学園祭……。
それは東町高校が最も力を入れてると言っても過言じゃないもの……。
そんな行事に参加できるというのはとても嬉しいことですが。
その反面、私は私でやらなくてはならないことが多いです。
勿論、それは風太郎のこともそうだけど……。
「中野さん、こっちの屋台の方の点検お願いできる!?」
他クラスの学級委員さんの声が耳にする。
隣の屋台からは美味しそうなお好み焼きの匂いがしています。お好み焼きには広島風や関西風とかそういうものがあるとか話で聴いたことがありますが、あのお店の方は確か……。いえ、今はそれよりも……。
「は、はい分かりました!今行きますね!!」
屋台の匂いに釣られるのもいいことですが。
やはり、此処は学級委員として与えられた仕事をちゃんと熟して行きたい。
「それにしても、四葉さん仕事が早くて助かるよ」
「そうですか?ありがとうございます!」
他クラスの学級委員さん。
如何にも学級委員さんという風貌な髪色をしている人が眼鏡の鼻の部分を直してる。レンズが光ったように見えたのは多分きっと気のせいじゃない。
「皆さん、それぞれ仕事があるんですから大変なんですよ」
「それでもみんな浮かれすぎじゃない?だって、学園祭といえ学級委員だよ?仕事は熟すべきじゃない?」
「そうですね、確かにそうかもしれません」
何処か私の心の軽くなった音がしていた。
持っていたバインダーの重さが一瞬消えたような気がしてならなかったんです。
「え?どうして四葉さん笑ってるの?」
「すみません、ちょっと懐かしいような気がしていたんです」
懐かしいどころじゃない。
聞き覚えしかないもの……。
『恋……?あれは学業から最もかけ離れた愚かな行為だ』
あんなにも刺々しく成長してた。
変わったなと思う反面、ちょっぴり悲しかった想いもある。
変われなかった自分のことだけじゃない。
昔の私のことなんてもう覚えてないかもしれないなんて心細さもあったから。
否定しないよ、私はそこを……。
「懐かしい?なにそれ?まさか四葉さんも恋愛とかいう最も学校において重要じゃない」
「ちょっ、ちょっと次の場所へ行きますね!!」
疑い深そうにしてた学級委員長さんから離れる。
あれ以上、あの場にいたら昔の風太郎を思い出して吹き出しそうになっていたかもしれません。そうなったら、余計怪しまれてしまいそうです。根掘り深堀りされてしまうところでした。
「おい、根掘り葉掘りだぞ」
「……え?」
あの場から立ち去って。
すぐ、他の屋台の確認へと行こうとしたそのときでした。今度こそ知っている声が聞こえて来て、振り返ればそこには……。
「う、うえええすぎさん!!?」
「動揺し過ぎじゃないのか?」
「そ、そりゃ驚きますよ!?初日は一花の勉強を教えるじゃなかったんですか!?」
学園祭の初日、風太郎は学校ではなく一花の勉強を教えるという約束があったはずです。
それなのに、風太郎がこの場にいることが驚きを隠せないどころか大きな声を出してしまいました。
「ど、どうして此処に?」
「それがあのヒゲ社長曰く、最後の学園祭ぐらいのんびり満喫して来なさいって感じでな。勉強の方はまあままだが、あいつと約束した映画の方はまだまだだ」
「ほ、本当に撮影する気あったんだ……」
ただの口から出まかせだったなんて言えません。
一花を説得するための……。一応、脇城さんが脇城さんのお姉さんの力を借りて風太郎と一花が映画の撮影をすると言ってましたが……。まさか、本当に実現していそうだったなんて……。
「し、知らなかった……」
初耳なんてわけじゃないけど。
やっぱり、本当に撮るんだという気持ちが強かった。そこは風太郎らしいと言えば、らしいかも……。
「まあ、俺もあそこまで費用が掛かるとは思ってなかったんだがな……」
風太郎が一瞬だけ私から目を逸らしてた。
