五等分の花嫁 心の傷を持つ少年   作:瀧野瀬

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第4章 五つ子と悪夢の林間学校
五つ子と林間学校前


「中野さん……来てくれてありがとう」

 

 微かに聞こえて来た声だがなんとなくそんなふうに言っているような声が聞こえる。一花の奴、仕事行く前に呼び出されたようだが一体何の用だ……。でも、見る限り、奴は一人で此処に居るようだ。となると……なるほど。

 

「私に用って?」

 

 納得しながら、俺は何となくそこにまだ居続ける。

 

「俺とキャンプファイヤーを一緒に踊ってください!」

 

 四葉の奴が軽く言っていたが、キャンプファイヤーには伝承がどうたらこうたらと言っていたな。俺は興味ないから、軽く流していたが……。すると、男の方は……。

 

「俺は中野さんが好きなんです!」

 

 と告白をする。

 

「そ、そうなんだ。ありがとう返事はまた……」

 

「今聞きたいです!」

 

 相手はどうやら積極的な相手のようだ。一花の奴、珍しく押されてんな。しょうがない、此処は助け船を出してやるか。

 

 

 

 

「一花、こんなところにいたのか」

 

 さりげなく登場したように見せかけて、俺は一花の隣に来る。

 

「お前の姉妹が呼んでいたぞ。早く行ってやったらどうだ?」

 

 と助け船を出したのだが、相手の方がイラっと来たのか俺にその凶悪そのものの面を向けてくる。

 

「誰だよお前コラ。気安く中野さんを呼び捨てにしてんじゃねえぞ。お、俺も名前で呼んでいいのかコラ」

 

 最後の方何気に本音混じってないか……。って、そんなことはどうでもいいか……。

 

「返事くらい待ってやれよ。少しは人の気持ちを考えろ」

 

 隣に居る一花が「フータロー君が言えたことじゃないよ」と言っているのが少し聞こえている。

 

「中野さん、すぐこの邪魔者片付けますんで……!」

 

 チッ、力が強い野郎だな……。

 そんなことを思っていると……一花が俺の制服の袖を掴む。

 

「この人と踊る約束してるから……!」

 

「は!?」

 

 一花から出た咄嗟の言葉に俺は思わず「は!?」と大きな声で言ってしまう。

 

「え……?まさか、付き合ってるんですか!?」

 

「なら、恋人同士なら手ぐらい繋いで帰れるよな!?」

 

 いきなりそんなことを言われてしまい、俺と一花は固まる。

 

「お前女優だろ、此処はなんとかしろ」

 

「む、無理だって……!」

 

 一花と俺は小声で話しかけるが、どちらも手を繋ぐのは恥ずかしくて出来ない様子であったが……。

 

 

 

 

「こ、これでいい!?」

 

 顔を真っ赤にさせている一花が俺の手を繋いできた。俺はそれに何も言えずにただ黙り込むのであった。

 

「くそっー!なんとか林間学校までには彼女を作りたかったのによぉ……!お前、中野さんを幸せにできなかったらただじゃおかねえからな!」

 

 そんな言葉を言いながら、男は去って行く……。

 すると、まるで俺達の様子をずっと見ていたかのように隠れていたのか空が入れ替わるようにして入って来る。

 

「まぁ、なんだドンマイ」

 

 入って来た空は、俺にそんなことを言いながら俺の気分を更にドン底までに引き摺り落とす。

 

「え、えっと、とりあえず確認だけど私とフータロー君はキャンプファイヤー一緒に踊ることになったんだよね?」

 

「当たり前だろ、お前あのときそう言っていただろ……」

 

 俺は疲れたあまり、椅子に座り込みながら言う。

 

「アハハ……そのごめんね、フータロー君」

 

 その言葉は更にどん底へと突き落とすのであった……。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 上杉と一花との現場を見たのが放課後……。

 そして、その夜俺達は上杉の服を見る為に市内の大きなモールにやって来ていたのである。因みに、一花は仕事の都合で来ていない。

 

「ソラ、やっぱりソラとフータローには和が合うと思うの」

 

「いや、お前が選びそうな服は和そのものになりそうだから、勘弁してくれ」

 

 そんなことを話しながら、俺と三玖は上杉の服装を見ている。上杉の服装か……。あいつのことだし、この季節だ。無難にコートでも良いと思うがなぁ……。

 

「ソラは服装に特に問題無いわね」

 

「まるで問題あったら、服装買おうと考えていたみたいな言い方だな」

 

「当たり前よ。私達の隣を歩くんだから、それなりの恰好はしてもらわないと困るわよ」

 

 他の四つ子はともかく、二乃はかなりファッションに気を遣っているっぽいからな。隣で歩くんならかなり良いファッションしていないと駄目だろうな。そんなことを思いながら、歩いていると和服屋を見つけて俺に着せようとする三玖。

 しょうがねえ、少しだけ試着してやるか……。

 

 

 

 

「ソラ、凄い似合ってるよ……!」

 

 鏡で映し出されている自分を見る。確かに似合ってはいる。

 ただ、値段が高いな。和服とか高いからしょうがねえんだけど……。俺は見なかったことにしてその場を去ろうとしようとしていたが、三玖が買いたいと言い俺は三玖に和服を結局買って貰うのであった。

 

「悪いな、三玖」

 

「良いよ、気にしないで……。ソラに凄く似合っていたから買ってあげたかったの」

 

 幾らお金持ちの娘とはいえ此処までしてもらえるなんてな……。

 

