あとサバイバル的に生々しい話も。アニメのそうなんですかを参照。これが本当かは知りません。
あと、少し前の話を修正して描写を追加しました。
次回はやっとステータス。鈴のと中村のも作らないと
ぴちゃぴちゃという音が聞こえ、柔らかくぬるぬるした物が口が入っている。気持ちの良い感触に目を開くと、目の前にルサルカの顔がある。どうやら、キスをされているようで何かが流し込まれている。
。
やばい。やばいやばい、怖くはないけれど、絶対にろくでもないのを流し込まれている。意識したら怨霊といっていいような人々の魂が流し込まれている。同時に身体の中に無理矢理空間を作り出されているみたいだ。
「よし、これで完了。後は若い人に任せるわね。じゃあね~!」
ルサルカがそう言った瞬間。ルサルカがどろりと溶けて口から俺の中へと入ってきた。そのルサルカと共に作られた大量の魂と共に。いや、これでもおそらく少ないのだろう。ほとんど奴に奪われている可能性だってあるのだから。
「あいつら本当に好き勝手してくれる……」
発した声は俺の物ではなかった。しかし聞き覚えがある。不思議に思って頭を掴む。すると頭に兎の耳が生えていた。髪の毛を確認するとピンク色へと変化していた。そして、着ている服装がメイド服になっていた。
『ボクの身体を使ってマスターの無くなった部分を代用したんだ。でも、そのままだと戦えないから身体を作り変えたらしいよ?』
『ちゃんと元に戻れるから、安心していいわよ』
アストルフォとルサルカの声が頭の中から聞こえてくる。
『身体の操作は何時でもボクが貰えるから、マスターは気にせず好きにしてていいからね』
待て。それってアストルフォがその気になったら何時でも暴走するって事じゃないか。
『気にしなくていいでしょ。どうせ、このままじゃ死ぬ命だったんだし。それよりも、私もアストルフォも体内で待機するから、基本的にやばい時しか出ないわ。私は顕現しても大丈夫だけれど、マスターの魔力じゃ戦闘するには全然足りないから、普段はここで消費を減らしておくわ』
ルサルカが俺の中に入ったのは召喚キャパシティーと魔力の消費を抑えるためか。確かに俺の魔力はすくない。先程までサクリファイスでブーストしていたが、それは先程の戦いでなくなった。ルサルカは単独で行動できるかもしれないが、彼女が持つ自前の魂を消費してまでやってくれるほど仲良くはなっていない。先程のキスだって、言ってしまえば彼女にとっては挨拶代わりかもしれない。
『じゃあ、頑張ってマスター。期待しているわ』
『ボクがちゃんと守ってあげるからね!』
どうやら、保護者ができたようでまだましなのかもしれない。それにアストルフォの身体ということはある程度は戦えるのだろうしな。
『ねえねえ、愛歌ちゃん。ポップコーン取って』
『ボク、コーラ!』
『……なんで私が取らないといけないのよ。自分で取りなさい』
なんか身体の中で好きなように遊んでやがる。菓子とかを用意して好き勝手に食べているようだ。まあ、いい。
そんなことよりも目が覚めたらうさ耳美少女メイド……の皮を被った男の娘。これはどうしたらいいのかわからない。
いや、決まっている。谷口と中村と共にハジメを見つけて生き残り、ユーリを再召喚する。地上に戻るかどうかはわからないが、なんとしても生き残る。それが決定事項だ。
「そうなると、谷口と中村はどこだ?」
周りを探すとすぐ近くに眠っていた。思った以上に動揺していたみたいだ。まあ、起きたらいきなりうさ耳美少女メイドとか意味不明だしな。TSするよりは男なだけましか。前の容姿なんてあまりいいものではない。家族とまた会えるかもわからないのだし、生き残る事が優先だ。
「あれ? でもたまに愛歌に身体を乗っ取られるって言ってたけど、その時はTSになるのか?」
『なるわね』
「まあ、気にしなくていいか」
だから、岩場に二人を運んで座らせた後、熊の死体を確認する。ガチャ産の食料があるとはいえ、ランダムなのだから何時補給できるかわからない。そうなると現地調達しかない。それに今着ている服だけでは心もとないし、毛皮があれば暖も取れる。
「アストルフォ、毛皮を剥いで肉を確認してくれ」