あれ?と首を傾げそうになりましたが、多分目を逸らしたのは一花のことを思い出しそうになったからだと思う。まだ、なんとなくしか気づけてない。姉妹だからとしか言えないけれど、一花は多分風太郎に……。
「それで、お前の方はどうなんだ?」
あの日、事務所から消えて。
事務所に戻った報告を五月から聞かされたことを思い出してると、現実が戻って来る。
「どう、というのは?」
「また一人で突っ走ってるのかってことだ」
「ふふっ、そうじゃないんですよ。上杉さん、これは私がやりたくてやってるんです」
バインダーを自分の身体の方へと寄せ付けながらも言う。
擦り合わせたバインダーの方からは体温なんて感じない。当たり前だけれど、私の心の体温を知りたかった。多分、今私の体温は尋常じゃないものになってるから。
それが戦うと本気で覚悟を決めたからなのは間違いないって断言できるんです。
「上杉さん!」
「なんだ、四葉?」
「折角、学園祭に来たんですから一緒に学級委員の仕事をしませんか?」
「珍しいな、お前がそういうことを言いだすなんて」
いつもの私なら、きっとここでこれは自分でやらなくちゃいけないことなんですと言ってた。
自分にとって人助けは自分の証でもあったようなものだから。
「偶にはいいじゃないですか」
「こういうのは二人でやった方が楽しいんですよ!!」
此処に来るのは二日目からだと考えた。
まさかあの社長から休暇を貰うことになるなんて考えてもなかった。
『好きだよ、フータロー君』
あいつの言葉が揶揄いなんかじゃないと耳で甦る。
俺があいつと居てどうするべきなのかを全く手を付けられなかったせいもある。
告白をされてからと言うものの、あいつの気持ちにどう答えるべきかどうかで悩んでいた。
一刻も争うときでもあるが、俺が決断したのは……。
『少し考えさせてくれ、一花』
男として、一人の人間としてどうかなのかと言われたよくはないだろう。
逃げの手段を使ったに過ぎない。それでも、俺は自分の感情と向き合う時間を作るしかなかった。
『分かったよ、フータロー君』
『私は待ってるよ、キミがなんて答えてくれるのかを』
あいつ自身もそれを了承こそはしてくれていたが。
それでも納得してくれていたかどうかは別でしかないだろう……。あれ以上言わなかったということは、内心何か言いたいことだらけだったのは確かだ。
難しいもんだな、恋ってのは……。
時間は掛けてられない。俺も早く答えを出さなくちゃいけない、遅かれ早かれ。
「上杉さん、このお店はですね。どうやらドーナッツのお店のようですね!」
「屋台でドーナッツか、結構大がかりなことをしているんだな」
一花のことを思い出してると、点検場所へと来ていた。
目の前にはサクサクとしたドーナッツが陳列されている。サンプルか何かだろう。
「おっ上杉さんもドーナッツが好きなんですか?私も最近はドーナッツをよく食べに行くんですよ!」
「俺はあんまり食べないぞ」
「え?そうなんですか!?」
まるで信じられないと言うような顔をされる。
「なんで、お前らまでこっちを見てるんだ」
「いや……そのごめん」
屋台の方からもまるで正気を疑われたかのような顔をされる。
だが本当に実際、ほとんど食べたことがない。
「らいはの奴が話しているのは聞いたことあるぐらいだな」
「らいはちゃんですか!?やっぱり年頃のですしそういうのが好きなんですね!」
四葉の目が輝いているように見える。
聞いたことがあるというよりは、クラスの奴等がドーナッツの何が好きだとかそういう話をしていたとかそういうのだ。何までなのかははっきりと覚えてない。親父の反応が一々五月蠅かったし、勉強に集中したかったからだ。
とはいえ、こういうとき親父が基本的に五月蠅いから勉強を身にならないのは事実。
親父の声はどんなときよりも通りやすいからだ。窓があろうとも。
「上杉さん、こちらのお店ではたこ焼きを作ってるみたいですよ!」
「いらっしゃいま……あー風太郎ね」
次の屋台の点検に行くと、腕を組んでるいつもの二乃の姿が目に入る。
