「久しぶりでいいのか……。こういう場合……」
場所は校庭……。
四葉を追いかけようとしていた上杉を止めたのは俺だった。俺はあいつになんて顔をして会えばのいいか分からなかった。でも、結局そんなものは時間が解決してくれる訳もなく俺はあいつにすぐに話しかけた。
「空……!?」
上杉は俺が此処にいることに驚いているのか、本当に俺なのかと目を擦っている。
そして、擦った後に俺が此処に居ることにやはり驚いている様子。当然か、俺は逃げたんだからな。
「すまなかったな、お前に色々面倒押し付けちまって……」
でも俺はもう逃げない。
目の前で起きていることに対して……。そして……。
「そこは別に構わないが……もう大丈夫なのか?」
「ああ、大丈夫だ」
俺は今一度人間を信じてみたい。
時には笑ったり、喧嘩したり色々あるかも知れないけど俺はもう一度人間を信じることにしたんだ。
「そういや、さっきまで四葉がそこに居たが……。俺が追いかけた方がいいのか?」
先ほどまで上杉と四葉が話している姿を見ていた俺は上杉に聞く……。
「ああ、頼む。俺だと多分途中で息切れを起こすと思うからな」
「了解」とだけ伝え、俺はまだ見えている四葉の姿を追いかける。
走り出すまでに色々な感情が蠢いていたが走り出した瞬間、そんな感情は何処へやら風の如く消えていった。やっぱり、走ることはいいな。楽しくてたまらねえ。四葉もこんな感情で走っているんだろうか。運動神経の良いアイツのことだ。きっと走ること以外でも生を実感しているんだろうな。
「よっ、四葉」
「え!?わ、脇城さん!!?」
四葉に追いついた俺は並走しながら四葉と走っている。制服と言うこともあってか、動きにくいがなんとか俺は走れている。ただ、Yシャツが汗まみれで匂いがとんでもないことになってそうで怖いが……。
そして、四葉も上杉同様に珍しいものを見たかのような表情で俺を見ている。当然か、学校にも来ていなかったんだからな。楓姉は俺のそんな姿を見て昔を思い出していたかもしれないな。と思っていた。
楓姉には迷惑を掛けちまったな……。
「駅伝出るのか?」
「な、なんで知ってるんですか!?」
恐らく、四葉は情報の整理で色々と頭を使っている状態だろう。もう会うことはないと思っていたかもしれない俺の存在と俺が何故か駅伝に出るということを知っていることについて……。その両方で頭がパンク寸前になっているだろう。
「なんでって先頭走ってるのは江場だろ?俺あいつのこと知ってるからさ」
知ってると言っても江場のことなんてあんまり知らないが……。
知っていることといえば、陸上部で駅伝目指しているということぐらいだろう。ぶっちゃけ、それしか知らん。
「四葉、走るの楽しいか?」
「はい、楽しいです!」
楽しいか……。
四葉の顔や目を見る限り、その言葉に嘘偽りはなさそうだ。
「そうか、それを聞いて安心した。でも、あんまり無茶はすんなよ」
俺はそれだけを伝えて、四葉とは反対方向を歩き始める。
四葉のことだ。自分を認めてくれた人達の前では無茶してでも頑張ろうとするのは考えられる。だから、俺はそれだけを伝えて学校の方に戻って行く……。
学校に戻り、俺は昇降口に入り靴を下駄箱に入れようとしたときであった。
「やっほ、ソラ君」
俺に何の躊躇いもなく、声を掛けて来たのは一花だった。
「一花か、この前はありがとうな」
「ん?この前のこと……?ああ、全然気にしなくていいよ」
一花は理解していたが俺に特に何も言わず、その言葉を返してきた。本当は色々と聞きたいことがあるだろうに俺に気を遣ってくれているんだろう。俺は、靴を履き替え終えるともう一人俺の前にやって来た。
「脇城君!?」
俺がいるのに驚いているのかそう言う五月。
「脇城君、体の方は大丈夫なのですか?」
俺のことを心配してくれていたのか五月が言ってくる。
「ああ、安心しろ」
五月は「良かった」とでも言いたげな表情を見せている。
俺はそんな顔をされて、少し嬉しく思っていた。
「ほら、ソラ君こんなところで油売ってる暇ないよ。行くところあるでしょ」
そんなことを言いながら、俺の背中を押す一花。
行くべき場所か……。確かにあるが、まだ心の準備が出来ていない。だが、そんなことを言っている暇はないだろう。早くあいつらに会わないとな……。三玖達のことを考えながら、俺の背中は一花に押され三玖がいる教室の前まで連れて来られる。
それから、俺は一花が三玖を連れて来るのを待っていた。
そして、その時は訪れた……。
三玖は俺を見て、目を大きく開けて驚いている様子だった。何かを言おうとしていたのは伝わっていたが、俺はその言葉を待たずに頭を下げていた。
「すまなかった、三玖……」
俺は頭を下げ、三玖に何を言われようがそれを受け入れるつもりだった。
「顔をあげてソラ……」
返って来た言葉は優しい言葉だった。
俺は恐る恐る顔を上げながら三玖の方を見る。三玖の方を見ると、三玖はとても笑顔でこちらを見ていた。その笑顔に俺は眩しさすら感じていた。
「ソラがこうしてまた帰って来てくれて嬉しいよ」
「だから、また勉強教えてね……」
――俺はその言葉に無言で頷くのであった。