鯖が寝取られすぎてキレるマスターの話   作:バリ茶

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NTRはクソ

 最近──というよりかなり前から、俺のサーヴァントたちの様子がおかしい。

 

 

 食堂で出くわせば、離れた席に座って食事をする。

 

 廊下で鉢合わせたら、まだこっちが何も言ってないのに「あはは……」と汗をかきながら苦笑いして、そそくさと何処かへ消える。

 

 ミーティング中は変な駆動音が鳴ると同時に身体をビクビクさせるし、トイレから出てきた時なんか太もも辺りに白い液体が垂れてて、思わず失笑したくらいだ。

 

 女性サーヴァントも、男性サーヴァントも、性別不詳のサーヴァントだろうが、例外なくよそよそしい感じなわけで。

 

 

 ……まぁ、原因はとっくの昔から知ってるんですけどね。

 

 所持サーヴァントの中で珍しく以前から様子が変わらない教授(アラフィフ)に頼んで、いろいろと調べて貰った。

 

 そうして浮き出てきた事実は、なんともまぁ……前から危惧していた事態というか、予想通りだったというか。

 

 

 

 ──呆れと怒りで「もう俺のサーヴァントあのおじさんだけでいいかな」という心境に陥り、俺に隠れてズッコンバッコンぬるぬるグチョグチョしてるバカ共は追放することにした。

 

 

 

★  ★  ★  ★  ★

 

 

 

 アルトリア・ペンドラゴン(ランサー)。

 

 最初期に召喚したサーヴァントでサポート編成に入れたら引っ張りだこになり、俺に大量のフレンドポイントをもたらしてくれた良い人である。

 

 どうやら彼女も最初はこちら側だったのだが、予想以上に早く『堕ちて』しまったようだ。

 

 新米マスターの頃にレベル100スキルマのマーリンを持っているフレンドがいたのだが、そいつに「フレンド解除されたくなかったら……分かるよな?」などと脅されたらしい。

 

 そんなゴミカス野郎はこっちから願い下げ……と言いたいところだが、情けない事にアルトリアの状況を知らなかったあの時の俺は、そのフレンドに頼りっきりだった。

 

 

 俺の為に、金髪ムキムキのチャラ男に身体を捧げたアルトリア。

 

 おかげで強いマーリンを使うことが出来たし、フレポも大量に貰えたので彼女はとても頑張ったと言えるだろう。労いの言葉などいくらあっても足りないくらいである。

 

 

 

 ───だが、寝取られ宣言付きのアヘ顔ハメ撮り動画を送ってくるなら話は別だ。

 

 

 

「……へ? あ、あの、マスター?」

 

「どうしたの」

 

「今なんと……?」

 

 所持サーヴァントをフレンドのいる別時空に送り出すための転送装置の前で、爆乳ランサーが狼狽えた。

 俺は呆れた溜息を吐いてもう一度同じ言葉を繰り返す。

 

「だから遠征だよ。フレンドからの依頼もあるし、向こうに行ったら暫くは帰ってこなくていいから」

 

「で、ですが今はイベント期間中です! 私も特攻サーヴァントですし……」

 

「大丈夫大丈夫。出番が来たら連絡するから安心してよ。あっちでも気を抜かずに頑張ってね」

 

 俺に押されて渋々転送装置の中へ入っていくランサー。

 恐らくは俺の溢れ出る怒りのオーラを感じ取っているから困惑しているのだろうが、俺としてはコイツが察していようといなかろうと関係ない。

 

 転送装置の扉を閉め、ガラスの向こうにいるランサーを見つめる。

 

「……マスター?」

 

 ランサーが怪訝な表情で俺を心配した。

 

「……っ」

 

 いかん、ジッと見てたら昔のこと思い出して泣きそうになってきた。

 このランサーアルトリアって俺が初めて迎え入れた星5のサーヴァントだったんだよな。そりゃもう初期の弱小カルデアの時はマシュと他の星3鯖とこのランサーで戦場を駆けずり回ったっけか。

 

 ……でもこいつ既に寝取られてるんだよな。マスター同士でのみ使える通信端末で向こうのマスターから例のビデオレターが送られてきたし、その内容を見たらもう信用できなくなるのも当然だ。

