申し訳ありません
「い、五月……、な、なんでソラにお嫁さんに相応しいぐらいになんて言ったの?」
「えっ?え、えっとですね……、それは脇城君と三玖の関係を考慮してなのですが……」
三玖は最早何処から突っ込めばいいのか分からないというレベルだった。頭を抱えて頭痛がしてこの世の終わりだとでも言いたげにしている様子だった。
「何処から突っ込めばいいのかな……」
それもそのはず、自分と空は別に恋愛関係なのではないのだから。恐らくそこを勘違いしているのだろうと三玖は少し冷静になって考えていた。
「私とソラはそういう関係じゃないの」
「えっ!?そうなのですか!?」
「やっぱり勘違いしてたんだ……」
五月が「えっ?違うのですか!?」とでも言いたそうに驚いていた。
「し、しかし……三玖と脇城君の関係は間違いなく恋人なのでは……?こ、この前だって一緒に出かけたと聞きましたし、チョコレートも本命チョコだと聞きましたよ」
「そ、それは……そうなんだけど……で、でも私の気持ちはまだソラに伝えてないの」
「な、何故なのですか?三玖ならばきっと脇城君も了承してくれますよ」
それはそうかもしれない。優しいソラのことなら私の告白を了承してくれるかもしれない。その思いは確かに三玖の中にはあった。
「ちょっと意外、五月は教師と生徒の関係なんですよって言うのかと思ってた」
「それは確かに思うところはあります。私たちは家庭教師と生徒の関係なんですよ」
「……私が考査で一番取ったとき思ったの。あのとき、一番になれば望みはあると思ってた。認められるチャンスさえあればきっと私にも……」
「でも、やっぱり違った」
三学期の考査は三玖が一番点数が高かった。
それを空が褒めてくれたのは三玖は覚えている。だからこそ、少し高跳びして空のことをデートに誘ったのである。
「もっと……もっと踏み込んだことをしなきゃ私に気持ちは伝わらないと思った」
「だからこんなにも回りくどいことを……。三玖の気持ちはわかりました。最後は三玖が決めてください」
◆◆◆◆◆◆
旅行最終日の朝……。
爺さん、いや師匠が言ってた俺が告白されたときそれをどう受け入れるのかと……。俺は受け入れるつもりだ。だから、もし告白されるようなことがあれば俺はそれを受け入れたいと思う。
俺は本物の五月からメールが来たのを確認した。
だが、これが本物の五月が寄こしたメールではないことぐらい分かっていた。このメールを送ってきたのは五つ子の中の誰かだ。
俺はすぐに向かうことにした。
「脇城君、あのときのこと覚えていますよね?」
「ああ、三玖が何で悩んでいるのか当ててやるって話だろ?」
「はい、ですがその前に今目の前にいる私が誰か分かりますか?」
今目の前にいるのが三玖なのか……。俺には今のところ分からない。
正直な話、一花と二乃は分かりやすいことがなんとなくわかった。それはあの二人は香水をつけていることが多いからだ。そして、若干汗のような匂いがするのが四葉だ。朝、走り込むでもしているのか汗の匂いがしてくる。
ただ、問題なのは三玖と五月だ。この二人に関しては正直匂いがイマイチ分からない。
しかも五月は汗の匂いなんてとっくの前に消えているだろうから余計分からない。此処までくればもう"愛"って奴に頼るしかないのかもしれない。
俺は三玖と五月の仕草を思い出そうとした。しかし、今目の前にいるのは棒立ち状態の五月だ。どう仕草で見分けというのだ。それに多分本物の三玖なら変装はお手の物……。
「ん……?」
俺はあることに気づく……。
はっきり言って男として割とクソみたいなやり方かもしれないが、この方法は割と有効的なのかもしれない。
じゃあ、答えは簡単じゃないか……。
「三玖だろ……。前に行ってたよ、五月は変装が苦手だって……」
「私は私のままなのに変装が苦手と言うのはどういうことでしょうか?」
「……あんまりこういうことを言うと本当の五月に怒られそうだけど……体型が五月っぽくないんだよ……。五月はもうちょっと膨よかというか……さ」
この発言をしたとき、目の前にいる五つ子の誰かが笑っているような目でこちらを見ていた。しかし、その目はすぐに真剣な表情に戻っていた。
「他の五つ子という選択肢もあるんですよ?」
「それはないな。二乃はこんな周りくどいことに協力しないだろうし四葉も変装が不得意だ。一花はまあ、俺に対してはそこまでだからな。それに甘い香水の匂いもしなかったからな」
一花は多分俺より上杉に対してこういう周りくどいことならしてくると思う。ただ、三玖に協力しているって線は正直捨てきれなかったけどな。
「……変態ですか?」
「言うな……」
匂いのことに触れれば触れるほど傷つくのは俺の方だ。
これ以上はやめておくべきかもしれない。
「だから、今目の前にいるのは三玖だ……」
長い間の沈黙が続いてしまう。
もしかして、間違えたんじゃないかと思ってしまうほどの沈黙が続いていた。
「よく……分かったねソラ」
「……ああ、でも最後に三玖だって確信できたのは割と三玖のおかげなんだよ」
「私のおかげ?」
「ああ、目の前にいる三玖のこと考えたら何故か三玖との思い出ばかり思い出してきな。多分、それが一番俺に三玖だと教えてくれた」
俺の中で三玖だと理解されてくれたのはそれが一番の理由だった。
話しているときに三玖との思い出が思い出してきたのだ。玖と一緒に勉強し、三玖の悩みを解決してやり、林間学校の一件で三玖と和解して、それから色々ことがあった。そんな記憶が俺の脳裏に過っていた。
「そっか、それで……私がなんで聞いたのか分かった?」
「……多分なんだけど、俺にバレンタインチョコ渡したときに……本命だよって言ったよな」
「……あれは冗談って言ったでしょ?」
二乃前では言わなかったがないわけじゃなかった。
あるとすればこれだけと考えていたのだ。そして、多分……。
「いや、本当だったんじゃないかなって俺は思ってさ……。違うのか?」
再び黙り込み何かを考え始めている三玖を見て俺は少し首を傾げて不思議そうにしていると、三玖は笑いながらこっちを見ている。
「勘違い変態男君には教えてあげない」
「なっ!?お、おい!なんだよそれ!!」
「でも、ありがとうね」