五等分の花嫁 心の傷を持つ少年   作:瀧野瀬

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今回の話は大体リメイク前と同じになります。


第2章 五つ子との花火大会
花火


 スマホの通話音が鳴り響く……。

 起き上がると、そこには上杉から着信のようだ。

 

「……もしもし」

 

 ベッドの上で胡坐をしながら起き、髪を掻きながら「ねみぃ」と言いながら俺は電話に出る。

 

『今日空いてるか?』

 

 カーテンを開けて、太陽の位置を確認する。まだ昼は回ってねえなと思いながら、時計で時間を確認すると大体10時ぐらいであった。くっそ、寝すぎたか。

 

「空いてるぞ……」

 

 バイトのシフトを確認しながら、俺は鏡で自分の髪型を確認する。すっげえ、ボサボサじゃねえか。俺、昨日ドライヤーで乾かしたっけ……。昨日飯食って風呂入った後寝たから覚えてねえな。

 

『そうか、今かららいはと一緒にゲームセンター行くんだがお前来れるか?』

 

 上杉がゲームセンター……?俺夢でも見てるのかな。目を擦り、自分の頬を引っ張る。しかし、夢では無いようだ。続けて、ベッドに頭をぶつけるものの特にこれと言って目を覚める気配はない。

 

「夢じゃないな……」

 

『何言ってんだ、お前』

 

 上杉から激辛カレー並に辛辣な発言が飛んでくる。嫌、だってお前がゲーセン行くなんて言う日が来るなんて思ってもいなかったし。

 

「らいはちゃんとは今度遊ぶ約束もしてたし、いいぞ」

 

 結局、上杉がいるのか。まあ、いい。

 二人で遊んでみたかったけど、俺だけじゃ危ないかも知れないしな。

 

『そうか。ああ、それと五月いるけど構わないか?』

 

 五月……?なんで、五月いるんだ……?

 俺は困惑しながら、なんで五月が来るのか考えていたが分からずにいた。

 

「別にいいが……」

 

 俺はスマホを耳と肩で支えながら、下を着替え始める。もう少し早く起きるべきだったな。と後悔する。

 

「じゃあ駅前辺りのゲーセン前で集合頼む」

 

 「了解」と言って俺は電話を切る。

 そう言えば、今日って花火大会の日だったよな。五つ子どうしてんだろ、五月はらいはちゃん達とゲーセン行くみたいだけど、四つ子は四人で花火大会にでも行くのかね。

 

 五つ子達のことを考えながらも、着替えを終えショルダーバッグを持って下の階へと降りて行き、リビングにあった食事を済ませて歯を磨き家を出るのであった。

 ったく、休日だってのになんで俺あいつらのこと考えてんだろ。

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、空さんだー!」

 

 駅前のゲーセンに辿り着くと、そこにはニコニコな満開笑顔スマイルでらいはちゃんは俺に話しかけてきた。うん、やっぱらいはちゃんは笑顔が一番だな。

 

「こんにちはー、らいはちゃん」

 

 らいはちゃんに手を振り、俺は近づく……。あっ、コーラ持ってくるの忘れた。別にいいか。

 

「悪いな、休みなのに来てもらって」

 

「いいって。寧ろ、らいはちゃんと遊ぶ約束してたから有難いって思ってたところだ」

 

 何処行くかなんて決めてなかったからな……。

 

「ところで、なんで五月がいるんだ?」

 

「こいつは色々諸事情だ……」

 

 五月の方を見ながら聞くと、五月はらいはちゃんと話している様子。

 

 

 

 

「わー、こんなところがあるんだ!」

 

 らいはちゃんは物珍しそうに周りを見ている。駅前のゲーセン自体久々に来るな。偶に来るとは言え、クラスの男友達ぐらいとだし。

 

「昨日はありがとうございました」

 

 五月が俺に小声で言ってくる。二乃のことか……。

 

「気にすんな。二乃の奴俺が帰った後になんか言ってたか?」

 

「いえ、特に。ただ、かなりご機嫌でしたよ」

 

 あいつがか……。思い悩んでいたこととも吹っ切れて完全に自分らしくなれたんだろうな。ある意味、二乃の奴が羨ましいな。自分でも気づいてるけど、俺は中途半端な人間だから。

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん、これやろ!」

 