 

 

【オラッ! 愛しのマスター君に謝れよこの淫乱メス豚王が!】

 

【おぉっほぉぉっっ♥♥ もうしっ、わけぇ……ひぎぃっ♥♥ ありましぇっ♥ ん゛ん゛ン──ッっ♥♥♥】

 

 

 ──うん、思い出すだけで涙が込み上げてきた。もう許さん。

 

「じゃ、いってらっしゃい。成果を期待してるよ」

 

「……はい、お任せくださいマスター」

 

 不安そうな顔してるけど知らねーよバーカッ! この人の肉便器になりましゅぅぅぅとか言ってただろうが! あっちに行ける事をもっと喜べよマヌケ野郎!

 

 

「もう戻らなくていいからね」

 

「えっ? ます──」

 

 即座に転送ボタンを押し込むと、一瞬でランサーは目の前から姿を消した。

 そしてフレンド欄から転送先のフレンドを削除することで、こっちと向こうのカルデアの繋がりを完全に断ってやった。

 

「……ふぅ」

 

 誰もいない部屋で一人ため息を吐く。

 

 もうあのランサーは此方へ戻ってくることはできず、今後一生あっちのカルデアで金髪チャラ男の肉便器として幸せに過ごすことだろう。よかったな。

 ただフレンド解除するだけじゃなくてあっちに送ってやったんだから感謝してほしいぜ。

 

 

「…………うっ、うぅ」

 

 くっそ、込み上げてきた涙が止まらねぇ。いっそミーティングルームに戻る前にここで一回泣いとくか?

 

「ずっと信じてたよっ、ランサー……」

 

 あー泣いちゃう! 泣いちゃいまーす! 古株の相棒とも言える存在が寝取られて悲しいでーす! 泣きまぁぁっぁぁぁす!!

 

 クッソ! クソがッ! マジで何なんだよあのチャラ男もうちの貞操観念ガバガバサーヴァントもよォォーッ! 心底ムカつくぜぇぇぇェェ──ッ!!

 

 

 悪! 寝取りは悪だッ!!

 

 

 

★  ★  ★  ★  ★

 

 

 

 マーリン。

 

 絶対魔獣戦線の攻略中にようやく迎え入れることができた最強のキャスターだ。多分所持サーヴァントの中で一番スキルの育成に力を注いだ男。

 

 そんな彼だがどうやらもうこのカルデアには愛想が尽きてしまったようだ。クエスト出発時に面倒くさそうな顔をするのはいつもの事だが、最近はサポート出撃をするときだけ嬉しそうな顔をしやがる。

 原因はもう分かっている。マーリンは別のカルデアの女マスターに寝取られてしまったのだ。

 

 先に言っておくとカルデアのマスターたちは自分の性別を自由に変えることができる。一体どんな力が働いているのかは知る由もないが、とにかく黒髪の好青年かオレンジ髪の美少女のいずれかにいつでも変身可能だ。

 

 そしてマーリンの要望もあってあいつをクエストに連れていくときは必ず俺ではなく私になっていた。なんでもそれが目の保養になるとかなんとか言ってたから、こっちも戦わせている鯖の期待や要望には応えたくてそうしていた──のだが。

 

 私と同じ姿をした別のマスターに花の魔術師は落とされてしまった。教授の話によればあっちのマスターはマーリンにとても優しくて、更にえっちな事までしてあげているらしい。

 

 私だって優しくしてたじゃん……あいつが疲れてる時は無理に連れていかなかったし同行させる場合は絶対女に変身してあげてたじゃん……などといった文句はもう出てこない。元々ロクでなしなのは知っていたが私を裏切ったのならもう用はない。早急に立ち去ってもらおう。

 

 

【ほらぁ♥ マーリンも笑って? 私だけで楽しむ写真だからいいでしょ~♥】

 

【そ、そうかい? ……ハハッ、撮るのはいいけどばら撒かないでくれたまえよー】

 

 

 ───あっちのマスターがお前とのラブラブ自撮り写真送ってきやがったんだからもう容赦しねぇ。

 

 

