「四葉か……。あっ、俺は脇城空ね」
奴のことを思い出していた俺であったが、どうにか深呼吸をして落ち着かせていた。
大丈夫だ、自己紹介をしただけだ。気にするな……、俺。
「それにしても、広い校舎ですね!思わず迷っちゃいました!」
こいつ等って確か、お嬢様学校で有名な黒薔薇女子に通っていたんだよな?あっちの方が大きいと思うし、迷うと思うんだがな……。
「そんなに大きな校舎か?うちの学校って……」
まあ、確かに普通の学校に比べれば大きな校舎かもしれないけど……。
「はい、かなり大きいですよ!」
ふーん、黒薔薇女子に通っていた子がいうんだから大きいのかなとちょっと自慢げに思っていた。
「さて、此処だな学食は」
そこに着くと既に学食で食事を行っている生徒が何人もいた。上杉の奴は……何処だ?
「あのもし良かったら、私と食事しませんか!?」
食事か……。さっき、あいつとダブって見えちまったしそれは流石に厳しいだろうな……。
「悪いが……それは……」
「あっ、四葉じゃん」
四葉は、後ろを振り向き俺も後ろをチラッと見るとそこには四葉とほぼ同じ顔をした女が四葉に手を振っていた。そして、その後ろにヘッドホンをつけた女と、中野二乃か……。
「その隣にいる男子は……ふーん四葉も積極的だねぇ」
あっ、この女の人ヤバいタイプの人間の人だな。なんとなくだが、分かる。
「ずばり、四葉ちゃんのどんなところが好きですか!?」
やっぱり来やがったか……。よく女子同士のコイバナでヒューヒューとか言ってそうな人だな。
「わ、私と脇城さんはそんな関係じゃないですよね!!」
「そ、そうだな……。さっき出会ったばかりで学食分からないから教えてくれって言われただけだ」
「なんだぁ、そんなことか」
どうやら誤解は解けたようだ。お互いにお互いを見合って顔を汗ダクダクになりながら俺達は答えた。
「四葉は結構優しいところあるから、落ちたら案外早いよ。困ったことがあったら、お姉さんに相談しな」
違うと言っているのに、根深さこの人ヤバいな。
だが、これではっきりと分かったことがある。恐らくこの人は長女だろう。見た目的には一番長女っぽいしな。
「一花、こんな地味みたいな奴なんて放っておいて早くお昼にしよ」
「私もお腹空いた」
一瞬だが、挑発に乗りそうになってしまっていた自分がいる。そうだ、此処で相手の挑発に載ったら思う壺だ。それに、これ以上この女子共に関わる必要なんてない。それからして、俺は四葉と別れを告げて上杉を待っていた。そして、何気に判明したがあの女子、名前は一花と言うらしい。一花、二乃、四葉……。もしかして、最初の漢字数字付くのか?全員……。
「よ、よぉ……上杉」
今の俺の表情は相当なものになっていたかもしれない。
「どうした?何かあったのか?」
「いや、何もなかった」
自分の顔色なんて鏡でも見なければ分からないと思うが、きっと顔は真っ青になっていること間違いないだろう。
「焼肉定食、焼肉抜きで」
「毎回思ってたがお前、焼肉定食から焼肉抜くってハンバーガーからパティ抜くのと一緒だぞ」
こいつの家が貧乏なのは知っていたが、此処まで来ると哀れになってくる。勿論、上杉はそんなこと嫌いっているからしたら怒るだろうが……。
「これが安いんだよ」
確かに焼肉定食から焼肉抜いたら安くなるし、おしんことみそ汁付くけどよ……。いやぁ、それやったらもう焼肉定食じゃねえだろ。
「最早何もいうまい。あっ、俺はかつ丼とコーラで」
やっぱ、コーラにかつ丼は定番だよな……。
「それで、あの転校生とは仲直りできたのか?」
「それがまだなんだ」
何をやってるんだが、上杉さんは……。
まあ、謝り辛いと言うこともあるだろうし、向こうもそういう機会を見せてくれないのだろう。
「これから仲直りするところだ」
「あー、そんな上杉に悲報があるぞ」
俺が指すと、その方向にはさっき迷子になっていた四葉と、以下愉快な仲間達がいた。
「友達と食べてる!!」
「すみません、席は埋まっていますよ」
うわぁ、えげつねえ……。あの女子わざと言いやがった……。仕方なく、俺達は男子2人で食べて上杉の為に作戦を練ろうとしていた。
「あれ、行っちゃうの?」
上杉は先ほど俺を揶揄ってきた女子に絡まれている。
「あっ、キミさっきの子じゃん!四葉と食べなくていいの?」
「あー、俺この勉強馬鹿と飯食べなくちゃいけないんだ」
今このメンツで飯を食べるなんて恐れ多い。それに、上杉と俺がパーティーINすることで一部のメンツの空気が崩壊しそうな気がする。とにかく、此処は一時撤退が妥当だ。そもそも、女子と一緒に食べるなんてことをしたらその時点で俺の精神が壊れそうだ。
「ふーん、そうなんだ?キミはもしかして五月ちゃんに興味があるのかな?」
