ありふれた職業の召喚(ガチャ)士で世界最弱   作:ヴィヴィオ

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朝田詩乃

 

 

 

 女の子のように見える男の人が居なくなったので、私は服を脱いで岩場に作られた露天風呂のような所に入る。他の三人はすでに入っているので、彼女達の離れた場所に座って彼女達を観察する。

 一人は濃い緋色のロングヘアーにアホ毛が付いていて、緑色に輝くその瞳は見てるだけで惚れ惚れとしそう。他の人と同じで、ここに居る人達は私と同じくらいの年齢なのかもしれない。そんな彼女の両脇には片腕と片足がない黒髪の女の子と両足がない茶色の髪の毛の女の子が居る。緋色の女の子にその二人が抱えられていた。

 

「あ~やっぱりお風呂はいいわね」

「確かに」

「うん~気持ちいいね~」

 

 三人はまったりしているけれど、こっちはそれどころじゃない。さっきの意味不明な戦いの事とか、教えて欲しい。そう思って視線をやると、まだ名前を聞いていない人がこちらに気付いた。

 

「そんなところに居ないでこちらに来なさいよ。聞きたい事があるでしょ?」

「そうだね~おいでおいで~」

「別にとって食ったりしないから来なさい」

 

 三人に言われて不安だけど近付いていく。教えてくれない方がまずい。私のこれからに関わるから。

 

「それじゃあ、何を聞きたいの」

「えっと、ここは何処なんですか」

「鈴、改めて説明してあげなさい」

「うん。任せて~」

 

 彼女達はこの世界に居る神様に召喚され、戦争に参加するように言われた始まりの事から、ここオルクス大迷宮の奈落へと落ちて来たことまで全て教えてくれたけれど正直、信じられなかった。

 ここがどんな場所でどれほど危険なのかも教えてくれた。信じたくはないけれど、実際にあのアニメやゲームみたいな戦いを目の前で見せられ、彼女達が手足を失っていることから本当の殺し合いをしていることが嫌でも理解できた。

 

「わ、わたしも、そうなるの……?」

 

 そう思うと涙が溢れてくる。虐めから助けてもらいたかったのにやってきたのはもっと悲惨な殺し合いが行われている場所だなんて酷すぎる。

 

「大丈夫だよ。しののんは鈴達が守るから。真名君もそのつもりだしね」

「鈴、まずはその子の話も聞かないと」

「っと、そうだったね。教えて?」

「は、はい……」

 

 幼い頃、銀行強盗に巻き込まれて人質にされた時に相手の拳銃を奪い、銀行強盗を撃ち殺した事。その事で虐められていたことも説明した。そして、遠くの中学で同じ小学校出身の女生徒に人を殺した事をばらされて今度はさらにエスカレートした。最初は友達になってくれて、次第に私の部屋に入ってくるようになって男まで連れ込んできた。怖くなって警察に報告し、鍵も変えた。その後、私は女生徒の彼氏とその他の奴等に襲われて犯されそうになった時、助けを求めたら声が聞こえた。服を破られて頬を舐められそうになり、本当にもう駄目かと思った時に注意事項を言われても、考える暇もなく微かな希望に飛びついた。

 隠していたかったけれど、嘘をついてバレたら何をされるかわからない。それに彼女達は鈴という人を除いて殺し合いをしていたのだし、私が人を殺していても大丈夫だと思うから全部話した。

 

「辛かったね……」

 

 私が涙を浮かべながら話していると、鈴さんはちゃんと聞いてくれていた。でも、残りの二人はろくに聞いていない。一人は風呂につかりながら身体を預けて禍々しい感じがする本を読んでいるし、もう一人は禍々しい本に引き寄せられる何かを取り込んでいた。

 

「ふ・た・り・と・も?」

「興味がない」

「そうね。そもそも助かってもいないわけだし、ここに居ても似たような事になるかもしれないわよ? いいえ、もっと悲惨な目に遭うかもね。こちらの世界も貴女が居た世界も弱肉強食。犯されそうになった? ならそいつらの喉元を食い千切って殺すぐらいしなさい。そうしたら覚悟の無い連中は逃げるでしょう。それに一人殺しているなら今更ためらうこともないでしょ。一人も二人も同じよ?」

「っ!? そ、それは……」

「まあ、僕は朝田詩乃だったかな。彼女に興味はない。ここで僕達の仲間になるのなら話は別だけどね。ようやく力を手に入れたのに足手纏いが増えるのは頂けない」

「だ、大丈夫だよ、うん。鈴達や真名君で守ればいいんだし。それに鈴達の介護をしてもらえば足手纏いじゃないよね?」

「僕としては知らない人にされるよりは、真名にされる方がいいけど」

「え、えっと……?」

 

