ありふれた職業の召喚(ガチャ)士で世界最弱   作:ヴィヴィオ

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話がすすまぬ~


第13話

 

 

 

 恵里によって強制的に洗われ意識が戻ると、周りがぐらぐら揺れている。まあ、これは仕方ない事だ。汚物塗れなんてさっさと洗い落としたい。

 ぐるぐると回る視界が落ち着きを取り戻したあと、フラフラしながら二人の元に戻る直前で臭いを嗅いでみる。一応、綺麗に落ちている気がしないでもないけど正直わからない。

 

「臭いは取れたか?」

「ん~微妙?」

「そうか……」

 

 とりあえず、キスはお預けか。流石にこの状態で二人に迫って嫌われたくもないし、おそらく他の敵が来るまで余裕はあるだろう。

 

「やっぱり本格的に服とか洗わないと駄目か」

「そうね。身体を洗いたいわ」

「鈴もだよ。もう痒くて……」

「大分汚れてるからな……」

 

 今までは水が貴重だからやれなかったが、目の前には地底湖がある。飲める水かはわからないが、すくなくとも大量にある。これが硫酸だったらまずいけれどな。

 

「とりあえず、洗濯と身体を拭こうよ」

「それもそうだな」

「うん。鈴に賛成。僕も身体を拭きたい。真名は脱ぐのは手伝って欲しい」

「身体を拭くのは二人でできるのか?」

「それぐらいなら大丈夫だよ。近くに鈴達を寄せてくれればどうにかするよ」

 

 まあ、俺が拭いた方が効率はいいだろうけど、女の子としてはあまり肌は見せたくないだろうからできるのならそれでいい。俺としてもやる事はあるしな。

 

「じゃあ、服はこっちで洗濯する。水洗いだけど全部渡してくれ。下着も含めてだから」

「す、鈴達で洗うよ!」

「あ~できるかできないかで言われたら、できるだろうけど危険だからだね」

「地底湖に落ちられて溺れられると困る」

「まあ、仕方ないよ」

「う~わかった」

 

 洗濯について話は纏まったので、これからの予定を話そう。

 

「さて、これからする事が……何か身体を洗う以外に何かあるか?」

「鈴はないよ」

「それなんだけど、あの死体をアンデッド化して操りたい。上手いことできたら戦力になるし」

「確かにその通りだな」

「うん。戦力が増える事はいいことだね」

「ただ、魂って必要か?」

「降霊術で降ろせばいいから、別に必要ではないよ」

「降霊術か……あれ、もしかして悪用できるか?」

「「どうしたの?」」

 

 二人が同時に聞いてきたので俺は思った事を伝えていく。

 

「ルサルカに聞かないとわからないけれど、降霊術で魂を呼び寄せて永劫破壊(エイヴィヒカイト)で喰らえばどうなるんだろうってな」

「あ~なるほど」

「どうなんだろ?」

 

 ルサルカに聞いてみよう。

 

『魂を引き寄せられるのなら可能でしょうね。ただ、あまり下手な魂を喰らうと腹の中から食い破られるわよ。これ、経験談だから』

「了解。可能らしいけれど、実力差がある時はお勧めしないってさ」

「残念だけど、安全を優先だね」

「そうね。よし、まずは死体操作を試してみる。動かして」

「わかった」

 

 恵里を死体の傍に移動させると彼女が魔法を発動させる。それからしばらく動きはない。不思議に思っているとこちらを見上げて告げてきた。

 

「こいつに僕の魔力を満たすまでに時間がかかる。既に死んでいるとはいえ抵抗が激しい。やっぱり、僕の実力不足かな?」

「それなら魂を食べたら難易度は下がらない?」

「どうなんだ?」

「たぶん、下がると思う」

 

 鈴の提案に恵里が考えてから答えを出す。下がるというのなら、トライアンドエラーを繰り返すしかない。

 

