女優、私にとって夢も同然だった。
社長にスカウトされたとき私はあまり乗り気じゃなかった。女優なんて仕事、私には大きな仕事だと思っていたから。
『いや、キミならばきっといい女優になれるかもしれない!!話だけでもいいからどうかね!?』
社長の押しにおされて私は話だけでも聞いてみることにした。
事務所に来て思ったのはまず、此処が芸能人の事務所なのかという感想を抱きながらも私は話を聞いていた。その中で私は自分自身の中で決意めいたようなものが出来たのは家族の中で女優が出てその子が家族に胸を張れるような女優になりたいという話を聞いたときだった。
その話を聞いて私はもしかした自分もその一人になれるのかもしれないという夢を抱くようになっていた。これから先、女優になって姉妹に胸を張れるような一人前の女優になれたとき、私はみんなに私は女優なんだよ、と打ち明けたいという気持ちが強くなっていた私は社長にこう言った。
「私、やってみたいです女優」
社長は待っていましたと言わんばかりに私の手を握りながらも「これからもよろしく」と言っていた。それからというもののは凄く忙しくて大変だったという訳でもなく。所謂ちょい役と呼ばれる作品に呼ばれたり、B級みたいな匂いがする作品に呼ばれたりすることの方が圧倒的に多かった。それでも私は「地道に続けて行くことが大事だから」と言われて、私は女優という道を一歩、一歩踏み締めていた。
そして、今ではCMに出たり映画に出たり引っ張りだこの人生が続いていた。
怠けていた私の人生が凄く忙しいものになってしまったのは大変だったけど、悪くないものだった。だって……。
姉妹のみんなやフータロー君達が応援してくれているから……。
『これで最後なのよ!?私達が同じ学校に通えるのはそれでもアンタはその道を選ぶっていうの!?』
二乃には……皆には凄く悪いことをした。
二乃の言う通り、学校をみんなで卒業できるのはこれが最後。悲痛に叫んでいた二乃の想いを育んであげたい気持ちは凄くあるけど、私は女優としての道を進みたい。これはもう私が決めた事だから、この道を進みたい……。みんなが私のことを応援してくれているから……。
◆◆◆◆◆◆
中野父から電話で一花が学校を辞めて女優に専念するという話を聞いたとき、俺は少し自分が持っている携帯に力が入っていたような気がしていた。五人で笑って卒業が後半年ぐらいで出来るかもしれない、というときに新たな壁がぶち当たろうとしていた。とあいつらの家へと向かっていると、空から電話が掛かって来る。中野父から今朝、一花が学校を辞めるという話を聞いたようで空だったが、俺が「一花のことはなんとかする」と伝えると、空は「頼んだぞ、風太郎」と言って電話を切っていた。
「
きっと一花も悩みに悩んで決めたことだろう。
それを否定するつもりは俺にはないが、それでも一度決めた五人で笑って卒業をひっくり返すことなんてしたくはなかった。俺は一花に会うために急ぐようにしてあいつらの家へやって来ていた。運動があまり得意じゃない、俺の呼吸は乱れていた。一度休憩するかのようにして玄関で背中をくっつけていると、バスタオル姿の四葉が俺の方へとやって来ているのに気づきながらも、四葉から一花は学校にいるという情報を得て俺はすぐさま家を出ようとしたときだった。
「上杉さん……!!」
「一花をお願いします!!」
四葉から一花のことを託された俺はその想いを背負ったまま、一花がいる学校の方へと向かって行った。あいつが学校に行ったのは恐らく職員室に行って退学の旨を伝える為に決まっている。それだけはなんとか阻止しねえと……!!
