「上杉……?上杉って誰だっけ?お前知ってる?」
「あーほら学級委員の」
「えっ!?」
私は今上杉さんのことを聞いていました。
しかし、クラスの皆は上杉さんの居場所はおろか……どんな人なのかも知っている感じはしませんでした。もしかして上杉さんクラスに馴染めてな……いえ、多分違うはずです。
きっと上杉さんのことです。クラスに全く認知されていないのです。
それはそれで悲しいですが、今は上杉さんのことを聞かなくては……。
「ねえ、四葉ちゃんあの噂本当?」
「う、噂ですか?」
こ、これは良くない噂の予感がします。
学級委員長として見過ごすわけには……。
「上杉さんと付き合ってるって……」
「うぇっ!?」
思わず変な声を上げてしまう。
わ、私と上杉さんが付き合っている。ど、何処からそんな噂が立つようになってしまったのでしょうか……。も、もしかして私が上杉さんを学級委員長に推薦したことが関係しているのでしょうか……。
確かに言われてみればあの行動……。そういう思いがあると勘違いされるかもしれません。
私は必死に否定しますが、クラスの生徒からは「上杉さんの方は満更でもないかもしれない」と言われました。
「ど、どうなんでしょうか」
「なにが学級委員長だ……やらされるのは雑用ばっかじぇねえか。こっちは終わったぞ、お前の方は?」
今日の学食で五月に学級委員長を変わって欲しいというのを断れてしまいました。
それだけではなく、体育の時間……。クラスから私が上杉さんと付き合っていると噂されていました。どうすれば、どうすればいいのでしょうか。なら、脇城さんが好きそうな三玖に頼めば……。いや三玖はこういうこと苦手ですしどうすれば……。
「半分寄越せ……お前さっきからどっか上の空だぞ」
「はぁ!?俺とお前が付き合ってる!?」
思わず悩んでいることを上杉さんに打ち明けてしまいました。
これで良かった訳がないとは思いますが、それでもいつまでも悩んでいるよりはマシだと思って打ち明けることにしたんです。
「仕方ないですよ、女の子はこういう恋バナ好きですから……。あーでも上杉さんはこういう話お嫌いでしたよね」
「……いや、そうでもないな」
「そうなん……ですか?」
上杉さんは前にこういう話をされるのは心底嫌そうでした。
まるで自分には関係ないと言いたそうな顔をしてゴミでも見ているかのような言い方をしていました。
「色々あってな……まあ真剣な形を見せられると人は変わるってことだ」
「もしかして好きな人が居るとか!?」
その言葉に上杉さんは言葉を詰まらせていた。
当てずっぽうにただ言ったこの発言……。もしかして上杉さんに響いてしまったのでしょうか……。
「もしかして……一花とかですか?」
上杉さんの体がピクリと動いた気がしていた。
もしかして上杉さんは……。
そうですか、上杉さん……。上杉さんが一花のことが好きだというのなら私はそれを影ながら応援したいと思います。それがきっと上杉さんにとっての幸せにもなりますから……。
◆◆◆◆◆◆
私は今考えていた。
それはソラに日頃の感謝を伝える為に何を渡そうかと考えていたのだ。
ソラの好きな物を考えればいつも飲んでいるコーラが浮かんでくるけど、コーラだと流石にどうかと私は思い色々考えていた。本人に直接何が好きと聞くのが一番効率が早いのは間違いないだろう。それをしないのは、私のプライドが許さないのかそれとも単純に聞きづらいかのどちらかだった。
クラスに聞いても私の場合、返しに私達五つ子のことを聞かれてそれどころじゃなかった。
みんなソラの好きなものをコーラだとしか知らなかったみたい。私もソラの好きなもののイメージは確かにコーラしかなかった。
「三玖此処に居たんですか」
「どうしたの四葉?」
私は今図書館に来ていた異性に渡すべきプレゼントは何がいいか調べていたところだった。
調べても調べてもどちらかと言うとカップル向けのものが多かった。私とソラはそういう関係ではないし、そういうのを渡してもきっとソラは困っちゃうに違いない。
「脇城さんが今居なくて体育委員会の人が必要なんです」
体力がないから私には無理だなんてことは分かっていた。
それでも少しでもソラの近くに居る為に私は体育委員会に入った。二乃と一騎打ちのじゃんけんで見事敵将を討ち取って手に入れたんだ。ちゃんとやらなくては……。
四葉に出された指示の通り、私は体育道具の点検を行っていた。
「お、重い……」
四葉は急ぐように何処か行ってしまったみたいだし誰かに手伝ってもらおうにも何故か表の体育館は誰も使っていなかった。
「私って運ないのかな……」
歴史のゲームでもいつもこっちに風向きが来ているときに確率の低い特性を発動されてしまう。戦法を変えたり、囲んだりしてなんとかなることが多いけどそれでも兵力がどれだけ減らされてしまったの気になってしまう。
「悪い三玖、遅くなった!女の子一人に重いものを持たせるとは俺は男失格だ、切腹でも市中引き回しの刑でもなんでも命じてくれ」
「じ、じゃあ……市中引き回しの刑で……」
重たいものを持っていた状態であった為、ソラの話を聞いてるほど暇ではなかった。
その二つの中でも切腹より市中引き回しの刑で晒し者にしてあげた方がいいと少し自分が微笑んだような気がする。
軽く感じるようになったそのカゴはソラが持つのを手伝ってくれた。
真正面から見えているソラを少し見つめていた。揺れている少し短めの茶髪に両耳にはピアスが入っている。綺麗な緑色の瞳……。こんなソラを二乃は昔は地味と言っていのは節穴にも程がある。
「どうした三玖?」
「な、なんでもない……」
見つめ過ぎていたからか私がソラが視線を向けていたことに気づいたのかもしれない。
最近、私はソラのことを少し意識し過ぎている感じがする。『変態勘違い男君』なんてことを言ってしまったけど、あれは良かったんだろうか。あの後もソラは私に話しかけてくれていたけど、本当は気にしていたなんてことはない……よね。
「これで全部だな」
体育道具の点検を終えた私とソラはベンチで休憩していた。
まだ春先だと言うのにさっきまで重たい道具を持っていたりしていて私は汗をかいていた。
「四葉らしい……」
携帯を確認すると、手伝わずに違うところに行ってしまったことを謝っている連絡が来ていた。『帰ったら切腹』と冗談で伝えて私は携帯をしまった。
「ねえソラ……どうしても聞きたかったことがあるんだけど……」
今まで聞きづらいだとか、プライドで聞こうとするのはやめていた。
だけどやっぱり此処はちゃんと本人に聞くべきだと思っていた。
息を整えて私はちゃんとソラの目を見て聞こうとする。
「ソラは何がされるのが一番好き?」
形あるものより記憶に残るものでソラとは残していきたい。
「そうだな、例えば好きな人とかなら……一緒に居る時間とかかな」
「大切な時間になるし、きっと思い出にもなると思うからさ」
ああ、そうだ……。私がソラを好きになった理由の一つはこういうところだ。
拒まれようと助けようとするその姿勢……。そしてもう一つが……子供のように無邪気なその笑顔……。
私はその笑顔が好きだった。
「やっぱり二乃に絶対譲る気にはなれないな」
少し行き過ぎた考えかもしれないけど、この笑顔を私にだけ見せて欲しいとすら願ってしまうほど私はその笑顔が好きだった。くしゃっとして首を少し曲げた要素の笑顔が私は大好きだった……。