「じゃあ、魂は俺が貰う。恵里は身体を支配してくれ」

「数日間、時間がかかるけれどいい?」

「地底湖を確認してからだが、戦力が増えるならここに留まる方がまだましだろう。それにそろそろ俺達は限界だ」

「ここ数日、休憩しているから大丈夫だよ?」

「それでも水の蛇に襲われる可能性もあったんだから不安だろう」

「まあ、それはね」

 

 逃避行は長く続かない。ここいらで休息を取ろうと思う。まあ、その前にやる事がいっぱいある。

 

「じゃあ、水を確認してちょっと潜ってくるからルサルカ、護衛をお願い」

「仕方ないわね。さっさと行ってきなさい」

 

 ルサルカが隣に現れたので二人を任せて今度は地底湖に移動する。ここの水は弁当箱で掬ったが、回避する時に零しているので飲めるかはわからない。なので少し手酌で掬って舐めてみた。

 なにもわからない。そういえば痛覚も味覚もないのだからわかるはずがない。アストルフォ、どんな感じ? 

 

『ん~問題ないよ。普通に飲める水だけど、マスターはともかくあの子達に飲ませるのなら沸騰させるのは必須だね。できたらろ過もした方がいいよ。かんせんしょう? とかいうのになるかもしれないし』

「わかった。助かった」

『やったー褒められた~!』

 

 一応、飲み水として使えるので頭を水につけて周りを見てみる。確認すると魚とか一切いない。これはもっと調査しないといけないので、鎧と服を脱いで裸になって剣だけを持って潜る。

 

『水着が欲しい~!』

 

 本当、水着が欲しいな。どちらの意味でもだ。こんな事を考えながら潜っていくと地底湖の底にキラキラと光る物を確認した。

 

『アレを回収しなさい』

 

 底まで移動して確認してみると、それは水晶のようだった。そこで愛歌から助言というか、命令をもらったので剣で掘り起こして回収する。よくよく見るとそこらへんに結晶や貝が存在していた。まずは結晶を回収して浮上する。かなり重たかったが、そこは劣化しているとはいえサーヴァントのステータス。どうとでもなった。

 

「大丈夫?」

「溺れてない?」

「大丈夫だ。今、そっちに戻る」

 

 結晶を持って帰り、三人に見せるとそれぞれ綺麗な結晶に触れだした。

 

「これは魔力が結晶化した物ね。水の蛇から漏れ出た物が蓄積したのでしょう」

「つまり、お宝って事?」

「お宝!」

「ああ、これはお宝だ」

 

 この結晶はたっぷりと魔力を溜め込んでいる。つまり、ガチャの素材にできるという事だ。ならば回収してやらねばならない。

 

「いっぱいあったから回収してくる!」

「行ってらっしゃい」

「頑張ってね~」

「期待しているわよ」

 

 地底湖の底へと移動し、貝と一緒に回収しては地上に運ぶ。それを何度も繰り返しているとゴゴゴゴゴという音が聞こえてきた。急いで陸地に戻る。俺が戻った瞬間、天井から濁流のような水が滝となって至る所から流れて落ちてくる。みるみるうちに水位が上昇していき、このままではまずい。

 

「鈴!」

「任せて!」

「蛇も守って!」

「頑張る!」

 

 蛇の上に乗ってから鈴が結界を展開する。三角形の形にして濁流となりだした水を受け流していく。俺達も鈴に抱き着いて支える。もしもの場合は一緒に流されることになるだろうし、これでいい。実際に結界はどんどん壊されていく。壊された傍から新しい結界を展開して押し流されるのをどうにか防いでいる。

 

「鈴は負けない!」

 

 必死に両手を突き出して結界を展開している鈴を支えていくと、次第に流れが収まってきた。どうやら、複数の鉄砲水が地底湖に流れ落ち、そこから川となって迷宮中に水が送られていく仕様のようだ。

 

「鈴、よく耐えてくれた」

「うん。頑張ったね。偉いよ」

「これ、しんどいよ……」

「それだけの価値がある」

 

 濁流が収まり、地底湖を見ると魚が泳いでいた。どうやら、さっきの鉄砲水によって押し流されてきたのだろう。もし、鉄砲水のどれかにハジメが押し流された物と同じなら、近い場所に近付けるかもしれない。