「……え、遠征とは?」

 

「遠征っていうかお休み。こっちは忙しくなるし、暫くは向こうのカルデアでゆっくりしてきなよ」

 

 今日も今日とて転送装置にグイグイとサーヴァントを押し込む私。文句なんか言わせないぞこの浮気男め。

 

「いやいや、ちょっと待ってくれたまえよ。今はハンティングクエスト期間中だろう? 鳳凰の羽根が足りないって嘆いていたじゃないか」

 

「っ? それが何か関係あるの?」

 

「あの素材のステージ周回には私が必要な筈だという話さ。どう考えても今はサポート先で休むべきタイミングではない。それにお兄さんは休暇を頂くほど疲れてはいないぞ~」

 

 明るい顔でいろいろ喋ってるけど冷や汗かいてるのはバレてるからな。

 

 

 ……ふぅ、もういいか。アルトリアほど気を遣う相手でもないし、ここはハッキリと言っちゃおう。

 

「マーリンはあっちのカルデアの方がいいんでしょ? 私は優しくないし過剰に褒めちぎったり甘やかしたりもしないし、何よりえっちな事すらさせてくれないもんね」

 

「……え、えーと」

 

「あっちの子から色々聞いてるよ? 仲良しみたいで良かったじゃない。別に恩を仇で返すだとかそういう風には考えてないから大丈夫。マーリンが幸せならそれでいいと思うし、あんなに嬉しそうな顔してる写真見ちゃってからはあぁもう勝てないんだなって思ったから意地を張る理由も無いしマーリンが行きたい方に向かわせてあげた方が幸せだと思うし何より他のマスターとイチャイチャしてる人が近くにいると目障りだしホントにムカつくし見せつけられてるようで腹が立つしていうかそもそも既に堪忍袋の緒が切れてるから今更後戻りはさせないからさっさと向こうのカルデア行ってラブラブしてきなよキモい死ね二度と面見せるな浮気性でロクでなしのクズが別のマスターのおっぱいでも吸ってバブバブ言ってろよ道端の犬のフンにも等しい生ゴミ野郎」

 

 ほら、早く転送装置入れよ。抵抗すんなよホラ私が入れてやるからさ。

 はいグイグイ―っ、ぐいっ。バタン。かちゃ。準備完了ですね。

 

「きょっ、強制送還かい!? 少し待っては貰えないだろうか! ほら、私ってこのカルデアに召喚されたわけだし!」

 

「今更見苦しいよ? それにあっちに居た方が幸せでしょ」

 

「そんなことは──」

 

 

「あぁぁもうっ! うっさい! うっさいバカ死ね! 死ねぇ! なるべく苦しんで死ねよ! 全部裏切ったアンタが悪いんじゃん! もう二度と帰って来るなーっ!!」

 

 これ以上クズの言い訳を耳に入れたくなくてスイッチを起動した。

 

 即座に転送されて目の前から消える花の魔術師。ガラス張りのカプセルの中はもう空っぽだ。

 

 

「……はぁ」

 

 誰もいない部屋で一人溜め息を吐く。この行為がこれで何回目なのかはもう覚えていない。マーリンやアルトリア以外にも追放したサーヴァントはいっぱいいたから。

 

 壁に凭れ掛かりゆっくりと床に腰を下ろす。ふと上を見上げてみても、見えるのは無駄に明るい照明だけだ。

 

「……うっ、うぅ」

 

 あぁぁぁぁほらぁぁぁぁぁ涙出てきちゃったじゃんんん。あれでもずっと頼りにしてたキャスターだったんだから裏切られたら悲しいに決まってるじゃんかさァーッ。

 

「ひぐっ、うえぇぇん……! マーリンのばかぁ……!」

 

 クソカスがよォォーッ! どいつもこいつもバカばっかりだぜ! 追放するこっちの身にもなりやがれって話なんだよボケがァァァッ!! 

 

 

 悪! 悪悪悪悪!! 寝取りはこの世最大の極悪なんじゃあねーのかァァァァァァァーッ!?

