ありふれた職業の召喚(ガチャ)士で世界最弱   作:ヴィヴィオ

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前半はほぼ原作を一人称に変えて少し追加した程度。状況がどんな感じかを入れるために入れました。
ハジメとユエだけだから、追加する部分がほぼないし、少しユーリ達の話を混ぜる程度しかできませんでした。後半はちゃんとオリジナルです。


今回はずっとユエのターン!


第19話

 

「だぁー、ちくしょぉおおー!」

「……ハジメ、ファイト……」

「お前は気楽だな!」

 

 現在、俺はユエを背負いながら猛然と草むらの中を走っている。周りは百六十センチメートル以上ある雑草が生い茂り俺の肩付近まで隠してしまっているので、背が低いユエなら完全に姿が見えなくなっているだろう。

 そんな生い茂る雑草を鬱陶しそうに払い除けながら、俺が走っている理由は──

 

「「「「「「「「「「「「シャァアア!!」」」」」」」」」」」」

 

 ──二百体近い魔物に追われているからである。そもそもこの迷宮に存在しているモンスターの強さは異常だ。

 

 俺は奈落に落ちた時にすぐモンスターに襲われて片腕を失い、偶然魔力が結晶化した神結晶をみつけた。神結晶から出る万能回復薬、神水で傷を癒す事ができて生き残る事ができた。最初は死にたいと思ったが、死ねなかった。俺は沙条君、沙条が召喚したユーリが俺達を生かしてくれるために犠牲になった。俺が生きる事を諦めたら彼女の死が無駄になる。それに白崎や沙条、谷口も心配してくれているはずだ。アイツ等まで裏切るとは思わない。だから生きて迷宮を出るために出来る限り足掻いてやる。

 そう決めてからモンスターを錬成で作った罠に嵌め、ユーリから貰ったデバイスのドンナーで一方的に上から撃ち殺した。どうにか討伐できたので倒したモンスターを腹が減って食べたが、それが失敗だった。食べたら身体中に激痛が怒り、血が噴き出した。慌てて神水を飲む事で破壊と再生を繰り返してどうにか生き残り、モンスターの力を手に入れる事ができた。

 それから、生き残って元の世界へと戻るために迷宮を彷徨った。上に登れる階層はありそうだが、道がわからずに見つけた階段を降りて迷宮を攻略して脱出装置を探す事にした。

 手に入れた様々な鉱石を錬成してドンナーを強化し、モンスターから得た力も合わせて敵を撃ち殺していった。モンスターを殺してその肉を喰らう事で相手の能力を手に入れて戦力を増やして迷宮を進んでいき、オルクス大迷宮に囚われていた吸血鬼のお姫様と出会った。最初は助ける気もなかったが、裏切られてという話を聞いて助けて名前が欲しいと言われたのでユエという名前をつけてやった。

 その後は色々と準備を終えて迷宮攻略に動き出したあと、十階層ほどは順調よく降りることが出来た。装備や技量が充実し、かつ熟練してきたからというのもあるが、ユエが全属性の魔法をなんでもござれとノータイムで使用し、的確に援護してくれる。ただ、回復系や結界系の魔法はあまり得意ではないらしい。〝自動再生〟があるからか無意識に不要と判断しているのかもしれない。もっとも神水があるのでなんの問題もない。

 

 そんな凄まじい活躍を見せてくれたので現在の階層である樹海までは順調だった。ここは十メートルを超える木々が鬱蒼と茂っており、空気はどこか湿っぽい。しかし、以前通った熱帯林の階層と違ってそれほど暑くはないのが救いだな。

 俺達が階下への階段を探して探索していると、突然、ズズンッという地響きが響き渡った。何事かと身構える二人の前に現れたのは、巨大な爬虫類を思わせる魔物だ。見た目は完全にティラノサウルスである。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 鋭い牙と迸る殺気が議論の余地なくこの魔物の強力さを示していたが、ついっと視線を上に向けると向日葵に似た花がふりふりと動く。かつてないほどのシュールさで思わず撃ち殺すのを忘れてしまった。

 ティラノサウルスが咆哮を上げ俺達に向かって突進してくる。俺が慌てずにドンナーを抜こうとして……それを制するように前に出たユエがスッと手を掲げて魔法を無詠唱で発動した。

 

「緋槍」

 

 ユエの手元に現れた炎は渦を巻いて円錐状の槍の形をとり、一直線にティラノの口内目掛けて飛翔してあっさり貫く。その上、貫いた周囲の肉を容赦なく溶かして一瞬で絶命させた。地響きを立てながら横倒しになるティラノからは良い匂いがしてくる。同時に頭の花がポトリと地面に落ちていく。

 

「……」

 

 いろんな意味で思わず黙ってしまう。最近、ユエの無双が激しい。最初は俺の援護に徹していたはずだが、何故か途中から俺に対抗するように先制攻撃を仕掛け魔物を瞬殺していく。別に俺が居なくてもいいんじゃないかって気がしてならない。まさか、自分が足手まといだから即行で終わらせているとかでないことを祈りたい。もしそんなことを本気で言われたら丸十日は落ち込む自信があるぞ。抜きかけのドンナーをホルスターに仕舞い直しながら、苦笑いを浮かべながらユエに話しかける。

