バンドリカレンダー企画! ~みんなで繋ごう、ガルパの一年を~   作:大里野上

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本日は、mocomoco2000さんです。
Twitter: @mocomoco20000


作者様から
夢を見た。
リビングの机で寝ていた少女に、少年が毛布を掛ける夢を。
特に他に何かをするわけでもなく、少年はそれだけをしてソファーで本を読み始める。
チクチクチクチクと壁に掛かった時計の針の音が部屋を満たす。それと少女の吐息をBGMにパラリとページを捲る。
アタシはそんな2人を遠くから眺めているだけだった。
近付く事も遠ざかる事も出来ず、ただ眺めることしか出来なかった。


10月・ありふれた朝にて

10月1日。

これが何の日か分かるだろうか。

月始めとも捉えられるし、誰かの誕生日、記念日と言えるかもしれない。

全国的に知っているイベントといえば、やはり衣替えだろう。

友人は透けブラの見納めかと残念がっていたが、寒がりのオレにとってはこれから堂々と学ランを着れるのでありがたいイベントである。

クローゼットの奥に仕舞っていた学ランを引っ張り出して壁のフックに掛けておく。今日は土曜日のため、公立に通っているオレは授業とかは無い。単に衣替えをしたという気分を味わう為だけに出したのだ。

寝間着から普段着に着替えて下のリビングに行くと、既に先客がいた。

 

「ん?おー、おはよ」

 

そこには自身の姉さんがいた。キッチンを見たら誰もいなくて、どうやら両親は飯を作ったら直ぐ仕事に行ったようだ。

 

「ん。お早う」

 

ロングウェーブの髪がさらにウェーブしてる姉さんの前に座ると、

 

「ん?ちょっと冷めてると思うよ。レンジで温め直したら?」

 

とレンジの方を指差した。

 

「猫舌だからこれくらいが丁度いい」

「そっか」

 

それ以上オレと姉さんは言葉を交わさない。というのも、オレが距離感を掴めなくているからだ。

去年の春辺りから姉さんはまた音楽活動を始めたのだ。そのせいか話をする機会が減っていき、さらに多忙である姉さんと会う機会も減っていって、自然と話をしなくなっていったのだった。

こうやって面と向かって飯を食うのも久々で、正直何を話していいか分からない。いつものこの時間だと姉さんは部活の朝練で、オレがここに降りてくる時点で学校にいる。今日はどうやら休みのようで、結構ゆったりとした空気を滲み出していた。しかし、この時間だと結構危ないのじゃないのか?と思う。姉さんは徒歩で学校へ通っている。自転車でなら問題ない時間であるが、残念な事に姉さんの自転車は現在故障中。確かチェーンが千切れたとか言っていたような気がする。

制服姿の姉さんを見て、私立は土曜日も授業があって大変だなと思っていたら、ふと気になる点を見つけた。

 

「姉さんの学校って衣替え強制じゃないの?」

「え?あ」

 

姉さんは自身の服装を見て声を失う。

どうやら月を跨いだ事に気づいていなかったようだ。ついでに時間についても言っておくか。

 

「後、時間」

「え?ヤバッ」

 

箸で時計を指すと姉さんは時計を見て慌てた様子で残りのご飯や味噌汁をかきこむ。

茶碗を重ねて置いて立ち上がるのを見ていたオレは、

 

「洗っとくから着替えてきたら?」

 

とらしくないことを言った。姉さんは驚いたように目を見開くが、すぐに優しい笑みを浮かべる。

 

「ゴメン!後でお礼するから!」

「セーターはゴメンだからな」

「分かった!」

 

ドタドタと部屋に戻る姉を見送ると、リビングに静寂が訪れる。

聞いた話によると、姉さんはよく出来た人として通っているらしい。料理も裁縫も出来て、気配り上手。憧れの先輩だとか言われている大人気な姉さんであるが、家でだとこのように抜けている所もある。常に緊張の糸を張っているから、家では緩めていたいのだろう。だけど、それで遅刻しそうになるのはどうかと思う。

温い味噌汁を啜る。おいしいけどこれ、昨日余った材料を突っ込んだだけだろ。

トックやウインナーとかが入ったバラエティー豊かな味噌汁を飲み干すと、オレは前に置かれた食器もまとめてシンクに入れて洗い始めるのであった。

 

 

 