◆◆◆◆◆◆
みんなが一花のことを話している声が聞こえている。
凄く大きな声で一花のことを「有名人は凄いなー」と言っている声が聞こえてきて、私は少しばかりそれがおかしく聞こえていた。確かに一花は女優で有名人なのかもしれない。それはきっと変わらないと思うけど、私は今此処にいるのは姉妹の長女の一花としか映っていなかった。
「三玖……」
学校の校門の上に登っている私に気づいた一花が私のことに気づいたのを見て、私は校門の上から降りると、一瞬フラつきそうになったのを見て一花が「大丈夫?」と言っているのが聞こえていて、私は「大丈夫」と答えていた。
「学校には言ったの?」
「うん、応援してくれるって……。これでもう戻れない」
「私には女優しかない。覚悟が決まった気がするよ」
違う、一花は今も迷っている。
本当にみんなで卒業と言う道を選ばなくていいのかって……。自分が選らんだ道を正しいと思わせる為に逃げ道を自分で潰そうとしているんだ。
「そうかな?一花ならなんでも器用にこなせる気がするけど……」
「流石にそれは無理だなって分かったよ。両立なんてできるなんて現実は甘くなかった」
自分に言い聞かせることで自分の逃げ道を確実に潰そうとしている。
確かに一花にとって女優という職業は目指したいものなのかもしれない。それでも私は疑問が残り続けている。
「……修学旅行のことまだ気にしてる?」
「ソラのことなら、大丈夫なんてはっきりとは言えない。それでも私は自分のやれるだけのことはやって二乃に負けた。だから、あのときもし一花が私の邪魔をしてなかったとしてもきっと選ばれたの二「違うよ三玖……。本当のことを言えば、私だって……」」
「皆と一緒に卒業したいよ」
「それなら……」
「なんちゃって……ありがとうね三玖、帰ろっか!!お腹空いてない?帰りにクレープでも食べに行かない?」
駄目だ、私じゃ一花を止めることが出来ない。
一花は私に遠慮している訳じゃないのはなんとなく分かった。一花はきっと自分が叶えたい夢の為に、私たちの方から離れようとしている。夢を持っていることは私は凄く羨ましい、応援したい気持ちはあるけど、私は此処で止めないといけなくちゃいけないと感じていた。
「私じゃ駄目……」
自分の弱さを痛感しながらも私はある人を待ちながらも一花と一緒に帰り始めようとしていた、そのときだった。
「よぉ……一花、三玖……!!」
◆◆◆◆◆◆
「一花、お前に話をする前に聞いておきたいことがある。お前はどうして女優を目指したいんだ?」
再び息を切らしながらも今度こそ俺は一花の前に立つ。
「フータロー君、その話なら花火大会のときにしたはずだよ。私は長女として胸を張れるようになる考えてるって……」
確かにこいつの言う通りだ。
花火大会のあの日……あいつはタクシー乗り場の前で俺に同じことを言っていた。あの後、あいつは見事オーディションを勝ち取って見せていた。あのヒゲ社長の采配のおかげもあるんだろうが、あいつのあのときの演技はテレビを全く見ない俺にも見張るものがあったのは間違いなかった。
「あのときは姉妹の為にという気持ちがあったのかもしれない。俺が聞きたいのは……」
「
俺はこいつに話をするまえに聞きたかったというのはこういうことだ。
今この場において最も言うべきことは俺が言いたいことだが、まずは女優としての意見を聞いてみたい。
『次の道を見つけてこその卒業……!俺はあいつらの夢を見つけてやりたい……!!』
中野父の前で誓ってみせたあの言葉……。
俺はあの言葉は今も変わることはない。一花が女優を目指したいというのをやめろというつもりもない。ただ俺がそれでも俺の意見が変わることはないだろうが、こいつが何処まで女優として本物になりつつあるのかを俺は知りたかった。
「女優として中野一花としてどう目指したい、か……。結構難しい質問をするんだねフータロー君」
「ああ、悪いが……答えるまで答えを通すつもりはない。それに俺の言いたいことを言うつもりもない」
「じゃあ教えてあげる。一つだけ言えるとしたら、それは……」
「フータロー君や姉妹の皆が私のことを応援してくれるからだよ。周りの皆が私に声援を送ってくれる。それが本当に嬉しくてしょうがなかった、初めてそれを感じたのはフータロー君が私に意地悪しながらも先生役をしてくれからだよ。だから私はあのときオーディションを合格することが出来た。姉妹に打ち明けて、みんなが私の夢を応援してくれた。勿論、私が女優になっていく上で色んな人が私のことを応援してくれたけど、一番嬉しかったのは姉妹の皆やフータロー君達が応援してくれたからだよ」
一花の答えは簡単なものだった。
俺達の声援があいつの力になって女優としての自分を磨きたいと言う気持ちが強くなった。言っていることは分からなくもない、誰かの応援っていうのは馬鹿にならないものだ。かつての俺だったらそんなものは便所にでも放り投げておけと言っていたかもしれないが、今の俺なら分かる気がしていた。
「これで分かってくれたフータロー君?」
「ああ、お前が女優を目指したいという気持ちがどれほど強いのかはよく分かった。だが……それでも俺はお前に勉学だけは捨てて欲しくない。だから俺はお前に「フータロー君、ごめん……」」
「フータロー君のビジネスに乗るつもりはないよ」
「待て一花……!!」
「ごめん、私は本気で女優を目指してるから……」
一花はそれだけを伝えて、俺の下から去って行く……。
取り残された俺は自分が少しばかり甘い考えをしていたと思いつつも頭の中を整理する。
「三玖、一つだけ確認しておきたいことがあるんだがいいか?」
俺は一花と一緒に居た三玖に一つだけ確認しようとしていた。
「なに?フータロー?」
「あいつはお前や姉妹に遠慮していたんじゃなくて本気で女優を目指そうとしていたんだな……」
「うん、それはきっとそうだと……思う」
「ということは……あいつは本気ってことか……」