「脇城君!」
屋上の方へと向かおうとする俺を見かけて五月が俺に声を掛ける。
「テストどうだったんだ?」
俺は五月にテストのことを確認する。
「分かりません、ただ全力は出せたと思います……」
「そうか、ならいいんだ……」
と俺は言いながら、屋上へと繋がるドアノブに触れ、扉を開けた。
「来たぞ、二乃……」
屋上へと上がってくるまでに俺の腰はまるで重りでもつけられているかのように重くなっていた。上に来ると、二乃がベランダの手すりに腕を乗せながら景色を見つめていた。二乃の表情は見えなかった。外の景色は今にも雨が降りそうなぐらい曇っている。そして、俺と二乃の間にはどんよりとした空気が流れていた。
「テストどうだったのよ」
この時点で俺は察しついていた。と言うより、通知に気づいたときからなんとなくだが気づいてはいた……。
「俺なりに頑張れたとは思う」
上杉には確実に劣るだろうが、今までの成績を考えれば格段に良くなったのは間違いない。俺のその言葉に二乃は「そう……」とだけ返していた。
「……試験、赤点だったかもしれないわ」
長らく二人の間に続いた沈黙を二乃が先に破った。
「これで清々するわ。もうアンタ達から二度と勉強を押し付けられることもなくなるし、あの子達の顔色を窺わなくても済む。やっと、自由になれたわ……」
二乃は徐々に涙目になっているのか、泣きそうな声で二乃はそう言う。
「そう思っていたはずなのに……。あんた達のせいで私に余計な情が湧いたの……」
情か……。
恐らくその湧いた情と言うのはこいつらと居てもいいかもしれないと言う情が湧いたのだろう。俺は黙って二乃の言葉を聞きながら、考えていた。
「ほんと全部あんた達のせいよ……。試験の方は本当にごめんなさいと思ってるわ」
「気にするな……」
二乃は二乃なりに頑張れたのだろうからそれを責めるつもりはない。
「そう、ありがとう。最初にあんたと約束したときのこと覚えてる?」
ああ、赤点回避できたら私アンタ達の勉強もう受けない。と言う奴か……。
「結果的にはあんた達の思い通りになってしまったわね。でもまぁ、次の試験こそは赤点回避してあんた達には立ち退いてもらうから。見てなさいよ」
「望むところだ」
一時はどうなるかと思っていたが、どうやら二乃は立ち直れたようだ。
俺はそんな二乃と共に家に帰るのであった。
そして次の日……。
今日、テストの結果がわかる。大方、全員赤点が一つぐらいあるのは間違いないだろう。二乃の奴があの後どうにかすると言っていたが、果たしてあいつはどんな方法で誤魔化すと言うのだろうか。
そんなことを考えていても仕方ないかと思いつつ、俺は学校へと登校し始めると、後ろから早足で問題用紙と睨み合っている上杉の姿がいた。俺の存在に気づいているのか。いや、多分気づいていないよな。こうなると、上杉のやつは喋っても全く耳に入ってないだろう。だけど、とりあえず聞いてみるか。
「テスト返却今日だな……。どうせ、お前が百点なのは間違いないんだろうけどな」
こいつが百点以外の点数を取ることを見た事がない。寧ろ、そんな日があったとすれば地球最後の日とやらになるかもしれないだろう。
「勉強熱心なのもいいことだが、前気をつけろよ」
テストと睨み合いしてて電柱にぶつかりましたなんてことが起きたらこっちが戸惑うしな。
「なんか言ってたか?悪いが、今復習中だ」
ほら、やっぱり聞いちゃいなかった。こいつがこのモードに一度入ったら二度と戻ることはないだろうから、無視して先に行くのであった……。
「これからテスト返しを行う。言っておくが、間違っても消して解答を書き直すなんて行為をしないように!」
実際、そんな行為をする奴なんているのだろうか。でも、せこい奴とかはするのかな。黒ペンだとかの用意は禁止されているから元々できないだろうけど。
「あんた、自分の点数どんな感じだと思ってるのよ?」
二乃が小声で俺に聞いてきた。俺の点数か、テストの見直ししてるときに大体の点数は予想していたが果たしてどうなることやら……。社会は百点じゃないのは明白だ。実はさっきの問題。俺は違う答えを記入していた。
くそっ、これじゃああのハゲネズミが気持ちよくなるだけだな。なんかムカつくぜ。