「いやぁ。いつもダンス部の練習があるから、休みになると出る時間が分からなくなるよねー」

「それを帰宅部のオレに言うか?」

「ゴメンゴメン。でも、今日早く起きてくれて本当に助かったよ。お友達に感謝しなくちゃね!」

「ちとはオレに感謝しろ。バカ姉!」

 

結局のところ間に合うか怪しい時間になってしまったようだ。

天然パーマな姉さんは髪を整えるのに結構な時間がかかる。それを見越してはいたが、オレのように直ぐに冬服を取り出せるようにしてはおらず、奥に仕舞っていたから出すのに手間取った。

出して、片付けして、着替えて、メイクして。

一工程増えるだけで人というのは意外と慌てる。慌てていたらいつもやっている事もムラが出来てしまう。結果メイクが上手くキマらなかったようで、さらに時間を奪われてしまった。

食器を片付けて、友人と会う時間までまだ余裕があるから本でも読んでおこうかと部屋に戻って本棚を物色していたら急に姉さんが入ってきて、

 

「ゴメン!もう1つお願いがあるの!」

 

と手を合わせてきた。

嫌な予感しかしなかったが、断るとさらに面倒な事になりそうな気がしたから、頷いてしまった。

それがこの自転車の送迎である。確かに外に出る予定はあるけど、まだその時間まで時間がある。家に帰るのも手であるが、帰る気分ではないので、こりゃどっかの喫茶店でモーニングだなとため息が漏れた。

 

「もう少し余裕を持って動けよ」

「本当にごめんって。今度マフラー編むからさ」

「それは趣味で作ったヤツを押し付けてるだけだよな?」

「…………」

「そこは違うって言えよ!」

 

赤信号で止まると、オレは直ぐにスマホの時計を見る。時刻は8時過ぎ。このままのペースで行けば姉さんの学校の予鈴時刻に余裕を持って間に合うだろう。

何故こんな朝っぱらから全力疾走しないといけないのか夜辺りに問い詰めてやろうかと本当に思う。

 

「ねぇ」

 

スマホをポケットに入れてペダルに足を掛けたら、姉さんが声を掛けてきた。

 

「何だ?」

「今日って10月じゃん?10月といえば何を連想する?」

「いきなり何だ?歌詞作りの練習か?」

 

最近ってほどでもないが、姉さんはバンドで歌詞を書いている。この前も菓子を作ってる最中に書いていた。突如閃いたのだろう。メモに走り書きしていて、たまたまキッチンから離れていた時に冷蔵庫に用があったオレに読まれてしまった。

机の上に何か書かれた紙があったら一先ず確認するだろ?親からの言伝てかもしれないって。開いてみたらよく分からない文字の羅列でどういう意味だ?と頭を捻っていたら、後ろから姉さんに思いっきりおたまで殴られたのは本気で理不尽だと思った。

 

「…………うーん、そんなとこかな?何か思い付く?」

「その聞き方からして定番のハロウィンは除くって感じか」

「やっぱりハロウィンしか無いのかな?」

「大きなイベントってなりゃそれくらいじゃね?後は体育の日とか朝っぱら言ってた衣替え。パッと思い付くのはそんくらいか」

 

青信号になって自転車を漕ぎ始める。もうそろそろ登校している生徒とか見えそうなのだが、まだ見えてないということは遅刻のラインに足があるのだろう。

そこから抜けるためにさらに自転車を加速させる。キャッと後ろから悲鳴が聞こえたが無視。軽く文句を言ってきたがスルーして先ほどの10月についての話に戻った。

 

「それで?10月に関しては満足のいく解答が出来たか?」

「うーん。もう少し予想外な答えが欲しかったけど……… 」

「予想通りみたいな普通の答えで悪かったな」

「ううん。アタシもハロウィンくらいしか思い浮かばなかったから一緒だよ」

 

実は1つだけ思い付いていたことがある。だけどそれを口にするのを拒んでしまった。未練たらたらだなと呆れたように笑っていたらコツンと背中に何かが当たる。多分姉さんが身体を傾けて頭を置いたのだろう。姉さんは自転車の荷台に跨がらず、横に座っている。それだと結構揺れたりするのだが、ダンス部で鍛えてるからなのかそんなことは全然なかった。友人とかがこの座り方をすると大体腰とか掴んでくるが、姉さんは荷台に掴まっていてさらにバランスを強要される状態であった。ダンス部ってバランス感覚も鍛えないといけないのかなと下らない事を考えていたら、

 

「ねえ」

 

とまた声を掛けてきた。

 