その隣には空が色々と準備をしているようだ。俺は料理のことはよく知らないから、なんとも言えん。
「一応客なんだが、な……」
「知らないわよ、それで野次馬が何の用なわけ?」
「二乃、風太郎の奴は点検しに来たんじゃないのか?」
「……し、知ってるわよ。そんなこと、アンタは黙ってなさいよ」
「ほぼ一言しか喋ってないだろ」
「あっ、そ、それはその……あーもう話しかけてこないで!!」
何処からどう見ても野次馬なのはお前らだろと突っ込みたくなるが。
此処で突っ込めば、どう考えてもあいつらからの反論が来る。
「上杉さん、野次馬なのはどっちなんでしょうかね……」
「言うな、四葉……とりあえずお前らあんまり喧嘩するなよ。揉め事は学級委員として見過ごせないからな」
「上杉さん、らしいことを言ってますね!」
「おい」
決して口に出さないようにしていたことを四葉が次々から言い出す。
言わなくても、言ってもこいつらの喧嘩は続くことになるだろう。どういう経緯でこいつらが揉めているのかは知らんが、傍から見たら本当に痴話喧嘩って奴にしか見えない。というか、こいつらが言い合いしてるせいで周りの空気感が微妙なのは自分達で気づいてるのか?俺もなんと言えばいいのか知らんが、ニヤついてるのとやばいみたいな緊張感が出来てる。
「じゃあ、俺達はもう行くからな」
「もう来なくていいわよ!!」
「それだと点検が出来ないんだが……」
とりあえず火の方は大丈夫だと確認したため。
俺達はその場から離れることにする。さっきの四葉の大声もそうだが、二乃と空のアホっぷりのせいで視線がこっちに突きつけられてばかり。ただでさえ、こいつらといると視線が強くなることが多いというのに。
最早、慣れたとどころかそういうもんだと割り切るようにはなったが……。
「上杉さん、実はクラス内ではパンケーキとたこ焼きでお店が分かれてまして」
「それは俺の方でも把握している。喧嘩というよりは、あいつらはあいつらで自分達のやりたいことを選んだだろ?」
「お前がそうだったように」
「上杉さん……」
さっきのあれは何も分かってないから言ったわけじゃない。
分かってた上で聞いていただけに過ぎない。江場とのこともあってから、あいつは自分なりに自分という人間を突き動いてる。
前を向こうとしてる。
それだけであいつは前よりも一歩前進して生きてるはずだ。
「ありがとうございます、上杉さん!私もちゃんと自分なりに選んでいるんですよ!」
「馬鹿なりに考えてはいるってことだろ?」
ちょっと口元を緩ませながらも言うと、四葉は口を膨らませてる。
お辞儀をして来てすぐにこれだ。
「ひ、一言余計ですよ!!あっさっきパンケーキの話をしましたが、私もパンケーキ作りというものをちょっと三玖たちと一緒にしてみたのですが、どうにもやはり難しくてお菓子を作るのは相当な技術が必要なんですよ!」
「そうなのか?俺は親が作ったパンケーキしか食べたことがないから、あんまり分からないな」
「え?上杉さんのお母さんってそんな凄い人だったんですか?」
「まあ、お前らにも空にも話したことはなかったな」
話したことがないってよりも、話す必要がなかっただけだ。
自分で自分の家族の話なんてあんまりする気も起きなかったからだ。
「どんな味だったんですか?上杉さんのお母さんのパンケーキ」
「どんな味って言われても子供の頃だからな」
「覚えてないんですか?」
「いや、覚えてはいるぞ」
「家庭的な味だったな」
話を誤魔化そうとするつもりだった。
なのに、俺は答えてしまっている。それが意味するのは俺にとって特別な姉妹だからこそなのか、それとも一花に触発されたことで俺の様子がおかしくなってしまったのかと勘ぐってしまいたくなる、自分を。
「え?パンケーキって家庭的な味しますかね?」
「するだろ、ふんわりとした生地」