 

 

 

★  ★  ★  ★  ★

 

 

 

 淫乱アホナスビ──間違えた、マシュ・キリエライト。

 

 ……説明、いる? いらないよね、省きますね。

 この子は旧カルデア職員たちに輪姦されてました。そんで喜んでました。おわり。

 

 簡単に言うと俺がBBとかメスガキ鯖に誘惑されて『マシュ、ごめん……』をする前に『先輩っ♥ ごめんなさいっ♥♥』をされてしまった、というだけの話だ。

 言わばレースに負けただけであって、最初からマシュが取られる事なんて織り込み済みだったのだ。だってこの子が寝取られてないカルデアの方が少ないからね。むしろ俺が女性鯖に襲われる前に堕ちてくれてよかったわ。クソが。

 

 流石にマシュはどうあっても物理的に離れることができなかったので一緒に旅を続けているが、俺の心の中は真っ黒である。まさか俺の旧マイルームで輪姦されてる場面を発見するとは思わないじゃん? 俺のベッドに職員の変な液体が染みついてたよカス野郎弁償しろ。

 

 

「……遅いな、マシュ」

 

 今現在、俺はノウム・カルデアのマイルームに座っている。マシュに「お話があります」と言われてここで待機しているのだが、既に嫌な予感しかしない。

 

 きっと俺を待っているのはマシュが盛大に犯されてるビデオレターに違いない。内容は「先輩ごめんなさい♥」ってトロ顔で謝るかもしくは「今日からこの人の肉便器(サーヴァント)になりましゅっ♥♥」とか言いながら潮吹きしてるとかそんなんだろう。クッソ胃がキリキリしてきた。見たくないよぅ……。

 

 ──あ、来た。

 

「お待たせしました、先輩」

 

「用ってなに?」

 

「話をしたくて……お願いします、聞いてください」

 

 いつになく真剣っぽい顔つきのマシュに気圧されて、俺は渋々頷いた。

 俺の返答を確認したマシュは近くの椅子をベッドの前に移動させ、俺と向かい合うようにして正面に座る。

 

 間もなく、マシュは静かに語り始めた。

 

「カルデア脱出の日の事、覚えてますか?」

 

「……忘れるわけないでしょ」

 

「ですよね。……なら、私が途中で別行動したのも覚えてますよね」

 

「まぁね。割とすぐに戻ってきたけど、あの時はマシュがいなくなって死ぬかと思ったよ」

 

 少し語気を荒くしてそう言うと、意外にもマシュはしおらしく「ごめんなさい」と言って頭を下げた。

 んん……? 何だ、マシュは何の話をしてるんだ。

 

「マシュ、要点だけを話してくれないかな」

 

「……はい」

 

 俺の言葉を聞いたマシュは懐からスマホの様な携帯端末を取り出した。そしてそれをピッピと操作して何かの画面を用意している。

 

 やばい、変態ビデオレターがくる……! 備えろ! 危険に備えるんだーっ!

 

 

「これを見てください」

 

 

 マシュに突き出されたスマホの画面を極めてうすーく目を開きながらチラッと見てみた。

 そこに映されていたのはマシュの淫らな姿──

 

「……えっ?」

 

 ──ではなく、複数の男性カルデア職員の死体だった。

 

 体の節々から血や内臓が飛び出ていたり、酷いものだと顔の原型を留めていない死体すら映っている。

 今までの経験のおかげで吐き気を催すことはなかったが、急に死体の写真を見せつけられたせいで思わず反射的にビビって身を引いてしまった。

 

「なっ、な……!?」

 

「すみません、驚かせるつもりではなかったんです」

 

 俺が狼狽したことでマシュは反省したようにスマホをすぐさまポケットに戻した。

 

 ……いや、いやいやいや。なに? 急になに? ドッキリにでもハマったのマシュ? ほんと心臓に悪いからやめてクレメンス……。

 

「どういうことなのマシュ」

 

「……これを話すのは先輩にだけ、です。秘密にしてもらえますか」

 

 勿体ぶらずに早く教えて! もし「次はお前がこうなる番だ」とかなら令呪つかって逃げないとだから!

