五等分の花嫁 心の傷を持つ少年   作:瀧野瀬

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次女の決意と四女の気持ち

「今日は一日お疲れ様。だけど、みんなまだまだ伸び代があると感じたよ」

 

 朝の走り込みを終え部室に戻って来た部長は私達に話していた。少し前まで上杉さんが一緒に走っていたけど、後で私は上杉さんに謝りに行こうかなと考えながらその話を聞いていた。

 

「そしてこの土日で合宿を行う」

 

 土日で合宿……?その言葉を聞いたとき、私は一瞬焦りを感じる。どうしよう、もし土日の合宿に参加したら期末試験は赤点を回避できないかもしれない。焦りを感じていると、周りはみんな部長の言葉を聞いて「試験さえ赤点を取らなければ大丈夫か」と言った感じになっていた。

 

 私は部長に言われた「立派なランナーにしてあげる」と言う言葉にそのまま二つ返事で返すことしかできなかった。私は部室でただ一人立ち尽くしていると、部室の前で話し声が聞こえてくる。聞こえて来た話し声は部長と聞き覚えがある声だった。

 

 

 そう、脇城さんだ。

 「なんの話をしているのだろうか?」と思って聞いていると、どうやら脇城さんも駅伝に参加するらしい。部室前に居た部長が居なくなったのを見て私はまだ部室前に立っていた脇城さんに話しかける。

 

「あ、あの脇城さん」

 

 私は部室から顔をひょっこりと出しながら脇城さんに話しかける。

 

「まだ部室に居たのか、大丈夫か四葉?」

 

「は、はい!体の方は全然大丈夫です!」

 

 私は作り笑いかのような笑顔を見せつけ、脇城さんに笑いかける。

 

「そうか、あんま無理すんなよ」

 

 脇城さんはそれ以上私に何も言わずにただ私に手を挙げて帰って行くのであった。私は脇城さんの後ろ姿を見送りながら、その場で色々のことを考え込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 次の日の朝……。合宿当日……。

 私は歯磨きをしながら、上杉さんに携帯でメールを送ろうとしていた。しかし、送ろうかと思った直後で「やっぱりやめよう」と思ったのである。

 

「送らないの?」

 

「うわぁっ!?もう!一花やめてよ!」

 

 いきなり現れた一花に私は驚いて携帯を滑って落としそうになるがそのまま手で掴む。一花の方を見ると、揶揄うように笑っていた。

 

「歯ブラシ貸して。お姉ちゃんがゆっくりと磨いてあげる」

 

 そんなことを言われ無理矢理歯磨きをされる。私は「やめてよー」と言った。

 

「ほら無理してるから口内炎できてるよ」

 

 「私無理なんてー」と再び作り笑いを見せる。

 しかし、一花には気づかれた。

 

 

 

 

「どれだけ大きくなっても四葉は妹なんだから。お姉ちゃんを頼ってくれないかな……」

 

 その言葉に私はそのままこう口にする。

 

「部活、辞めちゃ駄目かな……」

 

 甘えかも知れないその言葉に一花はこう返してくる。

 

「やめてもいいんだよ」

 

 やめてもいい……。

 私はその言葉に揺らいでいた。どうしようと……。でも、すぐにそんなのは駄目だと思った。

 

「で、でも私がやめたら迷惑掛かっちゃう!やっぱり私頑張らなくちゃ……!」

 

「そんなに無理しなくてもいいんじゃない?四葉もまだお子様なんだから我慢しなくていいんだよ」

 

 と言いながら、私に見せてきたのは私が持っているお子様パンツである。

 

「あっー!もう二人が来たときには絶対に見せないでね!」

 

 私は取り乱しながらも、一花に言い一花は「はいはい、分かってるよー」と言いながら片付けるのであった。無理しなくていいか……。私、本当に部活やめてもいいのかな……。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

『笑ったり、怒ったり、悲しんだり、一人一人違う経験をして足りないところを補い合い、私達は一人前になろう』

 

 三玖が言っていたあの言葉……。昔の三玖だったらこんな言葉が出るなんて考えられないだろう。きっとこれが変化って奴なのかも……。そっか、過去は受け入れて今を受け入れるべき……。いい加減覚悟を決めるべきなのかもしれない。

 

 だから私は過去と断ち切る為に……。

 この髪を切る……。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

「くそっ……上杉の奴らなにしてんだ……。もう時間ねえぞ……」

 

 俺は今陸上部の駅伝の土日合宿の参加する連中の中に混じっている。俺は目の前で「どうしよう」となっている四葉の姿を見ながら、貧乏ゆすりをして上杉達が来るのをひたすら待ち続けていた。そして、何故俺が陸上部に居るかと言うと少し前に俺は陸上部の手伝いをすることに決めたのだ。四葉の気持ちを少しでも軽くしてやろうと思ったからだ。