 らいはちゃんが指差ししたのは、射的。

 射的か、このタイプの奴は難しいからなぁ。と言うか、上杉の奴にやらせたら絶対理に適ってないとかって騒ぎ始めるぞ。

 

 

 

 

「これはおかしい!物理の法則に反している!」

 

 ほら、こうなった。らいはちゃん恥ずかしそうにしているし……。五月は呆れてるし、俺も多分呆れてると思う。

 

「五月、あのゲームの闇を暴くんだ!俺が指示をする!」

 

 ……何やってんだ、こいつ。

 五月は銃を持ち、景品に狙いを定める。狙ってるのは、ぬいぐるみか。あのタイプのだと落ちないだろうな。てか、こいつら近くねえか。俺邪魔じゃね?帰っていいかな。

 

 

 そして、景品は案の定落ちなかった。でも、らいはちゃんが笑っていて上杉と五月は満足そうだった。

 

 

 

 

「空さん、これやりませんか!」

 

 らいはちゃんが提案してきたのは、無情にもバスケットボールである。俺はあまり乗り気ではなかったがらいはちゃんを楽しませるためには仕方ないと思い、200円を入れる。

 

 

 

 

 

「空さん、一個も入ってない!」

 

 らいはちゃんは驚いた様子で俺の方を見る。

 

「笑うなお前ら……!」

 

 上杉と五月は、俺の方を笑ってみる。俺は球技が苦手なのである。因みに、マジで一個も入っていないのである。その後、ゲームは終了。

 

 

 結果は、らいはちゃんの勝ちであり俺は一桁の点数しか取れなかった。その後、らいはちゃんに励まされるが逆にそれがメンタルに来た。

 

 

 

 

 

 

「付き合わせて悪かったな」

 

 らいはちゃんが楽しそうに前を走る様子を上杉達が見ながら、言う。

 

「らいはには家の事情でいつも不便をかけている。本当はもっとやりたいことだってあるはずだ」

 

 上杉はいつにもなく真剣な表情をする。

 やっぱり、五月は上杉の家が借金を持っていることを知っていたか。と言うことは、上杉の家に行ったことがあるということか。

 

「あいつの望みは全て叶えてやりたいんだ」

 

 上杉はにっこりとした表情で口元を緩ませながら、らいはちゃんの方を見る。

 

「お兄ちゃん達、これやろうよ!」

 

 らいはちゃんが言ったのはプリクラだった。

 え?プリクラ?マジで言ってるの?こういうのって女同士や恋人同士で撮るって言う偏見が俺の中にあるんだけど……。流石に撮りたくねえと思った俺は、逃げようとしたとき、途端に電話が鳴る。

 

「わりぃ、電話来たらちょっと外出てくる!」

 

「逃げるな、空!」

 

 誰だが知らないが、助かったぜ……。ゲーセン前で電話主を確認すると、バイト先からだったのである。なんだ、こんなときに思いながらも電話を出るとシフトの確認であった。

 

 

 

 

 

 

 とりあえず、電話を終えて俺は自販機で水を買うと上杉達がゲーセンの中から出て来る。

 

「はぁ……せっかくの日曜日が潰れちまった」

 

 独り言を言いながらゲーセンから出てくる上杉。満足したのか、行進しながら歩くらいはちゃん。何か急いでいるように周りを見る五月。

 

「空さん、今度来るときは一緒に撮りましょうね!」

 

 ……らいはちゃんの笑顔には逆らえない。俺は渋々了承する。上杉はせっかくの日曜日が潰れたと嘆いていたが、「まだ夜があるな」と言いながら歩いていた。

 

「お前らも夜は勉強しろよ?」

 

 上杉に催促される五月。五月は「あっ……」と思い出したように言う。この様子、五月の奴は課題やってない感じだな。五月は上杉から逃げようとしたが、ストーカー上杉風太郎は五月に近づいてくる。

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん、五月さんが四人いる」

 

 水を飲みながら確認すると、そこには四つ子の姿があった。そして、上杉と五月は銅像のように固まる。四つ子はそれぞれ特徴的な表情をしており、俺は笑いそうになっていた。四つ子の奴ら、浴衣着てるのか。普通に似合ってんな。

 

「わー、上杉さんの妹ちゃんですかー?初めましてー!これから一緒にお祭り行きましょう!」

 