『は~い』
身体が勝手に動いて剣を使って解体していく。すでに魂はルサルカに美味しく頂かれているので毛皮と肉だけだ。切り取った肉の血抜きをしながら、周りを見渡す。飲み物をどうするかが問題だ。
しかし、川とか水がありそうな場所は見た限り存在しない。周りは岩場だらけで何も存在しない。草木もないのだから、本当にやばい。
『飲み物の存在は大事よね。まあ、出した物を保存して飲み物にするか、魔物の血を飲む。それぐらいじゃないかしら?』
楽しそうなルサルカの言葉に嫌な予感はするが、実際にそれしかないだろう。魔物の血は何が入っているかなんてわかりはしない。出した物というのはルサルカがこんな表現をしたのは彼女も女の子だからだろう。言ってしまえば尿だ。おそらく、この中でまともに飲めるのは尿ぐらいだ。これが一番安全ではある。ただし、俺以外は女の子で様々な問題が付随する。ある趣味の人だと役得だろうけれど、そんな趣味はない。
「なら、確かめるしかないよね!」
口から勝手に言葉が出て、身体が勝手に動いていく。おい馬鹿止めろ! そう思うも、身体は止まらずにアストルフォが解体してくれた血の滴る肉に吸い付く。
口内を潤す血生臭い味。すぐに身体がビクンッと震えて身体のあちこちにある血管から血液が噴き出す。だが、恐怖も痛みも感じない。
『ちょっ、この馬鹿! 細胞が急激に破壊されていってるじゃない!』
『あれ~? ボクの勘では大丈夫だと思ったんだけどね~』
『ああ、もう!』
『お願~い』
身体が崩壊していくなか、ルサルカの力によって治療されていく。とりあえず、アストルフォはお仕置きしないといけないな。
『ごめんなさい……』
まあ、これでモンスターの肉は食べられないことがわかった。こんなの二人には食べさせられない。
「ルサルカ、どうにかなる?」
『どうにかなるじゃなくてするのよ。やっぱり
「わかった。お願い」
『じゃ、痛みに襲われるだろうけど……いや、感じないのか。アストルフォはしっかりと責任とって殺しなさいよ』
『了解だよ! 騎士の名にかけて悪を討てばいいんだね!』
ルサルカが無言になった。まあ、ルサルカも悪だしな。とりあえず、身体は改造されてある程度の魂を譲ってもらう事で霊的な装甲と肉体そのものが強化された。これで大丈夫だろう。
「ん、んんっ……」
「あっ、目が覚めた?」
「いっ、いやぁぁぁぁっ!!」
谷口が起きた瞬間、悲鳴をあげる。すぐに口を押えて飲み込ませながら警戒する。悲鳴でモンスターが寄ってきたら死ぬからだ。
「あなた、鈴に何をしているの?」
すぐ隣から声が聞こえ、そちらに向くと中村が炎の魔法を準備していた。何故こちらに魔法を向けてくるかわからない。中村も現状を理解しているはずなのにおかしい。
「そもそも沙条はどこ?」
「あっ、そっか。悪い。今は姿が変わっていたな。谷口、落ち着いたか? 叫び声や悲鳴などの大きな声をあげない。またモンスターが襲ってきたら今度こそ終わりだからな」
谷口がこくこくと頷いたので口から手を離す。中村は周りを探して警戒している。まあ、彼女達からしたらよく知らない女の子だろう。
「俺は沙条真名だ。今は代償として支払った身体の一部を召喚したアストルフォの身体で補うために姿を変えさせられている」
「アストルフォって、シャルルマーニュ十二勇士の?」
「そうだ」
「恵里は知ってるの?」
「私が知っているのは男のはずだけど……確かにアストルフォは派手好きで中性的と言われているけど……」
「作られたゲームのせいで女装少年にされた。これでもちゃんと男だ」
「オタクって……」
何も言い返せない。まあいい。しかし、うさ耳ってヘアバンドだから取れるはずだし取ってしまうか。
『だめ~! それを取ってしまうなんてとんでもないよ!』
「ちっ」
「ごめんなさい」
中村が勘違いして謝ってきたので、違うと教えて仕切りなおす。これからの事をしっかりと決めなければいけないからだ。
「さて、諸々は置いておいて現状を説明する。しっかりと心を強く持って聞くように。良い報告と悪い報告がある。どちらから聞く?」
「鈴は……いい報告からお願い」