 そして、俺は四葉に何か声を掛けてやろうと思ったが生憎その言葉も思いつかずただ上杉達が来るのを待っていた。

 

「それじゃあ皆行こうか」

 

 マズい、出発し始めた……。

 四葉の奴を見る限りまだ迷っている様子だ。

 

「痴漢だー!痴漢が出たぞー!!」

 

 何処かで聞いたような声が聞こえて俺はすぐに誰の声なのか理解できた。

 この声は間違いない。上杉の声だ。

 

「痴漢!?そこの人止まりなさいー!」

 

 恐らく上杉の作戦だろうが、その作戦通りに四葉は走り始め上杉を追いかける。どういう作戦なのか知らないけど、これなら少しは時間を稼げるだろう。他に役者が居るのか知らないが後は頼むぞ。

 

「江場、四葉が帰って来るまで少し待たないか?」

 

 と俺は言い四葉が居ない間の最低限の時間稼ぎをする。

 

「……そうだね。まだ時間はあるし、待っていようか」

 

 江場は納得し、少しの間だけ待つことに決めたようだ。

 それから少し時間が経ち、息切れしたような声が聞こえ「アハハ」と言う笑い声が聞こえてくる。

 

「逃げられちゃいました……」

 

 ……五月か。髪型ですぐ分かったが五月か。

 だが正直言って五月でやり過ごせるだろうか。俺の中で一抹の不満があったのだ。そう、それは先ほども言ったが……。

 

「私、部活を辞めたいです」

 

「……貴方四葉さんじゃないでしょ。なんで別人が中野さんのフリをしているの?」

 

 

 

 

「だって、髪の長さが違うんだもん」

 

 そう髪型だ。五月と四葉では髪型が違う。連れて来るならせめて一花か三玖だろうと思いながらも俺はその場でどうするかを考えていた。

 

「みなさん、ご迷惑をお掛けいたしました」

 

 と言いながら現れたのは本物の四葉。

 四葉の奴、このまま無理して合宿に行くつもりなのか……。

 

「でも私が辞めたいのは本当なんですけど……」

 

 江場はその言葉に少し取り乱しながら「なんで……?」と聞いていた。

 

「なんでって……。調子のいいこと言って私のこと何も考えてないじゃないですか」

 

 この言い方……。はたして四葉なのだろうか。いくら江場に対して色々と思うところがあったとしても四葉ならこんな言い方はしないだろう。となると、五つ子の誰かが四葉に変装しているのか……?

 

「そ、そんなつもりじゃ……」

 

「そもそも前日に合宿を決めるなんてありえません」

 

 

 

 

 

「マジありえないから」

 

 江場はそのまま萎縮し、「はい、ごめんなさい」と言う。

 この言い方、まさか二乃……。いや、でもこんなに髪短かったか……?

 

「後、この人借りていくから」

 

 四葉と思われる人物は俺に近づいてくる。

 

「え?いや、でも彼は……」

 

「私彼と付き合ってるんで、いいですよね?」

 

 肩を組み、「合わせろ」とでも言いたげにしながらこちらを見てくる。俺は無言のまま頷く……。

 江場の方を見ると、そのまま「は、はい」と言って俺はそのまま四葉と思われる人物に連れられて俺は上杉達が居る方に連れられてくるのであった。

 

「お前、二乃だろ」

 

 推測ではあるが、二乃と言う。

 

「よく気づいたわね。後、さっきの言葉だけど勘違いしないでよね」

 

 俺は「分かっているよ」と言うと、二乃はリボンを外しいつものリボンを結ぶ。

 二乃の奴、髪を切ったのか……。しかも、此処まで短く切ったと言うことは変化と言うものを受け入れて覚悟を決めたってことか……。

 

「私は言われた通りやったけど、これでいいの?本音を話せば彼女達も分かってくれるわはずよ。あんたも変わりなさい。辛いけどいいこともあるわ」

 

「うん、行ってくる」

 

 四葉は覚悟を決めて自らを変える為に江場達の方へと行くのであった……。俺はその後ろ姿を見ていると、一花が俺に近づくのであった。

 

 

「邪魔するのも悪いし、行こっかソラ君」

 

「そうだな……」

 

 二人っきりになっている二乃と五月の姿も見た後、俺は一花達を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

「三人共、ありがとうな……」

 

 暫く歩いた後、俺は口を開く……。

 

「ん?別にお礼を言われるようなことはしてないよソラ君」

 

 一花はあのときと一緒のような返し方をしてくる。一花は優しいんだなと思っていた。

 

「そうだよ、ソラ。私達はやれることをやっただけだよ」

 

 俺はその言葉を聞いてやっぱりこいつらを信用して良かったと思っていた。俺は三人にありがとうと伝えたのは感謝の気持ちを伝えたかったらだ。

 

「そうだな、空。さて、今日も猛勉強するぞー!」

 

 

 

 

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