五等分の花嫁 心の傷を持つ少年   作:瀧野瀬

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五女の墓参りと試験結果

「また来るよ……零奈さん」

 

 母の墓の前に来ると、知らない男性が母の墓の前に立っていた。母の知り合いなのだろうか……。と思いながら、少し様子を見るとこちらの存在に気づいたのかこちらを見てくる。しかし、私はその瞳を何処かで見た事があるような気がしていた。何故私がそんなふうに感じたのかは分からない。

 そして、今目の前に居る人の瞳が似ていると思ったのは、脇城君だ。

 

「驚いたな……。まさか此処までそっくりな子に出会うとは……」

 

 男性は私を見て誰かとそっくりと言っていた。そのそっくりと言っている相手が誰なのかはすぐに理解できた。恐らく、母のことだろうと……。そして、私は今目の前にいる人のことを知る為に名前を聞くのであった。

 

「あ、あの貴方は?」

 

「僕かい……?僕の名前は、脇城 明彦」

 

 脇城……。一瞬間違えかと思ったその名前に私はもう一度考え直したが、聞き間違えの可能性は低いと考えた。

 

「あ、あの脇城って……。もしかして脇城君のお父さんですか?」

 

「空のことを知ってるのかい?そうだよ、僕は空の父親さ」

 

 だからあのとき瞳を見たとき、脇城君に似ていると思ったのかと私は心の中で思っていた。

 

「僕はかつて教師を務めていてね。そのときに零奈さんと話すことが多かったんだ」

 

 私は驚いていた。脇城君のお父さんがまさか自分の母親と知り合いと言うことを知らなかったのだ。脇城君も知っているようなことを言っていなかったし、知らなかったのだろう。

 

「キミは零奈さんの娘さんで良いのかな?」

 

「は、はい……。あ、あの……」

 

 母がどういう人だったのか教えてくれませんか?と言うことを言おうとしたときであった……。私の後ろから誰かが歩いてきたような足音が聞こえ、そちらに一瞬気を取られて見るとスーツ服の眼鏡をつけた女性が立っていた。

 

「せ、先生!?」

 

 そのスーツ服の女性が私を見て誰かと見間違えたのかそう言っていた。

 

 

 

 

 

 

「悪い悪い、お嬢ちゃんが先生にクリソツだったもんで間違えちまった。それにしても、まさかあの場所で脇城先生とも出会えるなんてこっちに戻って来たんすか?」

 

 私達は近くのファミレスへとやってきていた。彼女は下田さんと言う人らしく母の昔の教え子だったらしい。そして、どうやら脇城君のお父さんのことも知っているようだ。

 

「色々あって、こちらの方に戻って来たんだ」

 

 下田さんは「そうなんですか」と言いながら、脇城君のお父さんの話を聞いていた。下田さんは脇城君のお父さんと話しているとき、とても懐かしそうに話していた。私はそんな二人の姿を見ながら、ある質問を切り出した。

 

「あの、お母さんが学校ではどんな人だったのかを教えてくれませんか?」

 

 二人の話を遮るような形になってしまったが、私はどうしても聞きたかったのだ。すると、下田さんが先に話し始めた。母は愛想も悪く、生徒にも媚びない人だったらしい。だけど、そんな先生でも美人であるから何処か惹かれるものがあったのだろう。

 

 鬼教師と呼ばれているほどの人だったらしいが下田さんはそんなお母さんから信念のようなものを読み取ったようで今では塾講師になっていると言う話をしてくれた。それから、脇城君のお父さんも母の話をしてくれた。

 

 脇城君のお父さんが教えてくれたのは、教師の一人として素晴らしい人だと思っていたと語っていた。そして、なにより信念が強い教師であったということを教えてくれた。

 

 そんな二人の話を聞いて、私は決めたのである。

 

「決めました。やはり私にはこれしかありません!」

 

 私は進路希望調査と言うものを出して私はペンで書き始めようとしたが……。

 

 

 

 

「ちょい待ちな。お嬢ちゃんがなりたいのはお母ちゃんみたいになりたいってだけなんじゃないのか?」

 

 その言葉を言われ、私はペンが止まる。

 

「先生になりたいって理由があるなら止めはしない。っておっと……悪い癖が出ちまったな。お母ちゃんの話が聞きたくなったらまた会おうな」

 

 と言い下田さんと連絡先を交換し、私はファミレスを出ると一緒に出てきた脇城君のお父さんが話しかけてきた。

 

「先ほど彼女が言っていたことだが……」

 

「分かっています」

 

 事実だと言おうとしていたところを私が遮るような形で私が言うと、「それならいいさ」と言いながら脇城君のお父さんは帰って行く前に「空とは仲良くしてやってくれるかい?」と言われ、私が無言で頷くとそのまま脇城君のお父さんは「ありがとう」と言い、帰って行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

