五等分の花嫁 心の傷を持つ少年   作:瀧野瀬

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長女の感情

 三学期もそろそろ終わりを迎える頃、俺はそんな日に珍しく上杉に屋上に来て欲しいと頼まれて俺は屋上にやって来た。屋上にやって来ると、そこにはただ椅子に持たれかかっている上杉の存在がいた。俺は、そんな上杉の隣に座り何も聞かず、ただ黙ってコーラを飲み始める。

 

「空、お前になら言えると思ってな……」

 

 流れゆく雲の数を数えながら俺は上杉の言葉を待っていた。上杉の言葉は俺には少し重く聞こえていた。

 

「知り合いが同級生に告白されたらしくてな」

 

「意外だな。お前ならそういうことは一蹴りすると思っていたぞ」

 

 前までのこいつならそんなことを言われたら一蹴りしていただろう。それを一蹴りもせず、ただ聞いていたということはやっぱり少なからずあいつらの影響を受けているということなのだろうか。

 

「まあ、それもそうなんだが……。そう言う訳にも行かなさそうだったからな」

 

 話を聞いて一蹴りする訳にもいかないと思ったってことか……。

 

「それでお前ならなんて答える?」

 

「そうだな、そいつが返事はいらないって言ってきてたとしても返事は返した方がいいだろうな」

 

 返事を返さなければそいつの片思いで終わっちまうしお互いの身の為にもならないだろうなと思いながら、俺が答えると上杉はまだ何かを考えていた。他人から聞いた話って割には随分と思い悩んでいるんだな。よっぽどの相手からの質問だったのか……。

 

 それとも……。

 

「俺が言えるのはそれだけだ。それじゃあ、俺はそろそろ帰るぞ」

 

 俺はそう言い残し、コーラの缶を缶捨てに捨てて俺は帰るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 祝賀会の日、俺が働いているケーキ屋で五つ子の祝賀会が行われていた。俺の給料から引き抜くと言う言葉は冗談だと今でも思っているつもりだ。

 

 五つ子は何をしているのかと思って俺は五つ子の方を見る。五つ子は店長が作ったお手製のケーキを食べていた。特に五月だ。五月の胃袋の大きさは今に始まったことではないが、少しは自重しろと言いたくなるぐらいあいつは食べていた。店長もその姿を見て「作った甲斐があるね」と笑っていた。俺はそんな店長を見て止めて欲しいと少し思っていたが、今日ぐらいは許してやるかと俺は思っていた。

 

「何か言いたそうですね」

 

 ケーキを食べ終えた五月が俺に話しかけてきた。別にお前に特に言うことなんてないんだがなと思いながら、俺は話を続けていた。あるとすれば、ケーキをいつまで食べているんだと俺は言いたかった。

 

「こう見えても貴方には一応感謝しているんですよ」

 

 俺に感謝か……。こいつが俺に感謝するべきことがあるとすれば勉強のことだろうな。五月に関してだけ言えば、俺と空が半々で教えていたからな。

 

「俺に感謝……?お前がか……?」

 

「はい、テストのことはありがとうございました」

 

 ぶっちゃけ今に思えば効率の悪い教え方をしていたかもしれない。こいつ的には空と勉強していた方が効率が良かっただろうからな。と俺は思っていた。でも、こうやって感謝の言葉を言われるってのは……。

 

 

 案外、悪い気分にはならねえなとは思っていた。

 

「そうか、ならもっと勉強に励めよ。お前はまだ伸びると思うからな」

 

 最近何かがあったのかは知らないが、こいつの勉強の意欲はかなり上がっている。元々真面目な性格な奴なのもあるが、心境の変化とやらでもあったのだろう。心境の変化か、俺もこいつらと出会ってからかなりの心境の変化があった気がする。色々あったが、やっぱりあの花火大会が重要となったのかもしれない。

 

「そう言えば、先ほどから一花の姿がありませんね」

 

 周りを見ると確かに一花の姿がない。他の奴らは祝賀会に参加しているというのにいったいどういうつもりだと俺は思っていた。だが、さっき見たときは居たはずだ。いったい何処に行ったんだ……。俺は「探してくる」と言い、ケーキ屋を出る。ケーキ屋を出て、少し歩き始めると一花のような後ろ姿が見え、俺は「一花」と大きな声で呼ぶ。

 

「あれ、風太郎君。どうしたの?皆と祝賀会に参加しないの?」

 

 一花は振り返りこちらを見る。

 しかし、何処か体調が良くないのかあまり良い表情はしていなかった。

 

「それはこっちの台詞だ。祝賀会を抜け出すとはいい度胸だな。罰として、お前にはケーキ1ホールを食べてもらうぞ」

 

 外に出て何か話していたのか、あの社長と……。

 俺は一花の目を見ながらも、あいつが声を出すのを待つ。

 

「ええ、1ホールも?女優は体型維持で大変だから、そんなに食べれないよ」

 

「冗談だ。こんなところで何をしていたのかは知らんが、早く戻るぞ」

 

「うん。少し落ち着く為に私外に居たんだ。そろそろ戻るよ」

 

 と言われ、俺は歩き始めようとしたときであった。

 

 

 

 

 

 

 一花が俺の手を掴んできた。力強く……。

 俺はそんな一花の姿を見てやはり一花の様子が何処かおかしいと思ったのだ。それに気づいて、俺が言葉を出そうとしたときであった。

 

「私ね……。ずっと言おうとしていたことがあるんだ」

 

 

 

 

 

 

「風太郎君のことが好きかもしれないんだ……」

 

 突然の言葉に俺は何も言えずにいた。ただ黙り込み、俺は一花の言葉を受け入れるのに頭が混乱していたのだ。

 

 

 

 

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