谷口が顔を俯かせた。身体は微かに震えていて、中村に抱き着いている。中村も谷口を片手で抱きしめているが、その表情と顔をよくみれば青い。
「まず襲ってきた熊のモンスターは倒した」
「良かった……」
「た、助かったんだね……」
「今はな」
体内の三人は何も言わないので、このまま続けていく。
「悪い報告は?」
「まず、俺達は全員がかなりの重症だ。このまますぐに命を失う事はないが、非常に不味い状況には変わりはない。まず中村は片腕と片足を失っているし、谷口は両足を失くしている」
俺がそう言うと二人が泣き出した。
『そこだ! 行け、マスター!』
『抱きしめて優しい言葉をかけるのよ!』
『アーサーとの参考にできそうね』
外野が何かを言っているが、泣かれているとどうしていいのかわからないから、言われた通りに抱きしめて二人の頭を俺の胸に押し付けながら彼女達の頭を撫でる。
「俺も腕と肺、感情や痛覚など色々と失っている。今はアストルフォ達のおかげで身体が作り替わったが五体満足だ。だから、俺ができる限り頑張って二人を生き残らせる。最終的には帰る事が目的だが、今は生き残る事を最優先しようと思ってる」
「……本当に守ってくれるの?」
「ああ。中村も谷口も守る。少なくとも谷口は絶対に守る」
谷口が中村に襲われたのは俺達と関係を持ったからだろう。詳しい事はわからないが、その可能性が一番大きい。
「そう……」
「……いいよ、守らなくて……」
「谷口?」
「どうしたの?」
守らなくていいという谷口が漏らした言葉に俺と中村は聞き返す。
「だって、鈴は足手纏いだよ。両足がないの。だから、苦しまないように殺して欲しいの……」
「何を言っているの! だいたい結界師のあなたが足手纏いなら、私は……」
「恵里はまだ片足があるから松葉杖みたいなのを用意したら、動けるかもだけど鈴はもう……」
泣きながら伝えてきた谷口の言葉に考えさせられる。確かにトータスの技術力では足を失ったら終わりだろう。再生魔法でもあれば別だろうが……白崎なら至れる可能性はあるか?
「それに、ね? 怖いの。また食べられるんじゃないかって……そう思うとろくに結界も作れないんだよ?」
「鈴……それを言うなら僕の方もだよ。あんまり役にはたてないし……」
「でも、鈴よりは役に立つよ。だから、鈴は置いて二人で生き残る事を考えて欲しい」
どうやら谷口は完全に心が折れているようだ。無理もない。俺も食べられたらそうなる自信がある。
「なら、僕も一緒に死ぬよ」
「え?」
「だって鈴がこうなったのは僕のせいだし、鈴は僕の居場所になってくれるって言ってくれた。ならずっと一緒がいい」
「恵里……それは駄目だよ! 沙条君、お願いだから恵里を説得して!」
「わかった」
「どういうつもり? 僕が沙条に頼んだのは鈴が助かるから。そうじゃないと僕は君の奴隷になって全部を差し出すつもりはないよ?」
「奴隷? 沙条君、どういうこと?」
「まあ、とりあえず話すか」
谷口に中村から頼まれた事を包み隠さず伝えると、谷口が中村を叩いて怒り出した。中村も中村で谷口を叩いて怒っている。どちらも互いの頬をひっぱったりしているが、両手が使える谷口が優勢だ。
『止めなくていいの~?』
「そうだった。二人共、まだ俺がどうするか伝えてないだろ」
「あ……余りに恵里が自分の事を大切にしないからつい……」
「それは鈴も同じ」
「今は非常事態なんだから協力するぞ。それと中村を奴隷のように扱うつもりは一切ない。あの契約は谷口を助けた事で終了している」
「いいの?」
「ああ。それに考えてもみろ。もし、俺がその話を受け入れて中村に関係を強要し、ユーリに知られてしまえばどうなると思う?」
「あ~なるほど」
「塵屑扱いでしょうね」
そう、そうなる可能性がある。そんなの俺には耐えられない。あの癒しであるユーリからお兄ちゃん不潔、大っ嫌いとか、近付かないでくださいとか言われたらもう……
「シスコン? いや、ロリコン?」
「どっちもかもしれないよ?」
「うるさい。そんなわけで破棄だ破棄。はい。この話は終わり。で、話を戻すけれど俺は谷口も中村も見捨てるつもりはない。といっても、俺の中での優先度は谷口の方が高い。どうしてもという時は全員を連れていくのを断念して谷口を優先する」