 

「だいたいの水位がわかったから、そこよりも高い所を作れば安心かもしれないね」

「水に濡れていない場所を探せばいい」

「えっと、何処かな?」

 

 岩場の中には結構削られた物は多いが、中には高さが十分で水から逃れた岩もある。そこに登って大丈夫かどうかを確認するが、中には溝ができていて水が溜まっている場所もある。その近くには更に高い岩があるけれど、ごつごつしていた。

 

「恵里、これを土魔法で高さを上げて整地できない?」

「できると思うけど……」

「それなら頼む。鈴は結界を使って岩と岩が平行になるように整えてくれ」

「鈴にお任せだよ。えっと、こうやって……」

 

 二人の協力で平らな岩が数個できた。そこをさらに恵里の土魔法で埋めていくのだけど、流石に時間がかかるから恵里にお願いする。

 

「石でいいから、スコップとツルハシを作ってくれ」

「スコップ……わかったわ。これを埋めるのは僕一人じゃきついしね」

「鈴も手伝うよ」

「いや、鈴の身体じゃ手伝えないだろ」

「できるよ! 鈴だってちゃんと考えているんだからね!」

「えっと、どうやるんだ?」

「こうやるの」

 

 鈴が結界を使って地面とその下を指定して両手を合わせて力を込めていく。すると結界に閉じ込められた土が明らかに潰されて圧縮されていた。小さな範囲限定とはいえ、これは攻撃手段にもなるし、工具……重機にもなる。それにこれなら予定を変更してもいい。

 

「ナイスだ鈴。これで兎を倒せるかもしれない」

「でも簡単に壊されるし、まだいっぱい力を込めないといけないの。実戦じゃ使えないよ?」

「そこは訓練次第だな」

 

 鈴の頭を撫でながら言ってやると、嬉しそうにはにかんで可愛らしい笑顔を見せてくれる。それに圧縮された土は色々と使える。小説やゲームで得た知識を使えば兎共を狩れるかもしれない。

 

「じゃあ、鈴はいっぱい圧縮してくれ。そうだな。この岩場の周りに堀を作るようにして欲しい」

「堀?」

 

 詳しく説明して堀が如何に防衛に適しているかを説明していくと、納得してくれたようだ。

 

「よくわからないけど頑張るよ。それとそのツルハシとスコップにも結界を使って強度を上げておくね」

「頼む。恵里は……」

「蛇の支配を優先するから」

「そっちは任せる」

「任せて」

 

 二人を岩場の上に置いてから近くの水が溜まっている高めの岩場へと移動する。そこで英霊であるアストルフォの怪力を利用してツルハシで危なそうな岩を砕いて取り除き、スコップで掘ったり砕いた物を埋めたりして調整する。それから地面をしっかりと固めていく。本当にアストルフォには感謝だ。

 

「今日はここまでにするか」

 

 ある程度作業が終わったので、水溜りから出て二人の所に戻る。すると鈴と恵里はぐったりとしていて荒い呼吸を繰り返していた。

 

「大丈夫か?」

「だ、大丈夫……魔力が、切れた、だけ……」

「ぼ、僕も……そ、それよりも、と、トイレに……」

「ああ、なるほど」

 

 二人を抱えて地面に降りて少し離れた所に連れていく。そこでさっさとスカートやズボンを下着ごと脱がせてさせる。二人は本当に恥ずかしそうにしている。いや、少し泣いているからその場を離れた方がいい。今は比較的安全だから、二人の態勢を整えてから少し離れ、水を汲んできて布と一緒に渡す。

 

「じゃあ、服を脱いで渡して。どうせだから洗ってくるよ」

「ほ、本当に脱ぐんだ……」

「それしか仕方ないよ。魔力は拠点を作るのに使うんだから」

 

 恵里が大人しく上も脱いで手ブラをしながら服を渡してくるので、それを受け取って大きな普通の布を渡す。鈴はまだ葛藤しているようなので、脱がせたズボンとスカート、下着を回収する。その間もまだ悩んでる恵里が話しかけている。