 聞いていくと、彼女達は男の人にトイレの世話をしてもらったり、身体を洗ってもらったり、キスして魔力を供給したりしているらしい。正気を疑うけれど、話していると本当にしているし、もう恥ずかしいけれど受け入れているらしい。詳しく聞いていくと納得できなくはない内容だった。

 

「驚愕しているようだけど、詩乃もキスか、身体を渡すかは知らないけれどどちらかはしないとしらないわよ。少なくとも私は守ってあげないからね」

「二人共?」

「鈴。僕達がしたように彼女にも要求するだけ。嫌なら力をつければいいし、離れてもいい。彼女はまだ腕も足もあるんだから」

「でも……」

「仲間になるのなら受け入れる。でも、魔力の供給くらいはしてもらわないとね。これから僕や鈴も魔力はそう簡単に渡せないんだから」

「そっか。うん、そうだよね……」

「あの……」

「どちらにせよ、選ぶのはその子よ。与えられるだけ情報を与えて決めてもらいましょう。送還だってできるのだから」

「それもそうね」

「か、帰れるの?」

「真名君に召喚されたのなら大丈夫だよ、きっと」

「帰れるわ、ええ、帰れますとも」

 

 それなら、こんな危ない所に居るよりはいいのかもしれない。そう思っていると声がかかった。

 

「洗うの手伝いなさい」

「わ、わかりました……」

 

 二人の身体を綺麗に洗う時にもう一人にも名前を教えてもらった。ルサルカ・シュヴェーゲリン。何十、何百、何千もの人を殺しているらしい。

 

 

 

 お風呂から上がり、汚れた服を着るか悩む。二人は布を身体に巻いただけという姿でいいらしい。

 

「ほ、本当にそれでいいん、ですか?」

「どうせ全部見られてるしね」

「むしろ、裸で抱きあって暖を取ってるから仕方ないよ。しののんも一緒になるのかな?」

 

 私は思わずぶんぶんと頭をふる。

 

「お、男の人と一緒に寝るだけでも危ないのに裸でなんてできない!」

「あ……そう、だよね。あれ?」

「鈴は順調に倫理観が崩壊してきているわね」

「……やばい。鈴が痴女になっちゃってる!」

「こちらへいらっしゃいな~」

「まあ、真名限定だから大丈夫よ」

「そっか、真名君限定なら大丈夫か……あれ?」

「大丈夫大丈夫」

「ええ、大丈夫よ」

 

 鈴さんにルサルカさん、恵里さんが耳元で囁いていく。その姿はまるで暗示や洗脳しているみたいにみえる。ここに居る人達ってやっぱりかなりやばい人達なんじゃない? 

 

「お帰り」

 

 移動した先に待っていたのはうさ耳をつけた美少女。いや、男らしい。確かに一瞬だけガリガリで皮膚が垂れている男の姿を見た気がした。

 

「ご飯を用意しておいた。食べてくれ」

「ご飯、ご飯~」

「今日はなにがあるの?」

「カツ丼と麻婆豆腐、鍋焼きうどんだな。麻婆豆腐は食べるのはお勧めできないが……」

 

 カツ丼と麻婆豆腐はそれぞれ蓋付きのどんぶりと皿に入れられている。カツ丼からは凄く良い匂いがしてくるけれど、麻婆豆腐からは凄い刺激臭が漂ってくる。

 

「見るからに辛そうね」

「ルサルカ、ごめんだけど……」

「わかってるわよ。それじゃあ、私は戻るわ」

 

 ルサルカさんはそう言うと、うさ耳男の娘の中へと霞のように消えてしまった。彼女はまるで人間じゃないみたい。そう思っていると後ろから肩を捕まれて耳元で囁かれる。

 

「貴女は彼女達とは違い、私達と同じ。その事をしっかりと考えて受け止めなさい。証拠は真名のスマホよ」

 

 悲鳴をあげそうになりながら振り返ると誰も居ない。ただ、声はルサルカさんのものだった。彼女達、鈴さんと恵里さんとは違って私はルサルカさんと同じということ? 意味が分からない。証拠はスマホ? 