「いや、鈴はいいよ」
「駄目。僕も沙条の意見に賛成。鈴を優先する」
「じゃあ、多数決で決まりだ」
「鈴は役に立たないよ!」
「谷口。一つだけ言っておく。お前の意思など関係ない」
「ちょっ!? 助けられるのは鈴だよね!」
「そうだが、それはこの際関係ない。俺がユーリに嫌われないために助けるだけだ」
「「うわぁ……」」
引いているが、こうでも言わないと谷口は納得しないだろう。俺はもうこの世界で生きていく決意はある程度はしている。だが、谷口は違う。戻りたいがためにあれだけ必死に頑張ってくれたんだ。だから、谷口だけでも元の世界に戻してやりたいと思う。
「まず、決定事項として限界までは谷口と中村、二人を連れてハジメを探す。ハジメとユーリさえ居れば義手や義足なんて簡単に作れるし、失った腕を元に戻す事は容易いはずだ。なにせユーリが居た世界にはクローン技術がある」
「それを移植すれば元に戻れるのね……」
「そっか。それなら……うん、まだ頑張れるかも」
ユーリの世界。ゲームや映画だが、プロジェクトFという記憶転写型クローンまで作り出すような世界だ。臓器や腕用のクローンくらいならなんとかできるだろう。
「それに無理だとしても、ガチャでエリクサーや再生できるキャラを引けばできるだろう。だから、生きるのを諦めないでくれ。俺も諦めない。できる限り足掻き続ける。だから、谷口もせめて俺や中村が死ぬまでは頑張ってくれ」
「……うん、わかった。鈴、頑張ってみる……」
手を差し出すと、谷口はそっと両手で握ってきた。ぎこちないけれど微かに笑みも浮かべている。逆に中村は顔色が悪くなった。
「どうした?」
「ごめんなさい。そういえば僕、ユーリを爆殺した……これってもう無理じゃ……」
「ほう、お前が犯人か」
どうやら、バッテリーで橋を爆破した犯人は中村だったようだ。まあ、谷口を殺そうとしていたし、おかしくはないのか。
「ごめん。鈴が助かった後なら僕を煮るなり焼くなり、本当に好きにしていいから」
「あ、鈴もいいよ。恵里の罪は鈴が半分持つから」
どうやら本当に仲直りしたみたいだ。むしろ、行き過ぎている感じもある。これは諦めや諦観などが関係しているのかもしれない。どちらにせよ、二人の心はとても弱っている。
『そうよ。付け入るならいまよ。この二人を物にしちゃいなさい』
だからそれは断る。
『なんでよ。生存率は格段に上がるわよ』
ルサルカの説明を聞くと、足手纏いでしかない二人を殺してその魂を
ただ、その場合はアストルフォが怒るだろう。
『当たり前だよ! それはシャルルマーニュ十二勇士の、騎士としての道に反するもん』
『そんな事を言っている場合じゃないでしょ』
『だめ~』
『まったく……まあ、それだとやっぱりアンタの女にしてしまいなさい。それで彼女達とエッチして房中術で魔力を貰うのよ。これだと彼女達を連れていく理由にはなるわ』
結局は魔力タンクとしてだが、連れていく理由にはなるとルサルカが納得するのは大きいだろう。彼女の協力が無いと俺達は生きていられないかもしれない。
「何言ってるの。これは……」
どちらにせよ、二人を止めないといけない。
「言い合いするな。どちらにせよここを抜けてからだ。だいたいユーリは死んでいない。あの程度でユーリが、ユーリ・エーベルヴァインが死んでたまるか」
俺もあの時、ユーリが死んだと思った。だってINNOCENT基準だったんだ。それはつまり、ただの幼い少女の身体でしかない。いくらエグザミアを持っているとはい、力を失っているのだから無理だと思った。だが、召喚キャパシティーは相変わらず消費しているし、再召喚可能時間が表示されている。これはつまり、死んでいないということだ。
「本当に大丈夫なの?」
「それだったら、鈴はとっても嬉しいよ!」
「これを見てくれ」
編成画面の召喚キャパシティーを見せる。現在はアストルフォ(剣)、ルサルカ・シュヴェーゲリン、ユーリが登録されている。愛歌が表示されていないのは彼女が俺に協力する気がないからだろう。一時的に力を貸してくれたとはいえ、あの時限定だ。もう彼女によるブーストは当てにできない。何を代価として取られるかわかったものではない。