 

「汚い服を着ていたい? 私は臭いからいやだけど」

「う~う~わかったよ~できるだけ見ないで洗ってね!」

「善処する」

「そもそも脱がす時に見られているんだけどね」

「うが~!」

 

 乙女として挙げてはいけない声だが、まあ仕方がない。裸に布を巻いただけの二人と居たら色々と興奮してやばいので彼女達の温もりが残っている服を受け取って地底湖へと移動する。そこで小さな水溜りを見つけたので、そちらで洗濯する。石鹸があればいいが、無いのでただの水洗いだ。もちろん、自分の服も脱いで一緒に洗っていく。

 女性の下着を洗うというなんともいえないことだが、ふと二人の匂いが漂ってきて嗅ぎそうになる。だが、視線を感じて振り返ると鈴が恵里に身体を拭かれながらじーとこちらを監視している。

 ここは誘惑を振り切って何もせず大人しく洗濯する。全部洗うとかなり汚れが出ていて水が汚くなった。しっかりと絞ってから布を巻いて二人の場所へと戻る。

 

「ただいま」

「おかえりなさい真名。鈴と相談して決めたんだけどお願いがあるの」

「何?」

「頭とかも洗いたいから、やっぱり水浴びがしたいの」

「それがどういう意味かわかってるよな?」

「わ、わかってるよ! でも、頭も洗いたいし、仕方ないもん!」

「というわけで、洗ってちょうだい。お触りは許すけど襲わないでね」

「襲ったら駄目だからね? 信じてるから!」

「襲うなら僕にして。僕なら何をしてもいいから」

「う~」

「襲わない」

 

 正直、目の前に染まる巨大な蛇の牙や口の中に突撃するのは恐怖を感じないが死を覚悟するような光景だ。血を浴びるとこれが自分の血や行き着く先なのだと嫌でも心が理解させられる。そのせいか、性欲が高まって二人がどんどん魅力的に見えて襲いそうにはなる。まあ、身体の中にアストルフォやルサルカ、愛歌もいるのでやるという行為は完全に筒抜けなので、どうにか冷静になれる。それこそ二人から離れて発散したいが、それもできない。生殺し状態だ。

 

「なに、僕達にはその魅力がないと……?」

「それはそれで嫌かな……」

「どっちだよ」

「だから、妥協案でお触りあり?」

 

 本当に恵里の言う通り、襲っても恵里は許容するだろう。ただ、鈴は文句を言うし、納得しても心を押し殺して溜め込むだろう。これは恵里も同じか。恵里の場合は鈴を奈落に落とした負い目があるから、自分の身体を差し出そうとしているのだろうが、それじゃあ駄目だ。奈落で一緒に過ごす間に恵里の事も気に入ってきた。だから、恵里にも生きて幸せになって欲しい。それに俺としてもユーリと笑顔で会えなくなる気がする。それだけは嫌だ。

 

「まあ、とりあえず洗ってやるから一人ずつな」

「えっと目隠しを……」

「駄目だ。落としたらすぐに助けられない。洗ってやるんだから見せるぐらい許容してくれ」

「う~」

「まあ、悩んでいたらいいよ。僕からお願い」

「わかった」

 

 恵里を抱えて移動し、互いに裸になってから地底湖の中に入って座る。彼女を膝の上に乗せてから後ろから抱くようにして水に浸かる。

 

「冷たいけれど、やっぱり気持ちいい」

「お腹に手を回して固定しておくから、自分で拭いてくれ」

「無理よ。片手だからどうしようもないの。利き手を失ってるんだから洗って。別に手で洗ってくれてもいいし……なんなら、してあげるけど」

「いや、それは……」

「硬くて熱いのが当たってるけど」

「それは諦めてくれ」

「別にいいけど、本当に鈴を襲う前に言ってよ。私がしてあげるから」

「その時は頼む」

「任せて」

 

