五等分の花嫁 心の傷を持つ少年   作:瀧野瀬

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すいません、今後の大まかなあらすじを決めたりしたり新年早々インフルに掛かったりとしていまして投稿の方遅れました。


再会

 その声は少し震えていた。

 だけど、その声から聞こえてくる声はかつての優しくて何処か安心感を感じさせてくれる声なのはあの頃から変わっていなかったようだ。

 

「久しぶりだな、優莉……。一年半振りぐらいか?」

 

 あの一件以来、俺は優莉と連絡することは全くなかった。

 自分から連絡するなんて考えたこともなかったし、なにより俺は彼女に電話をしたくなかったからだ。電話を掛ければ、あのときと同じことを言われると思っていたからだ。

 

 今だって本当は電話を掛けているのが怖い。

 怖いけど、俺はあのときと決定的に違うものがある。それは側に二乃が居てくれていることだ。誰かが側に居てくれるだけでこんなに違うのかと俺も驚いていたが、俺はそれが少し嬉しかった。

 

「ごめん空……私のせいで……」

 

 泣き始める優莉の声を黙って聞いてきた。

 二乃が俺から携帯を取り上げようと何度かしていたが、俺はそれを回避していた。二乃に携帯を貸したら何を言い出すか分かったもんじゃない。今貸すのはダメだ。

 大方、泣けば許されると思っているの!?とでも言い出すに決まっている。それじゃあ、話が遠ざかるだけだ。何か言いたげにしながら貧乏ゆすりをしている二乃を横目に見ていると、優莉の泣き声は止まった。

 

「空、どうしても話したいことがあるの……今から空の住んでるところに行ってもいい?」

 

「いや、俺から行くよ……まだ京都に住んでるだろ?だったら俺から行く」

 

「でも……私は空に迷惑をかけたし私から……」

 

 その瞬間、二乃の手が俺の手と触れ合い携帯を落としてしまう。

 俺は急いで携帯を拾おうとしたが、二乃に取られてしまう。二乃は拾い上げた携帯を見てから、俺の方を見て含みのある微笑みを見せせていた。

 

「あんたは京都で待ってなさい!いいわね!」

 

 余計なことを言うな、と指摘しようとした瞬間と同時に二乃は声を出していた。

 

「一発殴ってるから絶対待ってなさいよ!!」

 

 そのまま電話を切り、何も言わずにスマホを俺に返してくる二乃。

 

「お前な……幾ら何でも強引過ぎるだろ」

 

「知らないわよ」

 

 と言っても、あのまま話を続けていてもお互い一歩も引こうとせず話は平行線のままになっていたかもしれない。そこだけは二乃に感謝すべきかもしれない。ちょっと強引だった気はしなくはないが……。

 

「それで結局二乃もついていくのか?」

 

「当たり前じゃない、あんたの元カノに一言言ってやらないと気が済まないわ」

 

 仕方ない、二乃の同行を許すとしよう。

 此処でダメだと言っても、二乃は引き下がろうとしないだろうし絶対についていこうとするだろう。だったら、最初から自分の目に入るところに置いておいた方が優莉に何かをしようとしてもすぐ止められるだろうしな……。

 

「一言というより、一発殴るって思いっきり言ってた気がするんだがな……」

 

「悪かったわね、他に言い方なかったのよ」

 

「いや、もっと言い方あったと思うんだが……。まあ、いいや。とりあえず、優莉に会ったからって殴るような真似はしないでくれよ」

 

「わ、分かってるわよ……」

 

 

 

 

 俺達は電車を使って移動を開始した。

 その後、新幹線に乗り継ぎ二乃から受け取った弁当を片手に俺は優莉から送られて来ていた住所と睨めっこしていた。優莉の奴、今住んでいる住所と前の住所が違うな……。あのとき噂も立てられていたし引っ越ししたのだろうか。

 

「あんたその優莉って子と会ったら何を話すつもりなのよ」

 

「俺はあの日本当は何が会ったのか知りたいだけだ」

 

 あの日何が起きたのかを俺は知りたい。

 もし、あの日の真実の裏に本当の真実があるんだとすれば俺はそれを知りたいんだ。

 

「あの子が憎いとかそういう感情はないの」

 

「……ないなんて言えない」

 

 俺の心の奥底では優莉のことを憎んでいる可能性もあるのかもしれない。

 あの一件はかなり俺のことを変えてしまうほどの大事件だったのだから。そこに本当の真実があったとして俺は優莉のことを許せるだろうか。

 

 いや違う。

 俺はきっと優莉のことを許せるはずだ。あの事件からかなりの時間が経過した今だからこそ冷静に物事を考えることが出来るはずだ。だから、優莉の話を聞いてそれから許すか、許さないかは俺が決めたいと思う。

 

「いいんじゃないの?それでも……訳があってすぐに許せるほど人間出来てる訳じゃないでしょ」

 

「それもそうだな……」

 

 まさか二乃からそんな言葉が返って来るとは思わなかったけど、確かにその通りだと考えていた。

 人間の心は俺が思っているより複雑だ。許すと言っても心の奥底では許せないなんてことはありえるかもしれない。それこそ時間が経過してくれるのを待つしかない、と言った感じに……。

 

 だけど、それでも俺はやっぱり優莉の話を聞いて考えたいと思う。

 それがきっと正しい選択になると思うから……。

 

 

 

 

「京都駅だな」

 

 京都駅に着いた俺達は荷物を持って、新幹線から降りる。

 それから京都駅から少し離れた駅に移動して優莉から送られた住所へと向かった。

 

 会ったら何を話そうか、何を話せばいいのだろうか。

 あのこと以来のため、何を話せばいいのか分からないというのが正直なところだ。普通に接すればいいんだろうか。

 

 

 

 

「着いたわよ」

 

 気づけば俺達は優莉の家の前まで辿り着いていた。

 思ったより早い到着に俺は心の準備が完了していなかったが、ゆっくりと深呼吸をしながら玄関を開けようとすると先に内側から扉が開く音が聞こえてきた。

 

 

 

 

「空……!ずっと……ずっと会いたかった……!!」

 

 

 

 

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