 

「あ~、ユエ? 張り切るのはいいんだけど……最近、俺、あまり動いてない気がするんだが……」

 

 ユエは振り返って俺を見ると、無表情ながらどこか得意げな顔をする。

 

「……私、役に立つ。……パートナーだから。駄目? 迷惑だったら止める……」

 

 どうやら、援護だけしているのが我慢ならなかったらしいな。確かに少し前、一蓮托生のパートナーなのだから頼りにしているみたいな事を言ったような気がする。あの時はユエが魔力を枯渇するまで魔法を使い、戦闘中にブッ倒れてちょっとした窮地に陥ってしまった。何とか敵を倒した後、その事をひどく気にするので慰める意味で言ったのだが……思いのほか深く心に残ったようだ。パートナーとして役立つところを見せたいと思ったのだろう。

 

「はは、いや、もう十分に役立ってるって。ユエは魔法が強力な分、接近戦は苦手なんだから後衛を頼むよ。前衛は俺の役目だ」

「……ハジメ……ん」

 

 若干シュンとしてしまったが、仕方ないだろう。どうにも俺の役に立つことにこだわり過ぎる嫌いがある。俺は苦笑いしながら、ユエの柔らかな髪を撫でる。それだけで、ユエはほっこりした表情になって機嫌が戻ってしまうのだから扱い易いというか何と言うか、問題がある。

 依存して欲しいわけではないのだから、所々で注意が必要だろう。と思いつつもつい甘やかしてしまう。まるでユーリを溺愛して甘やかしている沙条みたいだ。沙条がユーリを撫でている姿を客観的に見ていた時の事を思いだして自分でも少し呆れてしまう。

 こんな事をしていると、〝気配感知〟に続々と魔物が集まってくる反応が捉えられた。どうやら敵の大群のお出ましのようだ。

 やってきた奴等はティラノサウルスではなく、ラプトルのようなモンスターだった。そいつらも何故か頭にティラノサウルスと同じ花をつけていた。

 

「もしかして流行っているのか?」

「……可愛い……」

「シュールなだけだろう」

 

 ラプトルはティラノと同じく、「花なんて知らんわ!」というかのように殺気を撒き散らしながら低く唸っている。臨戦態勢だ。花はゆらゆら、ふりふりしているが──

 

「シャァァアア!!」

 

 ──ラプトルが花に注目して立ち尽くす俺達に飛びかかってくる。その強靭な脚には二十センチメートルはありそうなカギ爪が付いており、ギラリと凶悪な光を放っていて喰らったら死にそうだ。なので、ドンナーを素早くホルスターから引き抜いて撃つ。電磁加速されたタウル鉱石の弾丸は先頭の頭を貫き、そのまま後ろのラプトルも貫いていく。

 

「ちっ」

 

 先頭が数体死んだ程度では止まらない。俺とユエは左右に飛んで回避し、ラプトルを殺していく。ユエは魔法で、俺はドンナーでだ。

 粗方始末した時、ふと気になったので〝空力〟を使って三角飛びの要領でラプトルの頭上を取り、試しにラプトルの頭部に生えたチューリップの花をドンナーで撃ちぬく。銃声が轟くと同時にチューリップの花が四散する。

 すると一瞬ビクッと痙攣したかと思うと、ラプトルはそのまま地面に転がって樹にぶつかって動きを止めた。他にも敵がいるのでそこまで注視はできないが、意識をそちらに割きながら他を処理していく。

 地面に倒れているラプトル以外の処理を終えると、ユエもトコトコと俺の傍に寄ってくる。それからラプトルと四散して地面に散らばるチューリップの花びらを交互に見やった。

 

「……死んだ?」

「いや、生きてるっぽいけど……」

 

 俺の見立て通りならまだ生きているはずだ。そう思って観察していると、しばらくしてピクピクと痙攣した後、ラプトルはムクッと起き上がり辺りを見渡し始めた。そして、地面に落ちているチューリップを見つけるとノッシノッシと歩み寄り親の敵と言わんばかりに何度も何度も踏みつけ始めた。

 

「え~何その反応、どういうことだ?」

「……イタズラされた?」

「いや、そんな背中に張り紙つけて騒ぐ小学生じゃねぇんだから……」

 

 ラプトルは一通り踏みつけて満足したのか、如何にも「ふぅ~、いい仕事したぜ!」と言わんばかりに天を仰ぎ「キュルルル~!」と鳴き声を上げた。そして、ふと気がついたように俺達の方へ顔を向けビクッとする。

 

「今気がついたのかよ。どんだけ夢中だったんだよ」

「……やっぱりイジメ?」

 