 眼鏡の無い恵里はこちらを見詰めて顔を合わせてそういってから、俺の唇に軽くキスをしてくる。どういうつもりかはわからないが、どちらにせよ無茶苦茶恥ずかしかったようでそのまま水の中に潜った。すぐに引き上げてやるとなんでもないように装っているが、顔は真っ赤で恥ずかしそうにしている。

 

「さ、さっさと洗って」

「了解、お姫様」

 

 抱きしめる恵里の温もりが冷たい水の感触ではっきりとわかる。それに肌の感触も気持ちよくてゆっくりと時間をかけて洗っていく。

 

「痛い。もっと優しく労わるようにして」

「すまん」

 

 撫でるように身体を洗う。胸や下半身も全部だ。それから裏返して互いに抱き合うようにして、背中やお尻なども洗っていく。手摺がないから今はこうするしかない。拠点にするのなら手摺を設置してある程度二人だけでもできるようにしないと俺が死ぬ。最後に恵里の身体を片手で支えながら水面に浮かべ、髪の毛を水の中に漬けさせて空いている手で優しく洗っていく。

 

「あっ、そこっ、気持ちいい……人に髪の毛を洗ってもらうのっていいね。毎日お願いしたいかも」

「毎日はちょっと大変だな」

「確かに恥ずかしすぎて死にそう」

「ならやらなければいいだろう」

「でも、身体を洗う方が今は大事だと思う。それにもっと恥ずかしいところは見られてるしね」

「それもそうか」

「うん。あ、もういいかな。次は鈴ね」

「わかった」

 

 恵里を連れて地底湖から上がり、布の上に恵里を寝かせて身体を拭いていく。その次は鈴を抱えて地底湖へと移動する。恵里と同じように鈴を抱えて浸かる。恵里と違って髪の毛を纏めている紐を解くと雰囲気が少し大人びてみえた。

 

「やっぱり、すごく恥ずかしいよぉ~」

「支えておいてやるから自分で前を洗ってくれ。その方がいいだろう?」

「真名君は鈴の肌が触りたいんじゃないの? 恵里はそういう風に洗ってたよね?」

「鈴が嫌ならしない」

「鈴が嫌なら……」

 

 しばらく考え込むと、鈴は驚いた事に渡した身体を洗うための布を渡してきた。

 

「いいのか?」

「うん。鈴だけ仲間外れは嫌だもん。恵里と一緒がいいから、我慢するよ」

「我慢しなくていいんだが……」

「やだ。仲間外れにされるのって怖いもん」

「仲間外れにもしないって」

「わかんないよ!」

「いや、ないって」

「あったもん! 仲良くしていたのに鈴が間違った事を言われたから、怒ったのに皆、天之河君の方が正しい、鈴がおかしいって……それから、オルクス大迷宮に行くときだって……」

 

 話を聞いていくとあのお菓子を盗まれた事件がきっかけで仲良かったクラスメイト達からハブられたようだ。だから、空気を読んで後ろに下がってきたとのこと。これが鈴が俺とユーリの場所に入ってから少しして来た理由みたいだ。天之河の方は香織に構っていて鈴にはほとんど見向きもしなかったのかもしれない。

 今までクラスのムードメーカーとなっていた鈴にとってはかなり精神的に不安定になったことだろう。そこで更に追い打ちがかかり、親友だった恵里に裏切られて奈落に落とされた。そこで死ぬ事はなんとなくわかっていて、自暴自棄になったのかはわからないが、なんとか恵里と話して和解したらしい。鈴は恵里の話はしてくれなかったが、それでも色々とあるみたいだ。

 

「ねえ、鈴が悪かったのかな? こんな風に奈落に落とされるようなことをしたのかな?」

「悪いのは他の連中だ。一番は戦争を受け入れた天之河だろうが、それに同調した鈴達も遅かれ早かれ生死を賭けた戦いに赴いてこうなっただろう。ここまではいいか?」

「うん。でも、クラスの皆は……」

「ここで考えて欲しいのは戦争に参加する事になって訓練とはいえ頑張っていたところで、表面上は問題ないにしても環境が変わり、元の場所に帰れないし連絡もつかない。更にやる事は人殺しの訓練だ。皆、知らず知らずのうちにストレスを溜め込んでいたはずだ」