 四葉は腰を低くしてらいはちゃんに話しかけている。らいはちゃんは迷っていたが、すぐに返答が来た。

 

「はい!」

 

 その言葉に、上杉が反発できるはずも無く上杉の勉強欲は無くなったと思われたが……。

 

 

 

 

 

 

「でも、その前にお前らは課題を終わらせろ!!」

 

 俺とらいはちゃん以外全員が固まり逃げ出そうとするが、すぐに上杉に捕まり強制勉強が始まるのであった。その間、らいはちゃんと上杉は祭りを楽しみ、俺は五つ子共が課題を終わらせるまで何故か二乃達の家で監視することになった。

 

「まぁ、なんだ……。分からんことあったら教えてやるよ」

 

 花火楽しみにしてるだろうしな。しかし、五つ子は全員手を挙げてきたのである。俺はそれに口をあんぐりと開けてしまい、驚いていた。一花、二乃はともかく三玖、四葉はなんでそんな申し訳なそうに手を挙げているんだ……!後、五月お前勉強してるんじゃなかったのか……!

 因みに、二乃が同じクラスなんだから課題見せろと言ってきたのだが、取りに行くのがめんどくさいと言って諦めさせた。

 

 

 

 

「なんで俺がこんな役目やらされてんだ」

 

 本来であれば、俺がらいはちゃんと祭りを楽しむ予定だったのに、お前じゃ危ないからお前が見張ってろと言われたのである。

 

 

 

 

 

 

「後、先着1名様には今日俺が一日おごってやる」

 

 と言うと、二乃達はお互いに見合ってシャーペンを走らせたのである。どうやら、これはかなり効果があったようだ。だが、此処で俺はあることを思い出す。もし、五月が一番手に終わってしまったらどうしよう。アイツ絶対食に関しては節操ないから絶対止まらないぞ。

 

 

 

 

「奢りと言うのならば、私は負ける訳にはいきません!」

 

 五月が眼鏡を掛け、スラスラとペンを進め始めた。いや、頼むからお前が一番手はやめろ。金が死ぬ……!

 

 

 

 

「うーん、何やろうかな……」

 

 屋台で何をやろうか決めているのか、考えているのか。考え事をしながら四葉は課題を進めている。他の姉妹よりはペースは劣っている。

 

 

 

 

「そう来たか。じゃあ、尚更頑張らないとね」

 

 一花が俺にしてはいい案だとでも言いたそうにしながらペンを進めている。三玖、二乃の速度には劣っている。二乃と、三玖はそれぞれ無言で問題を解いていた。そして、この勝負の行方は……。

 

 

 

 

 

 

「終わった、私が一番乗り」

 

「くっ……悔しいけど二番手よ」

 

 順位の結果は、三玖が一番手、二乃が二番手、五月が三番手、一花、四葉の順であった。どうやら、この勝負三玖の勝ちと言うことか。

 

「分かった、じゃあ三玖。今日は俺が奢ってやる。頑張ったな」

 

「うん、ありがとう。ソラ」

 

 三玖は嬉しそうに、ニ乃は何処か悔しそうな表情をしていたがすぐにいつもの顔に戻っていた。

 

「じゃあ、早く戻ろうか……!」

 

 一花がそう言い、姉妹達と俺は家を出た。

 

 

 

 

 

 

 提灯、前を通って行く人々、屋台にはお客さんが集っている。うん、花火って感じだな。

 

「祭り何時からだっけ?」

 

「19時から20時」

 

 どうやら後1時間はあるようだ。それにしても、こいつらにしてはかなり早く課題が終わったな。ご褒美を付けたとは言え、かなりの速さだ。

 

 

 

 

「意外に早かったな」

 

 公園のベンチに座り始める上杉。らいはちゃんに振り回されたのか、若干疲れている様子だ。俺はその隣に座り、五つ子の達の様子を見る。

 

「ああ、俺もそれは思う。あいつらも花火楽しみにしてたんじゃねえのか」

 

 上杉は「そんな楽しみか……」みたいなことを独り言で言いながらも神妙な表情をする。

 

 

 

 

 

 

「なんですか?その祭りに相応しくない顔は?」

 

 ……五月か。

 五月は、赤をベースとした着物か。五月が赤か、ちょっと意外だな……。

 

「それ俺のことも言ってんのか?」

 