「それが何枚も積み重なっていて、上にはバニラのアイス。これでもかと蜂蜜が掛けられている。スポーツインストラクターを目指すお前にとっては有毒もいいところかもしれないが……」
「おい、なんで笑ってるんだ四葉?」
隣にいる四葉が笑っている。
口角が上がり切ってるその顔で言われてると、こいつにも気づかれてならないんじゃないのか?と疑いそうだが、四葉のことだ。それはないだろう。
「なんだか上杉さんらしくないなと思ったんです」
「悪かったな」
点検に戻りたいという欲求が来てしまう。
四葉からバインダーを奪い取ろうとするが、四葉がその前に引っ込めてしまう。
「上杉さん、一つ聞いてもいいですか?上杉さんにとってそのお母さんのパンケーキはどんな味だったんですか?」
「さっきらしくないとか言ってなかったか?」
「いいじゃないですか!意外な一面だと思ったんですよ!もっとほかにはないんですか?家庭的な味以外で」
何処からどう見ても後付けでそう付け足したようにしか見えん。
とはいえ、此処ではぐらしたら余計今度こそ根掘り葉掘り聞かれることは確かなはず……。
一花に言ったこと、過去はそこまで重要じゃないと言っておきながらも……。
おふくろの味の話はしてしまってる。どう考えても、矛盾でしかない。
「家庭的な味以外で、か……」
「そうだな、俺はあのパンケーキの味を覚えてる」
矛盾でしかないのに、それでも答えてしまうのは観念しただけじゃなくて。
多分、俺は……。
「あのパンケーキの味は俺にとって……」
「おふくろの味なんだ」
母親の味をまた恋しいという気持ちがあるのかもしれない……。
そういう願望があるからこそ、なのかもな……。
こいつに話すのは……。
おふくろの味……。
お母さんの味ってことだよね。
パンケーキの話をしてたとき。
風太郎は何処か寂しそうだった。やっぱり、お母さんのことは亡くなった後でも思い出すんだ。
『四葉、五人でいるからこそ意味があるんですよ』
私もそうだよ、私も自分のお母さんのことが忘れることができない。
お母さんの言葉が記憶から消えたことはない。お母さんが作ってくれたパンケーキのことを思い出さないことはないよ。
風太郎のお母さんがどういう人なのかは分からない。
こうやって、彼が過去のことを話してくれたのは修学旅行以来だから。
修学旅行……。
『風太郎君はお金がなくても辛くない?』
京都での会話は鮮明に覚えてる。
真夜中でただ一人、小学生が神社の中で話し合う。奇妙な光景だったかも。
『自分がいなきゃもっとお母さんは楽だったのにって……』
風太郎はあのとき何を思っていたんだろうか。
一瞬だけ冷や汗を掻いていたんだろうような気がしたような……。もしかしたら、私が死ぬかもしれないなんて考えていてくれたのかもしれない。たった一日出会って夜まで過ごしてだけなのに。
『これからたくさん勉強して、うーんと賢くなって』
『そしたら、きっと私がいることに意味ができることが思うんだ』
あの頃の私は劣等感じゃなかった。
ちゃんと目標を持ってた。自立というものだったのかも。
『俺も勉強する』
『そんでもって、金稼げるようになりさえすれば妹に不自由のない暮らしをさせてやれるかもしれんねぇ』
きっと、あれは風太郎がお母さんのこともあって。
見つけた答えだったんだ。
『必要になれるかもしれないよな』
彼はちゃんとした目標を持ってた。
子供とは思えないほど、凄く固まった決意。
誓い合った、二人で。
交わした約束をこの手が覚えてる。
あの後、一花にされたことはショックだったよ。
私が仲良くしていたはずの風太郎が一花に奪われたという事実は……。
そして、この学校で風太郎と出会えた。
出会ってから、今まで勉強ができるみたいな話ばかりしてたけれど。貰ったものはそればかりじゃないよ。ちゃんと貰ったものがある。この手が、ノートが、記憶がちゃんと知ってるよ風太郎。
そして、なによりも……。
『私はみんなとは違う、一緒にしないで』