プロトアーサーを引き渡すか、俺がそうなるかを選ぶしかない。いや、ひょっとしたら天之河を引き渡して洗脳か精神を作り変えてもらえばプロトアーサーができるか? 駄目だ。いくらなんでも嫌なクラスメイトとはいえ殺す理由にはならない。
「再召喚可能となっているだろう? だから、大丈夫だ」
「良かった……良かったよぉ~」
「そっか……」
二人共、ほっとしたようなので話を戻す。
「生き残るには決めないといけない事がいくつもある。それは二人に精神的苦痛を伴う事でもある」
「いいよ。なんでも言って。それで生き残れるなら安い物よ」
「デスマーチだよね! うん、鈴は頑張って耐えるよ!」
「そっちじゃない。女として、人としてのプライドを結構捨ててもらうことになる」
「「え」」
具体的に話していくと、二人が真っ赤になっていく。まず、説明したのは水の事。最悪一歩手前で互いの尿を飲まないと生きられない事。ガチャ産の水や飲める水源をみつけたらある程度は解決する事だが、覚悟だけは決めておいてもらう。
「脱水症状を防ぐためね」
「そうだ。水分を定期的にとらないと死ぬ。尿で排出して破棄するのは現状ではできない。一番最悪な場合は汚染された水を腸から吸収する。それで口から摂取するよりはましになる」
白崎が居てくれればこんな事はしなくて済む。いや、ハジメだけでもいい。
「ハジメだけでも見つけられればろ過装置を作れるんだが……」
「南雲君を速攻で探そう」
「鈴も賛成! でも、飲み水くらいなら魔法で作れるよ?」
「そうなのか? 俺は召喚以外の魔法が一切発動しないからな」
「あれ、知らなかったんだ。知った上で緊急時にする必要があると思ったけれど……」
「まあ、消費魔力次第だな。正直、できるだけ戦闘に回したいから魔力に余裕がある時は魔法で出して、水源を探す。それでも見つからなかったり、戦闘が連続して魔力量がやばかったら最終手段にでる」
「うん、それでいいよ」
「それなら納得できる。魔力のリソースは大事だし」
とりあえず、サバイバルで水分確保についての重要性は理解してくれただろう。次の説明に入る。
「次に食料だ。ガチャ産でお弁当が出ているからしばらくは持つ。ただモンスターの肉を食べると谷口達は死ぬ」
「本当に死んじゃうの……?」
「確か、魔物の肉は猛毒だとメルド団長が教えてくれたはず」
「それ、聞いていなかったな」
「訓練している時にいなかったから仕方ないよ。確か、檜山君達が伝えておくって言っていたような?」
「そういうことか」
「あははは、その時点で殺す気だったんだね」
檜山達からしたら、俺達が勝手に毒物を食って死んだ程度の認識になるんだろうな。今度、死なない程度の毒キノコでもプレゼントしてやろうか。ああ、そういえばオークを欲しがっていたな。探してやろう。
「まあ、そんなわけで弁当は基本的に二人で食べてくれ。俺は英霊であるアストルフォの肉体を使っているのと、死なないように作り変えてもらったから大丈夫だ」
「わかったわ」
「申し訳ないけど、好意に甘えるね」
「で、やって欲しい事と逃れられない恥辱があるが、どっちから聞きたい?」
「「……」」
二人が互いを見てから、両手を握り合って覚悟を決めたようで伝えてくる。
「「恥辱の方で」」
「まあ、こっちは簡単だ。二人には足がない。だから、まともにトイレもできない」
「「あっ」」
理解した二人は全身を真っ赤になったように感じる。恥ずかしさから手で顔を覆ったが、こういうデリケートな問題もある。流石にした後、拭かないとならないし洗浄しないといけない。で、片足の中村と両足がない谷口に互いで補佐させることは考えた。でも、それって平時ならともかく、非常事態の現状では無理だ。そもそも離れたら何時襲われて殺されるかわからない危険地帯だし。
「互いに……無理ね」
「ああ、そうだよね。鈴、介護してもらわないといけないもんね」
「そういうわけである程度は許容して許してくれ。これは三人だけの秘密にするから」
「あ、あの軍服の女の子は?」
『嫌よ。なんで私がそいつらの下の世話をしないといけないのよ。許容できないのなら、垂れ流すか死ぬべきよ』