「いえ、貴方ではなく上杉君のことですよ」

 

 俺含まれてないのか。てか、こいつ食べ物もう食べてるし。

 

「誰だ、お前……?」

 

 上杉が真顔のまま心底どうでもいいみたいな表情を見せている。

 

「いや、どう見ても五月だろ……」

 

 喋り方と上杉に君を付ける奴なんて五月しか居ないしな……。

 

「ただでさえ顔が同じでややこしいんだ、髪型を変えるんじゃない」

 

 案の定、デリカシーのない発言をする。もうちょっとこう言い方ってもんがあるだろ。

 

「私がどんなヘアスタイルにしようが勝手です!」

 

 ご尤もな意見だ。

 

「駄目だよ、フータロー君。女の子が髪型を変えたならまず褒めてあげなきゃ。もっと女子に興味持ちなよ~」

 

 一花特有の揶揄い口調で言う。ぶっちゃけ、それ上杉に一番ないものだぞ。

 

「そうだ、フータロー君。ソラ君。浴衣は本当に下着を着ないのか興味ない?」

 

 馬鹿な俺は思わず、息をごくりと飲んでしまう。

 

「それは昔の話だ。知っている」

 

「本当かなぁ?」

 

 上杉の耳元で囁きながら、浴衣を見せようとする。

 

 

 

 

 

 

「ウッソ~!冗談だよ、冗談!」

 

「チッ……」

 

 舌打ちをしながら俺は水を一気に口の中に入れる。

 

「おっ、空君はどうやら期待してたみたいだねぇ~。フータロー君はどうだった?」

 

「興味がない。あっちに行け」

 

 ウザいと顔にでも書いていそうな上杉が再び溜め息を吐いていた。一花はその後、電話が掛かって来て出ている。騙された……。俺は立ち上がり、四つ子達の方を近づくと、三玖が文句ありげに俺の方を見ている。

 

 

 

 

 

 

「ソラ、切腹して」

 

 只ならぬオーラを放ちながら、三玖は言う。これは本気で言っているな。ご機嫌取りしないと怒られるパターンだ。

 

「すまん……」

 

 俺は三玖に謝る。それから、三玖と共に行動しようとするが……。

 

 

 

「あんた達、勝手に何処行こうとしてるのよ。一花も置いて行くわよ」

 

 二乃が俺達を呼び止め、仕方なく俺達は二乃に着いて行くことにする。

 

「ごめん、電話……!先行って……!」

 

 何か緊急の電話だろうか。俺は二乃のことを追いかけながら不思議そうに思っていた。それから、らいはちゃんと、四葉が帰って来た。らいはちゃんは嬉しそうにしながらスキップをしていた。何かいいことでもあったのだろうか。

 

 

 

 

「ねぇねぇ、お兄ちゃん!四葉さんが取ってくれたの……!」

 

 らいはちゃんが笑顔で見せてきたのは、いっぱい金魚が入ってる二つの袋であった。四葉の奴、どうやってこんなに取ったんだ。普通に考えたらこんなに渡す店主も何考えてんだ……?

 

「もう少し加減できなかったのか……」

 

 上杉がどうやって飼おうか……。仕方ねえ、上杉に水槽なんて買ってやる金なんてないから俺が買ってやるか。

 

「らいはちゃんを見ているとプレゼントしたくなっちゃいました!」

 

 四葉が「えへへ」と笑いながら、らいはちゃんの頭を撫でている。

 

「あと、これも買って貰ったんだ……!」

 

「それ今日一番要らないやつ……!」

 

 らいはちゃんが見せてきたのは、打ち上げ花火や線香花火が入ってるものだ。確かに、今日は絶対に使い道ねえな……。

 

「だって、待ちきれなかったんだもん」

 

「いつやるんだよ。四葉お姉ちゃんにちゃんとお礼言ったのか」

 

 四葉お姉ちゃんと言う言葉に何処か良い響きを感じていたのか。四葉が感動している。

 

 

 

 

 

 

「四葉さんありがとう……!大好き……!」

 

 こんな満開な笑顔で言われたら誰だって可愛いと思うこと間違いないだろう。

 

「らいはちゃん可愛すぎます、私の妹にしたいです!」

 

「待ってくださいよ、もし私が上杉さんと結婚すれば合法的に姉と妹に……!」

 

