投稿する予定だった話一話抜かしてました。すいません。
「いーや、素晴らしい!!キミは実に優等生だね!!」
ある先生の言葉が俺の耳に響いていた。
この先生は確か……。誰だっただろうか、俺のことをよく褒めてくれていたのは覚えている。俺が陸上部のエースでそして学年でも考査は上位だったことをよく褒めていてくれた。
最後にはいつも「キミは父親の才能を引き継いでさぞ優秀な子なのだろう」と言われて、俺はそれを褒め言葉だと捉えていた。
「脇城さん!目を開けたまま寝るなんて器用なことしないでくださいね!!」
──意識が戻って来る。
「……あ、ああ。悪かった」
どうやら俺は寝ていたようだ。
周りを見ればちょっと笑われているようで少し恥ずかしくなってきていた。ああ、くそ……。なんで寝ていたんだ。
それにあの言葉……。俺の父さんが絡んでるってどういう意味なんだ……。
自分でも分かるぐらい目を上に向けて俺はひたすらに考えまくっていた。
しかし、それでもどういう理由で父さんが俺に試練を与えて来たのか分からなかったのだ。
「どうしたのですか?今日の貴方はいつもの脇城君らしくないですよ?」
オリエンテーションが終わった頃、心配だったのか後ろの席の五月が俺に話しかけてきた。
「ま、まあ……。色々あってな、悪い。ちょっと外出て来る……」
すぐに廊下に出て屋上へと繋がる道に駆け上がり、屋上前で俺は電話を掛ける。
その相手は脇城明彦だ。どういう意味で俺に試練を与えたのか分からない以上、俺にはそれを知る権利がある。
「出ねえ……」
だが、出ることはなかった。
家に帰れば聞き出すことも可能だろう。でも、俺としてはどうしても今すぐ知りたい。なら、マルオさんから聞くしかないだろう。
「もしもし、脇城です」
「脇城君、娘達は元気にしているかね?」
「……はい、元気にしていますよ。今日は少し聞きたいことがあって連絡しました」
「聞きたいこと……?僕に聞きたいことなどあったかい?」
この人、言葉でも顔でも本当に知らないのか知ってるのか分からないのが難問だ。
だが、父さんとマルオさんは関係性はあるんだ。だとしたら今回の一件間違いなくこの人も絡んでいる。
「家庭教師の件です。俺が家庭教師が分不相応である為に武田を家庭教師にしようとしているのは本当のことですか?」
「もう知っていたのかい」
「そう認めるということは今回の一件。父さんからの話があってのことでしょうか?」
「遅かれ早かれキミも知ることだからね。話しておこう」
不思議とマルオさんと話していていつか感じていた恐怖心というものは感じなくなっていた。
なんなら、もしかしたらこの人が考えていることもなんとなく分かってきた気がしてきたまであるのだから。
「キミは明彦先生の息子というのもあって家庭教師に選ばれた一人だからね」
「なるほど、前々から疑問に思っていましたがやっぱり俺が脇城明彦の息子だと思って雇ったわけでしたか……」
ずっと疑問に思っていた。
どうして上杉より成績が劣る俺を家庭教師へと引き入れたのか……。それは今回の話でようやく理解できた。俺がかつての教師である脇城明彦の息子だったからだ。だから、俺も父さんに教えることが出来ると判断したのだろう。
「ああ、その件はキミの想像通りだ。キミも上杉君同様、十分やってくれているようだからね。だけど、今回の件は別だ。明彦先生からの要望もあって今回キミを家庭教師から外させてもらうことになった」
「上杉は……あいつは……どうなるんですか?」
「彼についても私の要望で武田君へと引き継がせるつもりだ」
なるほど、どうやら引継ぎとなるのは俺だけではないということか……。
「父さんが何故俺を家庭教師を辞めるよう仕向けたのは何故でしょうか?」
「それは僕もあまり詳しくはないね。ただ、キミのお父様は……キミの本気が見てみたいと言っていたよ」
俺の本気が見たい……。それはいったいどういう意味なんだ……。
この感じまるで教師だった頃の父さんを思い出す。昔父さんの教え子であった人から教えてもらったことがある。父さんは本気になったとき、いざとならば試練を与えることがあると……。だが、それは大きく成長することを見越してのことだということを言っていたのを今思い出した。
