五等分の花嫁 心の傷を持つ少年   作:瀧野瀬

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五つ子と仲違い

「大丈夫ですか……脇城君」

 

 俺が起き上がったのは病院のベッドだった。

 目を覚ますと、五月が俺の隣に立っていた。

 

「五月か……。二乃は……三玖は……どうした?」

 

 俺が二乃や三玖のことを聞くと、ただ黙り込む五月。

 当然だよな……。そうだよな、と思いながら俺は病院の天井を見る。二人にはすまなかったことをした……。なんて今更思っても仕方ないことを思いながら、俺は起き上がる。

 

「脇城君、まだ熱は下がっていないので立ち上がろうとはしないでくださいね」

 

「分かってるよ……」

 

 おでこを触ると、確かに熱はあるようだ。かなり熱がある感じは俺の手に伝わった。

 

「脇城君、貴方に一つ聞きたいことがあるんです。脇城君があのとき、熱を出してしまった原因を知りたいんです」

 

 俺が熱を出したのはどうやららいはちゃんから風邪をうつされただけではないと五月は考えているのだろう。その考えが俺にとって嫌ほど当たっているのも事実だ。

 

「俺が熱を出してしまった原因か……」

 

 理由は簡単だ。あの悪夢を俺は見てしまったからだろう。あのとき、もう一人の俺のような存在が俺を最低だと罵っていた。俺が最低な男なんていうのは、あの現場を見た誰からも言えることだろう。

 

「あるにはある……。だけど、言いたくねえ」

 

「それでも知りたいんです。脇城君は三玖を助けてくれたように今度は私が脇城君を助けたいんです」

 

 五月の表情は真剣そのものだった。

 三玖を助けてくれたように俺を助けたいか……。

 

「ありがとうな、五月。それでも、言えないんだ……」

 

 五月は俺が過去に囚われた囚人なのを気づいてはいないだろう。

 だが、いつかこいつは気づくかも知れない。俺が過去に囚われた囚人だということに……。

 

「そうですか、分かりました。ですが脇城君、話したくなったら是非話してくださいね」

 

「ああ……」

 

 そんな日が来るのだろうか……。

 俺が過去に囚われた囚人から解放される日が……。いや、それは俺自身が決めることだろう……。でも、今はまだそのときではないような気がする。俺はそんな気がしていた……。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 林間学校を終えて、あれから数日間が経った……。

 空は今日退院したという話を五月から聞いていた。

 

「ほら、どうしたのフータロー君。今日も勉強やるんでしょ?」

 

 やる気になっている五つ子達……。

 今のところ問題は無いようだが、こいつらが仲違いでも起きてしまえば一気に関係性は拗れてしまうだろう。

 

「ああ……」

 

 二乃の奴は正直言ってやる気になっているのかすら分からない。

 さっきまで三玖とチャンネル争いをしていたし……。二乃と三玖のことを考えながら、俺は他の三つ子達にアイデア募集する。

 

「アイデア募集だ」

 

「こんなのはどうですか!」

 

 最初にアイデアを提案してきたのは四葉。

 なるほど、褒めて伸ばすか……。

 

「二人共、偉いな!本当に偉い!」

 

 いきなりそんなことを言われた二乃と三玖は困惑しており、三玖に至っては心配そうな表情でこちらを見ている。これ逆効果だな……。四葉の方を見ると、褒めるの下手糞だなぁと顔に書いてあるのが伝わって来る。

 

「失敗、次……」

 

 一花が俺に提案してきたのは、敢えて厳しくすることでヘイトが俺に溜まるはず。そして、共通の敵が現れたとき二人の結束力が高まるという提案だった……。一応、あいつらなりに頑張ってくれているのにそれをやるのは心が痛むと一花達に言うと、五月が俺にそんな良心があったのかと驚いている様子。

 だが、折角一花が俺に提案してくれたアイデアだ。やるだけやってみるか……。

 

「おいおい!まだ課題はそれだけしか終わってないのか!」

 

 心の奥底から炎のようなものが燃え盛っているような気分であった。

 他の奴らからして見れば今の俺は生き生きとしているようにも見えたかもしれない。

 

「何よいきなり大きな声出して……。言われずとももう終わってるわよ!」

 

 二乃にしては珍しいな……。と思いながら、問題をよく読んでみると……。

 

「そこテスト範囲じゃないぞ」

 

 問題文をよく見ると、テスト範囲じゃないところを二乃はやっていた。でも、二乃が自ら此処までやるとは少し驚いた。

 

「真面目にやって、二乃」

 

「っ……。こんな真面目で退屈な奴といたらおかしくなりそうだわ。部屋でゆっくりやっているから!」

 

「お、おい!」

 

 クソッ、折角林間学校前に俺と空が作っておいた問題集の用紙が一つ無駄になっちまった……。

 問題集の用紙のことを気にしていると、五月が俺に声を掛ける。

 

「弱気にならないでください。お手本になるんでしょう?頼りにしていますから」

 

 手本、頼りにしているか……。

 そう言われたら、もっと前に出るしかねえな。

 

「待てよ二乃」

 

 俺は二乃に声を掛ける。

 

「お前だって、こいつらと喧嘩するのは不本意だろ?」

 