 

「麻婆豆腐はどうする?」

「食べない方がいい。辛すぎるだろうしな」

「見るからに真っ赤だしね。とりあえず、足らなかったら魚や貝?」

「飽きたかもしれないが、これしかないからな。詩乃も含めて三人で食べてくれ」

「わ、わかりました」

 

 名前で呼ばれて嫌な気分だけど、仕方がない。それよりも三人で一緒にカツ丼と鍋焼きうどんを三人で別けて食べさせてくれることになったみたい。でも、あまり食欲はない。あんなものを見せられたんだから仕方がない。

 

「じゃあ、いただきます」

「あ、真名君はどうするの?」

「風呂に入ってくる。先に食べてていいから」

「「いってらっしゃい」」

 

 二人が見送っていった後、鈴さんと恵里さんは二人で岩場を背にしながら一緒に食べさせていく。食欲はないからどうしようかと考えているとふとルサルカさんに言われた事を思いだした。

 

「食べないの?」

「食欲がないので……」

「食べた方がいいよ」

「は、はい……」

 

 少し貰って食べるけど、やっぱり食欲はわかない。それでも二人に悪いし、特に恵里さんが睨んでくるから怖い。この人、平気で人を殺そうとしていたし。

 

「カツ丼美味しいよ~」

「鍋焼きうどんもいいよ」

「ほら、しののんもあ~ん」

「あ、あ~ん」

 

 確かにカツがサクっとしていて出汁も染みていてとても美味しい。でも、私達だけで食べていていいのかな? 

 

「あの、あの真名さんの分を残さなくていいん、ですか?」

「真名君はモンスターの肉を食べられるからね。鈴達が食べたら死んじゃう。それに一応、鈴のを取っとくよ」

「し、死ぬっ!?」

「でも、もう私達も食べられるかもしれない。永劫破壊(エイヴィヒカイト)を覚えたから、普通の人とは変わるはずよ」

「それなら嬉しいね。真名君の負担を減らせるし。相談して鈴達も食べよ」

「まあ、ルサルカに聞いて大丈夫か確認しないと駄目よ」

「それもそっか」

「あの、本当に死ぬ、の?」

「うん。だからしののんはあそこに干してあるお肉を食べたら駄目だよ。お魚とかは大丈夫だけどね」

「わ、わかった」

 

 食べたら死ぬなんて毒物、こっちから願い下げよ。

 

「それよりもさっさと食べましょう。これからいっぱいやる事があるんだから」

「うぅ~早く寝たいけどやらないといけないことがあるんだよね……」

「少なくとも詩乃の役割を決めないといけないし。まあ、真名が上がってからだけど」

「わ、私は……」

 

 突き付けられた選択肢を決められないでいる。いや、決めたくないといった方が近い。与えられた選択肢ってようはこの化け物みたいな人達についていくか、一人で化け物が蔓延るここを探索するか、元の世界に戻ってアイツらに襲われるかしかない。その三つしかないのだけど、もしかしたら一人で行動できるかもしれないし、襲われずに戻れるかもしれないなんて思ってしまう。

 

「ただいま」

「おかえり~真名君、あ~んする?」

「いや、いい。鈴が食べていいからさ。代わりに後で魔力をくれ」

「ふぇ? わ、わかったよ」

 

 そう言って赤くなった鈴さん。意味がわからない。彼は干して置いてある肉をそのまま口に入れてこっちにやってきた。表情は一切変わっていない。美味しくも不味くもなさそう。

 

「で、詩乃はどうする? 俺としては召喚した責任を果たしたいし、詩乃が望むように頑張ろうと思うんだ」

「あの、送還するとどうなるの?」

「……わからん。したことないし」

「え」

「ちょっと待ってくれる?」

「う、うん」

 

 スマホを取り出して調べていく。でも、すぐに表情が曇った。

 

「ルサルカお姉さんが教えてあげましょう!」

 

 すぐに彼の後ろからルサルカさんか現れて彼に抱き着く。その状態で色々と教えてくれるみたい。

 

「あ、あたってるんだが……」

「いやね~あててんのよ」

「ちっ、このビッチめ」

「ひどっ!」

「手を出したらどうせ溶かすくせに」

「ばれてる~流石はマスターね。召喚した私達の全てを知っているだけあるわ」

 

 え? 召喚した私達の全てを知ってるって、私の全ても知られているの? 

