ソラの渾身の告白の言葉は私の耳に響いていた。
目を閉ざして何もない真っ暗な世界に居たとしても彼の姿、彼の告白というものは聞こえていた。そう、そういうことね。既に私の中で彼というもので彩っていたのね。あいつからは色んなものを貰ったような気がする。ウザくなるほど目障りでこっちが面倒に感じるときもあったけど、私は悪くないと感じていたからこそあのとき行動したんだろう。
『私は諦めが悪いわよ』
新幹線の中での出来事……。
あれは少し大胆な行動をし過ぎたのかもしれないけど、私にこれからにとって一番重要なことだと分かっていたからこそ止まる訳にはいかなかった。あそこでああ行動していなければ私は今も彼のことを諦めようなんて気持ちになれなかっただろう。
恋を押してこそ……。
そうね、そうよね優莉。確かに優莉が言っていたように恋というものは押して行かなければ伝わることがない。言葉にしなくちゃ伝わらないことだって世の中にはあるのかもしれない。それを私はソラに伝えることが出来たけど……。
『これは全部私の責任よ』
一花に三玖の告白を邪魔するように指示したとき、私は三玖達を苦しめることに関しては頭から抜けていた。自分が幸せになることしか考えておらずそれ以上のことは何も考えていなかったからこそあんな結果になってしまったんだろう。
『もう止めにしようぜ、二乃……。お前らしくもないだろ、こんなこと……』
私がソラを振り切るために、一花に変装をしたとき自分の気持ちを誤魔化すということに対してモヤモヤとした気分になりながらもその気持ちを誤魔化しつつ私は彼から逃げようとしていたがすぐにそれはバレてしまった。
ソラは変装していた私をすぐに私だと見抜いていた。
私は嬉しかった。昔お爺ちゃんやお母さんが言っていたことがあった。私達のことを見分けられるのは「愛があるから」だと……。それをいつも記憶の中にあった私としては本当に嬉しかった。ソラがちゃんと私のことを見分けられていると……。あの家族旅行のときにやった五つ子ゲームのときは私のことを見分けることなんて出来ていなかったあいつが……今では普通に私のことを見分けることが出来ていると……。
けれどそれでも私は自分の嬉しさより自分がしてきたことの罪の方を大切で彼への告白を拒絶したくてしょうがなかった。私なんて最低のクズよりソラのことをちゃんと大切にしてくれる三玖のことを選ぶべきだと……。
『三玖の最後に言っていた言葉……聞いてなかったんだな?』
私が彼のことを拒絶しているなか、彼は三玖が最後に言っていた言葉という話題を出してきた。
三玖が言っていた言葉……?私に対する恨みや憎しみの言葉……。そんなところよね、あの子にとって最大の機会を私は奪ったのだから。
『三玖は俺にこう言っていた、最後は自分の力でソラに告白出来たからと……』
続けるようにしてソラは言葉を口にしていた。
悩みがありつつも三玖はソラという異性に対して正攻法で告白することに成功した。私も私もああ出来れば良かったのかもしれない。いや、いつもの私ならきっと出来ていたのかもしれない。三玖に負けるのが怖いという気持ちがあまりにも強くなってしまった私は弱腰のまま何も考えず一花の力を借りて一花を苦しませてしまったのだから。
「だから……俺もそんな三玖を見習って言わせてもらうぞ。俺はお前のことが好きだ、二乃……!!」
そんな三玖を見習う形でソラは私に愛の気持ちを伝えて来ていた。
愛しているという言葉を伝えることがどれだけ大変なことか、私には知っている。新幹線のなかでしていたあの行動だって私の中では後悔はないけど、彼に嫌がられたらどうしよう?とか嫌な思いをさせてしまったらどうしようか?とそんな気持ちがあったのだから。
でも今はそんな気持ちよりも一番彼の言葉を聞いて思い出していたことがあった。
