何よりも深く。
妄想に近い物を抱いている所も、その能力と性質も、人格も。あらゆる面がまどかの幸福に注がれているのだ。
まさしく彼女は、日誌を読んだ時に予想した通りの存在だった。『まどかの幸福こそ世界の全て』と何の躊躇も無しに言い切れる、絶対的な価値観と精神力の持ち主なのだ。
それは、本当に狂っていて。
とても、嗚呼、とても――
「それならそうと先に言いなさい」
――素晴らしいと思った。
「まどかの為の実験なら、喜んで受け入れるわ。だから、先に言って欲しかったけど。でも、ありがとう。まどかの役に立てるなら、私の魂の一つや二つ、何も惜しくないわ」
感謝しつつも、内心では残念な気持ちにさせられる。
全く、無駄な心配で時間を費やしてしまった。最初からまどかの為だと言ってくれれば、私は自分の存在の真偽など考えなくても良かったというのに。
私の身体と魂が偽物だろうが本物だろうが、それがまどかの為であるなら、どうでも良い事だ。むしろ、『その程度の事』を隠すくらいなら、さっさと記憶を戻して私に事情を説明して欲しかった。
無論、私の記憶を自然に戻していく、というのも実験の一環だったんだろう。だが、私としては早く記憶を戻してまどかの為にこの一ヶ月間を過ごしたかった。
「ああ、そう言ってくれると思っていたわ。私の敬愛する暁美ほむらなら、そう言ってくれると」
より深い喜びに身を震わせて、ほむ魔は手を叩く。それを合図としたのか、空間は再びまどかの像以外は何も無い場所へ戻る。
彼女は実に凄まじく、何より素晴らしい存在だ。暁美ほむらには到達の難しい、絶対の価値観と強固な精神性を持ち、まどかを『欲しがらない』姿勢は感心を喚起させ、応用性に優れた能力は羨ましい程に強く、まどかの幸福を唯一絶対の真実とする価値観などは、共感の余り精神が崩壊する危険が有る程だった。
優れた同志に向けた私の瞳は、相当に輝いていた事だろう。スターを見る様な物だったに違いない。その為か、ほむ魔は照れた様に頬を掻き、照れ隠しついでに喋っている。
「貴女を連れてきた理由はね、その性根が……かなり酷い、いえ強い物だったからよ。貴女程に凄まじい暁美ほむらは、残念ながら、そう居ないの。悪魔になった貴女は、円環と死闘を繰り広げ、最後に彼女の手にかかって死ぬ可能性が高かった。そういう未来へ行く確率が高かった」
「そんな可能性が……あ、いえ。きっと、私ならそうするでしょうね」
話を聞いて、すぐに『自分なら確かにやる』と思った。まどかの幸福の為に、まどかの願いを汚す。辛いけれど、それでも私はやるだろう。
その結果、まどかや美樹さやかに殺されたとしても、私は最後まで、その存在の一片すら残さなくなるまで戦い続けるに違いない。ほむ魔は、それを分かっていたからこそ、私を連れ込んだのだ。
「それも有るけど、貴女を連れ込んだ理由はもう一つ有るわよ。まどかとの約束通り、辛い未来は回避したかったから」
「まどかとの約束、って?」
よくぞ聞いてくれました、と言わんばかりに表情を明るい物にする。きっと、誰かに話してみたかったのだろう。
「私はね、まどかと約束したのよ……『未来を幸福な物にする』って」
「素晴らしい事ね」と感嘆しながら相槌を打つと、彼女は今までの態度が嘘の用に、「うん」と返事をした。
実際、素晴らしい約束だ。まどかの幸福を守る為の大義名分を、向こうから用意してくれた。これがどんなに嬉しい事か。きっと、『暁美ほむら』の人格を持つ者ならば、分かってくれる。
「約束通り、私は未来を幸福に……そう、私の思いが届く限りの平行世界の、あらゆるまどかの未来を幸福な物にする。過去から見れば未来とは『私達の居る現在』。なら、『まどかの未来の幸福』とは、過去の時間軸に干渉する事で、そこから続く現在を幸福な物に変える事でもある」
一呼吸置いて、自らの誇りを示す様に胸を張った。
それはかなりの暴論に聞こえたが、時間と空間を操る彼女は、人間の感覚とは違う感性も持ち合わせているのだろう。酷く真実味が感じられた。
「もっとも、貴女達の世界を変えた所で、この世界が何か変わる訳じゃない。まどかの生きてきた道がどれほど辛い物であったとしても、それが今のまどかを形作っているのだから」
