最後の試験が始まる一週間前……。
俺と四葉はその日、朝の走り込みを行っていた。本当は、五月もダイエットの為に走る予定だったのだが訳あって走ることはなかった。ある程度、走り終えて俺と四葉は河川敷で大の字になりながら休憩していた。
「脇城さん、一つ聞きたいことがあるんです」
四葉が俺に聞きたいこと……?いったい、なんだろうかと思いながらその疑問を待っていた。
「私は五つ子の中で一番馬鹿です。そんな私でも変われると思いますか?」
確かに四葉は五つ子の中で最も馬鹿だ。まるで鶏のように三歩歩いたら忘れてしまうかの如くだからな。だけど、俺はそこまで気にすることだろうかと思っていた。他の五つ子に比べれば確かにまだ馬鹿だ。でも、こいつはこいつなりに成長しているのは確かだ。
いや、四葉は五つ子の中で馬鹿なことを気にしているんじゃない。気にしてはいるが、一番気にしているのはそんな自分でも変われるかと言うことだろう。だったら、変えすべきことは一つだけだ。
「変われるに決まってるだろ。現にお前は少しずつだけど変わってるじゃねえか」
事実を伝えると、四葉は驚いたようにこちらを見る。
「こんな私でも変われているんですか?」
四葉は自分が変われていないと思い込んでいるのだろうか……。いや、無理もないか。二回の試験も赤点で自分がどう変わってるのか理解できていないんだろう。
「じゃあ聞くぞ、こころの作者は?」
割と簡単な内容だが、四葉にとってこの問題が一番簡単だろうと思い俺が聞くと、その答えは返って来る。そして、その答えはあっていた。
「ほら、お前が気づいてなくてもこうやって問題を解けるようになっている。気づいてないだけでお前は賢くなっているんだよ」
俺は立ち上がり、四葉の方を見る。
四葉が今何を考えているのかは理解できていなかったが、恐らく考えていることがあるとすれば自分は成長してないと考えていたかもしれない。そう思っていると考えている俺は四葉の言葉を待たずに言葉を言う。
「自分が変わってないと思うのは結構だが、お前は充分変われているんだ」
「それでも、私は……」
四葉はまだ何か言いたそうにしていた。当然か、自分が変われていないと焦っているんだからな。なら、此処は……。
「そう焦るな、俺が変われたんだ。お前もきっと変われるよ」
「え!?脇城さんが変わったんですか!?」
俺が変わったところに気づいていないのかそう言う四葉。俺が変わったって言うのに気づいているのは多分、一花と二乃だけだ。三玖は微妙だろう。他の奴らは多分気づいていないと思う。
「ああ、俺はとあることと決着つけてきたからな。今までの俺とは卒業したんだ」
俺が決着をつけてきたこと……。父さんのことも含まれているが、何より一番吹っ切れることができたのはやっぱりあの件だろうな……。
「だから、お前もきっと変われるよ」
と告げると、四葉は「ありがとうございます!」と言い先に帰って行くのであった。あの姿を見る限り、大丈夫だろうなと思いながら俺も家に帰るのであった。
それから、その日上杉の意見により休憩も必要だろうと言うこともあり遊園地に行くのであった。遊園地か、来るのは子供のとき以来だなと思いながら俺は周りをキョロキョロとしながら歩いていた。周りを見ると、子供連れの人達やカップルがよく居た。当然か、と思いながら俺はその場を歩いていた。
「今日は思う存分羽を伸ばせ」
と上杉が言うとそれぞれ思う存分羽を伸ばしていた。最初こそこんなに遊んでいていいのか?と少し思っていたが、偶にはこんな感じで飴を与えるのも悪くはないなと思いながら俺はあいつらと遊んでいた。
「脇城君、これに乗りませんか!きっと楽しいですよ!」
意外にも絶叫マシンが得意なのか五月が言ってくる。本当に意外だな、こういうのは怖がって乗らないと思っていたが……。俺はその絶叫マシンとやらに一緒に乗ることになった。乗ったのは、一花と俺と五月だけだった。それから、二乃と一緒にお化け屋敷に行ったり、三玖と一緒にメリーゴーランドに乗ったりしていた。
「そういえば四葉を見たか?」
メリーゴーランドをおりて、一花達と一緒に他の乗り物を乗っておりた後、上杉が四葉のことを気になっていたのか言い出す。先ほど一緒にメリーゴーランドに乗っていたのは見たが一旦何処に行ったのだろうか。三玖が言うには「お腹痛いからトイレに行った」と言っていた。上杉は四葉を見つけたのか、観覧車の方に向かって行く……。四葉のことは上杉に任せるかと思いながら、俺は一花達の方に行くのであった。
「一花、改めて言わせてくれ。この前のことはありがとうな」
コーヒーカップに一花と乗ることになり、俺は一花に言う。前から言おうと思っていたが、ちゃんとこうしてお礼を言える機会がなかったのだ。一度言ったことがあったがこうしてちゃんと形としてお礼を言うのは今回が初めてだったからだ。
「ん?まだ気にしてたの?もういいよ、全然気にしなくて」
この前俺がお礼を言ったとき、一花はこんな感じで気にしないでいいと言ってくれたのを思い出す。あのときは、俺のことを気遣ってくれたんだろうと思っていたが多分そうだろう。
「いや、それでも言わせてくれ。俺はお前のおかげで目が覚めたんだ……。お前が居なければきっと目を覚ますことはなかった……」
あのままでいったらきっとあのときのように二度と人を信じないと心に決めていただろう。だけど、一花の一言があったから俺は助けられた。
「ソラ君は気にするタイプなんだね。でも、気にしないで大丈夫だよ。私は私のやれることをやりきっただけだから」
「そうか、ありがとうな……一花」
「ほら、次は違う乗り物も乗ってみようよ?ソラ君」
と言われ、俺は一花を追いかけながら次の乗り物に乗るのであった……。こんな日も偶には悪くねえかと思いながら……。