五等分の花嫁 心の傷を持つ少年   作:瀧野瀬

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投稿に遅れた分、二話投稿させていただきます。
もう一話は21時に投稿させていただきます。


暗雲な心

 フータローとソラの話を盗み聞きしていたあの日から一日が経った……。

 結局、あの日私はどうすることも出来ず、ただソラや他の姉妹に気づかれないようにするためにただ作ったような顔を見せては無理をしていた。ただ、一花にはなんとなくだけど気づかれていたような気がする。無理していることに……。

 

 本当は、どうにかしたいと言う気持ちでいっぱいだった……。そんなことを考えていると、ソラに言われた色んな言葉を思い出す。まるで、思い出を思い出せるように……。

 

 

 

 

「ああ、好きなんだろ武将。だったら、堂々としてればいいんだよ。好きなもん好きって言って何が悪いんだって」

 

 あの言葉を今でも私は思い出す。初めて自分自身を見せたときだった。武将が好きだなんて他の皆には言えないし、理解されないだろうと私は思っていた。でも、ソラは私を笑ったりなんかしなかった。なんでだろう?と考えたこともあった。でも、私には分からなかった。ただ、ソラだからって言うのもあるのかもしれない。

 

「俺の大切な友達だ……!」

 

 花火大会のあの日、一花と間違わられた私を助けてくれたのはソラだった。あのときのソラはカッコよかったと私は思う。なにより、私にとって大切な友達と呼ばれたことが嬉しかった。私はソラのことを友達だと思っていた。ソラが私を友達だと思っていなかったら、怖かったからだ。だから、私は嬉しかった。

 

 でも、そんな幸せなんてものは長くは続かなかった。

 

「内容は、一週間後の中間試験。もし、五つ子のうち誰か一人でも赤点を取ったら俺には家庭教師を辞めてもらう。だそうだ」

 

 フータローやソラには悪いと思っている。勝手に盗み聞きしていたのだから。私はソラが居なくなった後、少し不安になって一花達に用事を思い出したから行ってくると言って、ソラの後を追いかけていた。

 

 フータローの言っていたあの言葉、ソラやフータローの表情を見る限り嘘なんかじゃない。お父さんが言っていたことだ、嘘の訳がない。電話して、なんであんなことを言ったのか確かめてみよう。私は誰にも見られないように家からベランダに出てお父さんに電話を掛ける。

 

『三玖君か、何か用かい?』

 

 いつもの暗めの声でお父さんは私に言う。

 お父さんなのに、私はその声から威圧のようなものを感じ、私の体は震えていた。その震えを手で押さえながら、私は電話を続ける。

 

「聞きたいことがあるの……」

 

「フータローに付けたあの条件本当……?」

 

 聞きたい事を聞くまでに数十秒ぐらいの間があったような気がする。

 

『単刀直入に言おう、事実だよ』

 

 無慈悲にも間髪入れずにお父さんは答えてくる。分かっている、お父さんが嘘をつくなんて訳が無いから。でもお父さんの口から今一度真偽を知りたかった。

 

「なんであんな条件を……?」

 

『この中間試験で実力の方を見せてもらう為だ。あの程度のハードルを越えられないのであれば、彼に家庭教師としての資格はない』

 

 中間試験、1人でも赤点を取ればフータローは家庭教師として失格。しかも、もう一週間しかない。フータロー達は頑張ってくれているけど、私達の実力じゃそんなの無理に決まっている。

 

『これも親としての役目だ。分かってくれたまえ』

 

 お父さんはそう言い、電話を切る。電話が切れた後、私の中の心臓の鼓動が激しくなり、胸が締め付けられるほど痛くなっていた。どうにかしなくちゃ、あの時と同じ気持ちが私の中に湧いていた。すぐに家の中に入ると、五月がいた。

 

 

 

 

 

 

「三玖、すいません……。ちょっと外で話しませんか」

 

 五月は暗い顔をしておりいつもと違った様子だった。さっきまでお父さんと話していたことを聞かれていたのだろうか……。誤魔化そうにも聞かれていたのなら真実を話すしかない。できれば、私以外にこのことを知ってほしくはなかったけど……。

 

「盗み聞きしていてすいません、三玖。先ほどの話上杉君のことですよね」

 

 一旦、家の外に出てオートロックの扉の前に私と五月は行く……。そして、誰も周りに居ない事を確認してから五月は話をする。やっぱり聞かれていたようだ。こうなったら、正直に話すしかない。

 

「うん。もし私達が5人が一人でも赤点を回避できなかったらフータローは家庭教師を辞めてもらうって」

 

「やはりですか……。私も上杉君の様子がおかしかったのでお父さんに電話したんです」

 

 となると、五月はフータローがクビになることを知っていたということ……。

 

「そのときにお父さんは言っていました。上杉君を辞めさせると……。それと、これは恐らく推測ですがもし上杉君が家庭教師を辞めることになったら、脇城君は二度と此処には来れないでしょう」

 

 そんなことは多少分かっているつもりだった。フータローが辞めるということになれば、それは同時にソラも辞めさせると言うことになる。それにお父さんのことだ。既に、ソラのことは知っているに違いない。

 

「やっぱり、そうなんだ……」

 

「三玖はどうしたいんですか……?」

 

 勿論ソラとフータローを辞めさせたくない。フータローは一生懸命あんなに私達に勉強を教えてくれるているのに無駄にしたくない。ソラも頑張ってくれているのに努力を無駄にはしたくない。だから、私の答えなんてものは決まっている。

 

「私は二人を辞めさせたくない。だから、五月フータローの授業を受けて欲しい」

 

「それは……」

 

 五月はフータローの授業を受けて欲しいと言う言葉に、迷っている様子だった。五月の表情を見れば、フータローと何かあったのかなんてものはすぐに分かった。それでも、私は五月にフータローの授業を受けて欲しいと思っていた。

