五等分の花嫁 心の傷を持つ少年   作:瀧野瀬

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次女の思いと三女のチョコ

「二乃と空って付き合ってるの?」

 

 ありえない。私があんな奴と付き合ってるなんてありえない。あんな地味で私の言いたい事を何でも分かっているかのような男のことが好きになる訳がない。なのに、この感情はなんだろうか……。もしかして、私は本当に……。いや、そんなことは絶対に認めない。認めてなるものか。

 

 決めた。もし、今回の試験で赤点を回避できたらあいつらのことは用済みにしよう。そうすれば、私がこんなふうに悩むことだってなくなるはずだ。そう考えた瞬間、勉強のやる気を見出したような気がして私はお昼ごはんを食べた後の昼休みに勉強を開始する。

 

 こんなふうに勉強をしているなんて、昔の私なら考えられない。あいつらの意外そうな顔が思い浮かぶし、腹が立つけど、今はそんなことを気にしている場合じゃない。

 

「勉強やってんのか、意外だな」

 

 ほら、来た。先に帰って来た私を追いかけて来たのか、ソラがそんなことを言いながら、後ろの席に座る。

 

「別に私の勝手でしょ……」

 

「だな……」

 

 と言いながら、前の席に後ろ向きに座りソラは私の勉強を見始める。こんなことをやっていると、また勘違いされそうだけどそんなことを一々気にしているほど暇じゃない。

 

「此処間違えてるぞ」

 

 と言いながら、勉強を教えてくるソラ。そんなソラの言葉を聞きながらする勉強は悪い気分ではなかった。ただ、何処か何かを感じるものが私の中で溢れていた。

 

「そう言えば、アンタ上……風太郎からパパのこと聞いたの?」

 

 少し気になったことを私が聞く……。あのとき、パパが五月に言っていたことはあながち正しかった。四葉はもう同じ失敗を繰り返さないと言っていた。私も二回も赤点を回避できなかった。今度こそは、自分達の為に赤点を回避しようと思っていた。

 

「上杉からその話は聞いている。お前らの父親はやっぱ手強いな……。だけど、それでも俺達はやってみせてやるよ」

 

「当たり前よ……。そのぐらいできなければ私達の家庭教師は務まらないわ」

 

 と言いながら、私は勉強を再開した。

 

 

 

 

 

 

 昼休みが終わり、6限目が終わり私達は家に戻って風太郎とソラの勉強を受けていた。それからそんな日々が数週間続き、とある日……。出掛けようとしたが一花に呼ばれる。なんでも、用事があるから来て欲しいと頼まれた。いったい、なんの用だろうかと思いながらも、私は家に戻って来ていた。

 

「あれ?一人で何してるのよ?」

 

 家に戻って来ると、そこに居たのは三玖だった。

 何かを作っていたようだけど、この匂いの感じはチョコレート……?

 

「なによ、このチョコレート……。滅茶苦茶じゃない。こんなのあげて誰が喜ぶのよ」

 

 滅茶苦茶な形になっていて、味も不味そうなチョコレートを見ながら私は言う。少し味見してみると、かなり不味く出来上がっており、今にも吐き出そうになってしまいそうだった。

 

「五月蠅い……」

 

 と言いながら、三玖は黙って自分が作ったチョコレートを食べ始める。やっぱり味音痴だからなのか、何も感じずに食べていた。それを終えた後、私の方を真剣そのものな表情でこちらを見てくる。何か私に言いたいのだろうか?と思いながら、待っていると……。

 

 

 

 

 

 

「二乃、頼みがあるの……。私に思わず食べたくなるようなチョコレートの作り方を教えてください。お願いします」

 

 いきなりそんなことを改まって言われて私は少し驚いていた。

 

 

 

 

「何ボッーとしてるのよ、準備しなさい」

 

 私は袖を捲り、三玖のチョコレート作りを手伝うのであった……。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 冬休みは終わり、学校に行くと元気そうなソラの姿を見て私は何処か嬉しくなっていた。冬休みの期間、ソラと会う機会がなかったからというのもあって私はソラがどうしていたのか、気になっていた。後日、ソラに聞くと実家に帰っていたらしい。

 そっか、ソラはソラでやるべきことをやっていたんだねと思いながら、その話を私は聞いていた。

 

「三玖、調子はどう?」

 

 チョコレート作りをしていると、一花がシャツを乱れて着たまま出て来てこちらに話しかけて来た。私は、いつもお世話になっているソラやフータローの為にチョコレート作りをしていた。と言うのも、バレンタインというのが近いから。私はその為にチョコレート作りをしていた。

 

「駄目かな……。これじゃあ、二人に食べてもらうなんて失礼かも……」

 

「うーん、私も料理の腕はイマイチだからなー。そうだ、私の知り合いに料理に詳しい人が居るからその人に教えてもらいなよ」

 

 一花がそう言いながら、料理が上手い人に連絡していた。一花の顔が広くて良かったと思いながら、そのことを聞いていると「今日来れそうだから家で待っててね」と言って、一花は何処かへと出かけていくのであった。

 

 

 

 

 そして……。その料理が詳しい人と言うのは二乃であった。

 一花が言っていた人って二乃だったんだ……。と思いながらも、私は二乃にチョコレート作りをお願いした。それから、数十分が経った後二乃がこう聞いてきた。

 

「そう言えばこのチョコ、誰にあげる予定だったのよ?」

 

「教えない」

 

 と言いながら、チョコレートを混ぜていると……。

 

「どうせ、ソラや風太郎にあげようとしてるんでしょ。分かってるわよ……」

 

 バレていた……。いや、当然なのかもしれない。私がバレンタインでチョコレートをあげたいと思っている人なんてあの二人ぐらいしか居ないだろう。

 

「どうせあげるならちゃんと思いを込めたものを渡しなさいよ」

 

 思いを込めたものか……。二乃が言っている言葉を聞いて、私はそれは正しいと思っていた。ソラやフータローには思いが込められたものをちゃんと作ってあげたいという気持ちがあったからだ。私はその言葉を聞いて黙って頷きながら、チョコレート作りをしていた。

 

 

 

 

 その日の昼頃、一度家から出てチョコレートを買いに行っていたが、今日もまたソラ達が勉強を教えに来る日であった。そして、私が家に帰って来ると既にソラ達はいた。ソラは私の方を見て何かを言おうとしていた。

 

「三玖、今日のチョコレート美味かったぞ」

 

 その言葉を聞いて、一旦立ち止まる。フータローの方を見ると納得しているかのように頷いている。私はソラやフータローに今まで市販のチョコレートや私が作ったチョコを食べてもらっていた。だけど、二人共なんともイマイチな反応を示していたのである。

 「美味しかった」そんな言葉を聞いて、私はとても嬉しくなっていた。

 

 

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