バンドリカレンダー企画! ~みんなで繋ごう、ガルパの一年を~ 作:大里野上
11月になった。
暑苦しかった今年の夏の日差しは安定しない台風たちと共に消え去り、今では冷たくなった外の空気を少しだけ温めるものと化している。
街もハロウィンが終わったので一足早くクリスマスにむけて飾りつけられているが、街並みや足元に落ちている紅葉や銀杏の葉が視界に映る度にもうじき秋も終わるんだなと感じさせられる。
もっとも―――
「ねぇねぇ、ポッキーゲームしよ?」
この幼馴染兼恋人の戸山 香澄が唐突に何か言ってくるのは年中季節問わずいつもの事である。
「……香澄、ハロウィンはとっくに過ぎたぞ?」
「ハロウィンじゃないってば!!」
「じゃあ何でポッキーゲーム?」
「せっかく付き合い始めたんだしさ、恋人っぽいことしたいのー!! 後、今日は
恋人といっても付き合い始めたのはつい最近で、まだ初デートにも行けてない。
もちろん彼も行けるなら行きたいし、その為にバイトで資金を稼いでいたりもするが今はまだ誘うべきではない事情がある。
香澄の所属するバンドのライブが近々あるのだ。
11月は学生がかかわるイベントがあまりない。
精々、勤労感謝の日と文化の日に学校が休みになるくらいだろうか?
学校によっては文化祭もこの月に行われることもあるが、二人が通う学校の文化祭は12月に行われるので11月上旬の今はまだ暇な時期といえる。
社会人になれば七五三の祝い等があるが、二人が関わるのはまだまだ先の話だ。
そういうこともあって学生らしいことはほとんどないので、ライブに専念できるから開催するということになった。
その為、もしデートに誘うのであればライブが終わった後の方がいいと彼が思ったから何もアクションを起こせないでいたが……それが逆に彼女に不安感を抱かせているようだった。
「あー……うん、それに関しては本当に悪いと思ってるんだけどさ……ポピパのライブが近いからな」
「そうだけどさー……」
バンドにおいて恋愛というのは相当難しい。
恋愛するのであればバンドや音楽仲間をすべて失う覚悟をしなければならないと言われるくらいにだ。
それがきっかけで人間関係が崩れてバンドが解散などという話はよくある話だし、過激なファンの暴走などといった問題もないわけではないのだ。
その危険性を承知の上で彼と香澄の仲を認めたうえで秘匿してくれているPoppin'Party―――略してポピパのメンバーには感謝しかない。
(ちなみに香澄はメインボーカルとギターを兼任している)
ただまぁ、現在彼と香澄がいるのは彼の自宅―――もっと詳しく言えば自室だ。
男の部屋を窓から覗こうなんてもの好きは早々いない。
見られていないのであれば二人が自重する必要などないのだ。
そして何よりも、彼もまたそういうことをしたいという欲はある。
だから彼は動くことにした。
「でもそうだな……しよっか」
「へ?」
「だからポッキーゲーム……俺もその、したくないわけじゃないし」
彼は香澄の持っているポッキーの箱からポッキーを一本取り出して口にくわえる。
香澄も戸惑いこそしたものの、少しして彼の加えたポッキーの反対側をくわえた。
始まりの合図などなく、二人はすこしずつ―――どちらともなくポッキーを少しずつ食べ始めた。
10cm
7cm
4cm
1cm
そして―――
「ん」
二人の距離は0になった。
どれくらい時間が経っただろうか?
一分だったような気もするし、一時間くらい経ったような気すらする。
最早時間の感覚すらあやふやになるくらい二人はキスに夢中だった。
彼はいつの間にかキスしながら抱きしめていた香澄からふんわりと漂う甘い香りと口付けの感覚に酔い、香澄もまたキスと口の中のチョコの甘さという二つの心地よさに夢中でまさに夢見心地といった状態だ。
しかし、どんなことにも必ず終わりはやってくる。
「ぷはぁ!!」
「けほッ、ごほッ!!」
二人ともキスに夢中で呼吸することすら忘れていた。
その結果、両者ともに酸欠気味になってしまった。
「はぁー……はぁー……」
彼は大きく息を吸って吐いて欠乏した酸素を急速に取り込んでいく。
次第に意識もはっきりとしていくが、胸の動悸はまだまだ収まりそうにない。
それくらいに香澄とのキスは刺激的で魅惑的だった。
「……ねぇ」
ボーカルをやってるだけあって香澄は一足早く息を整えている。
しかし、その口には新たなポッキーがくわえられていた。
その意味がわからないなんて言い訳が通じるわけがない。
最近流行りのラノベの主人公ならこんな状況でもそんな冗談を言えるのかもしれないが、少なくとも彼には無理だ。
「まだ……ポッキーはたくさんあるよ?」
無意識にやっているのか、それとも場の空気に酔っているからなのかはわからないが挑発的誘ってくる香澄を見て彼はまるで酒だな……と思った。
一度キスすれば時間を忘れるほどに夢中になり、口を離せば酸欠による息苦しさと同時に口が寂しいと感じてしまう。
そして無意識のうちに彼女を求めてしまう辺り、本当に質の悪い酒だ。
とても中毒性が高くてどうしようもない……麻薬だって彼女の口付けには勝てないだろう。
もちろん彼は飲酒や薬をキメたことなどないから想像でしかないが、きっと間違ってはいないだろうという謎の確信がある。
「……ん」
一度行えば二度目からは理性によるブレーキも緩くなるのは大体のことで適応される。
それはその行為に慣れてしまうからなのだろうか?
先ほどよりも早く、二人はポッキーを両端から食べていく。
そしてまた繋がる。
ただ、一度目と違うのは二人がよりもっと深く、貪るように口付けている―――を通り越して舌を絡ませたり、吸ったりしている。
食べていたポッキーは既にドロドロに溶けてしまっている。
それほどに深く深く、二人はより多くを絡ませて行く。
「香澄……おかわり、いい?」
「……うん」
また一本、すればするほど歯止めが利かなくなっていく。
そして―――
「ってことがあってねー」
「いや待て!?」
「……やっぱ彼に無理させすぎちゃったのかな?」
「香澄、大人だ……」
「香澄ちゃん、大人の階段昇っちゃったの!?」
後日、ポピパのメンバーに怒られたのは言うまでもない。