 

 

 

「私───人を殺しました」

 

 

 

 

「……………はい?」

 

「先輩には黙ってましたけど私って人殺しなんです」

 

 なんかマシュの目がヤバい。ハイライトが無い。こわい。

 

「そ、それって異聞帯(ロストベルト)のこと? あれは俺だって──」

 

「違います。世界の為に仕方なく、ではなく私の意志で……『殺意』をもって人間を四人殺害しました」

 

「……写真、の?」

 

「はい」

 

 どういうことなの……。急に話があるって言われて何が来るかと思えば、寝取り報告じゃなくて極悪犯罪の告白とか予想外すぎてお腹痛くなる。

 え、なに、マシュじゃなくてマッシュなの? 人をすり潰(マッシュ)して喜ぶ狂人だったの?

 

「かつての私は性欲に溺れた咎人でした。先輩を……マスターを裏切って行為に勤しむクズだったんです」

 

 それは知ってる。だってその場面直接見たからね。

 

「でもマスターに見られたあの日。あの後物陰で泣いている先輩を見て私は我に返りました」

 

「……ど、どういうこと?」

 

「私は先輩のサーヴァントなのだという事を思い出したんです。他でもない先輩の──あなたのサーヴァントだって」

 

 なんか目がもっと怖い事になってるよマシュ大丈夫? 黒い絵の具でベチャって塗りつぶしたみたいに真っ黒な眼になってるけど。ていうかさっきから一度も瞬きしてないけど。めちゃくちゃ漆黒の意志を感じるんだけど。

 

「だから襲撃の日、貴方の物に戻る為に私を犯した職員を全員殺しました。あの職員たちと気色の悪い行為に耽っていた過去の私ごと、あそこで醜いマシュキリエライトの全てを殺しました。貴方の物に、貴方のサーヴァントに、貴方の──いや()()()()()盾へと戻る為に性欲の奴隷であった少女と醜悪な大人(ゴミ)を処分いたしました」

 

 ……やっべぇ言葉が出てこねぇ。マシュに圧されて何も言えねぇぞ。本当なら「開き直るんじゃねーよこのナスビ!」とか言わないとダメなのに全く体が言う事を聞かねぇよぉ……。

 

「金輪際先輩以外の人間とは接触しないことを約束します。先輩のご指示であればどんな事でも受け入れるとここに誓います。試しに何か仰ってください。食事をご用意致しましょうか、それともクエストに赴きましょうか、いえ私の肢体をお使いになりたいのでしたら遠慮せず存分に使っていただきたいです、あぁぁぁあっあ申し訳ありません出過ぎた提案までしてしまいましたこのマシュキリエライト一生の不覚です先輩が望むなら今すぐこの場で自らの命を断ちますやはりこんな汚れた身体になった私では先輩のお傍に居る資格など欠片も存在しな──」

 

 

「す、ストップ! ちょっと待って!」

 

 マシュが「俺は止まんねぇからよ」状態になっていたので大声を出して一旦やめさせた。その無表情顔でお経を読むみたいに喋り続けるの怖いからやめてね。

 

「……ええと、つまりマシュは……もうあんな事しないから許してって、そう言ってるのかな」

 

「……………………………はい」

 

 すっっっげぇ溜めたな。最初からそう言えよナスビめ。

 

 いや、にしても驚いたな。確かにマシュを犯してた職員は一人もシャドウボーダーに乗ってなかったから死んだもんだとは思ってたけど、まさかマシュ本人が殺してたとは予想外だった。

 

 

 ……ま、寝取った奴らが死んだならそれでいいかな。流石に人のパートナーを奪うようなクズ共を可哀想だと思える程聖人ではないんだよな俺。

 

 マシュも反省してるっぽいし、許してやってもいいかなぁ……?

 

 

「……ん?」

 

 マシュに何か声を掛けようとした瞬間、マイルームのドアからノックの音が聞こえてきた。こんな時にタイミングの悪い人だ。

 

「あ、どうぞー」

 

 気の抜けた返事をすると同時にマイルームの入り口が開いた。

 そうして見えた来訪者は全身血塗れのランサーアルトリアと衣服がボロボロのマーリンだ。

 

 

 全身血塗れのランサーアルトリアと、衣服がボロボロのマーリンだ。

 

 

 ランサーアルトリアと、マーリン。

 

 

 来たのは見覚えのあるサーヴァントの二人。

 

 

 

 ……んん?