 俺がツッコミ、ユエが同情したような眼差しでラプトルを見る。ラプトルは暫く硬直したものの、直ぐに姿勢を低くし牙をむき出しにして唸り一気に飛びかかってきた。迎撃しようとした瞬間、横合いから飛び出してきた別のラプトルに首を喰らいつかれて押し倒される。足で押さえつけて首を上げて肉を抉り取ってそのまま捕食する。

 

「ハジメ」

「ああ」

 

 ドンナーで撃ち殺す。放った弾丸はやって来たラプトルの身体を貫く──はずだった。しかし、即座に飛び退ったラプトルはそのまま何度も地面を蹴ってジグザクに距離を取る。

 

「何?」

「避けた」

 

 この対応の仕方はまるで射線を絞らせないためにしているようだ。すくなくとも相手は遠距離攻撃への対策を考えるほどの知能があるのかもしれない。

 

「キュルルル~!」

 

 ラプトルが声を上げるとガサガサと樹海の奥から音が聞こえてくる。すぐに〝気配感知〟を発動して確認すると、こちらに向かって馬鹿みたいな数が走ってきている。それもラプトルだけじゃない。

 

「ユエ、急いで逃げるぞ!」

「どうしたの?」

「約154匹のラプトルを含めたモンスターが迫ってきてやがる!」

「わかった!」

 

 身体の小さなユエじゃ追いつかれるだろうから、しゃがみ込んで背中をみせるとすぐにユエが抱き着いてきた。そのまま〝空力〟を使って木の上に登ってから急いで逃げる。

 

「キュルァ!」

「「「「キュキュゥ!」」」」

 

 当然のようにこちらを追ってくるモンスターの軍団から必死に逃げる。

 

「ハジメ、追ってきてるのは頭に()()()()()()()()

 

 先程の行動を考えると花のついているのとついていないのは敵対しているのか。そもそも花が取れたラプトルの行動からして花に対してかなり怒りを感じていたようだ。その事から操られているのではないかと思うが……駄目だ。情報が足りない。

 

「ユエ、迎撃できるか?」

「できる」

「なら……いや、待て。閃光系の攻撃はできるか? ダメージはなくていい」

「できる。ハジメがやれというなら、なんでもやる」

「そうか。なら頼む。タイミングは指示する」

 

 そのまま走っていくと俺の〝気配感知〟に反応した奴等が見えてくる。相手はラプトルで構成された群れで、()()()()7()0()0()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そいつらの前に出た瞬間に指示を出す。

 

「ユエ!」

「ん! 〝閃光〟」

 

 ユエが俺の指示に従って膨大な魔力を込めた閃光を発動し、周りを光で焼き尽くす。当然、俺は目を瞑って()()進路を変えて走る。〝気配感知〟のおかげで目を瞑っていても問題ない。

 そのまま走って少ししてから目を開けてから、しっかりと隠れる。背後を振り向くと、そちらでは無数のラプトル立が殺し合いを初めていた。花のあるラプトルの方が上だが、無い方のラプトルは口から毒のブレスや()()()()()を吐き出して虐殺している。更には四足歩行の明らかにラプトルじゃないモンスターまで一緒になっていた。

 

「ハジメ……」

「どうやら、寄生されたモンスターと寄生されていないモンスターの生存競争みたいだな。しかし、あちらのラプトルは明らかにおかしいが……」

「ん。異常個体が群れでいる。不思議」

「特殊な環境による進化でもしたのかもな」

「かも。ハジメ、気付かれた」

「ちっ」

 

 花を持つラプトルがこちらに気付いて200匹くらいを割いてきた。だから、俺達は急いで逃げる。だが、逃げた先にも花をつけたラプトルやティラノサウルス、トリケラトプスまでいた。連中の数も多く、〝気配感知〟を使いながら逃げているが、まるでこちらの位置がわかるかのように的確に進路を潰されている。

 なので、ユエの魔法による広範囲殲滅、〝凍獄(とうごく)〟によって敵を一気に凍結させて花が咲いたかの様な綺麗な氷華を作り出していく。そこを駆け抜ける事で包囲される前に出られてはいるが、それでもジリ貧だ。

 

 

 

 

 

 以上、回想終わり。とりあえず、後ろから迫ってきている連中を撒く為に縦割れの洞窟に入った。この洞窟は大の大人が二人並べば窮屈さを感じる狭さだ。ティラノは当然通れず、ラプトルでも一体ずつしか侵入できない。何とか俺達を引き裂こうと侵入してきたラプトルの一体がカギ爪を伸ばすが、その前にドンナーが火を噴き吹き飛ばした。そして、すかさず錬成し割れ目を塞ぐ。これで一応はゆっくりできるが、念の為にユエを胸に抱きしめて何時でも攻撃できる準備をして休憩する。

 

「♪」

 

 ユエは嬉しそうにしながら俺を見上げて首筋にカプッと噛みついてチューと血を吸って魔力を回復していく。本当に嬉しそうにしているから、止めろなんて言えない。

 

「ふぅ……ユエ、気付いているか?」

「ん。逃げる方向によって敵の密度が違う」

「そうだ」

 