「今度は何だ?今日の味噌汁についてはノーコメントだぞ」

「それはアタシもノーコメント。あれは味噌汁じゃない」

「コメントしてんじゃん」

「それくらいは言わせてよ。でね」

 

姉さんはオレの首に巻いているマフラーに触れた。

 

「これ、結構ボロボロじゃん。新しいのに変えたら?」

「……………」

 

今10月なのにもうマフラーを着けているのかと思った奴いるだろ。オレは超が付くほどの寒がりだから夏でも平気で長袖のシャツとか着る。9月の下旬で、皆暑いとか言っててもオレ的には寒いからマフラーとか着ける。病気かと心配されたりしたが、中学からの付き合いのある奴がいたから、これが普通ってクラスメートは納得してくれた。

話を戻そう。確かに今着けているマフラーは解れていたり、一部小さな穴が開いていたりとボロボロだった。

それもそうだろう。姉さんが中学生の時に作ったやつだから、5年以上使い続けている事になる。まだ編み物技術も今みたいに高くない頃に作ったから、所々杜撰になっていてほどけやすくなっていた。

 

「他にも色々マフラー編んだでしょ?それとかに変えたら?」

「いいよ。これ気に入ってるし」

「そう言うけど中学くらいに、学校で売ってるマフラー着けてた時期あったでしょ」

「それに関しては察せよ」

 

中2くらいだろうか。姉さんのマフラーを着けているのが恥ずかしくなった時期があって、今着けてるマフラーを外して購買で売っていたマフラーを着けていた。

そうしたら姉さんは

 

「ふーん、アタシが編んだマフラーより市販の方がいいんだー」

 

とか言って、嫌がらせの如くマフラーを編んで押し付けてきたのだ。

始めは文句とか言って止めろと促していたが、姉さんは頑なに止めずどんどんマフラーを渡してきた。

それに折れたオレは、また今着けてるマフラーに戻したのだった。おかげで編み物用の小さなタンスを買う羽目になった。小遣いがごっそり減ったのは今でも恨んでいる。

 

「こんなにボロボロだと見映えとか悪いでしょ?今度これに近いヤツ編もうか?」

「いいよ。オレは"このマフラー"がいいんだ」

「…………そっか」

 

そう言って姉さんはマフラーから手を離した。

沈黙が2人の間を支配する。オレが無理やり話を切ったからとても気まずい。何か話さないとと思って思い付いた事を口にした。

 

「10月といえばの続きなんだが、花とかはどうだ?」

「え?」

「花だよ。フラワー。10月に咲く花とか」

「あー、その手があったか」

 

姉さんは身体を起こして思索に耽る。それで頭が離れて当たっていた温もりが消えてちょっと残念に思うのは、シスコンの気質があるからだろう。認めたくないけど。

 

「でも……10月の花ってなんだろね?」

「さあ?パッと思い付くのはパンジーとかリンドウ……は9月か?後はガーベラとか?」

「…………詳しいんだね」

「友人に花屋がいるからな。自然と覚えたんだよ」

 

半分嘘である。確かにクラスメートに花屋の娘がいたが、結構話しやすい相手だったので、もっと話をしたいと思って色々調べたりしたのが主な原因である。

 

「そういや、花といえばシロツメクサを使った歌詞作ってなかっーーー冷たっ、って痛い痛い!」

「読んだの!?ねえ!読んだの!?」

 

いきなりマフラーの中に手を突っ込んでつねってきた。バランス崩して転倒しなかったオレを褒めて欲しい。

 

「止めろって!転ける、マジで転ける!」

「ご、ごめん。でも何で知ってるの」

「そりゃリビングでノート広げて寝てたからだろ。どう足掻いても目に入るだろ」

「~~~~~」

「叩くなって!転けたいんか!」

 

ワーキャーと騒ぎながらオレたちは進んでいく。多分近所迷惑になってると思うけど、無視しよう。この辺りに余り行かないし大丈夫だろう。

口論というより、姉さんの攻撃を堪え忍んで落ち着いてきたら、話を戻した。

 

「シロツメクサ………クローバーだから……幸運だったか?花言葉」

「うん。"幸運"、"私を思って"、そして"約束"」

「"約束"ねぇ」

 

誰との約束なのかは何となく予想できる。その強く結び付いた2人の絆に少し嫉妬してしまうのはやはりシスコンの気(ry。

 

「ん?そろそろか」

「え?」

 