「アンタ自分で何言ってんのか分かってんの!?」

 

 顔を真っ赤にしながら正気を取り戻した四葉……。

 

 

「言っておくけど、四葉に変な気起こさないでよね!」

 

 上杉に迫り、二乃は忠告する。上杉はチキンだからそんなこと出来ないと思うぞ。俺もだけど。

 

「そして、ソラ……!アンタもよ!」

 

 いや、俺別に四葉のことをそんな風には思ってねえから……。

 一応返事を返した。

 

 

 

 

「ニ乃、お前何処に行こうとしてるんだよ」

 

 人通りを避けながらも、俺が二乃に追いつく。

 

「お店の屋上貸し切ってるから、そこに行くのよ」

 

 ニ乃が平然とまるで当たり前かのように貸し切りと言う言葉を使ってきた。

 店の貸し切りって……。流石、石油王の娘……。

 

「それならさっさと行こうぜ。人が多すぎて溜まったもんじゃない」

 

 上杉の意見には一理ある。人通りもかなり多くなってきたところだしな。

 しかし、ニ乃は先に行こうとする俺と上杉の袖を無理矢理引っ張ってこう言った。

 

「待ちなさい、折角お祭りに来たのにアレも買わずに行く気?」

 

 俺と上杉が顔を見合って「あれってなんだ?」とほぼ同時で言った。

 マジであれってなんだ?定番の奴か。

 

「あっ、そう言えばアレを買ってないねー!」

 

 いきなり戻ってきた一花が割り込むようにして言った。それから、四葉と五月が同時に声を出すのであった。

 

 

 

 

 

「アレってなんだよ」

 

 かき氷とか、たこ焼きとか、りんご飴とかメジャーなものか?

 

「せーの……!」

 

 

 

 

「かき氷」

 

「りんご飴!」

 

 真ん中に入れた一花がかき氷と言い、さも当然かのようにりんご飴と答えた二乃。

 

「人形焼き」

 

「チョコバナナ……!」

 

「焼きそば!」

 

 そして、元気よくチョコバナナと答えた四葉。今にも涎を垂らしそうな五月が焼きそばと答えた。人形焼きか、珍しいもの食べるんだな三玖の奴。三玖らしくていいと思うけど。

 

 

 

 

 

 

「ありがとうね。ソラ」

 

 人形焼きとひょっとこの仮面を買ってあげたお礼を言ってくる。俺は、イカ焼きの半身を食べ終えながら、三玖を見る。

 

「いいよ。そういえば、さっき言ってた。切腹って冗談だよな?」

 

 

 

 

「……冗談」

 

 何を考えていたのかは分からないが、三玖は滅茶苦茶間を空けて言う。割と本気で思ってたんじゃないのか……?これ……?そんなことを思いながらも、三玖に着いて行くと四つ子達と合流する。

 

 

 

 

 

 

「なんなんですか……!あの店主……!」

 

 どうしたんだ?と思い話を聞いてみると、なんでも店主の目には一花が滅茶苦茶可愛く見えたらしくオマケを貰えたらしい。しかし、五月だけ何故か貰えず納得が行かなかったようだ。

 これ、五月がもっと食べたかったのか、それとも普通に可愛いと言われたかったのか分からんのだが……。こういうときのフォローは慣れているのだが。如何せん言うのが、恥ずかしいからパスだ。

 

「複雑な五つ子心……」

 

 三玖が若干なフォロー?をして、四葉とらいはちゃんは輪投げに行こうとしている。因みに、五月は次の食べ物屋に行こうとしている。やっぱ、こいつ食べたかっただけじゃねえか。

 

 

 

 

 

 

「あんた達、何やってんのよ!」

 

 二乃が四葉達を止めて、先に進もうとする。気合入ってんな、あいつ……。よっぽど、花火を楽しみにしていたのか。

 

「なんであいつも、お前らもそんなにテンション高いんだ?」

 

 

 

 

 

「花火はお母さんとの思い出なんだ」

 

「お母さんが、花火が好きだったから毎年揃って見に行った。お母さんがいなくなってからも毎年揃って……」

 

 そういうことか、家族が大事な二乃が一番張り切っている理由も分かるし、他の四つ子も早く課題を終わったことにも納得できる。

 

「私たちにとって花火ってそういうもの」

 