 この洞窟がある方向に向かう時は決まって百を超える群れが現れて邪魔をしてくる。また、花の無い連中も同じだ。ただ、そいつらには指揮官が居るようで必ずすばしっこいモンスターが現れている。

 

「つまり、ここに花を操る奴が居るはずだ」

「そいつを倒せば楽になる」

「多分な。油断だけはするなよ」

「ん」

 

 休憩が終わり、錬成で入口を閉じたため薄暗い洞窟を二人で慎重に進む。油断すれば一瞬で殺される。

 

 

 

 

 

 

 しばらく道なりに進んでいると、やがて大きな広間に出た。広間の奥には更に縦割れの道が続いている。もしかすると階下への階段かもしれない。大きな物が花に埋もれているが、気配感知には反応はない。

 それでも油断せずに辺りをしっかりと探る。〝気配感知〟には何も反応はないがなんとなく嫌な予感がするので警戒は怠らない。気配感知を誤魔化す魔物など、この迷宮にはわんさかいるからな。

 

 警戒しながら部屋の中央までやってきた時、全方位から緑色のピンポン玉のようなものが無数に飛んできた。俺とユエは一瞬で背中合わせになり、飛来する緑の球を迎撃するが、その数が優に百を超え、尚、激しく撃ち込まれるので錬成で石壁を作り出し防ぐことにする。

 地面に手をついて錬成した石壁に阻まれ、貫くこともできずに潰れていく緑の球。大した威力もなさそうだし、これで上の方から来る奴だけ迎撃すればいい。ユエの方も速度と手数に優れる風系の魔法で迎撃しているから大丈夫だろう。

 

「ユエ、おそらく本体の攻撃だ。どこにいるかわかるか?」

「……」

「ユエ?」

 

 ユエに本体の位置を把握できるか聞いてみる。ユエは〝気配感知〟などの索敵系の技能は持っていないが、吸血鬼の鋭い五感は俺とは異なる観点で有用な索敵となるがユエが答えない。訝しみ、ユエの名を呼ぶが、その返答は──

 

「……にげて……ハジメ!」

 

 ──何時の間にかユエの手がハジメに向いていた。ユエの手に風が集束する。本能が激しく警鐘を鳴らし、その場を全力で飛び退いた。刹那、ハジメのいた場所を強力な風の刃が通り過ぎ、背後の石壁を綺麗に両断する。

 

「ユエ!?」

 

 まさかの攻撃に驚愕の声を上げるが、ユエの頭の上にあるものを見て事態を理解した。ユエの頭の上にも花が咲いていたからだ。それもユエに合わせたのかと疑いたくなるぐらいよく似合う真っ赤な薔薇がだ。

 

「くそっ、さっきの緑玉か!?」

 

 自身の迂闊さに自分を殴りたくなる衝動をこらえ、ユエの風の刃を回避し続ける。どうにかして頭の薔薇を取らなければいけない。

 

「ハジメ……うぅ……」

 

 ユエが無表情を崩して悲痛な表情をする。ラプトルの花を撃ったとき、ラプトルは花を憎々しげに踏みつけていた。あれはつまり、花をつけられ操られている時も意識はあるということだろう。体の自由だけを奪われるとは最悪な能力だ。だが、俺は解放の仕方を既に知っている。だからユエの薔薇に照準し引き金を引こうとした。

 しかし、操っている者も俺が花を撃ち落としたことやあのラプトル達と同じように飛び道具の存在を知っているようで、そう簡単にはいかないようだ。

 相手はユエを操り、花を庇うような動きをし出した。上下の運動を多用しており、外せばユエの顔面を吹き飛ばしてしまうだろう。ならばと、接近し切り落とそうとすると、突然ユエが片方の手を自分の頭に当てるという行動に出た。

 

「……やってくれるじゃねぇか……」

 

 つまり、俺が接近すればユエ自身を自らの魔法の的にすると警告しているのだろう。ユエは確かに不死身に近い。しかし、上級以上の魔法を使い一瞬で塵にされてなお〝再生〟できるかと言われれば否定せざるを得ない。そして、ユエは、最上級ですらノータイムで放てるのだ。特攻など分の悪そうな賭けは避けたいところだ。

 俺の逡巡を察したのか、奥の縦割れの暗がりから親玉が現れた。

 そいつはアルラウネやドリアード等という人間の女と植物が融合したような魔物だ。沙条辺りが見たら大喜びしそうな感じだ。いや、こいつは流石にないか。確かにアルラウネは神話で美しい女性の姿で描かれる。敵対しなかったり大切にすれば幸運をもたらすなどという伝承もあるが、目の前のエセアルラウネにはそんな印象皆無だと、今までの行動でこいつ自身が証明している。

 確かに見た目は人間の女なのだが、内面の醜さが溢れているかのように醜悪な顔をしており、無数のツルが触手のようにウネウネとうねっていて実に気味が悪い。その口元は何が楽しいのかニタニタと笑っている。どう考えても性格が悪い奴だ。それもあって俺はすかさずエセアルラウネに銃口を向けた。しかし、俺が発砲する前にユエが射線に入って妨害してきた。