だとすれば間違いない。
これは……。
「父さんからの試練ということでしょうか?」
これは明らかに父さんから俺に対する試練だ。
それ以外のなにものでもない。だとすれば、俺がする選択肢は一つ。
「マルオさん、これを貴方に話しても意味があるのかは分かりませんが俺が分不相応なのが悪いんですよね?それはつまり、俺が相応であればいいということですよね?」
「……ああ、それならばお父様もお認めになるだろうね……」
「分かりました、ありがとうございます……。だから、もし父さんが近くに居るのならこう伝えてください。俺は……」
「上杉や武田に負けるつもりはないと……」
その言葉を投げると、マルオさんの隣で聞いてる誰かが少し笑っているような声が聞こえていた。
やっぱり父さんも近くで聞いていたか……。父さんは俺に元教師として俺に試練を与えて来たというわけだ。なら、俺はそれに全力で答えなくちゃいけない。
そして、その為に俺がまず変わらなくちゃいけないというのは間違いなさそうだ。
変わるか……。そういえば、前に五月にこんなこと言われた気がする。
俺は変わった、と……。
それに該当するものは幾つかあった。あいつらのことをちゃんと見られるようになったし、なにより普通に人と話せようになった。
「変化かぁ……」
電話を切った後、俺は変化について考えていた。
変化があったとすれば、俺の中で決着がついたことだ。
父さんと和解できたことで……。
「それによって踏ん切りがついたってことなのか……」
かもしれない。考える可能性があるとすれば、そうなのかもしれない。
じゃあ、今度は思いっきり変化があると自分にも分からせてやるか……。
「上杉、学級委員長の仕事手伝おうか!?」
「……お前変だぞ」
親友である上杉の辛辣の発言に轟沈しながらも俺は次に見つけた二乃に話しかける。
「二乃、香水の匂い変え……」
「は、はぁ!?ほ、ほんとあんたは……!!」
一階へと戻って来ると、二乃を見かけてた。
思いっきり怒られそうなことを言ってみる。今になって思ってみたが、三玖、五月や師匠が言っていたように人の匂いで判断するのって結構変態だ……。正直今のは自分でも変態だと思っていた。
でもこの程度でめげては駄目だ。
「三玖、何か困ってることはないか?」
「え、えっ?……え、えっと。あっ、そうだ……。私さっきから姉妹の誰かと勘違いされてるからなんとかして欲しいなって……」
話しかけた段階でなんとなく気づいていた。
三玖が若干困惑している。多分、俺は自分では気づいてないのだろうが三玖に話しかけながら歯を輝かせているというらしくないことをしているのだろう。だから、三玖も困惑しているのだろう。
いつもの俺とは違うと……。これも……ある意味変化なのか……。
「四葉、あまり一人で全部抱えるなよ!ほら、俺も手伝うぞ」
「え、えっ!?あ、あっ、はい!!ありがとうございます脇城さん!ですが、これは私が頼まれたことなので!」
教室に戻れば、四葉が教師から配り忘れていたプリント配りをお願いされていた。
やはり何処かいつもと違うと思われているのか、四葉は困ったような表情をしていた。
「五月、三学年のべんきょ……いや、まだ質問とかないか……」
「ど、どうしたのですか?脇城君」
一瞬素に戻ってしまう俺に更に困惑している様子の五月。
「ソラ君どうしたの?」
俺の様子に気づいたのか、一花が少し困惑しながらも話しかけてきた。
「一花か、クラスの方は大丈夫だったか?女優だからって言い寄ってくる輩はいなかったか?」
「私には今のソラ君の方が変に見えるよ」
「……だよな」
再び一瞬素に戻ってしまう俺が居た。
一旦冷静になるべく屋上へと再び戻るのであった。
屋上に行けば、誰も居ない空間が広がっていた。
カップルの一組や二組が居ると思っていたがそんなことはなかったようだ。俺は何も言わず、屋上の厚い厚いコンクリートの上で仰向けになって色々と考えていた。
「これ間違った変化じゃないのか……」
何処か間違っているのに気づいた俺は溜め息をついて少し萎えていた。
間違った変化だということを自分で理解していたからだ。今にもやけくそになって自分が嫌になりそうなとき、上を見上げていると女子の顔が目に入ってくる。
「どうしたんですか」