「拒否している。まあ、彼女を実体化させて戦闘してもらうには魔力がかなり必要だ。だから、命が掛かっているわけでもない排泄に魔力は使えない」
「相談させて」
「うん。ちょっと覚悟がいるから」
まあ、女の子だから仕方ないだろう。でも、次のも問題なんだよな。
「わかった。じゃあ、次の話。これも覚悟がいる」
「言い方からして、さっきのよりはましだよね?」
「そのはずだけど……」
「今度は定期的に俺とキスして唾液を交換することだ」
「やっぱり、身体が目当て?」
「う~キスか~」
「言っておくが、これは房中術を使った魔力の譲渡ということらしい。俺一人の魔力量と回復量じゃまともに戦えない。それに二人が魔力を供給してくれるなら決して足手纏いじゃない」
俺の魔力量と回復量は少ない。サクリファイスと愛歌から貰ったものでどうにかできたが、本来は魔力の塊である聖杯のサポートなくしてサーヴァントであるアストルフォや、それに比類するであろうルサルカを召喚するなどできはしない。レア度が高いという事はそれに応じてコストも莫大に跳ね上がる。ノーマル詐欺とはいえ、ユーリと二人では維持する魔力に天と地ほどの差がある。
「この二点を考えてくれ。最悪、キスは一人でもいい。それで守ってくれるルサルカを説得できる」
「つまり、魔力供給ぐらいしろってこと?」
「そうなる。それにこれはまだましだ」
「え? 鈴はファーストキスになるんだけど……」
「最初、ルサルカに求められたのは更に進んだ方だからな」
「あうっ」
「ああ、確かに房中術ってそっちが本当の使い方よね」
「あれ?」
「どうしたの?」
「いや、何もキスしなくてもいいんじゃないかなって、鈴は思い付いたの。沙条君としては残念かもしれないけれど」
「言ってくれ」
確かにルサルカにキスされた時は気持ちいいのもあったが、やはり同意がないと駄目だ。そういう対象として二人は見れるが、傷つけたくはない。
「バッテリーを使えば解決だよね?」
「なるほど。確かに……」
ルサルカに言われた事が絶対だと思考停止していた。思ったよりも精神的に堪えていたのかもしれない。
「でも、バッテリーってあるの? 僕のは全部爆弾にしたよ」
「俺のもだ」
「鈴のもだね」
「無理か。まあ、キスくらい別にいいけど。鈴はどう?」
中村の言葉に谷口が俺をじーと見てくる。
「ん~今の顔だと女友達の悪ふざけとかに思えるけど、唾液の交換となるとガチの奴だろうし、沙条君には助けてもらったから……鈴も生きるために受け入れるよ。でも、戦闘中にそんなことできないよね?」
「それはそうだ。だが、それを言うなら谷口さえ居ればできるぞ。そもそもあのバッテリーは谷口の結界ありきだからな」
「そっか。デスマーチは無駄じゃないんだね」
「どうせ僕達は沙条に背負われて戦う事になるだろうし、たぶん大丈夫だと思うよ」
「背負われて……確かに逃げる時とかそうなるから降ろされるのも悪いね」
「確かに前と後ろに抱き着いてもらう予定だ」
前と後ろでサンドイッチ状態になるが、そうでもしないと移動が困難だ。男としては至福なんだが、正直言って楽しんでいる時間なんてない。ちょっとしたミスが死に繋がるかくれんぼと鬼ごっこを合わせたスニーキングミッションだからな。
「まあ、二人は相談しておいてくれ。俺はガチャで出たアイテムを確認する」
「は~い」
「うん」
少し離れた所でガチャで出たアイテムを確認する。いくつかは戦闘で壊されているが、何個かは大丈夫だった。
出たアイテムはC黒剣*5、Cまるごしシンジ君*5、C桜の特製弁当*4、SRスキル・魂喰い*1、Rスキル・優雅たれ*1、C小石*15、C謎の仮面*7、Cただの布*6、R騎士剣*1、R若返りの霊薬*2、SR拷問日記だ。
そのうち黒剣は4本が折れている。まるごしシンジ君は2個破損。弁当は一つ巻き散らかされている。魂喰いと血塗れの拷問日記はルサルカの召喚に使った。スキルの優雅たれはその名の通り、優雅になれる礼儀作法系のスキルを手に入るだけなので使い道がない。小石はまあ、投げるくらいには使える。
