五等分の花嫁 心の傷を持つ少年   作:瀧野瀬

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三女の願いと次女の気持ち

「お前らよくやった!」

 

 最後に二乃の試験結果が公表されたと同時に上杉がそう言う。これで今回の試験は赤点は誰もいない。と言うことは上杉の父親が出した課題はクリアされたという訳だ。俺達は家庭教師として晴れて認められる訳だ。

 一花達はそれぞれ喜びを見せている。

 

「ソラ、私に勉強を教えてくれてありがとうね」

 

 喜びを分かち合っていた頃、三玖が俺にそう言ってくる。

 

「俺は何もしてない。三玖の努力がこの試験の結果を作ったんだ。誇っていいんだぞ」

 

 三玖の試験の点数は他の奴らと比べてずば抜けて高い点数であった。社会の点数がかなりの点数だったということもあるが、何より上杉が考案した五つ子が教え合う方針が合っていたのだろう。そして、何より三玖の勉強への才能があったからだろうと俺は考えていた。

 

「それでもこの点数になれたのはソラのおかげだからお礼を言わせて欲しい」

 

 三玖は笑顔を向けて言ってくる。そこまで言われちゃ素直に受け取るしかないなと思いながら、俺はその感謝の言葉を受け取るのであった。

 

「それでね、ソラにお願いがあるの」

 

 三玖からのお願いか……。中間試験のときのお願いは結局聞いてやることができなかったから今回はちゃんと聞いてやらないとなと思いながら俺は三玖がなんて言うのかを待っていた。

 

「今回のご褒美と言うことで私とお出かけして欲しいの」

 

 三玖が俺に言ってきたお願いと言うのはご褒美と言うことで俺と一緒に出掛けたいということであった。なんだそんなことかと思いながら、俺はその言葉を聞いてすぐにこう返す。

 

「その程度なら全然いいぞ」

 

「そっか、ありがとうね。ソラ」

 

 三玖はそう言いながら、期待を胸に膨らませているのか軽々と足を速く走らせながら他の奴らの方へと向かって行った。俺も輪の中に入るかと思い、上杉達が話している方へと向かうのであった。

 

「それじゃあ祝賀会の方の準備をそろそろ始めておくね。あっ、勿論上杉君の給料でつけておくから安心してね」

 

 上杉の奴、こればっかりはドンマイとしか言いようがねえな。

 それにしてもあいつにしては随分とノリ気でこの祝賀会を開くんだな。あいつらの影響を少なからずは受けているってことか。

 

「空、二乃を連れて来てくれ」

 

 ケーキ屋の店長が祝賀会の話をしていると上杉はそう言いながら、バイクのカギを俺に渡してくる。

 

「いいのか俺で?」

 

「ああ、二乃を連れて来れるのはお前しかいない」

 

 二乃を連れて来れるのは俺しかいないか……。確かにそうかもしれないなと思いながら、その言葉を聞き俺はバイクのカギを握り締めて「行って来る」と言って、バイクが置かれている場所へと動き始める。さてさて、二乃が居そうな場所か……。とりあえず前のマンションでも行ってみるかと考えながら、俺はバイクを動かし始める。

 

 

 

 

 

 

 

 バイクを走らせている途中、二乃が俺達に対して何故俺達はもう用済みと言う伝言を残して言ったのかを考えていた。あるとすれば、あいつのまた考えってところだろうがあいつも分かっているだろう。俺がその程度で引き下がる男ではないということを……。

 

 

 バイクはあいつらの前のマンションの前へと着くのであった……。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 私は今前の家の高級マンションにやって来ている。それはパパに今の私の覚悟を言う為だ。だから私は此処にいる。そして、パパは今私の目の前にいる。

 

「どうやら上杉君達を認めなければいけないようだ……」

 

「あいつらとは会わないわ。それともう少しだけ新しい家に居ることにするわ。あの生活で私達は少しだけ前に進めさせた気がするの。今日はそれだけを伝えに来たの」

 

