私はそれから程無くして家に戻って来ていた。
家に戻って来た私は二乃達に事情を説明した。フータロー君が提案したことによって私は休学という道を選んでフータロー君の個別指導の下で勉強を教えてもらうことになった。ライバルである四葉に対して微塵も申し訳ない気持ちはなかった。フータロー君と二人っきりで居られる、それだけで喜びで溢れそうだったからだ。それに……戦うときが来たら戦うとも言っていたもんね四葉……。
「ほら、三玖一度やってみてくださいよ」
「も、もうやったから……」
五月が三玖に何かを催促している。
その何かというのは私が飲料物のCMでやっているポーズと台詞のことだった。五月と四葉はどうやら一度見たことあるようだったけど、私も気になって三玖の手を取ってそのポーズを取らせると三玖は覚悟を決めたのか……。
「忘れられない夏にしてあげる」
自分が言っているのかと疑ってしまうほど三玖の再現率はかなり高かった。
本当に再現率が高ったあまり、拍手をしたくなるほどだった。三玖にこんなにも演技力があるなんて知らなかったなーと感じながらも私は三玖達と和気あいあいと話をしていた。
「行くのか一花?」
「うん、行く前にソラ君に少し挨拶しておこうと思ってね。ほら、暫くは会えなくなる訳だしさ」
学校を休学になる当日……。
私はソラ君に会いに行っていた。ソラ君はお父さんのお店で忙しそうに開店準備をしていたところを申し訳なさそうに話しかけると、「別に気にすんな」と言ってソラ君のお父さんの許可を得てこうしてお店の外で話をしている。
「まあ本当に暫くってだけだし、いつまでも離れ離れって訳でもねえだろうけどな」
「そうだね……ただソラ君には三玖ちゃんのことや二乃ちゃんのことで凄く迷惑を掛けたから、本当にごめんね」
「別に一花がそれを今更気にする必要はないだろ、二乃も三玖もあいつらなりに俺のことを好きで居てくれたんだし、それを伝えてくれた。あいつらも後悔はないはずだ」
「ソラ君……」
そうだね、三玖も二乃もきっと同じことを言う。
私がそれでもソラ君に謝りたかったのは多分きっと自分を整理する為だった。
「ソラ君、私が言えたことじゃないかもしれないけど……二乃のことこれからもよろしく頼むね。二乃ちゃんはちょっと素直じゃないところも多いけど、ソラ君の前だと結構素直になっていること多いと思うからさ」
「ああ、それなら任せておけ……あいつのことは俺が絶対幸せにするから」
「うん、じゃあ頼むねソラ君……」
ソラ君は私の前で「任せておけ」と言い切られるほど、愛されていることが少し羨ましかった。
もしフータロー君でも同じことを言ってくれるかな……。いや、フータロー君はああ見えて男らしいところがあるからきっと言ってくれるかもしれないなんて想像をしながらも私はソラ君に手を振りながらもお店の前を離れることにした。
人ごみの中を姉妹達の通り過ぎて行くと、私は改札前に出る。
今目の前にある改札口を踏み出すことはきっと大きな一歩に繋がるに違いない。私は女優としての自分、学生としての中野一花を両立するという道を選ぶことにした。これはきっと険しい道のりになることに違いないけど、姉妹のみんなと遠く離れていても繋がっていることを忘れなければきっと私はこの先もやっていけるはず。それを後押しするようにして四葉と五月が私を励ます言葉を掛けてくれていた。三玖は心配そうにして四葉と五月の肩の間から顔を出しながらも無言でいる。
そして、二乃は……。
「一花……!!」
「体調気をつけて……!!」
二乃は私に声を掛けた後、瞼には涙を溜めながらも必死に堪えていた。
「うん、行ってきます……!!」
二乃……あの修学旅行の前に言っていた言葉覚えてる……?
私たちは共闘関係だって言う言葉。誰かを好きになった者同士、二人で共闘すれば戦い抜くことが出来るって言っていたよね。その結果があの修学旅行を産んでしまった。三玖や四葉を悲しませてしまったあの修学旅行……。私は後悔しているけど、それ以上に今二乃の涙を見てこう思ったんだ。
あの共闘関係は今でも継続しているって……。
私の夢を応援してくれている二乃とその夢に向かって頑張ろうとしている私……。これも立派な共闘関係だよね……。
「二乃……」
◆◆◆◆◆◆
「良かったのか、風太郎。一花に挨拶しなくて」
今頃、他の姉妹たちが駅で一花のことを見送りに行っていることだろう。
男二人は場違いだと感じて空気を読んでいた。じゃあ俺達は今何処に居るのかと問われれば父さんに頼まれて店の買い出しに行っていた。新鮮な鮮魚が欲しいということで俺達が父さんの代わりに市場にやってきているという訳だった。今は買い出しを終えて父さんの車に戻ろうとしているところだった。
「俺は別に暫く会えなくなる訳じゃないからな……。空の方こそしたのか?」
一花は俺に言っていた。二乃のことをこれから先頼むと……。
彼女の瞳は長女としてはっきりとしたものだったと感じた俺は一花の言葉に頷きながらも返事をしていたんだ。
「ああ、時間がなかったから少しだけだけどな……」
一花との会話を少し思い出しながらも俺達は車の方へと目指しているとポケットの中に入れてあったスマホの通知音が鳴り響いて取り出すと、そこには三玖からの連絡だった。その内容は簡潔で一花のことだった。
「お前、三玖と仲直りしたのか?」
俺のスマホを覗き込みながらも言ってくる風太郎。
「ああ……言われたからな……」
「これからは