五等分の花嫁 心の傷を持つ少年   作:瀧野瀬

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長女の決意

 父親の前で誓った空……。

 今日も今日とて学校を目指しながら参考書を片手に勉強に励んでいたが……。

 

 

 

 

「おっはーソラ君」

 

 そんな空に話しかけてきたのは一花であった。

 普段とは違い、眼鏡をかけている姿であり少しいつもとは違っていたが、これは変装の為である。

 

「その眼鏡……変装用か?大変だな、有名人ってのも……」

 

「まさか此処までになるとは思ってなかったんだよねぇ……。あの映画結構有名な俳優さんも出てたみたいでさ……」

 

 この前出演していた映画には有名な俳優が起用されていたこともあり、話題となっていた。

 更に一花が今話題の注目女優と評されたこともあって、有名人となっているのだ。

 

「晴れて有名人になれた気分はどうなんだ?」

 

「うーん、まあ悪い気はしないかな?でも色々と大変だよ……変装してなかったら中野一花さんですか?って聞かれたい放題だもん」

 

 周りを確認しながらも自分が一花だと気づかれていないかを気にしている様子の一花。

 

「それだけ人気があるってことなんじゃないのか?良かったじゃないか?」

 

「そうなんだけどね……あっそうだ。ソラ君授業サボらない?」

 

「そんなコンビニ行くみたいな軽いノリで言うことかそれ……。悪いけど、五月の勉強と俺の勉強の両立で忙しいから無理だ」

 

 何故このタイミングで誘ってきたのか理解できなかった空は一花の提案をすぐに拒否した。

 ただでさえ両立で難しいのにということをぼやきながらも空は走り出そうとしたが、一花に腕を掴まれる。

 

「ちょ、ちょっとだけでいいからさ!本当に!」

 

 

 

 

「はぁ……本当にちょっとだけだからな」

 

 こんなことをしている場合じゃないのに、と少し溜め息を吐きながらも空は一花のサボりに付き合うことにした。

 

 

 

 

 しかし、サボると決めてからも何処へ行くかを考えてはおらず結局二人は自販機で飲み物を買いながら時が流れるのを待っていた。

 

 

 

 

 

「最近学校来れてなくてごめんね……二人共大変なことになってるんでしょ?」

 

「ああ……でも俺達が決めた事だからな……」

 

 全国模試上位に五月を学年五番目以内という厳しい条件でもやり遂げようとしていた。

 それは自らの父親の壁を突破する為でもあったからだ。

 

「私がフータロー君と暫く会ってないこと聞かないの?」

 

「別に……二人の間で何かあったのは間違いないだろうけど……。それは二人の間だけで解決すべきことだろ?」

 

 分かっていた。学校に来ない理由は女優業以外にも理由があると……。

 だが、それを聞き出すことはしなかった。それが上杉と一花の問題であるということを理解していたからだ。

 

「それもそう……だね」

 

 本当は上杉に会いたい、だけど会えば会うほどまた会いたいという気持ちが強くなってくる。

 その気持ちは抑えられない衝動のように強くなり、今までよりも鼓動が早くなる。そんな状況で上杉に会ってしまえばきっと後悔すると一花は悩んでいたのだ。

 

「二乃みたいに上手く出来たらいいのになぁ……」

 

 上杉の告白を取り消した、という行為が未だに正しかったのか分からなくなっていた一花。あのとき、本当はどうすればよかったのだろうかという気持ちが日に日にどんどん強くなっていくばかりだったのだ。

 

「でも……フータロー君の傍っていうポジションだけは譲りたくないな……」

 

 何気なく上杉の傍に居られる立場だけは一花は誰にも譲ることは出来ないと考えていた。

 それは無論、四葉が仮に上杉のことが好きだとしてもと言う気持ちはあった。だけど、長女としては妹の思いを優先するべきなのではないのかという気持ちもあったのだ。

 

「ねぇ、ソラ君一つ聞いてもいいかな?」

 

「なんだ……?」

 

「好きな人にはさ……どうアタックするべきだと思う?」

 

 与えられたチャンスは一度は無駄にした。

 だけど、上杉からの答えはまだ聞いてない。もし、その答えが自分を選ぶということならまだチャンスはあるのではないのか、と一花は考えていた。

 

「一花は俺が昔女子と付き合ってたことあるって……前に言ったか?」

 

 まさか自分の恋愛経験を誰かに話す機会が訪れるとは思わなかった。

 少し笑みを浮かべながらも空は語り始める。

 

「……聞いたことはなかったかな」

 

 少しばかり驚いたような顔をしながらも一花が空のことを見ていた。

 

「俺は中学生の頃……好きな奴にはがむしゃらにアタックしていた。それこそ話を聞いたらドン引きされるかもしれないレベルにな……」

 

 

 

 

「だから……もし一花に好きな人が居るなら後悔がないようにすればいい……。俺は応援しか出来ないけどそれでも一花が結ばれたときにはそのときには……祝福してやるから」

 

 本当は自分の中古傷を抉るような行為はしたくなかったであろう空はそれでも昔のことを語り出していた。応援しか出来ない、それは彼にとってそれ以上は深入りすることは出来ないと言う意志でもあった。

 だが、それでも祝福できるような立場になれば祝福してあげたいという気持ちもあったのだ。

 

「そっか……ありがとう。ソラ君に相談してよかったよ……」

 

 後悔しないようにすればいい、その言葉に一花は突き動かされたような気がしていた。

 その姿を見て少し安心したかのように空は隣に座っている一花の姿を見ていた。

 

 

 

 

 

 だが、この助言が後に五つ子内に亀裂が生じることになるのであった。

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