五等分の花嫁 心の傷を持つ少年   作:瀧野瀬

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次女の気持ち

「二乃が好きなのってソラ君でしょ?」

 

 家族旅行のあの日、私は一花を呼び出して温泉に来ていた。

 あることを一花に聞き出そうとしていたが、どうやら一花にはお見通しの様子であった。

 

「な、なんで分かったのよ……」

 

「そりゃあ二乃って分かりやすいからね」

 

「まさかあんたにバレているとはね……」

 

 他の姉妹や空には絶対バレないようにしていたつもりなのにまさかバレているなんて……。

 それとも私って案外分かりやすいの……かもしれないわね。そんなはずはないと思うけど……。

 

「そうね、そうかもしれないわね。出会いはまあ……悪いものではなかったかもしれないわ。最初こそは風太郎と同様とっとと帰らせようと思ったけど、あいつも私と同じで料理が得意と分かったから話をしてみたいとちょっとは思ったのよ」

 

 実際あの出来事が無ければあいつのことを気になることもなかったかもしれない。それでイライラしたこともあったけど、今は違う。今はあいつのことを知ろうとして良かったと思っている。

 

「それから色々あったわ。あいつに失望することもあったけど……。今は違う」

 

 あいつに失望したのは三玖を泣かせたから……。

 今でも三玖のことを泣かせるようなことがあれば私はあいつのことを許せないと思う。

 

「今はあいつのことが好きよ」

 

「それが誰かを蹴落とすことになっても?」

 

 

 一花の言葉に私は何も言うことができなかった。

 

「な、なによ……いきなり……」

 

 決意を何度も曲げそうになったことはあった。それは三玖のこともあったからだ。三玖はソラのことが好きだ。きっと私が三玖のことを蹴落とすこそがあっていいのだろうか。私だって三玖のことを泣かせたくない。泣かせたくないからこそ、今取ろうとしていた行動が正しいのか迷っていたのだ。

 

 私は一花の言葉に答えることが結局出来なかった。

 結局、旅行の最後の日になっても一花の言葉が頭の中でいっぱいだったのだ。

 

 いつもの私なら恋愛を目の前にして恋敵よりも先に相手のことを自分のものにしようとするだろう。

 それが姉妹の誰かも一緒に好きになっているという事実にどうすればいいのか分からないでいたのだ。

 

 

 私が答えを出せないでいる、そんなとき……。

 私は優莉と出会った。

 

 優莉はこう言っていた。

 恋愛は押してこそだと……。私もあの子とのことがなければそういうふうに思うこともあっただろう。

 

 後悔したくない……。

 その言葉を聞いたとき、私の心が燃えたようなそんな気がしていた。間違いない、私の心が押すなら今と言っているのだろう。だったらやってやろうじゃない。私が今覚悟を決めて彼にもっと近づこうとしようとしていたのだ。

 

 

 

 

「お前なにして……」

 

 唇と唇を触れ合った後、ソラは呆然としていた。

 私がキスを仕掛けて来るとは考えもしなかったでしょうね。だけど、優莉のあの言葉を聞いた以上私は引くわけにはいかない。例え、三玖を泣かせることになっても私は私の幸せを掴んでみせる。

 

「これが私の気持ちよ」

 

 私はそう言ってその場から離れる。

 私は私の気持ちを伝えることに成功した。後は空の返事を待つだけ。あいつがなんて返して来るかは分からないけど私は後悔のしない選択を選んだ。

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 二乃がどうしてあんな行動を取ってきたのかは俺に分からない。

 だけどこれだけは言える。あのキスは間違いなく俺のことが好きだという意思表示に決まっている。自信過剰もいいところだが、そうとしか考えられない。

 

 キスをするということはそれだけ重要なことなのだから。

 

「優莉、今日はありがとうな」

 

 駅前で俺達は優莉に見送られようとしていた。

 とりあえず今は二乃のことより目の前のことに集中した方がいいだろう。今は優莉と話しているのだから。

 

「こっちこそありがとうね」

 

「また連絡するから」

 

「う、うん……!?」

 

 体を少し不安そうに揺らしている優莉を見て俺は軽く抱きしめた。

 そっと抱いた優莉からは不安が消えたのか揺れは消えていた。

 

「絶対連絡するから」

 

「う、うん約束だよ……」

 

 手を徐々に離していくと、優莉は少し嬉しそうにしている表情を見せていた。きっと優莉は俺と離れるのが寂しいという感情があったのだろう。自分のしたことがあったとはいえ、それでも今でも俺のことを大切だと思ってくれている。

 それが俺には限りなく嬉しかった。

 

 二乃の視線を感じて俺は優莉から離れると、優莉が「ありがとう」とお礼の言葉を述べていた。

 

「それじゃあ、じゃあね空。元気でね」

 

「ああ、元気でな」

 

 優莉に手を振りながら俺は改札口を通って行くのであった。

 二乃は優莉と何かを話した後に改札口を通って行った。内容が少し気になっていたが、先ほどの件もあって俺は話しかけづらいのだ。何故、二乃は俺に唇を重ねてきたのだろう。考えれば考えるほど自分の中で煩悩と呼ばれるものが多くあることに驚きを隠せないでいた。

 

 優莉のことを抱いているときも正直嬉しくてしょうがなかったから……。俺と言う人間はなんとも煩悩だらけの人間だということを嫌でも自覚させられる。

 

 

 

 

「ソラ、少しついてきなさいよ」

 

 新幹線に乗って座っていると、二乃が俺に話しかけてくる。

 俺は二乃の後ろをついて行くと、トイレの前に呼び出されると二乃は止まるのであった。

 

「二乃……さっきのことだが……」

 

「そのさっきのことであんたを呼びだしたのよ」

 

 

 

 

「返事はいつでもいいわ、だけどこれだけは伝えておくわよ」

 

 

 

 

「私は諦めが悪いわよ」

 

 

 

 

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