 

 

 

 

「え?」

 

 

 どういうこと?

 

「失礼しますマスター」

 

「失礼するね」

 

「えっ、ちょっ、なに、マジで、なにっ、待って」

 

 意味わかんない意味わかんない、何でこの二人がいんの。失礼しますじゃないんだが? 再度召喚した覚えもないんだが……!

 

 ていうか何でアルトリアは血塗れなの!? マーリンも何でボロボロなの!? どういうことっ!?

 

「誰!?」

 

「ランサー、アルトリア・ペンドラゴンです」

 

「キャスター、マーリンお兄さんだよ~」

 

 嘘つくんじゃねぇよコラ! お前ら二人ともとっくの昔に永久追放したわ! ここにいるわけないだろうが!?

 

「なんでいるの!」

 

「遠征先のカルデアマスターを殺して帰還いたしました」

 

「え?」

 

「マスターを殺して帰還いたしました」

 

「えっと……」

 

「殺 し て き ま し た」

 

 

「……ち、血塗れなのは」

 

「返り血です。床を汚して申し訳ありません」

 

 

 ──いや、床を汚して云々どころの話じゃないんだよな。何で快楽堕ちしてたのにあのチャラ男マスター殺してしかも無事に帰還できてるんだよ。

 

「気合いで帰還致しました。……転送前のマスターのあの表情を見た瞬間、目が覚めたのです。私はランサー──貴方だけのランサーなのだと。故にあのカルデアのマスターを殺して帰還致しました。時空の歪みで此方への帰還が遅れてしまい大変申し訳ありません」

 

 アルトリアさん今マシュと似たような眼になっちゃってるけどこれ大丈夫? あっちのマスターどんな殺され方したんだろう……。

 

「えぇっと……ま、マーリンは……?」

 

「悔いたよ、転送後に君の泣き声を聞いた瞬間にね。どうやら私は少々人間らしくなりすぎていたらしい。……私を甘やかしていたあの少女が暴走して他世界のマーリンたちも集めて生み出した特異点も少女ごと破壊したし、君さえよければもう一度キャスターとして戦わせてほしい。虫のいい話だという事は重々承知している。薄っぺらい言葉ではなく行動で示して見せるからどうか、もう一度だけチャンスをくれないだろうか」

 

 こいつ本当にマーリンか?? 俺っていうか私の知ってるロクでなしはこんな事言わない。ていうかあの子マーリン好きすぎて特異点作っちゃったのか……。

 

 

「うーん……!?」

 

 どうすりゃいいんだこれ!?

 

 寝取られたはずなのにみんな帰ってきやがった。しかも全員浮気相手をぶっ殺してケリつけてから。あまりにも物騒すぎる。

 

 ……うわわっ、みんな俺の前に跪いちゃった!

 

「シールダー、マシュ・キリエライト」

 

「ランサー、アルトリア・ペンドラゴン」

 

冠位(グランド)キャスター、マーリン」

 

 

『この身はマスターと共に』

 

 

 全員声を合わせてそんなことを言いやがった。

 どいつもこいつも寝取られたクセに自分で寝取り相手を殺して俺の元に帰ってきた異常者たちだ。怖すぎるぜ。

 

 てかみんな目が変なんだよね。誰も瞳に光が宿ってないんだよね。一歩間違えたら逆に俺が殺されそうな雰囲気がコイツらには漂ってるんだよねぇ……!

 

「……え、えっと」

 

 どうしようこれ。俺がここで許さないって言ったら全員すぐさまこの場でセップクしそうな感じする。あいえぇぇ……困った、どうしよう。

 

「とり、あえず………」

 

 まずはこの場を切り抜けなければ。なるべく平和に!

 

 

「また……よろしくね、三人とも」

 

 

 それを言った瞬間サーヴァントたちが怖いくらいに歪んだ笑みを浮かべた気がしたけど、きっと気のせいです。俺は何も見てないのです。

 

 

 




これ以降クエスト出撃の際のサーヴァントが固定になってしまった主人公
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