となんやかんやあって上杉の奴も俺がやられたことを先ほどの女子にやられていた。
「さっきは散々だったな、空」
「ああ、どうやら仲直り作戦第一回目は失敗だな」
……いや、仲直り作戦第一回目ってなんだよ。二回目もあんのかよと心の中で自分にツッコミを入れていた。
「しかし、参ったな。これじゃあ後は放課後だけだ……。なんとかして、なんとかして謝らなくちゃいけないと言うのに……」
「ったく、意地張って昨日のうちに謝らないからこんなことになるんだぞ」
「仕方ないだろ?こうなるなんて思ってもいなかったんだからな」
だとしても、あの発言はねえだろ……。
「まあ、口は災いの元だ。今度から気をつけ……何してんだ?お前」
机の真ん中辺り手を置いてこっそりと顔を出している四葉が俺達何か言いたげそうにしながらこちらを見ていた。
「あっ、脇城さん!上杉さん!やっと気づきましたね!」
「ん?なんで俺の名前を?」
「いや、そりゃあ俺がずっと上杉って呼んでたから知ってるに決まってるだろ。それにお前有名だぞ。学校一の陰キャって」
俺の知り合い曰く上杉が学校一の陰キャと呼ばれているのは、勉強馬鹿であり俺と居ないとき以外は一人を満喫しているからである。
「そうじゃないですよ~。ジャーン!」
なんだこれ?100点の解答用紙と、0点の解答用紙?
「さて、上杉さんに質問です!どっちが、上杉さんのでしょうか!?」
これは、普通に100点の解答用紙だな。こいつが0点なんて、天変地異が起きらない限りありえない。
「右だろ」
まあ、当然な結果である。
「正直者ですね!両方差し上げます!」
「いらねぇよ!」
ナイスツッコミだな……。
「因みに、この0点のテストは私のですよ!」
「よく自分で堂々と言えたな!ある意味尊敬するわ!」
俺も流石に今のは引くわ……。自ら0点宣言する奴なんて見た事ねえからな。
「ところで、上杉拾って貰ったら言うことあるんじゃねえのか?」
「……ありがとう」
彼女は「いえいえ」と言ってにこやかな笑顔で返していた。その笑顔を見た瞬間、また俺はアイツのことがチラついていた。落ち着け、目の前にいるのはあいつじゃないんだ。
「それにしても、先ほどはありがとうございます!」
「ああ、全然いい。気にしなくて」
取り残された俺は、四葉が前に座り少しだけ話を始めた。
「それにしても、お優しいんですね!困ってる人を見かけると、助けたくなっちゃう人なんですか!?」
「……まあ、そうかな。でも、人ってそんなもんだと思うよ。困っている人が助けたくなっちゃうそれが人だと思うよ」
実際、そう思って行動に起こせない人なんてのは結構いるけどな。でも、見ていないのと見ているのとじゃ違うと俺は思う。見ていた以上なら、俺は手伝うべきなんじゃねえのかなと思っているんだ。なんか恥ずかしいことを言ってんな、前言撤回。今のは無しだ。でも、だからあのときも俺はアイツに騙されたんだろう。
「へぇ、凄いですね!私もよく困ってる人を見ると助けたくなっちゃうんです!」
「そうなんだ?でも、確かに四葉って優しい人っぽそうだから何となくそんな感じがするな」
褒められていると言う自覚があったのか、四葉は嬉しそうにえへへと笑っていた。なんだろうか、この感覚……。昔、味わっていたこの感覚……。あの時と一緒だ。
「えへへ、そうですかね……」
四葉が嬉しそうにしながら、頭を掻いていた。褒められるの慣れてないんだろうか。
「そうだ、もし宜しければ今日のお礼をしてもいいですか!?」
……そういえば、アイツと出会ったときもこんな感じだったか。虐められているアイツを見て、俺が助けて次の日から俺が虐められるようになったんだっけ……。でも、それでもアイツは俺のことを好きでいてくれたから俺は俺で居られたんだ。そう、裏切られるまでは……。
「脇城さん聞いてますかー?」
意識が遠のいていたのか、四葉が手を上下に揺らしながら俺のことをチラチラと見ていた。
「……悪い、それでお礼のことだけど別に気にしてなんかいないから。いいよ」
俺は四葉の誘いを断り、かつ丼も食べ終え帰るのであった。四葉が何か言いたそうにしていたが、言われる前に俺は逃げるようにして帰った。
それから、5限目、6限目と続き放課後となり俺が校門前まで行き一人で帰り始めながら歩き始める。四葉を見ていると、アイツのことを思い出す。何故、アイツのことを頻繁に思い出すのかは分からない。上杉には悪いが、やはり断った方がいいかもしれない。
その方が、俺としてはいいだろう。親友の頼みだけど、断るしかないだろう。上杉に電話を掛けようとしたそのときだった。
「あっ、空じゃん」
信号待ちしていると、俺の頭を撫でながら隣に立っていたのは……。
俺の姉であった……。