 今思っていることを全て言った。今言っている事が正しいことなんかじゃないのは分かっているつもりだ。何より困難な道かも知れないということも理解している。だけど、それでも私はこの選択を選ぶ。未来を変えられるかもしれない選択肢が今目の前にあるからだ。

 

「理解できないね。いい加減わがままは……」

 

 と言い掛けたとき、何処からともなくバイクの音が聞こえバイクの灯りが私達を照らしていた。

 

「やっぱ此処にいたのか、二乃……。帰るぞ」

 

 バイクに乗っている男はそう言いながら、ヘルメットを外しこちらを見る。その男の顔に私は見覚えがあった。見覚えがあったというより今一番見たくない顔だった。

 

 

 

 

 

 

「ソラ……!?」

 

 思いがけないソラの登場に私は驚いていた。

 

「脇城君か……。娘達が随分とお世話になっているね」

 

「思ってもいないことを言うのは止めた方がいいですよ。お義父さん」

 

 ソラは笑顔でそう言っている。

 

「キミにお義父さんと言われる筋合いはないね。娘をどうするつもりだい?」

 

「娘さんはいただいて行きます。それでは……」

 

 私はソラの後ろに乗り、ソラからヘルメットを受け取りヘルメットを被るとソラはバイクを動かそうとしていたが……。

 

「待ちたまえ。キミのお父さんは元気かね?」

 

 と言われると、動かそうとしていたはずの手を止めてただ固まっていた。多分、こいつは今何故自分の父親のことを知っているのだろうと考えていたのだろう。私だって今思った。

 

「何故貴方が俺の父さんのことを知ってるのかは知らないですけど、元気ですよ。なんなら今こちらに帰って来て居るんで今度うちのお店にでも来てみたらどうですか?」

 

「そうかい、それじゃあ今度お邪魔させてもらうよ」

 

「そうですか……。それじゃあ、今度こそ娘さんはいただいて行きますよ」

 

 ソラは今度こそ私を乗せてバイクを走らせ始める。パパの姿は徐々に見えなくなっていき、私はソラの服を掴みながら後ろで風を体に感じていた。

 

 

 

 

「あんた達には伝えたはずよ、もうあんた達は用済みって」

 

「そうか、なら此処からは下りて自分で帰れ」

 

「はぁ!?」

 

 ソラの言葉に思わず大きな声で「はぁ!?」と言ってしまう。今までのこいつなら私の言葉に対して反論してきていたはずだ。

 

「冗談だ、それに今の俺が用済みと言われてはい、そうですかと言う訳ないのはお前も分かっているだろ」

 

 と言いながらあいつはこちらに笑いかける。

 確かにこいつは私に用済みと言われた程度ではい、そうですか。と言うようなタチじゃないということを思い出していた。そういうところがあるから、私はこいつのことが嫌いなのよ。……でも、私はこいつのことが嫌いなのだろうか。そんなことが頭の中で渦巻いていた。

 

 それからして数分間無言が続いていた。私は自分の友達に言われていた言葉をこのとき思い出す。

 

「二乃と空って付き合ってるの?」

 

 あの言葉を言われたとき私はまるではい、その通りです。と言わんばかりに動揺してしまっていた。あれじゃあ、あいつのことが好きですと伝えているようなもの。何故あの言葉を今思い出しているのかと言うと、私は改めてこいつのことが好きなのかと考えていたのだ。先ほど嫌いと思ったこともあってだ。

 

 正直言って、こいつのことは人としては好きなのかもしれない。こんなにも長い間こいつと居るとそんな情まで湧いてきていた。だけど、異性として好きと見ているかと言われると私はそれは違うとも言い切れないのである。

 

 結局のところ私はこいつに惚れているのかもしれない。だけど、その気持ちを伝えるのは今じゃないかもしれない。そして、何より私自身がこの気持ちにまだ疑問がある。だから、その疑問が晴れるまではまだ待とうと思っていた。

 

「おい、お前近くねえか?」

 

「うるさいわね、少しくらい抱きついたっていいじゃない」

 

 ソラはそう言われ、ただ何も言わずに黙っていてくれていた。

 

 

 

 

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