肩を竦めつつ、彼女は彼方の空を見上げた。いや、きっと私とは違う物を見ているのだろう。その瞳に映る物の正体は分からずとも、何か途方も無い存在の気配は感じ取れる。
それから、ほむ魔は私へと背を向けて、小さく溜息を吐いていた。似合わない仕草なので、細かい挙動が随分と目立つ物だ。
「でも、今回の方法は非効率かしら。今回の実験は実質失敗。でも、平行世界に干渉する、という部分は達せられたし、まどかは幸福な状態にある。何の問題も感じられない……でも、まあ、実験も失敗した事だし、もっと大きなアプローチをしてみようかしら」
夢中で独り言を呟きながら、彼女は顎に手を置いて考え込んでいる。このままでは、私の事など忘れられかねない。
自分の正体も、この世界の事も分かった。他に問う事が有るとすれば、一つだけだ。
「で、結局、私はどうなるのかしら?」
私の声に反応したのか、彼女は独り言を止めて振り返り、鼻歌でも始めそうな調子の良い顔色を見せてくれた。
この、圧倒的に寒々しいオーラは、敵とするには猛毒に等しい。だが、彼女は『まどかの味方』だ。毒を通り過ぎて、良薬に思える。
「貴女には、二つ選択肢が有るわ」
彼女は、何処と無く真剣な荘厳さを漂わせつつも、しっかりと、ゆっくりとした口調で私へと提案を口にする。
「一つは、この世界に留まって、私達と一緒に楽しく過ごす事。心配しなくても、貴女の世界に居るまどかも私が幸福にすると約束するわ」
「……」
「そして、もう一つは。貴女が貴女の居た世界へと戻って、インキュベーターの手からまどかを守り、まどかを救う戦いに再び臨む事」
「……」
「さあ、どちらにするの?」
「どちらを選んでくれても結構よ」などと言葉を繋げていた。
実際の所、どちらを選んでも彼女はまどかを幸福にするだろう。しかも、どちらであっても私はまどかの幸せに貢献出来る。そう、誰も損をしない状態だ。
だが、それは無駄な問いでしかない。私こと、暁美ほむらがどちらを選ぶか、なんて、貴女は……お前は、聞くまでもなく分かっているだろうに。
一瞬も迷わない。この決定を下すのに、迷う必要が有る物か。だからこそ、あっさりと答えを口にした。
「当然、戦うわ」
※本作の主人公はほむ魔です(白目)
-解説-
『まどかは……』
まどペンで、さやかと一緒に登校している際にほむらがまどかについて語り出した時の第一声。さやかの場合は微妙に引いていましたが、思考が似ている者同士、まどかを賛美する時は尋常じゃないくらい呼吸が合う。
『よく笑う』
これは、ぶっちゃけてしまうと、ほむ魔が私が人格設定をした登場人物だから。私の作った登場人物は、基本的によく笑います。
『Got ist tot』
要するに、ニーチェの『神は死んだ』。近代哲学が神から離れていった事を現す言葉、だったかな? 叛逆の物語で登場。
『長い、四行で』
インキュベーターから暁美ほむらの魂を盗んできた。
けど何か自分の記憶を弄ってた。
ならまどかと一緒に生活させたらいずれ戻るんじゃね?
記憶戻るし、まどかも役に立てて喜ぶし、私も色々実験出来るし一石三鳥じゃん。
『「それならそうと先に言いなさい」』
一体、何時の間に……本作の暁美ほむらは、こんなに壊れていたの!?
こんなに原作と私で意識の差が有るとは思わなかった……!
とはいえ、1部から居る悪魔ほむは、ここまでぶっ壊れてませんよ。通常の人間らしい感性も保持しています。2部の彼女とほむ魔がおかしいだけで……本作の暁美ほむら像にはかなりの誇張と、何よりロールシャッハやエルマー・C・アルバトロスを下敷きにした狂気的な部分が有ります。ですから、この2部に登場した暁美ほむらは言ってしまえばよく似た平行世界の別人。原作の彼女は人間らしい部分をしっかり残していますよ。
『悪魔になった貴女は、円環と死闘を繰り広げ、最後に彼女の手にかかって死ぬ可能性が高かった』
叛逆の続編があるとしたら、そうなる可能性が有るという展開の一つ。私個人としては、この展開はまどか☆マギカという作品の空気から外れるし、何より悲しいので止めて欲しいと思ってますが。