「これからは全員が家庭教師だ」

 

「俺が居ない時はお互いに高め合ってくれ。そうして、全員の学力を一科目ずつ引き上げていくぞ!」

 

 五月が月命日で居なかった次の日、上杉はそう言い出した。俺と上杉だけでは教えられることにも限度がある。五つ子達がそれぞれ得意な教科を教えて行けば、分かりやすいかも知れないと思いながらその話を聞いていた。

 

 

 

 その一ヶ月後、再び五つ子達の母親の月命日と言う日がやって来て俺達はその墓の前にやって来ていた。

 

 

 五月の方を見ると、何やら決意を固めたかのような表情をしており、俺はそんな五月の顔を見た後に手を合わせるのであった……。

 

 

 

 

 

 

 墓参りを終えたあの日俺達はあの日も結局勉強の日々を過ごしていた。

 

 

 

 

 

 

 そして、遂に試験当日の日がやって来たのであった。既に俺達は学校に登校しており、一回目の試験のときのようなグダグダっぷりは無かったのである。

 

「二乃、試験頑張れよ」

 

 二乃が座るのを見てから俺が言うと、「分かってるわよ」と二乃は返してきた。今日まで二乃達は勉強を頑張って来た。今まで以上に頑張って来たのは間違いないだろう。上杉が考えたそれぞれ得意な教科を教え合うと言うのはかなり良い手法だったようだ。

 上杉が行った手法のことについて思い出しながらも、俺は試験用紙を貰い試験を始めるのであった……。

 

 

 

 

「これにて試験は終わりだ」

 

 長く続いた試験も終わり、俺は深い溜め息を吐きながらHRを終えて立ち上がり礼をするのであった。そして、二乃に試験のことを聞こうとしたがすぐに二乃は何処かへと行ってしまったようだった。だが、一瞬だけあいつの表情を見ることができたがあの様子だと赤点は無いかもしれないと思いながらも俺はその日帰るのであった。

 

 そして、次の日試験は返され試験の結果を見ながらそれぞれ色んな反応をしていたのを見ながら俺も試験を受け取るのであった。試験を全て受け取り、思ったことがあるとすればどうやら俺の試験の点数はかつてのレベルと同じぐらいには戻って来ているのは実感できる内容であった。

 俺はそんな試験の結果を見て少し嬉しく思いながらも、上杉が働いているケーキ屋に集合を掛けられていることを思い出して図書室に行くのであった。

 

 

 

 

「四葉、やりましたね!」

 

 ケーキ屋に行くと、そんな声が聞こえてくる。この声、五月だろう。そして、この声の感じどうやら四葉は赤点を回避できたようだ。あいつ頑張ったんだなと思いながらも、俺はケーキ屋へと入って行った。

 

「あっ、脇城さん試験ありがとうございました!」

 

 ケーキ屋の中に入ると、四葉がそう言いながら頭を下げてくる。俺はそれを見ながらこう答える。

 

「その様子だと赤点は回避できたんだな。偉いぞ、四葉」

 

「はい、ありがとうございます!」

 

 四葉は再度俺に頭を下げて、そう言う。俺は何もしてないんだけどなと思いながらも俺は四葉の感謝を受け入れていた。前を見ると、既に五月と三玖が座っており俺を待っていたのかこちらを見ている。

 

「ソラ、私赤点回避できたよ……」

 

「脇城君、今三玖が一番点数が高いんです!」

 

「私のも見る?ソラ君?」

 

 確かに三玖の点数はかなり高いものだった。苦手な英語すらもかなり高得点で俺はそれを見たときかなり驚いていた。こりゃあ、本当に俺勉強していなかったら三玖に勝てなかっただろうなと思いながらも俺は三玖の点数を見ていた。

 それから五月と一花の試験の点数を見せてもらったがこちらもかなり高い点数であり俺はまたまた驚いていた。こいつらが此処まで高い点数を取れるなんてなと思いながらも俺は少し教えた甲斐があったなと心の中で喜んでいた。

 

「後は二乃だけか……」

 

「二つ結びの子ならキミ達より先に此処に来て、これを置いて行ったよ。それとこれは伝言なんだけど……」

 

 ケーキ屋の店長が俺に紙を渡してくる。二乃の奴、俺達と直接会わずに紙だけ置いて行くとはどういうつもりだろうと思いながら俺はその紙を開けると……。そこには……。試験の結果が書かれていた。それからケーキ屋の店長がこう告げる。

 

 

 

 

「おめでとう、アンタ達は用済みよ」

 

 

 

 

 

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