「あ、あの脇城君は大丈夫なんですか?」
押し入れの中で魘されているのを第一に発見したのは私だった。
体が凄い汗を出しており、おでこを触ると高熱が出ているのかかなり熱さが出ていた。先生達は気温の温度差の激しさで風邪を引いてしまったのだろうと言っていた。だけど、私は本当にそうなんだろうかと考えていた。
こういうのもなんだが、私は上杉君のお家のことは知っている。だが、脇城君のことは知っているようで知らないのである。私達にとって彼は家庭教師でありただの友達程度の人間なのだから。
「脇城はたった今高熱を出している。あまり近づくな」
先生曰く、脇城君が此処まで高熱を出したことは無かったそうだ。
ただ、彼はこう言っていた。療養する前に……。
「五月、悪いが他の四つ子と上杉には気にするな。とだけ伝えておけ……。俺は後で必ず戻るから……」
本当に戻って来るのだろうか彼は……。
「五月、なにやってるの!もうカレー出来てるよ!」
「え!?はい!」
同じクラスの生徒に呼ばれたのを聞いて私はカレーの様子を確認する。
どうやら、後もう少しで危ないところだったかもしれないと思いながら、私は彼のことを考えるのを一旦止めるのであった。
◆◆◆◆◆◆
「……夜か」
うつ伏せに寝ている体勢から俺は起き上がり、自分のおでこを触る。この感じだと、まだ熱はあるだろう。今何時だろうと思いながら、ポケットの中に入れてあったと思われるスマホを取り出す。すると、既に時間帯は20時になっておりこの時間帯ならもう既に肝試しが始まっている頃合いだろう。
「五つ子の奴ら、気にしてなきゃいいんだが……」
寝ている先生を華麗に無視しながら俺は立ち上がり、少し外の空気を吸いに外に出かける。
「うわぁ、寒くねえ、熱いんだが……」
らいはちゃんの風邪俺が貰ったのかなぁと思いながら、俺はぼやけている視界を頼りに少し周りを歩き始める。いや、らいはちゃんの風邪を貰っただけでこうなった訳じゃねえだろうなぁ……。昨日の夜見ていた悪夢が原因だろうなぁと俺は考えていた。
こういうのもなんだが、俺は最近悪夢を見ることが多かった。どうして、悪夢を見ることが増えたのか分からない。でも、何かが関係しているとしたら俺が五つ子と関わったからだろうなぁ……。と思っていた。悪夢のことを考えていると、近くを歩いている足音が聞こえ、誰か来たのだろうかと思ってそちらを見ていると、
「ソ、ソラ……もう大丈夫なの?」
こちらに来ていたのは三玖だった。俺の様子でも心配で見に来たのか、俺が此処にいるのに驚いている様子。当然か、熱を出して倒れていた奴が此処に居るんだからな。
「大丈夫……とは言えねえな」
痩せ我慢することなく、俺は三玖に事実を伝える。
三玖に事実を伝えると、三玖は俺のおでこを触る。
「まだ熱い……。駄目だよ、安静にしていないと」
俺のおでこは熱かったのか、三玖が心配そうな表情で俺に言う。
「そうだな、もう少ししたら戻るから……」
そう言い、俺は三玖から離れようとしていた。
今三玖と話していたら、あの悪夢のことを思い出してしまうかも知れないと思っていたからだ。今にしてみればあの声、間違いなく五つ子の声だった。だから、あの声の主が分かる前に俺は戻ろうとしていた。
「ねぇ、ソラ……キャンプファイヤーの件だけど無かったことにしてくれていいよ」
俺の体調に気を遣ってか、三玖は言ってくる。だが、その三玖の表情はとても辛そうに言っているように俺には見えた。そして、同時に俺の頭に激しい頭痛が伴う。俺はそれを歯を噛みしめるようにジッと我慢していた。
「ソラの体調も心配……だからさ」
俺はそんな三玖に「すまない」と言おうとしていたが、言葉が中々出にくくなってしまいまるで金縛りにでもあったかのような状態になっていた。
「そ、それじゃあね……」
三玖はそう言いながら、俺の下から居なくなり、辺りは再び暗がりだけの世界が続いていたが……。何処からか、人影が見えて来ていきなり俺の頬を叩く……。
「最低」
その言葉と同時にその声の主を俺を見る。
そこに立っていたのは……。
二乃だった。
「あんた、さっきまで三玖がどんな気持ちであんたにああ言っていたのか分かってるの!?」
何も口が開けない俺に対して二乃はただひたすらに俺に言う。
ああ、そうか……。あの声の主は……。
「泣いていたのよ、あの子!それを分かってるの!?」
二乃だったんだ……。
そして、その様子を見ていたいのか……。
「二乃、何もそこまで……!彼だって、具合悪いんですよ!」
「それが何よ!あの子をまた泣かせておいて、何自分は悪くないんです!みたいな顔をしているのよ!」
近くで見ていたのか、五月が俺の傍に寄って、今にもフラフラしそうになっている俺を支えてくれていた。
「アンタのこと少しは見直したつもりだった……。でも、違った」
「あんたは最低よ!二度と私達に近寄らないで!」
――ああ、分かっている。それは一番俺が分かっている。
俺が最低な男なのぐらい……。