「……そうだな。俺の予想だと上々って言ったところかもな」
高一の時と比べると、どっちが点数が高いと言われればきっと今の方が点数は高くなっていると答えるだろう。
「まあ、あんたのことだから点数は高いでしょうね」
「言っておくけど、赤点とってもそんなに気にするなよ。俺達の教え方に問題があっただけなんだから」
二乃達が赤点だったとしてもそれは、上手く教えられることができなかった俺達のせいだ。少なくとも俺はそう思っている。
「それならあんたこそ気にするんじゃないわよ。あんたも三玖ほどじゃないけど気にしやすいタイプだって言うのはなんとなくわかってきたし」
三玖ほどではないけど俺も気にするタイプか。言われてみればそうかもしれない。
「わかったよ……」
と言うと二乃が呼ばれてテストを取りに行った。ニ乃の表情は見えなかったがあの様子、どうやら英語は赤点ではないようだ。今の二乃の様子を見る感じではあるが、今にも大はしゃぎしたいが、自分の性格上そんなことはしたくないと思っているような感じであった。最も、後ろ姿でしか判断してないし二乃の場合そんなことする訳ないだろう。
大体しても四葉だろう。
「何点だったんだ?」
帰って来た二乃の顔を見るには、良い点数だったのは間違いないのだが……。それを表情に出さないようにしているかのように見えるが、顔には喜色が表れていた。
「50点よ」
英語で50点か。まぁまぁな点数だな。
いや、前の俺だったら絶対に同じくらいの点数しか取れてないだろうけど。因みに、俺の返って来た英語のテストの点数は75点であった。危ねえ……。
「お前にしては上出来だな」
二乃の答案を見ながら答えた。
少し意外だったのだ、英語の小テスト10点だったこいつが此処まで点数が伸びるものなのかなと……。この調子なら他のテストも期待できるかもしれないと思いつつ俺は二乃にテストを返した。
「少しだけ……感謝しているわ」
二乃がテストの答案を見ながら、俺の顔を見ながら少しだけではあるものの喜びを見せていた。その顔を見た俺は不意に笑ってしまうのであった。
「何よ、急に笑い出して……」
「いや、お前が素直に気持ちを伝えてくるとは思わなかったからな。でも、今のお前の発言を聞いて思ったよ。やっぱ、それでこそ二乃だなって」
こいつが急に素直になるのに凄く違和感を感じていた俺は、そう答えると二乃がすぐに顔色を変えて今にも俺の足を蹴ろうとしていたが蹴ろうとはしてこなかったが、表情は不機嫌そうな感じであった。
「あっそ……気持ち悪い」
二乃はそれだけ言い、前を向いて間違い直しを始めていた。
それからして、英語のテスト返却と間違い直しが終わり、続けて数学、社会、国語、理科の順で返されるのであった。俺の点数は、大体予想していた通りだった。
二乃の点数は、社会、理科は合格点だったのである。しかし、数学、国語は教えてくれなかった。赤点だったんだろう。数学と、国語か……。数学は元々苦手な教科だったから俺が悪いだろう。国語に関して言えば、今回古典が多めだったからこれも俺が悪いだろう。
ただ、これを二乃に言うと気にするなとか、怒られるだろうから止めておこう。俺もあまり気にしない方がいいかもしれない。
「行くんでしょ?図書室」
今日、上杉に言われていた通り俺は図書室に向かおうとしていたところ、二乃が俺に話しかけてきた。
「ああ、お前も行くんだろ?」
二乃にそう言うと、無言で頷いていた。
図書室に向かう途中、珍しく二乃が無言でいた。もしかしたら、二乃は赤点を取ってしまったことに申し訳なく思っていたのかもしれないと思いながらも、俺は図書室に到着した。
「全員揃ってくれたみたいだな」
図書室に到着すると、上杉と他の四つ子達は既に揃っていた。それぞれ浮かない表情をしながら、俺達のことを待っていたようだ。そんな空気を感じ取っていたのか、上杉もあまり良い表情はしていなかった。
「それぞれの表情を見る限り、何となく察するが答案用紙を見せてくれ」
一番先に答案用紙を見せたのは四葉。それから続くようにして、三玖が渋々答案用紙を申し訳なさそうに出していた。流石の一花も、何処か自分を責めている様子で答案用紙を見せていた。
そして、残りの二人は答案用紙を見せなかった。