「そうか、すまないな……。ありがとう」

 

 俺は三玖にお礼を言って、受け取るのであった。

 それから、三つ子達と合流する。

 

 

 

 

「お前ら服にお金を掛けすぎだろ」

 

「こんなのまだ安い方よ」

 

 確かにもっと高いところだともっと値段はするな……。と思いながら、俺は三玖と五月の買い物袋を持っている。本人達には断られたが、これぐらいできると言うと渋々俺に渡してきた。

 

「それにしてもこの感じ、まさにデートって感じですね!」

 

 ……デートか。

 その言葉に俺は一瞬自分の心が曇りそうになったが、すぐに俺はその黒い霧を晴らす。

 

「何を言っているんですか、四葉。学生の間に恋愛なんて不純です」

 

 言っていることが上杉とほぼ同じなのだが……。

 

「五月、そんな奴ほっといて残りの買い物済ますわよ」

 

 残りの買い物……。俺は周りの服屋を見てなんとなく察する。

 

「おい、待て。お前ら人の服を勝手に選んだんだから俺にも服を選ぶ権利……!」

 

「下着買うんです!!!」

 

 五月と二乃が口を揃えてそう言う。

 ……こうなるとは何となくだが思っていた。

 

 

「はぁ……。今日はお前らに振り回されたな俺はそろそろ帰るぞ」

 

 上杉はそう言い始める。俺もそろそろ帰るか……。と思い始めていたころに、上杉の携帯電話が鳴り響くのであった。

 

「上杉です……。え?らいはが……!?」

 

 上杉がらいはと言った言葉を聞いた瞬間、らいはちゃんの身に何かが起きたのはすぐ予感できた。俺はその言葉を聞いて、上杉と共に上杉の家に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

「らいはちゃん、大丈夫か!?」

 

「空さん、こんばんわです……」

 

 熱を出しているのか、やけに言葉に元気がなかった。

 

「らいは、お前は身体が弱いんだ。無理すんな」

 

 俺がタオルでらいはちゃんの汗を拭きながら、らいはちゃんは上杉に色々注文していた。

 

「上杉、勇也さんは?」

 

「親父は、明日まで仕事で帰って来れないそうだ」

 

 明日までか……。この様子だと林間学校は間に合わなさそうだ……。

 

「空、今からでも遅くはない。お前だけでも帰って、あいつらと楽しい林間学校を満喫してくれ」

 

「何言ってんだ。そんなこと言われて俺がはい、そうですか。と言う奴に見えるか?それに、お前には借りがあるだろ?」

 

「借りか……。そう言えば、お前とよく話すようになったのもこうしてお前が熱出してぶっ倒れているのを見つけたのが原因だったな」

 

 そう、俺とこいつがよく話すようになったのは、俺がいきなり熱を出してぶっ倒れそうになりながらもチャリに乗っているとき、倒れている俺を見つけてくれたのがらいはちゃんだったのだ。そして、俺はらいはちゃんにこの家で半日寝かせてもらったのである。それから、らいはちゃんのおかげもあり俺は上杉とよく話すようになったのだ。

 だからこそ、その借りを今返したい。

 

「分かった、お前は二度言って聞くような奴じゃないのは分かっているからな」

 

「お兄ちゃん……」

 

 俺と上杉が話していると、らいはちゃんが上杉に話しかけてくる。

 

「明日は林間学校だよね……。私のことは気にしないでいいから楽しい思い出いっぱい聞かせてね」

 

 上杉はその言葉を聞いた後、

 

「分かったから、ゆっくり寝ろ……」

 

 上杉はそう珍しく笑みを浮かべ、らいはちゃんが眠るまで待つのであった。

 

 

 

 

 

 

「らいは、生きているか!?」

 

 俺達がうたた寝している頃に帰って来たのは勇也さんだった。

 

「親父、まだらいはは寝ているだろ。あんまり大声出すな」

 

「そ、そうか……。ところでお前達、もう林間学校のバスの時間は過ぎているんじゃないのか?」

 

「そうだったか。もう忘れたぜ、そんなこと……」

 

 上杉は準備してあった鞄を片付け始め、「これで三日間勉強できる」と言っていたのだが……。

 

「風太郎、早く帰れなくてすまなかったな……」

 

「別にいい……」

 

 そんなことを言っていると、らいはちゃんがいきなり立ち上がる。

 

「お兄ちゃん達、治ったよ!ほら、早く二人共行った行った!」

 

「お、お前!?俺の気遣いを返せ!てか、空は荷物ないだろ!」

 

「ああ、それで俺の車に乗せていたんだが……。空君、君のお姉さんからお届けものだ」

 

 お届けもの……。なんだろうかと思っていると外から持ってきたのは、どうやら俺の荷物が入ったバッグのようなものだった。

 

「楓ちゃんが忘れ物はしないようにと来ていたぞ」

 

 楓姉、ありがとう……。

 俺はそう思いながら、バッグを受け取る。

 

「良かったね、二人共!これで林間学校に行けるよ!」

 

「でも、もうバスは……」

 

「バスはもう出発しましたよ」

 

 そこに立っていたのは五月であった。

 あいつ、なんで此処に……?

 

「なんでうちに……?」

 

「貴方の家を知っているのは私しかいません。それで勿論、二人共行きますよね?林間学校に……」

 

 その答えは勿論……。

 

「当たり前だ、行くぞ上杉」

 

「ああ、親父行ってくる。らいは、楽しい思い出話いっぱい聞かせてやるから覚えておけよ!」

 

 

 

 

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