赤信号で止まって辺りを見渡すとちらほらと姉さんと同じ制服の人が見受けられた。前籠に入っていた鞄を姉さんに押し付けると

 

「ここまででいいだろ?つか、これ以上進むん嫌だ」

 

とそっぽを向いてボソボソと言った。ちゃんと聞こえていたらしく、姉さんは肩をすかめてクスリと笑う。

 

「ん。りょーかい。ホントにありがと」

「もうこんなことさせんなよ」

「分かってる分かってる。じゃあ、とびっきりのマフラー編んであげるから楽しみにしといて」

「…………善処する」

 

青信号になり姉さんは軽快に信号を渡っていく。渡りきったら

 

「ありがとねー!」

 

と手を振った。少し恥ずかしいけどオレは小さく手を振る。

それに満足したのか、姉さんはスキップしながら学校へと進んでいくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「以上、アタシがあいつと話をした最後の内容でした。参考になった?」

 

黒いコートを羽織って、首には赤と灰色のマフラーを巻いた女性は、裏路地の地べたに座って楽しそうに話を終える。

それを聞いていたこれまた黒のコートを着こんだ青年は、ポケットに手を突っ込んで女性を見下ろして話を聞き続けていた。

 

「…………人と話す時とても面倒臭そうにしてるクセに、いざ話を終えたら寂しそうな顔をするんだよね」

「………………」

 

女性は立ち上がってパンパンと地面に付いていた部分を手ではたいて埃とかを落としていく。

 

「もうこの話とかをしても、皆不思議そうな顔をしたり、大丈夫?って心配してくるの。あなたには"弟はいないでしょ?"って」

 

少し離れた所から何かがぶつかり砕ける音が聞こえてくる。

その破壊音を聞き慣れているかのように女性は話を続けた。

 

「何であいつなんだろなっていつも思う。不器用で、恥ずかしがり屋で、何だかんだで面倒見が良くて……どこにでもいそうな奴なのに、何で"消された"んだろ……」

「………それはーーー」

「分かってる。うん、分かってる。でもそれをはいそうですかと頷いて納得なんて出来ない」

 

男の言葉を手を伸ばして止めて女性は悔しそうに顔を歪ませる。

 

「ずっと後悔してる。あいつがいなくなって、長い間寝込んでしまって、そのせいでロゼリアも休止状態になって………本当に自分が嫌になる」

 

女性は首に巻いたマフラーをぎゅっと握りしめる。

その姿に男は言葉が見つからないのか、じっと眺めていた。

 

「何よりもアタシがあいつを一時期忘れていたのが何よりも悔しくてーー」

「それは仕方ない事だ。そもそも、覚えている方が奇跡に近いんだ」

 

女性がダンと壁を叩いて、強く絞り出すように話していたら男はそれを制して言葉を紡いだ。

 

「あの時"忘れていないと"本当に消されていたんだ。あれが正しいんだ」

「…………言ったでしょ?理屈では分かってるけど頷けないって」

 

壁から手を離すと、女性は破壊音や悲鳴の聞こえる方へ歩き始める。

 

「だから取り戻す。あいつを消した奴を絶対に捕まえて、全部吐き出させてやるんだから」

 

女性の周りに炎が滲み出ている幻想が男には見えて、思わず息を漏らす。

奥で健気に真っ赤な手を振る少女の元へ2人は歩くのであった。




どうも。
実はこれを書き始めたのは11月の29日です。つまり締め切りギリギリです。書き終えたのも12月1日の昼過ぎでしょうか。
色々書いてみたのですが、"10月"というテーマにかなり苦戦させられました。全然イベント無いですね。
一応"ハロウィン""修学旅行"というテーマでプロットを書いてみたのですがどれもしっくり来なくて、結局10月25日に起きた"弟騒動"をテーマに書くことにしました。
本文に作者の本音が滲み出たのは軽く流しておいてください。
ちなみにハロウィンだとハロハピがパイをスパーキングする話、修学旅行だとさーやさんが迷子になってオリ主が送るって話になってました。特にハロハピは酷い内容になったので却下しました。みーくんの胃がバーストしてました。

ともかく、こんな駄文な私の話を読んでいただきありがとうございます。
他の方の作品がどんな感じになっているのかとても不安で楽しみです。10月のテーマダブってないことを本気で祈っております(12月1日現在)



何か続きがありそうな終わり方?さあ、一応軽く流れは出来ていますが、書くかどうかはまだ不明です。

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