「個人情報です。見せたくはありません……。断固拒否します」
先に口を開いたのは、五月。
二乃は変わらず、答案用紙を見せようとはしていなかった。
「悪いけど、私もパスするわ」
と二乃は言い切るのであった。気にするなと言っていたやつが、まさか一番気にしているとはな……。だが、そうだろうとはなんとなく思っていたところだ。
「……二人共、ありがとう。だが、覚悟はしている。教えてくれ」
と言うと、二乃が嫌そうにしながら答案用紙を全て見せてきた。
二乃が見せたのに気づいた五月も渋々答案用紙を全て出した。
まず、1人目……。
四葉……。
四葉の点数は、まさかの国語、社会が赤点回避だった。他の点数を見ると、どれもギリギリ赤点と言う微妙なラインであった。それでも四葉にしてはかなり頑張った。
そして、三玖は社会が70点。英語、理科、数学が赤点回避であり国語が赤点だったようだ。まさか、此処まで赤点が減っているとは思わなかった。
「三玖、頑張ったな」
「そうかな……?でも、ソラが言うんだからきっとそうだよね……」
三玖は俺にそう言われて自信がついたのか嬉しそうにしていた。
次に、一花。理科、数学、英語は赤点を回避していたようだ。本人曰く、頑張った方かなと笑っていた。確かに一花にしてはかなり頑張った方だろう。
続いて、二乃。
嫌々出した割には、先ほど言った通り国語と数学だけが赤点でありその二つもかなりギリギリなラインで赤点だったため、二乃の実力をかなり出せている方だ。
「何よ?何か言いたいの?」
「別に怒る訳じゃねえから、安心しろ。お前にしてはよく出来ているほうだよ」
と言うと、二乃が不満ありげな表情で俺の方を見つめてくる。
何か悪いことでも言っただろうかと思いつつ、考えていたが何処が悪いのか全く分からずそのままにするのであった。
最後に、五月。
理科、国語、数学が合格点以上であり、社会、数学が赤点だったのである。五月は、悔やみきれない様子で膝に置いてあった拳を強く握り締め今にも涙が出そうな様子だった。
「はぁ……、これだけ教えてもまさか赤点があるとはな……。だけど、お前らはお前らなりに頑張ったんだろう」
「す、すいません……」
五月が自分の解答用紙を見直しながら、言うのであった。
「しかし、確実に成長しているのも事実だ。ソラ、お前が教えていた三つ子の全ての小テストの結果覚えているか?」
ニ乃達の小テストの点数か……。
何点だったんだろうかと思いつつ、メモ用紙を見た。
「えっと、三人共大体此処最近で2、3つの教科が赤点回避していたな」
当然、3教科合格点だったのは三玖だ。この頃から、三玖はかなり点数が高かったのだ。
「そう。こっち、四葉達もかなり成長している。少なくとも、みんな最初の小テストを思い出してみろ。あれよりは良くなっているはずだ」
上杉が最初のテストの結果は皆の前に見せながら言う。
それを四葉と三玖は興味深そうに見始める。
「それぞれ偏りはあるが、全員成長している。三玖、今回の最高点はお前だ。社会の点数、70点この調子ならお前は百点も夢じゃないだろう。今後は姉妹にも自信を持って教えてやるんだ」
上杉の奴が、教えることはもうない。これで最後だ。と言わんばかりの態度を取るためか、元より重たい空気であったこの場の空気が更に重たい空気になりつつあった。
「四葉、お前はイージーミスが目立つ。だが、これほどの点数を取れたのは上出来だ。これからは気をつけるように……」
「一花、お前は一つの問題に拘らなすぎだ。最後まで諦めんなよ」
一花、四葉はそれぞれ口に重りでも乗っているのかかなり重たい口を開きながら、返事をしていた。
「二乃、結局最後まで俺の言うことは全く聞かなかったな。だが、点数は中々なものだ。これからも油断はしないように……」
二乃は、上杉の方をチラッと見た後、俺の方を見ていた。
「最後に、五月。お前は今回の件でプレッシャーを負い過ぎだ。本当にお前は不器用だな!一つの問題に集中するのは悪いことじゃないが、似たようなミスも目立っている」
五月の答案用紙をチラ見したが確かに上杉の言う通り、似たようなミスが目立っておりどう見ても一つの問題に時間を掛けたような感じになっていた。