 上杉は三玖の話を聞いてそういうことか、と小声で言っていた。そんな話を聞いていると、目的地に近づくほど近づくほど人が多くなっていく……。

 

 

 

 

 

 

「まずいな……」

 

 しまった、五つ子達を見失った。上には提灯があるとは言え、ほぼ人のせいで灯りが意味を為していない。人混みもどんどん増えてきているし、花火もそろそろ始まるみたいだ。このままだと後ろから来た奴らに押し出される。

 

 

 

 

「痛っ!誰よ、今足踏んだの!」

 

 この声は……。

 

 

 

 

 

 

「に、ニ乃……!手を伸ばせ……!」

 

 二乃に手を伸ばし、俺の声に気づいたのか二乃が俺の手を掴んできたのだ。

 

「ソ、ソラ……!」

 

 手を掴んだ二乃であったが、すぐに恥ずかしくなったのか。らいはちゃんが上杉の袖を掴んでいたように二乃も俺の袖を掴んでいた。

 

「そ、袖ならいいでしょ?」

 

 お互いに顔を真っ赤にさせて二乃が俺に案内をする。俺が先に出てようとしたが、二乃に「あんた、場所分からないでしょ」と怒られた。確かにその通りだ。

 

「あんま張り切り過ぎて、無理すんなよ二乃」

 

「分かってるわよ……」

 

 二乃は、俺に「分かったふうな口を聞いて」とか思ってるんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……着いた」

 

 二乃は急ぎ足になり、お店の屋上へと辿り着く。此処からだとまた絶景だな。周りの景色を見ていると、二乃は固まりだし「ヤバッ」と言い出す。なんかあったのか……。

 

「おい、二乃どうした?」

 

「その……」

 

 二乃は昨日のように歯切れが悪い。なんでだ……?

 

 

 

 

 

 

「よく考えたら、お店の場所……。私しか知らない……!」

 

 二乃が慌てている。どうやら、この場所は二乃しか知らないようだ。誰も知らないとなると、他のみんなはハグれたことになる。三玖と上杉は一緒に居るだろうし、らいはちゃんは四葉がついてるから、多分大丈夫だ。方向音痴っぽそうだから、ちょっと不安だが。一花、五月は何処に行ったのかもわからない。

 

「私、電話してみる」

 

 しかし、一花、五月とは繋がらず……。四葉には掛かりどうやららいはちゃんと輪投げ屋に居るようだ。今年の輪投げ屋は二軒しかなかったはずだ。どちらかに行けば四葉に会えるだろう。そして、三玖は案の定上杉と居るようだ。

 

「一花は繋がらないし、五月は方向音痴なのに何してんのよ……!」

 

 五月って方向音痴だったのか……。四葉と最初に出会った時のイメージが強すぎて四葉が方向音痴だと思っていたが……。

 

 

 

 

 

 

「しょうがねえ、俺が全員探してくる。お前は此処で待ってろ……」

 

 花火は既に打ちあがっている。タイムリミットまで、残り58分……。上等だ、やってやろうじゃねえか……。こういうのは燃えてくる。

 

「それと、これ持ってろ」

 

 お祭りの屋台で貰ったお守りを二乃に渡した。

 

「なによこれ?」

 

「よく分からんが、それを持っていると良いことが起きるらしい。胡散臭いとは俺は思うが、それで本当に起きるなら面白いだろ……。だから、お前にやる」

 

 それは、屋台を俺と三玖が周っている時にもらったお守りだった。三玖は、なにやら買ったお守りを大事にしていたが俺は所詮こんなもんは気休めにしかならんと思っている。

 

「分かった。じゃあ、これに適当に五つ子全員が揃うと願っておくわ」

 

 二乃は念じるようにして言う。

 

「ああ、そうしてくれ。それに、お前ら見たいんだろ。五つ子で花火を……」

 

 次々に打ちあがる花火、その花火を背にしながら俺が言った。その花火に決意のようなものを感じさせながらも……。

 

「なんで、アンタがそれを……」

 

「聞いた話さ。そんだけ大切な思い出があるなら、俺が絶対に叶えてやるよ」

 

 

 

 

「そう、なら頼んだわよ。ソラ……!」

 

 

 

 

 

 

「ああ、任せろ……!」

 

 

 

 

 

 

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