 

「ハジメ……ごめんなさい……」

 

 ユエが悔しそうな表情で歯を食いしばっている。自分が足でまといなっていることが耐え難いのだろう。今も必死に抵抗しているはずだ。口は動くようで、謝罪しながらも引き結ばれた口元からは血が滴り落ちている。鋭い犬歯が唇を傷つけているのだろう。悔しいためか、呪縛を解くためか、あるいはその両方か。どちらにしろ、俺の大切な仲間を傷付けたのには代わりはない。

 

 ユエを盾にしながらエセアルラウネは緑の球を俺に放ってくるので、デバイスのドンナーで打ち払った。球が潰れ、目に見えないがおそらく花を咲かせる胞子が飛び散っているのだろう。

 しかし、ユエのように俺の頭には花が咲く気配はない。ニタニタ笑いを止め怪訝そうな表情になるエセアルラウネ。どうやら俺には胞子が効かないようだ。おそらく耐性系の技能のおかげだろう。耐性系が無ければ俺もやばかったな。

 エセアルラウネは俺に胞子が効かないと悟ったのか、不機嫌そうにユエに命じて魔法を発動させる。また、風の刃だ。もしかすると、ラプトル達の動きが単純だったことも考えると操る対象の実力を十全には発揮できないのかもしれない。そうだとしたら不幸中の幸いだ。

 風の刃を回避しようとすると、これみよがしにユエの頭に手をやるのでその場に留まり、サイクロプスより奪った固有魔法〝金剛〟により耐える。

 この技能は魔力を体表に覆うように展開し固めることで、文字通り金剛の如き防御力を発揮するという何とも頼もしい技能だ。タンク系の技能だが、まだまだ未熟だ。そのせいかサイクロプスの十分の一程度の防御力だが、風の刃も鋭さはあっても威力はないので凌げている。

 一応、速攻で片付く方法もあるんだが後が怖い。焼夷手榴弾でも投げ込むのが正解か? くそ、シューター系をユーリに習っていればこんな事にはならなかった! 俺の技術もデバイスも完成には程遠いのだから嘆いても仕方ないか。この状況をどう打開すべきか──

 

「ハジメ! 私はいいから……撃って!」

 

 何やら覚悟を決めた様子でユエが撃てと叫ぶ。ユエの瞳は足手まといになるどころか、攻撃してしまうぐらいなら自分ごと撃って欲しい、そんな意志を込めた紅い瞳が込められている気がする。これはラッキーだ。もう後顧の憂いはなくなった。

 

「え、いいのか? 助かるわ」

 

 ユエの言葉を聞いた瞬間、俺は何の躊躇いもなく引き金を引く。広間を冷たい空気が満たし静寂が支配する中、くるくると宙を舞っていたバラの花がパサリと地面に落ちた。

 何故かユエが目をパチクリとし、エセアルラウネもパチクリとしている。ユエが言う通りに撃ったのに何故だ? 

 ユエはそっと両手で頭の上を確認するとそこに花はなく、代わりに縮れたり千切れている自身の金髪があった。エセアルラウネも事態を把握したのか、どこか非難するような目で俺を睨む。

 

「いや、お前がそんな目をするなよ」

 

 ツッコミを入れつつ発砲。エセアルラウネの頭部が緑色の液体を撒き散らしながら爆砕した。そのまま、グラリと傾くと手足をビクンビクンと痙攣させながら地面に倒れ伏した。一応、念の為に何発か身体にも叩き込んで穴だらけにしておく。

 

「で、ユエ、無事か? 違和感とかないか?」

 

 気軽な感じでユエの安否を撃ちながら確認する。何故かユエは未だに頭をさすりながらジトっとした目で俺を睨んできた。

 

「……撃った……」

「あ? そりゃあ撃っていいって言うから……」

「……ためらわなかった……」

「そりゃあ、最終的には撃つ気だったし。狙い撃つ自信はあったんだけどな、流石に問答無用で撃ったらユエがヘソ曲げそうだし、今後のためにならんだろうと配慮したんだぞ?」

「……ちょっと頭皮、削れた……かも……」

「まぁ、それくらいすぐ再生するだろ? 問題なし」

「うぅ~……」

 

 ユエは「確かにその通りなんだけど!」と言いたげな顔で俺のお腹をポカポカと殴ってくる。俺としては、操られた状態では上級魔法を使用される恐れが低いとわかった時点でユエの不死性を超える攻撃などそうそうないと判断した。だからユエに対する心配はほとんどしていなかった。だというのにここまで怒られるのは意味がわからん。

 これでもためらい無く撃ってギクシャクするのも嫌だったから、戦闘中に躊躇うという最大の禁忌まで犯して堪えたのに、いったい何がそんなに不満なのだろうか? 