「自分で理解しているだろうから、これ以上は言わん。次から気をつけろよ。俺から言いたいことはこれだけだ……空お前は何かあるか?」
それぞれに言いたいことを言った上杉が、俺に意見を求めてきた。
「……正直言って、皆こんなに点数を取れるとは思ってなかった。これはお前がお前らなりに頑張ったからこの結果が出たんだろう。それは事実だ。だからこそ俺はお前らに言いたいことがある……」
俺がとある言葉を言おうとした瞬間であった。
その瞬間、五月の携帯から電話が掛かってきた。件名を見ると、電話は中野の父親からであった。
「上杉です……」
『キミか、個々に聞こうかと思っていたがキミの口から結果を聞こうか。言っておくが、嘘は分かるからね?』
スピーカー音から聞こえてくる中野父の声が、かなり怖く聞こえてくる。
まるで、迫り来る怨霊かのように……。
「つきませんよ……。ただ……」
「次からこいつらには、もっと良い家庭教師をつけてやってください」
上杉の口調は至って冷静であった。動じることなく、上杉は一言一言冷静に話していた。
「それで結果の方は……」
上杉の声はそこで途切れた。
そして、上杉は不意を突かれ、ある人物から携帯電話を取り上げられたのだ。
「パパ、二乃だけど……一つ聞いていい?」
携帯電話を取り上げたのは、二乃。
二乃は、上杉から少し離れて電話を続けていた。
「なんでこんな条件を出したの?」
『僕にも娘を預ける親としての責任がある。彼が君達にふさわしいのか図らせてもらっただけだよ」
一瞬だけ、二乃と目が合いその後二乃が三玖の目を見つめていた。
まるで、俺達に何かを伝えるようにして……。
「私達のためってことね。ありがとう。パパのことだから、数字が判断基準になると思ったのね」
『ああ、その通りだ』
二乃がゆっくりと息を吸いながら、ある言葉を言う。
「私達五人で全科目全ての赤点を回避したわ」
二乃の口からありえない言葉が飛び出すのであった。
二乃の奴、どうにかするとは言っていたが此処までぶっ飛んだことを言うとは……。思わず、上杉が声に出して驚きそうになっていたが俺がその口を抑えたのである。
『本当かい?』
「嘘じゃないわ」
どう見ても嘘に思われてしまうその言葉は……。ニ乃と言う女が言うからこその説得力があったのかもしれない。
『なるほど、キミが言うのなら間違いないのだろうね。これからも上杉君と共に励むといい』
そう言われ、二乃が電話を切ろうとしたとき、二乃が俺に電話を貸してきたのだ。
「なんだ?」
「あんたに少し用があるらしいわよ」
俺に用……?
何か俺に用事でもあるのだろうかと思いながら、俺は電話口に出る。
「もしもし、脇城ですけど」
『ああ、脇城君かね。キミには前に言った通り、今回は合格と言うことで上杉君同様、キミを家庭教師として迎え入れよう』
淡々とした口調で男は、俺に合格と告げる。
そして、俺を上杉と同様に家庭教師として迎え入れるようだ。これは、前に聞いたことだ。どうやら、その報告をわざわざ言おうとしていたらしい。
「ありがとうございます」
と言い、電話を切ろうとしたとき……。
男は意味ありげな言葉を言うのであった。
『脇城か……。随分と久しく聞いた名だ』
まるで、俺のことをいや、俺の親のことを知っているかのような口調で男は告げる。
「どういう意味ですか?」
『……いや、こちらの考え事だ。気にしないでくれたまえ』
男はそう言い、電話を切るのであった。
何故、中野父は俺の苗字を聞いて久しく思ったんだろうかと一瞬、考え込んだが……。意味が分からずその日結局忘れることにするのであった。
「ソラ、なんて言われたの?」
二乃が俺の方を見ながら言う。
「上杉と同様に家庭教師として迎え入られるとさ。それだけだ」
五月に電話を返すと、「だからあのとき……」と言っていた。
「そうか、良かったな。空」
「俺としては別にどっちでも良かったんだがな」
元々こいつ、上杉に頼まれてやっていたこと。ただそれだけだ。
「じゃ、じゃあ二人共まだこれからも私達と一緒に居られるって言うこと?」
今まで黙っていた四つ子の中で一番先に声を出してきたのは意外にも、三玖であった。
「ええ、そういうことよ。だから言ったでしょ。私がなんとかするって」
