御食事処『一条』   作:雨期

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三食『ラーメン』

 おーさむさむっ! 布団から出た瞬間にこの寒さって、うぇっ!! やっぱ雪積もってやがる。昨晩からチラチラ降っていたと思ったが、面倒くせぇ。

 はぁ、動きたくねぇ。今日は閉店にしようかな。犬なら喜んで庭を駆け回るんだろうが、生憎と俺は人だ。こんな日は炬燵に入ってゆっくりと

 

──ピンポーンピンポーンピンポーン

 

「店長!! 雪だよー!!!」

 

 犬みてぇなのが来やがった。今日は夕方からのシフトの筈なのにあまりに早すぎる。天野川め。呪ってやるぞ。

 

「うるせぇガキが!!!」

 

「おはようございます、店長」

 

「てんちょ! 元気ないっすね!」

 

「店長あーそーぼー!!」

 

「全員かよ!!!」

 

 あーーーーこのガキ共が!!! 俺はもうおっさんだぞ!!! 多少は気を使えってんだ!!! 暇か!!? 全員シフト入れてるから暇だよな!!! 知ってた!!!

 

「無駄に元気あるなら仕込みでも手伝え!!! 遊びはそれからだ!!!」

 

「やったー!!!」

 

 ピョンピョン跳ねる天野川。こいつ本当に高校生か? 体だけ成長して頭は空っぽか? 体力が無尽蔵なのはバイトとして助かるが、こうして巻き込むのは勘弁してくれ…………あっ、そういう事か。

 

「てめぇらも天野川に起こされた口か」

 

「はい」

 

「うっす」

 

「天野川、てめぇの賄い抜きな」

 

「なーんーでーーー!?!?」

 

 それくらい自分で考えろってんだ。しかしこうして早起きしちまった以上、準備の時間はアホほどある。遊ぶ時間はあるが天野川の遊び相手はしたくない。限界まで準備に時間を使ってやる。となると普段よりも凝っていくか。

 

「よっしゃ!! 今日はラーメンだ!!」

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

──ガラガラッ

 

「ビールビール!!」

 

「こっちゃ焼酎!!」

 

「ラーメンだ」

 

「「はい?」」

 

 勢いよく店内に入ってきて早々に酒を頼んだ呑兵衛兄弟に突き付けられたラーメン宣告。数秒固まったのちに常連である兄弟は気が付いた。今日は店長が作りたいものしか出ない日だと。

 

「ラーメンだ」

 

「「何ラーメン?」」

 

「味噌だ」

 

「「じゃあそれ。ドリンクは」」

 

「ビールと焼酎お待ち!! こっちラーメンっす!!」

 

 素早い。まるで客が注文する前には作り始めていたかのようだ。ようだというか実際にそうなのだ。今日の要は寒い→暖まりたい→ラーメンという頭しかない。だが常連客は知っている。こういう時の要は無駄に凝りまくるので最高の逸品しか出ないのだ。

 

──ガラガラッ

 

「今日は寒いねぇ。鍋焼きうどんでも頼もうか」

 

「ラーメンだ」

 

「あっ……そっかぁ……」

 

──ガラガラッ

 

「先輩! 今日は日本三大珍味食べに」

 

「ラーメンだ」

 

「ういっす」

 

──ガラガラッ

 

「要ちゃん! 肉を」

 

「ラーメンだ」

 

「チャーシュー大盛りで」

 

 来る客全てに叩き付けられるラーメン宣告。入り口にはしっかりと『本日ラーメンのみ』と張り紙はされているのだが常連客はそんなもの見ない。腹が減ったから勢いで飛び込んできているだけなのだ。

 当然客は常連客ばかりではない。新規の客はしっかりと張り紙を見てから入店し、何故かある豊富なメニュー表に困惑していた。

 

──ガラガラッ

 

「ウェーイ!!! 元気ウェーイ!!!」

 

「みんな! ウェーイ!!」

 

 無駄にテンションの高い少年が三人来店する。元気の友人らしい。ウェーイウェーイ言いながらハイタッチをしている。

 

「ウェーイウェーイ!!!」

 

「ウェーイ!!」

 

「ウェーイ!!!」

 

「ウェーイ!!? ウェーイ!!」

 

「ウェーイ!!! てんちょ、ラーメン三つ、一つはもやし大盛りで」

 

「「「「「「会話してたの!!?」」」」」」

 

 店内の人全てから一斉にツッコミが飛ぶ。

 

「怖いわぁ、今の子怖いわぁ」

 

「これが噂に聞くウェーイ系……ふふ、震えてきやがった」

 

「酔いが、醒めちまったよ」

 

「透子ちゃんもあんな事やれるの?」

 

「むーりー!!!」

 

「お、おもしれぇもん見せてくれるじゃねぇか。替え玉おまけしてやるよ」

 

「「「ウェーイ!!! あざーすっ!!!」」」

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