 そう思っているとユエはますますヘソを曲げたようで、プイッとそっぽを向いてしまった。

 内心で溜息を吐きながら、どうやって機嫌を直すか思案し始める。それは、エセアルラウネの攻略より遥かに難しそうだ。

 

 

「ユエ!」

「え?」

 

 

 エセアルラウネを倒したことで安心したが、それは間違いだった。エセアルラウネの腹から手が生えて、それがユエの腹を貫こうとしたのが見え、反射的に叫びながらユエを腕で弾き飛ばす。手はユエの心臓からずれて腕を掴み、そのまま引きずり込もうとしている。嫌な予感がして即座にドンナーでユエの腕を撃って切断し、ユエを抱きしめながら下がる。

 

「……は、ハジメ……」

「すまん。神水を飲んで回復してくれ。どうやら、俺達は致命的なミスを犯していたようだ」

「……わ、わかった……」

 

 ユエに神水を飲ませながら下がらせ、エセアルラウネを確認する。ユエの腕を掴んで腹の中に引っ込んだそいつは即座に今度は両手を出して、内側から引き裂いて出てこようとする。だから、容赦なく焼夷手榴弾を投げ込む。

 爆発が起きてエセアルラウネの身体が内部から吹き飛んで()()をまき散らす。これで倒せたと思ったが、油断せずに見ていると肉片が急速に増殖して人型となっていく。

 

「ホラーだな」

「うわぁ……」

 

 俺とユエがドン引きしながら倒し方を考える。肉片になったとしても再生するとなるとこれはユエの〝凍獄(とうごく)〟で細胞を凍らせるか、いっその事跡形もなく焼き切るしかない。

 

「ユエ、〝凍獄(とうごく)〟の準備だ。それで無理なら燃やすぞ」

「ん、わかった」

 

 人型となっていく存在からユエを守らないといけない。そう思っていると、その人型から金色の髪の毛が生え、深紅の瞳が生まれる。肉の塊だった身体に白い肌が生まれ、均整の取れた幼い少女の姿へと変わっていく。

 

「ふっふっふっ、お約束を無視して復活シーンに攻撃なんて腐れ外道な事をしても残念でした~! ボク、ふっか~つ!」

「っ!? ふざけないで!」

「ふざけてないよ~だ」

「ふざけてる! なんで私の姿なの! しかも裸!」

 

 そう、ソイツはユエと全く同じ姿をしていた。ただし、無表情ではなく好奇心旺盛で明るい表情をしているといった違いはある。

 

「服は作れないからね!」

「ハジメ、見ちゃ駄目」

「無茶言うなよな……」

 

 ユエと全く同じ姿をしたニセユエはニコニコしながら、身体に()()()を纏い出す。そして、四足獣みたいな姿勢になると、姿がぶれる。即座にドンナーを発射するが、残った蒼い雷を弾丸が貫くだけで本体は一切喰らっていない。ジグザクに移動しながら接近してくる姿はあのラプトルを思いだす。

 

「あの群れを指揮していた中身はお前か!」

「せいかい、正解大正解! ボクが指揮していたんだよ!」

 

 目の前に現れたニセユエが腕を三本の硬そうなクロ―へと変化させ、そこに蒼い雷を纏わせながら振り下ろしてくる。俺とユエは即座に飛び退くと、蒼い雷によって刃が形成されて地面に三つの深い爪痕が生まれる。周りに焼け焦げた臭いがただよい、斬り口は鋭利だ。人なんてあっさりと切断できるだろう。

 

「ハジメ、接近戦は不利」

「わかってる!」

 

 ドンナーで通常弾以外にも魔力弾を生み出して弾幕を展開する。同時に焼夷手榴弾をいくつか放り投げることで範囲を攻撃し、ニセユエを下がらせる。

 

「ふふ~ん。そんな事をしても無駄だもんね! 何せボクは最強だから! いっくよ~電刃衝(でんじんしょう)!」

 

 ニセユエは()()()()()()()無数の蒼い雷でできた雷を生み出して弾幕を相殺してくる。その状態で弾幕の隙間を縫ってこちらに接近し、斬り殺そうとしてくる。こちらも飛び上がって攻撃を回避するが、即座に斬撃を放ってくる。それはまるであの熊野郎と同じ力だ。空力を使い、空中を蹴って回避する。

 

「それ、ボクもできるもんね!」

「ちっ!」

 

 相手も空力を使って三次元軌道をしてくる。いや、それどころじゃない。気がつけば周りに無数の空力が存在し、それを蹴ってどんどん加速してきやがる。幸い、アイツの狙いは俺とユエだから先読みすることで回避できているが、普通に強い。

 

「凄いぞ! 強いぞ! 格好いい!」

 

 テンションがかなり高いようで、幼い姿をして本当にユエみたいにやばい実力を持っている。このんで雷を使っているようだが、もしかしたら他の属性も使えるかもしれない。しかも、被弾しようが即座に再生するという意味不明な能力を持っている。しかし、どこかでこの戦い方を見た気がするが……どこだ? 