「五月蠅いわね、人のことを知った風に……。あんたなんかただの部外者でしょ」

 

「部外者か……。もう俺達はそんな関係でもないだろ」

 

 最早、俺達は部外者ではない。

 前にも言ったが、俺とこいつらはパートナ-だ。

 

「五月蠅いわね、あんたが勝手に思ってるだけでしょ」

 

 そう言うと、三玖が俺達の前に立ち問題集を二乃に渡そうとする。

 

「ソラとフータローが作ってくれた問題集、受け取って」

 

「いらないわ。そんなもの……」

 

 俺と空が作った問題集と言うと、二乃は問題集を跳ね除ける。

 

「アンタ、まだあいつのことを気にしているんだ……。馬鹿みたい」

 

「私のことは幾らでも罵ってくれて構わない。早く拾って」

 

「こんな紙切れ如きに何ムキになっているのよ、ほんと馬鹿じゃないの!」

 

 二乃は問題集を三玖の目の前で破り始める。

 マズい、このままだと三玖が……!俺はすぐに三玖の名前を口に出そうとしたが、誰かが俺と三玖を横切った。

 

 

 

 

「二乃、謝ってください」

 

 ……二乃をビンタしていたのは五月だった。

 

「あんたいつの間にこいつの味方になったのよ……!」

 

「そんな事は今はどうでもいいです。彼に早く謝罪をしてください」

 

「脇城君に一度聞いたことがありました。彼は、上杉君はこの問題集を一枚一枚丁寧に手描きで書いていると……」

 

 空の奴、いつの間にそんなことを言っていたのか……。

 だが、そのおかげで俺がこいつらに勉強を教えようとする熱意のことは伝わったのかもしれない。

 

「だからこそ、私たちは真剣に取り組むべきです」

 

「そう、あんた達は私よりこいつらを選ぶって訳ね……。どっかの誰かさんはいつまでも馬鹿みたいにソラって言ってるし……」

 

 

 

 

「いいわ、こんな家出て行ってやる!」

 

 五月はその言葉を聞いて、すぐに二乃を止めようとする。

 

「そんなのお母さんが悲しみます!」

 

「いつまでも未練がましく母親気取りしているのはやめなさいよ」

 

 取り乱しそうになっている五月を見て、一花と四葉は止めに入ろうとしたが……。

 

「話し合いならもう無駄よ。こんな肉まんお化けと一緒にいられないわ!」

 

 その言葉に五月は一気に導火線が燃え始めたのか、表情が一瞬怒ったような顔を見せていた。

 

「分かりました、そこまで言うなら私が出て行きます!」

 

「あっそ、勝手にすれば……!」

 

 

 

 

 

 

 五月と二乃の喧嘩騒動の一日後、俺は一花達の家にやって来ていた。空には昨日あいつの携帯に連絡は入れていたが返事が返って来なかった。あいつ、まだあのことを気にしているのだろうか……。

 三玖曰く、昨日俺が帰った後一度は仲直りしたのだが、どうやらまた喧嘩をし始めたようだ。クソッ、どうすりゃいいんだ……。

 

「一花と四葉は……?」

 

「二人共、用事だって……」

 

 一花は仕事だろうな。

 四葉の奴は、何をしているんだ……?お得意の優しさが仇になって余計なことに巻き込まれてなきゃいいんだがな……。

 

「その、ソラは……?」

 

「あいつも連絡がつかない」

 

 空のことを聞こうとしているとき、三玖は何処か悲しそうな声を出すのであった。

 

「三玖、こういうことはよくあるのか……?」

 

「姉妹だから、よくあるよ……。でも、今回はかなり違うと思う」

 

 二人共、意地の張り合いだけでなく色々思うところがあるのだろう。

 俺と三玖は手分けして、二乃と五月を探そうとするのであったが……。

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……。クッソ、とんでもなく疲れたな……」

 

 二人共、体力なしコンビだしな……。こうなるのも当然か……。

 体力のある空が居てくれればこんなことにはならなかったろうな……。いや、今いない奴のことを考えていてもしょうがないか。俺が息を荒げて疲れていると、三玖が何かをし始めている。

 

「こんな顔の人を見ませんでしたか?」

 

 なるほど、五つ子って便利だな……。

 そんなことを思っていると……。どうやら、ホテルで泊まっているのを見かけたと言う人が居たようだ。

 

 

 

 

 

 

「な、なんであんた達がいるのよ!?」

 

「部屋に鍵を忘れたって言ったら、開けてくれた」

 

 二乃はセキュリティに関してグチグチ言いながら、俺達の方を見る。そこまで怒ってるって訳じゃないんだな……。

 

「ほら、帰った!じゃないと、部屋に変な奴らがいるって言うわよ!」

 

「は!?なんだよそれ!お茶の一つも出してくれないのか!」

 

「当たり前よ!とっとと帰った!」

 

 こいつなんでこんな必死に俺達を帰そうとするんだ……?昨日の喧嘩のせいか……。いや、本当にそれだけなのか……?

 

「二乃、お前は誰より家族を愛しているだろ。だったら……」

 

「昨日も言ったでしょ。私のこと知った風な口聞かないでよ!私はね……!」

 

 

 

 

 

 

 

「あんた達と出会わなければ良かったと思っているのよ!」

 

 

 

 

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