 

「詩乃も気をつけなさいよ~スリーサイズから体重。月の物まで全部知られてるからね」

「えっ!?」

「それ、俺も知らないんだが……」

「えっとね……」

 

 ルサルカさんがスマホを操作して何かを表示していく。それもこちらを見てニヤリと笑う。

 

「なるほど。良かったわね。今、犯されてたら妊娠してたわよ」

「っ!?」

「おい、これって……」

「そう、詩乃のデータよ。送還するならここのボタンを押して召喚キャパシティーから外せばできるわ」

「もしかして帰れる──?」

「そして帰ったら襲われるわね」

「──あ」

 

 想像しただけで最悪な気分になる。これならいっそ死んだ方がましかもしれない。でも、ここでなら何時でも死ねそうだし……駄目だ。お母さんの事もある。私は戻らないといけない。

 

「やっぱり戻ります」

「いいのか?」

「お母さんをおばあちゃん達に任せっぱなしは……」

「確かにそうだな」

「帰れるなら帰った方がいいよね~」

「でも、送還って安全なの?」

「安全なわけないじゃない」

「ど、どいうこと!」

「俺も聞きたい」

「あのさ~私達って普通の存在じゃないの。鈴と恵里と違ってマスターである真名に召喚された存在はどういう存在かわかるでしょ? なら、私達の帰る場所ってどこかわかる?」

「あ」

 

 どういう事? 私の帰る場所はお母さん達の居る所なんだけど……

 

「悩め悩め。そっちの方が私は楽しいからね~」

「ねえ、えりえり。もしかして……」

「うん。鈴の思っている事がただしいと思う」

「悪い。詩乃……送還はしない」

「どういう事!」

 

 いきなりそう言われても納得できない。だからコイツの胸元を掴んで睨みつける。

 

「理由は……」

「自分で分かるまで駄目よ。悩みなさい若人。教えちゃ駄目よ。だって、これはアイツの仕業なんだから」

「もしかして愛歌の仕業か?」

「そういうこと。まだ試練は終わっていないの。その状態であの子が起きたらどうなるかしら? それはそれで楽しみよね?」

「全然楽しくない!」

「まあ、そこの鈴と恵里は二人は死ぬ可能性があるしね。いや、それ以上に酷いか。愛歌なら私と同じで犯して拷問し、最後には魂まで利用するかしら?」

「あう~」

「アイツならやりかねない」

「やりかねないじゃなくてやるだろうな」

 

 ルサルカの言葉に納得している三人。つまり、その通りにされるということ? 

 

「悪いな。今のオレにとって詩乃より鈴と恵里を優先する。だから、少なくとも今は送還することはできない」

「っ!」

 

 手を離して地面に座り込んで拳を握る。私は帰れない。そう思うと涙がでてくる。確かに私より二人を優先するのはわかる。それに私は……自分で助けて欲しくて説明を聞かずに召喚に応じた。そんな私に怒る資格はない。

 

「というか、ルサルカさんって何歳……」

「それは乙女の秘密よ」

「真名、何歳?」

「スマホで見る限り──んぶっ!?」

 

 真名の口がルサルカさんの唇で物理的に防がれ、舌を入れられたのか震えて床に崩れ落ちた。

 

「おっと、マスター。それを言ったら溶かしちゃうゾ」

 

 唇をペロリと舐めて唾液を綺麗にするルサルカさんの姿は妖艶だった。

 

「で、どうするの? 私達と来るのなら護衛はしてあげる。代わりにその子達の世話ね。そうよね、マスター」

「ああ、それがいい。詩乃、一緒にきてくれないか? ちゃんと安全に帰れるようにはするし、召喚した責任は取る」

「……わかった。よろしく」

「こちらこそよろしく」

 

 差し出した手を握り絞められ、引っ張られて立ち上がる。真名の顔をしっかりと見ていると、彼の視線が下に行っている事に気付いた。そして視線を下にやるとそこには破かれて胸元や一部下着が露出しているのが見える。

 

「変態っ!?」

「痛っ!」

 

 思わずビンタを食らわした。するとルサルカはとっても楽しそうに腹を抱えて笑いだす。鈴達もこちらを不思議そうに見ているので、説明してあげる。この二人、明らかに倫理観が緩くなっている。私がしっかりと締め直さないといけない。

 

「とりあえず、詩乃はこの軍服を着てくれ。一応、力が上昇するから介護にも使えるからな」

「ありがとう。それとごめん」

 

 服を貰って着替えていく。ルサルカが着ているのと似たような感じだった。それでも破れて汚れたボロボロの制服よりはましだ。本当に力も湧いてきたし、この世界はどうなるかわからない。

 

 

 

 

 




自分の存在を詩乃に理解させようと思いましたが、それじゃあ面白くならないから書き直しました。

清水君ヒロインアンケート 人になるます

  • 波の鳥 フ
  • 謳の鳥 コ
  • 空の鼠 ク
  • 深海のナニカ レ
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