どんなことが起きても諦めず、自分の傍で一緒に姉妹を探してくれた彼のことを……。
小学校の修学旅行のとき、私ははぐれた四葉を探していたとき私もまた清水寺の中で迷子になっていた。「どうしよう?」となっているとき、彼が手を差し伸べてくれた。今にも思えばあのときの彼は間違いなくソラだった。
お節介なところが特にそっくりだった。
私がもう姉妹のことは一人で探すからいいよと言っても彼は諦めることなく一緒になって探してくれていた。京都弁という珍しいものを聞かせてくれたし、私のことを強いとも言ってくれた。私なんて強くないわよ……。でもそれでも心の底から嬉しかった。助けてくれた彼に強いと言われて本当に嬉しかったんだ。
だからあの日私は彼にちゃんと言った。
自分が強くないということ、自分が弱いということ。弱いからこそ強くなって、姉妹たちを守れる存在でありたいと……。彼は私の誓いに対してこう言っていた。誰かのためになれる人間になりたいと……。
ソラ、あんたは優莉のことを、周りのことを守れなかったからきっと誰かのためになれる人間にはなれなかったのかもしれないと思っているのかもしれないけど……。私のことをこんなにもアンタが思ってくれている。それだけ私はアンタがあのとき言っていた誰かのためになれる人間になるという誓いは叶っているわよ。
ねぇ……三玖。
アンタがもし今同じ立場だったらどうする?アンタは私のようにこんな回りくどいことはしないかもしれないけど、アンタがもし私の立場になって目の前でソラに追い詰められているこの状況だったらアンタはどうする?
逃げられる訳ないわよね……。
アンタと私……。同じ人間のことを好きになった、衝突する未来はきっと変えられることはなかったのかもしれない。修学旅行が始まったとき言っていたものね、決着をつけるって……。だったら此処は泣き言を言う訳にはいかないわよね。それにアンタにまで援護をされたんだから此処で逃げる訳にはいかない、それでも確かめておきたいことがある。
私がソラと付き合うことで嫌なところを愛してくれるのか、と問いかけていたがソラの答えは既に決まっていたわ。彼はにこやかな笑顔で小学校の修学旅行のときのようにくしゃっとしたような笑顔で私に笑いかけていた。
「よろしく頼むわソラ……」
聞きたかった答えが返ってきた。
これ以上もう望むことは何もない。
◆◆◆◆◆◆
「良かったねソラ……二乃」
二人の告白を見届けた三玖は二人からバレないように風の如く出て来て一花達がいる方へと向かうのであった。
「四葉……五月……パン作りとか天ぷら作りだとか手伝ってくれてありがとうね」
一花達もソラの告白を見届けた後、少し高い位置から見ていた三人はそこから降りて来て街中へと戻って来ており、三玖が一花達のところへ戻って来て一花は少し三玖の方を見て少し暗い表情をしていた。
「後あれは……五月のだよね」
「は、はい……」
五月は聞かれたくないことを言われてしまったと少し恥ずかしくなっていた。
元々あの下着は自分が勢いで買ってしまったということは四葉以外にバレないで済んで良かったと思っていた。
「それと……一「ごめん、本当にごめんね三玖っ!!」」
一花は三玖に謝罪をしながらも彼女のことを包むようにして抱いていた。
一花は今回自分がずっと取り返しのつかないことをしたという気持ちになっていた。四葉や空や風太郎に話してもそれは晴れることもなく三玖に謝らなければならないという気持ちがあったからだ。
「気にしないで一花、私は最後までちゃんとやれたから……そして……」
空のもとから戻って来た二乃が三玖の前に来て何をどう話せばいいのか迷っている様子だったが、二乃は息を吸ってこう言うのだった。
「私が絶対ソラのことを幸せにしてみせるから……もし幸せに出来なかったら殴ってくれていいわ!」
「うん……絶対に幸せにしてね二乃……ソラ」