 

「調子に乗るのもここまで」

「ふえ?」

「〝凍獄(とうごく)〟」

 

 神水で魔力と身体を再生させたユエが〝凍獄(とうごく)〟を放つ。しかし、ニセユエはどんどん回避していく。だから、俺がドンナーで相手の逃げ道を塞ぐ。

 

「ハジメ、ありがとう。〝凍獄(とうごく)〟、〝凍獄(とうごく)〟、〝凍獄(とうごく)〟、〝凍獄(とうごく)〟」

 

 神水を飲みながら俺達が居る場所以外を全て氷で閉ざしてしまうユエ。相手も流石に避けられなかったのか、完全に氷漬けになっている。

 

「ん。勝利。ぶい」

「……こいつ、なんだと思う?」

「モノマネモンスター?」

「いや、違うだろう。ドッペルゲンガーとも思うが、他のモンスターに寄生してラーニングしてやがるしな……」

 

 これで終わりだと思うのだが、嫌な予感が止まらない。警戒をしながら氷を見ていると気配感知に反応があった。それも物凄い速度で近付いてきている。

 

「砕け散れ! 雷神滅殺! きょっこ──ざん!」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。振り返ると入口にニセユエが居た。馬鹿なと思うが、蒼い雷でできているであろう馬鹿でかい巨大な大剣を振り下ろしてきているので即座に回避する。

 5,6メートルはありそうな巨大な大剣は氷を一瞬で切断して衝撃波で粉砕する。それどころか迷宮の地面にかなり深いクレバスを作り出す。

 

「あれ~? なんで死んでないの?」

「コイツ……確かに閉じ込めたはず……」

「ユエ、最悪な予想なんだが……聞くか?」

「……いやだけど、聞く……」

「多分だが、群体の可能性がある。おそらく寄生して能力を奪い、増える奴だ。ラプトル同士で戦っていた事を考えると、もしかしたら数百体はいるかもしれん」

「……認めたくない、ね……」

 

 空気が焼けた臭いがする中、蒼い雷でできた大剣を掲げるニセユエがこちらを見詰めてにこりと笑う。

 

「認めてあげる! 君達はボクが全力で蒐集すべき強者だと! だから、情けも容赦もなく、全力で相手をするよ! 遊びは終わり! 行くよナハト!」

 

 その言葉と同時に砕けて粉砕された氷の中にいたニセユエの破片が増殖し、氷を取り込んで人型になっていく。無数の肉片から無数に生まれたそれらは全てユエの姿をしている。また、入口からも無数の彼女達が入ってきて、その数は75体。つまり、ここには76人のユエがいる。

 

「凄い数の姉妹だな」

「……嬉しくない……」

 

 全員が全員、ユエなみの馬鹿みたいな魔力を保有している。どう考えてもあのエセアルラウネの上位互換だ。それらが無数の魔弾を生成し、物量で殺しにくる準備をしている。

 

「どうだ! 強くて凄くてカッコイイ! そう、ボク最強!!」

「そりゃ、これだけ数を用意したら最強だろうよ」

「まだまだくる?」

「数百体の群れだろうな……」

「私、量産された?」

「だな」

 

 というか、何体かの奴が髪の毛をツインテールにしだした。こちらを舐めているとしか考えられない行動だが、ツインテールにした方が違和感を感じない。

 

「弾幕展開後に突撃よ~い」

 

 巨大なオレンジの猫が生まれて、その上にニセユエが乗って大剣を構える。その猫にも見覚えがある。どこだ。どこで見た。思いだせ。そうじゃないとここで死ぬ。こいつはなんと言っていた? ヒントを探せ! 

 蒼い雷、一人称がボク、あの必殺技、そして蒐集と猫。そう考えるとあるイメージが浮かんできた。そいつは金髪ではないが、猫の姿なら覚えがある。しかし、答えてくれるかはわからないから罠にかける。

 

「なあ、デバイスはどうした? お前のデバイスのバルニフィカスは」

「えーとえーと、バルニフィカスはまだ作れてないの! だから、魔力でゴリ押しだよ!」

「やっぱりか。お前、レヴィだろ。雷刃の襲撃者(レヴィ・ザ・スラッシャー)

「ちっ、ちがうもん! ボクの名前はマテリアルL・ザ・キャット! 強くて凄くてカッコイイ、雷刃の襲撃者(レヴィ・ザ・スラッシャー)じゃないもん!」

「……墓穴掘ってる。ハジメ、知り合い?」

「知り合いではないが、一方的に知っている」

 

 とりあえず、ホッとした。こいつは敵ではないかもしれない。まずは話し合いをするために武器は片付けるか。

 

「話し合いをしよう。武装解除するから、応じてくれないか? そちらにとっても悪い話じゃない」

「え~とえ~と、どうしよう? どうしたらいいかな?」

 

 知るかといいたいが、言ったら終わりなのでこちらから誘導する。

 

「一般的な常識論として武装解除したのなら、まずは話し合いをする。そこで妥協案を互いに決めるんだ」

「そっか。わかった!」

「……この子、馬鹿な子? 私の姿で止めて欲しい……」

「諦めろ」

 