 

「五月は……らいはちゃんが悲しんでる姿を見たいの?」

 

「……!?」

 

 らいはちゃんと言う言葉を出すと、五月は表情を歪ませ、まるで痛いところを突かれたかのような表情をしている。

 

「五月は花火の日、らいはちゃんと楽しそうにしていた……。五月はらいはちゃんのことを気に入っているんでしょ?そのらいはちゃんが悲しむ姿を見たいの……?」

 

 五月はただただ黙っている。五月の性格ならフータローと喧嘩して意地を張って一人で頑張ろうとしているはずだ。

 

「どうしてもフータローと勉強したくないなら私に考えがある……」

 

 五月は「考え……?」みたいな表情をしている。

 

「私と勉強しよう。二人で」

 

 五月がフータローと勉強するのを拒むならこうするしかない。

 

「無理です、二人ではどうやっても……!」

 

「だけど、少しでもフータロー達の足枷を緩くする為には協力し合うしかない」

 

 二人で勉強したところで赤点を回避できるなんてものは理想でしかない。無理だと言うのは私は理解している。だから、私は……。

 

「それに、家庭教師は一人だけじゃない……」

 

 迷っている五月の腕を無理矢理引っ張り、私は家に連れ戻す。

 

 

 

 

 リビングに行くと二乃がいた。二乃がソラ達を玄関まで追いやろうとしていたが、一花の言葉によって止められる。私はその姿を見ながら「はぁ……」と安堵の息を吐く。それからして、再びリビングに行こうとしているソラに話しかける。

 

「三玖と五月の勉強を……?」

 

 ソラはフータローに確認を取る為か、フータローの方を見る。フータローは無言で了承する。

 

「分かった」

 

「じゃあ、お願いするねソラ」

 

 リビングのテーブルの上に置いておいた勉強道具を持つ……。五月は周りをキョロキョロしながらどうしようか?と考えている。

 

「わ、私はまだやるとは……」

 

 五月はまだ悩んでいる様子であった。どうやって五月を勉強させようか?と考えていると、そのとき四葉に言われた言葉を思い出す。

 

「大丈夫ですよ!2人よりも4人での方がもっと勉強楽しくなりますよ!」

 

 あの言葉を言われて、私は皆で勉強したいという気持ちが強くなったんだ。だったら、五月だってそう思ってくれるはず……。

 

「一人より、皆でやった方が楽しいと思う。だから、行こう?五月」

 

 私がかつて四葉に言われた言葉を言うと、四葉はこっちを見て笑う。五月は、その言葉を言われて少し迷っていたが、私は構わず五月の腕を握り私の部屋に連れ込む。

 

「す、少し強引じゃ……?」

 

「こうでもしないと、五月が来ないから」

 

 私の部屋に入れて、五月の腕を放すとそう言われる。

 多少無理があっても、五月の心はあの言葉を聞いて揺らいでいたから、問題はないと思う。

 

「それに、二人だけで無理なことでも三人ならどうにかなるよ。五月だって、本当は一人で勉強することに限界を感じているんでしょ?」

 

「それは……そうですが……」

 

 やっぱり、「二人では無理」と言っていたから一人での勉強に限界を感じていたのは間違いなかった。五月のことだし、一人で頑張っていたと思う。

 

「それに先生も丁度来たみたいだしね……」

 

 部屋に入ってきたソラを見ながら言う。 

 それからして、私達は勉強を始める。五月は渋々始めていたようだが、私なんかよりよく出来ていたと思う。そして、勉強を始めて一時間近く経ってから、五月はある質問を投げかけていた。

 

 それは、私達が赤点回避をできるかどうかのことだった……。ソラは最初は嘘をつこうとしていたが、五月に本当のところを言って欲しいと言われ、ソラはすぐに本当のことを言う。だが、ソラは私達のことを信じていると言ってくれた。

 

 嬉しかった……。でも、同時に心の奥底では無理だと言う自分がいた。なんでかは分からなかった。

 

 

 

 

 

「ソラ、私達大丈夫かな?」

 

 勉強をある程度終えて、休憩時間に入った私は部屋のドアノブの触れようとしたが、不安になってソラに聞く。

 

「心配すんな、俺達が頑張ってお前らの赤点回避をしてやるから」

 

 すぐに何のことか理解したソラが私を安心させるために笑顔で答える。

 その笑顔を見た瞬間、私の中で何かを思い出した。いや、ソラに信じると言う言葉を使われた時点で思い出していたんだ。

 

「うん、だよね……」

 

 ドアノブに触れて、一気に扉を開けて私はソラに顔が見えないようにしながら扉を開ける……。私が、思い出したこと……。

 

 

 

 

 

 

 それは、他の姉妹の誰よりも私は劣っていることだ……。

 そうだ、所詮私程度にできることなんて他の四つ子にできることだ……。

 

 

 そう思った瞬間、私は気づいてしまったんだ。私がいる限り、五人で赤点回避なんて無理に決まっているって……。どれだけフータローやソラが頑張ってくれても……。私の心は暗雲に包まれ、闇に包まれようとしていた。

 

 

 

 

 

 

「待ってください、三玖!」

 

 外に出ようとしている私を見て止めようとする五月。私は五月の顔を見ずにドアノブに触れ続けている。怖かった、五月の顔を見るのが……。見てしまったら何かにまた気づいてしまうんじゃないかと思ってしまっていたからだ。

 

「五月……。もし、ソラが私のことを追いかけようとしてきたらそのときは止めて欲しい」

 

 

 

 

 

「後、力になれなくてごめん……」

 

 止めようとしてくる五月の声を私は無視して、逃げるように出て行った……。

 

 

 

 

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