黒薔薇に居た頃、周りを傷つけたという事実は何も変わらない。
ごめんなさい、楓さん。そこはやっぱり変えることは出来ないんです。
受け入れたところで私がしたことが消えることはないんです。それでも、こうして私が彼の隣で居たいと願えているのは……。
『私は後悔なんてしてない……よ』
『最後は自分の力でソラに告白出来たから……!』
きっと、それは……。
『私は後悔していない、転校したことを』
『ありがとう』
三玖が自分に正直に生きていいと教えてくれたからだよ。
転んでもいい、何かを選ぶことが大事。それは三玖が強いからこそ、できたことかもしれないなんて言うのは簡単なことだよ。だけどね、捨てきることも出来ないんだ。楓さんが言ってたように、私は自分なりに生きてみたい。
江場さんとゴールしたことを忘れることはできない。
自分の意志で選んだゴールを……。
一花もちゃんと戦うと言ってくれた。
それをやってくれた。もうそれだけで私は充分なんだ。
「上杉さん、おふくろの味って大切ですよね!」
「は?な、なんだ急に?お前までどうしたんだ?」
まで……。やっぱりそうなんだ。やっぱり一花は凄いや。
胸の奥に染み渡るこの気持ちをどうにかするにはこうするしかない。
もう、私は逃げたくない。
覚悟を決めたんだよ風太郎。
「私は上杉さんのお母さんのことは分かりませんが、そうやって上杉さんが自分のことを話してくれるのが嬉しいんです」
「そ、そうか?珍しくはあると思うが……」
上杉さんが一歩引いたような気がする。
それはまるで分かってるみたいだった。
「上杉さん、聞いて欲しいことがあるんです」
心の雑音が酷い。
呼吸がどんどん苦しくなってる。
熱でもあるみたいな感覚が続いてしまう。
「私は……私は上杉さ……ふうたろ……うのことが……」
声が弱くなっちゃう。ダメだ、ダメだやっぱり逃げたくなっちゃう。
手には何かを持ってたような気がするのに……。
何もないように感じてしまう。何かが抜け落ちてたんだ。
「後悔したくないよ、やっぱり……」
息を漏らす、声が流れてしまう。終わりたくない。
後悔したらまた後悔する。みんなにお膳立てされてここまできたのに。
逃げたらまた泣きたくなる。また自分勝手になる。
だって、私は……。
「これからも上杉さんのことを知りたいです!勿論、過去のことだけじゃなくて」
「これからの上杉さんのことも!勉強ばかりじゃなくて未来の上杉さんのことも、今の上杉さんのことも。私もスポーツインストラクターと言う夢を持ちましたし、それに向かって何をしようとか今頑張ってるんですよ!それに……」
「上杉さんのお母さんみたいなパンケーキは作れないかもしれません!まあ全然料理は下手ですけれど……上杉さんのためならば私は花嫁修業だってなんでもしますよ!!」
風太郎からしたらよく分からない光景なのかもしれない。
誰から見ても、おかしな光景なのかもしれない。
それでも、掴みたい。
自分の答えをはっきりと……。
「上杉さんのことがいえ……」
「風太郎が好きって気持ちは……」
「誰にも負けないから!!」
結局、自分を低く見てしまってる。
これでいいんだよね私。ずっとキミに伝えたかった。
夢を与えてくれただけじゃないんだよ、スポーツインストラクターのことだけじゃない。
私にとって重要なのは……。
風太郎のことが好きっていう事実。
例え、勉強が一番不得意でもパンケーキを作るのが下手だとしても、風太郎のことが好きだよ。
キミとこうやって勉強の話だけじゃなくて、日常の話をすることが…私にとって重要なんだ。
「四葉、お前……」
風太郎がもし零奈への未練がないと語るなら、私は今と未来で勝負がしたい。
なんで自分はこんな話をしてるんだろ?と顔をしてたのは気づいてたよ。
それでも、キミに伝えたいことがある。
この場を借りて、このイベントを借りて……。
「受け取ってくださいとは言いませんが」
「これが私の想いだよ、風太郎!!」