風太郎君のことを好きになったのは間違いなくあのときの……。林間学校の出来事が関係していると私は思っていた。林間学校のあの日がキッカケなのは間違いない。花火大会のあの日ではパートナーとしてまだ風太郎君のことを見ていたから。
「空君、大丈夫かな?」
その日の朝、空君は高熱を出して倒れたのを私達は知った。三玖は心配そうにしていたのを私は見ていたが、私達はただ空君が元気になるのを待っていた。
「空か、あいつのことだ。大丈夫だろう」
先ほどまで私の話を無視していたのに空君の話題については触れた風太郎君。やっぱり、親友だから心配しているのかな風太郎君。
「そうだ。風太郎君に言いたいことがあったんだ。私、学校辞めるかもしれないんだ。おかげ様で新しい仕事が増えて来てるんだ」
先ほどまで空君の話題以外全く私と話す気がなかったのに、風太郎君はこちらを見て「え?本当?」みたいな顔をしながらこちらを見ていた。
「そうか、いいな。やりたいことがあって……」
少し意外だった。風太郎君のことだから凄く怒ってくると思っていたのだ。私はそんな風太郎君を見ていたが、「給料がどうたらこうたら」と言い出したのを見て私は思っていることを風太郎君に告げた。すると、風太郎君は「私が羨ましい」と言っていた。私の何処が羨ましいのだろうと思っていたが、きっと風太郎君はそういうものがないんだろうなと私は思っていた。
「まっ、何事も……挑戦だ」
先ほどまで火を起こそうとしていた風太郎君であったが、風太郎君は火を起こすことに成功し私達は火に照らされながらも私は「此処でキャンプファイヤーを踊ろう」と提案するのであった。しかし、その直後に風太郎君の口から出た「キャンプファイヤーの伝説」と言う言葉を耳にするのであった。私はその言葉を聞いて、少し風太郎君のことを意識してしまっていた。そして、倒れてきている木材に私は気づけず、私は風太郎君に助けられた。
「意外とドジだな」
私はそんな風太郎君を見て初めて彼のことを意識してしまった気がしていた。私はそのまま彼のことを直接見て話すことができずにただ目を逸らして話していたのであった。
これが多分きっと初めて風太郎君を意識した日だろう。他に意識した日があるとすれば、風太郎君を直視できなくなったあの日からだろう。
風太郎君が働いているケーキ屋で撮影を終えたあの日から私は風太郎君のことを直視できなくなっていた。そんな日が最後の試験まで続いていた。私達のお父さんがこの試験を乗り切れなければ再び風太郎君達の処遇を考えると言っていた。だから、私も頑張らなくちゃと思っていた。でも、風太郎君のことを直視できなくて私は少し困っていた。
「なんで好きになっちゃったんだろ……」
三玖と二乃がバレンタインのチョコを作っているのを見ていた私は一人でぽつりと呟いていた。私はきっと風太郎君のことが好きになってしまっていたのだろう。それに気づいたのはあのときだった。私はそんな思いをすぐに振り落とそうとしたが……。
「お前、大丈夫か……?」
私のことを心配してくれているのか、風太郎君はこちらの様子を見ていた。私はそんな風太郎君に驚いてしまい手を誤って打ってしまい三玖達に気づかれていないか気にしていたが、私は気づかれていなくてホッとしていた。
それから、私と風太郎君は本屋に行って私が捨ててしまったかもしれない四葉の参考書を買いに行くことになったのである。これってある意味デートじゃ……。と思っていたが、私はそんな気持ちをすぐに払いのけて風太郎君から本を受け取り、買いに行くことにした。私が風太郎君と付き合ったら風太郎君きっと駄目男になっちゃうだろうな。というのが安易に想像できていた。
私は四葉の参考書と風太郎君が買おうとしていた良い先生になれる本を買って、風太郎君のところに戻るのであった。良い先生になれる本か。風太郎君ならきっと良い先生になれると思うなと思いながら私は本を買いに行った。その途中、クラスの男の子に声を掛けられたが私は少し疲れてしまっていた。
「その手どうしたんだ?」
「帰ろう」と言って私と風太郎君は家に帰ることに決めたのである。風太郎君は私がアパートでした怪我に気づき、私はすぐにその怪我を隠してアパートで怪我をしたことを風太郎君に言う。
「さっきちょっと怪我しちゃったんだ」
「やっぱ、ドジだな。気をつけろよ……」
これ以上好きになっちゃったらいけないのに……。とは思っていた。私はジッと堪えていた。それから、少し経ったある日のことだった。私は三玖に少し相談したいことがあったのだ。
それは風太郎君のことだ。でもその時三玖が言ってくれた言葉を今でも覚えている。だから、私は決心がついたんだ。
「私も後悔のないようにしたい。だから、一花も後悔のないようにした方がいいと思うよ」
その言葉を言われて私はようやく踏ん切りがついた。そう、風太郎君に告白しようと思ったのだ。そして、そのときに私は感謝の気持ちを込めて三玖に私は「ありがとう」と伝えた。
そして、あの日私は風太郎君に告白した。
「風太郎君のことが好きかもしれないんだ……」
冬の寒さは消えて春の兆しがやって来ているこの日に私は風太郎君に告白した。風太郎君は固まってしまっていた。風太郎君、今何を考えているのかな。私に告白されたことが意外と思っているのかな。なんて返答すればのいいか困惑しているのかな。私は風太郎君の頭の中のことを考えながら、次の言葉を口に出す。
「返事は良いから、私が伝えたかったことはそれだけ。それじゃあ、私は戻るね」
私はそう言って、風太郎君の前を過ぎ去って行った……。
私が伝えたいことは伝えた。それだけで私はもう満足していた。