「確かに……それはわかるよ」

「で、そこにメイドが持ってきた鈴のお菓子を食べた。当然、盗まれて勝手に食べられた鈴は糾弾する」

「うん。した」

「じゃあ、食べた人は罪悪感を感じつつも罪から逃れようという心理が働いて天之河に賛同した。しかし、これで鈴をまた受け入れようとしても、罪悪感や罪を糾弾されるかもしれないと思ってできない。結果、ハブられることになったと思う。まあ、あくまでも想像だが……園部達は普通に謝ってくると思うが……」

「わかんないよ。すぐ眠って起きたら迷宮だし……」

「そうか。ここを出たら聞いてみるのもいいかもしれないな」

「うん……怖いけど、頑張ってみるよ」

「それと俺は鈴が悪いとは思わない。当然の事だ」

「よかった……」

 

 俺を掴んでこちらに振り向いた鈴が抱き着いてきた。しばらく抱き合っていると、視線を下にやって何かに気付いたようで顔を真っ赤にしてボソッと呟いた。おそらく、鈴のお腹に当たってるアレだ。

 

「もう、鈴お嫁にいけない」

「それなら諦めて俺の嫁になるとか?」

「え?」

「じょ、冗談だからな」

「だ、だよね……うん……」

 

 なんとも言えない雰囲気になったので急いで話題を変える。

 

「それで身体を洗うのはやっぱり鈴が自分でやった方が……」

「ううん。洗って欲しいの。やっぱり仲間外れは嫌だし、恵里にやったことは鈴にもして。鈴にやったことは恵里にもして。鈴と恵里を同じように扱って欲しいの。鈴にとっては恵里はかけがえのない大事な親友だからね!」

「わかった。でも、胸とか触っても我慢してくれよ」

「うん。恥ずかしいけれど我慢するけど、あんまり触ったら駄目だからね?」

「善処します」

「もう!」

 

 鈴が一応、元気になったようで良かった。せっかくだから鈴の身体も堪能させてもらおう。それに俺の背中も洗って欲しいから、抱き合って互いの背中を洗うようにする。

 

「あ、そういえば恵里から軽くキスされたけど、鈴もするか?」

「え! それはその、あうあう~」

「嫌ならいいけど」

「嫌じゃないよ!」

「そうなんだ」

「も、もう何度もしてるからね、うん。ちゃんとできるよ」

 

 そう言って目を瞑りながら唇を差し出してくる。軽く触れ合うだけのキスだけど、鈴からしてもらったのははじめてだ。

 

「こ、これでいいよね! 手早く洗ってあがろう!」

「あ、ああ、そうだな」

 

 鈴の頭も綺麗に洗った後、恵里の元へと移動する。すると彼女は火にあたっていた。魔法で作り出した火のようだ。

 

「随分とお楽しみだったようね」

「そ、そんなことないよ! うん!」

「そう。別にいいけれどね」

「じゃあ、拠点に戻って寝る用意をしようか」

「そうね」

 

 火を消した後、岩場に作った平らな場所に移動する。狭いが落ちないようにだけしてここで眠るようにする。近くに火を焚いて剣を地面に突き刺し、そこに洗濯物をかけて、食事をしたら二人を仰向けで寝かせて順番に覆いかぶさって深いキスをする。二人と唾液を交換して魔力を高め、最後は吸い取って吸収する。魔力がほぼなくなった二人はそのまま気持ち良さそうに眠りについたので位置を変えて二人に腕枕しながら眠りにつく。

 

 

 

 

 

 

 

『どうでもいいけれど、地上に戻ったらその二人は離れていくんだから他の男に取られる事も考えなさいよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真名君の身体について。普通にクローンとかで再構成しないと駄目なレベルなので容姿については変更されるかもしれません。

  • 元の姿
  • 成長させたストレートユーリ(獣殿っぽい)
  • 黒髪男の子愛歌様
  • 痩せた元の姿(僕アカ。ファットガム)
  • アストルフォの容姿(憑依解除しても)

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