 とりあえず、あちらも武器を下げてくれたのでまずは一番聞かなければいけないことがある。ひょっとしたら、彼女は俺を救助しに来てくれたのかもしれないしな。

 

「まず質問だ。沙条真名、ユーリ・エーベルヴァインとの関係を聞きたい。俺は二人の友達だ」

「え? 二人の友達なの?」

「そうだ。それで関係は?」

「沙条真名はボク達の盟主にして友達、ユーリのマスター! それでボク達の家族でお兄ちゃん!」

「そうか。どうやら戦う理由は消滅したようだな」

 

 ドンナーを仕舞い、座って話を聞く準備をする。

 

「君の名前は? ボクが聞いてユーリや王様に確認する。それまでボクは警戒を解かない」

「それでいい」

「王様?」

「ユエ、ここは俺に任せてくれ。大丈夫だ。友達の配下……いや、家族だ」

「……わかった。ハジメがそう言うなら待つ」

 

 ユエも隣に座ってくれたので、レヴィを見る。彼女の内の一人がこちらにやってきて座った。

 

「さて、俺の名前は南雲ハジメだ」

「嘘だ!」

「嘘じゃねえ!」

 

 思わず叫んでしまった。

 

「だって、南雲ハジメは黒髪だもん! 白くないしそんな表情とかしてないもん!」

「……そう言えば姿が変わってるな。いいか、俺はモンスターを食った時の副作用で身体が変化してる。だが、俺が南雲ハジメである事に代わりはない」

「う~ん、う~ん……助けて王様!」

 

 急に叫んだと思うと黙り込み、すぐに頷く。

 

「わかったよ王様! えっと、王様が本当に南雲ハジメか証明してみせろって言ってるよ!」

 

 もしかして、こいつは通信が出来るのか? ユーリの技術力なら不思議ではない。量子コンピュータもあるし、素材は俺が居なくても用意できるだろう。そう考えるとユーリが生き残って……それはないか。爆発に巻き込まれて生きているとは思えない。ラスボス状態ならまだしも、知識以外はただの女の子だぞ。

 

「証明か。こいつはユーリから貰ったオレのデバイス、ドンナーだ。改造はしているが、わかるだろう」

「う~ん、それだと拾った可能性もあるし、なんとも言えないって」

「なら、ステータスプレートだ。こいつでどうだ?」

「ステータスプレートはまだ解析できていないから、偽造される可能性もあるから駄目だって」

「じゃあどうしろって言うんだ? これも駄目、あれも駄目というのなら、そちらが解決策を提示しろ。死なない限りは受け入れてやる」

「ハジメ……」

「大丈夫だ。ここが正念場だからな」

「んとね、王様が言うには蒐集して記憶を覗かせてもらえだってさ」

「なるほど。それなら確かに俺が南雲ハジメだという事を証明できるが……ユエ次第だ。ユエの秘密まで知られるからな」

「……私はいい。ハジメが助かるなら構わない」

「そうか。すまん。いや、ここはありがとうだな。レヴィ、頼む」

「マテリアルL・ザ・キャットだってば! じゃあやるね!」

「おう」

 

 レヴィの手が俺の胸を貫く。そして魔力が強制的に引き出されていく。同時に俺は意識を失い、夢を見る。今まであった事をレヴィと共に追体験していく。

 

「辛かったね。でも、これからは大丈夫! ボクが守るからね! ユーリからも一部のボク達を南雲ハジメの護衛にあてるように言われたから」

「ああ、助かる。それで沙条達は元気か?」

「えっと、それが……」

「なんだと!」

 

 ユーリからレヴィを通して教えてもらった内容は信じ難いものだった。まさか、沙条や谷口、中村までもが奈落に落ちているとは思わなかった。どおりでレヴィが奈落に派遣されているわけだ。魔力を蒐集で回収しつつ沙条の捜索と救助を最優先としているのだろう。

 俺の救助はあくまでもついででしかないだろうが、それでも助かる。いや、俺達も沙条達の捜索に協力するのもいい。中村はわからないが、沙条と谷口なら裏切る事はないだろう。そう願いたいだけなのかもしれないが……どちらにしろ、オルクス大迷宮を探索する事には変わりがない。

 

 

 

 

 

 




ユエは完全回復しています。腕もちゃんとあります。


ユエのターン! その内容は無数のユエ!周りを見てもユエ。何処を見てもユエ。数百体を超えるユエが現れた!

エヒト「一人寄越せええええええええぇぇっ!!」
レヴィ「「「だが、断る」」」

ちなみにこの量産型ユエは魔力不足で消滅します。燃費悪いから、魔力に加工して仲買人のユーリに出荷され、そこから真名君達に配られます。
ユエになった理由はユエのデータしか人型を取り込んでいないから。レヴィ達、本来の姿になるには施設と充分な魔力が必要です。

関係ないですが銀の匙、面白いですね!

清水君ヒロインアンケート 人になるます

  • 波の鳥 フ
  • 謳の鳥 コ
  • 空の鼠 ク
  • 深海のナニカ レ

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