謎の仮面は本当にわからない。鑑定不可だ。だが、中には石でできた仮面もあるのでひょっとしたら、俺は人間を止めるぞ! の人を召喚できるかもしれない。もしくはこころちゃん。いやいや、シャア・アズナブルの可能性もある。仮面の人は多いからな。まあ、とりあえず、効果はわからないので放置。呪われていたらシャレにならん
『魔術的な品物なら鑑定してあげましょうか?』
「廃棄するから、欲しいならやる」
『それじゃあ、もらいましょうか』
正直、邪魔になるから捨てるしかない。それでルサルカが喜んでくれるのなら安い物だろう。俺達の安全的に機嫌が良い方がいいしな。まるごしシンジ君は残飯処理と囮に使う。Cただの布*6は防寒着や寝る場所を作るのに使えるし、谷口達の傷口を覆うのにも使おう。
R騎士剣は騎士が装備し、誰かを守る時にカバーリングを行えるという物のようだ。アストルフォのサブウエポンとして持っておこう。黒剣は黒曜石の剣で使えるかはわからないからな。
そして、Rながら若返りの霊薬。効果は肌が六年分若返るようだ。凄く売れそうだし、残しておこう。これから傷はどんどん増えるだろうし、谷口達にあげてもいいだろう。
「沙条君、ちょっといい?」
「何?」
「話し合いが終わったから、こっち来て」
「オッケー」
仮面や残骸をルサルカが取り込んで溶かしていくのを見送った後、二人の場所へと戻る。二人は相変わらず両手を繋いでいた。
「で、覚悟はできたか?」
「うん。恥ずかしいけれど鈴、頑張るよ」
「僕も頑張る。でも、女の子の大事な所を見るんだから責任はとってね」
「前向きに善処したいと思います」
「する気ないよね!」
「冗談だけどね。それしか選択肢がないのもわかっているし……本当は倒したモンスターのスケルトンでも使えば問題ないかもしれないけれど、こっちの方が都合がいいし」
「何か言ったか?」
「なんでもないよ」
とりあえず、他に決める事を伝えてから次に互いのステータスを確認していく。レベルアップはしているだろうし、有用なスキルが得られていたら助かるな。
「あ、それとこれから一蓮托生だから、名前でいいよね?」
ステータスを確認しようとしたら、中村から提案があったので受け入れる。その方が仲良くなれるからだ。
「それもそうだな。俺は真名でいい」
「真名だね」
「まなまなだね」
「それは止めろ」
とりあえず、まなまなは止めさせて真名と呼んでもらうようにする。マー君というのもあったが、却下した。
「僕は恵里でいいからね」
「鈴は鈴でいいよ!」
「恵里と鈴だな。これからよろしく」
「よろしく」
「よろしくね~」
無理して明るい声を出している谷口、鈴に少し思うところはあるが、仕方ないことだ。
「あ、恵里はえりえりにするね」
「……まあ、それならえりりんよりはいいか」
えりえりはいいんだな。まあ、これで二人が仲良くなってくれたらいいさ。
こんな事を思っていると誰かのお腹が鳴った。三人で恥ずかしがりながら、先に食事を取るように提案する。
二人も受け入れてくれたので、桜特製弁当を一つ渡して二人で食べてもらう。俺はモンスターの肉を恵里に魔法で焼いてもらってから食べる。臭いは凄く不味そうだが、我慢して食べる。どうせ味覚は感じないのだから。
う~ん、この魔境っぷり。やっぱりハジメは運がいいなあ。魔物肉を食べられるようになるんだから。
それと予告ですが、ステータスやったら少し別視点の地上を入れてから少し飛ばすと思います。ハジメとユエがヒュドラと戦っているところまで。はやく義足を与えたいけど、もっと受難も与えたい。難しいね。
清水君ヒロインアンケート 人になるます
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波の鳥 フ
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謳の鳥 コ
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空の鼠 ク
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深海のナニカ レ