と言われると三玖は肩から崩れ落ちるようにして深く座り込み、深く息を吐いていた。その様子を見ながら、一花が「良かったね」と言い、三玖が頷いていた。
「で、でもなんで私達が全科目赤点じゃないことになってるんですか!?」
先ほどまでの緊張感のせいでぶっ壊れたのか、四葉が目を混乱させながら言うと、五月が四葉に簡単に説明していたがやはり分かっていない様子。
「そうでもしないと、こいつらが残らないでしょ。でも、こんな手は二度と通用しない。次は実現させることね」
俺と上杉を見ながら、二乃が言う。
「……こうなったら意地でもやってやるよ」
上杉が緊張感から解放され、拳を握りしめながら答える。
「わかってる。それと、二乃。今回ばかりはお前に助けられた。いや、今回だけじゃねえな。三玖のときも……」
「全く、ほんとあんたも三玖みたいに気にするわね……。さっきも言ったけど、これからも頑張りなさいよ」
二乃が顔を赤くしながら髪をクルクルと回しながら、言った。
これで暫くは安泰といったところだ。
「それに、あんたに前言ったでしょ。私達5人に入る余地はないって……。でも、今は違うわ」
二乃が珍しく口篭らせ何かを言おうとしていた。
しかし、何を言い出そうとしているのかは俺には理解できずただ待っていると……。
「少なくとも、あんたのことは……認めてるわ。言っておくけど、少しだけだからね!勘違いしないでよね!」
テンプレ通りのツンデレっぷりを見せてくるニ乃。だが、俺のことは少しだけ認めてくれたようだ。これは喜ぶべきなのだろう。
「ニ乃、ソラと何話してたの?」
話を終えた二乃と俺を見て、三玖が聞いてくる。
「別に何も話してないわよ」
二乃が目で俺のことをチラッと見ていた。三玖は俺とニ乃が何を話していたのか気になるのか、口を風船のように膨らませていた。
「そっちは話終わったか?」
上杉が四葉達の解答用紙を見ながら俺に聞いてきた。
「ああ、終わったよ。この後どうするんだ?」
「そうだな、本来ならいつも通り復習をするつもりだったんだが……。お前らにも息抜きは必要だろう。なんだっけ……」
四葉達の答案用紙を置き、背中を掻く上杉。
「ご褒美、パフェだったか……?まあ、偶にぐらいなら……」
上杉が財布の中身を確認しながら答える。
……上杉がパフェ?ご褒美?夢でも見てるのか、俺……?
「あのフータロー君がご褒美!?」
一花が大きく開けた口に手を広げながら、驚いていた。
「なんだよ、そんなに驚かなくてもいいだろう。てか、ソラお前はいつまで笑ってるんだ」
思わず腹を抱えて笑っていると、図書委員と思われる女子生徒に咳払いをされ、「すいません」と言いながら俺は座り直すのであった。
「五月、お前もだぞ……」
ツボに入ったのか、五月がクスクスと笑いながら上杉のことを見ていた。
「す、すいません。で、では……私は特盛で」
「……そんなのあるの?」
上杉が再度財布の中身を確認しながら、汗を掻いていた。どうやら、所持金はかなり無いようだ。
……お前給料、どうしたと言いたいところだが……恐らく、色々な理由があるのだろう。
「そう言えば、上杉さんって何点だったんですか?」
図書室を出て、昇降口を出た俺達は学校前を歩きながら帰り始めていた。
「うわっ、やめろ!四葉!」
上杉は、四葉にバッグを漁られ必死に抵抗しようとしていたがその抵抗はあまり抵抗しているようには見えなかった。と言うか、上杉のことだから絶対わざとあんなこと言ってるよな。
「全部百点じゃないですか!上杉さん!」
「滅茶恥ずかしい!!」
こいつ、俺が初めて答案用紙見たときと同じ反応をしやがった……。あのやり取り気に入ってるのか。
「そう言えば、ソラ。あんたさっき何を言おうとしていたのよ」
さっき……?
ああ、五月の携帯から電話が掛かってきたから、結局言えず仕舞いだったことか。
「大したことじゃねえよ。ただ……」
「家庭教師できたのがお前らで良かった。そう思っただけだ」
心の底からそう思えた。
二乃は「そう……」と言い、視線を逸らしパフェ屋に行くまで俺と顔を合わせることはなかった。
先に伝えておきますが次の話と次々の話は変更点はほぼ無いのでリメイク前と一緒になります。