量子コンピュータへの細工を完了し、オルクス大迷宮から送られてくる莫大な魔力リソースを使って躯体をデザインしています。幸い、私が居るのは王都であり、人が多いですから助かります。教会関係者や私達の敵から蒐集しました。彼等は私達の敵ですからね。
大量に作った分身達が蒐集した中から複数を合わせ、高町なのはの身体をメインに私の身体を構成する。やはり、私の身体はデータとしてあるなのはの身体をメインとして私のからだを構成しています。もちろん、戦闘力も本来の私達が持つ物で作り出す予定です。こればかりは量子コンピュータがある方がデザインしやすいので、私の仕事です。
「……離せ、わかっている……」
「なら、お願いします」
「ちっ」
工房の扉が開き、人が入ってきます。谷口鈴が張った結界は彼女が奈落に落ちて気絶したからか、解除されています。ですのでずかずかと入ってきた彼等に私はシステムロックをかけて動かないようにしておきました。
前に来た時はそのまま帰ってくれたのですが、今回はユーリに許可を与えられた人を連れてきたようですね。彼の顔を見る限り、無理矢理連れてきた感じでしょうか?
「動かしてください。我々が触れても動きませんでした」
「まあ、そりゃそうだろう。アンタら、使い方わかってないだろ」
「ええ、ですからお願いします」
彼が量子コンピュータに手を触れてくる。指紋と顔から彼が清水幸利だとわかりました。さて、どうするか……いえ、そういえば看過できない話をしていましたね。確か、これから世界の為に戦う事で南雲ハジメを攻撃した事を許すという内容でしたね。
それに王国と教会が発表した事を鵜呑みにした天之河と言うのが、全てマスターのせいだと決めつけて、檜山というのがしたこともマスターのせいにされました。許せませんが、天之河に関しては手が出せないので、檜山は排除しましょうか。コイツはユーリがその身を犠牲にして助けた南雲ハジメを奈落へ落として台無しにしてくれましたから。とりあえず、首でも要求しておきますか?
『駄目です。手を出さないでください。マスターが死んだらシュテルの自由にしてくれていいですけど、今は駄目です』
『あの、結構怒ってますか?』
『怒っていません。はい、怒ってはいないです』
『それよりも、天之河と檜山の蒐集はどうなっていますか?』
これは駄目ですね。完全に怒っていますね。
『まだ気付かれるわけにはいかないのでやっていませんが、やりますか? それともいっそ、この量子コンピュータとバッテリー作成システムを暴走させて王都を破壊しますか?』
『……いえ、それは駄目です。隙を見て蒐集してください』
『了解しました。それと教会を調査中に面白い物を発見しました』
『面白い物ですか?』
『はい。どうやら教会の地下にも迷宮が存在するようです』
『なるほど……わかりました。そちらの調査もお願いします。バッテリーの対応についてはお任せします』
『任せてください』
「ん? どういうことだ……」
「どうしましたか?」
「いや、動かない……あ、動いたな」
システムを起動し、彼の前に仮想スクリーンを展開し、そこに日本語で書いた文字を見せて内容を知らしめます。すると彼はしっかりと考えてから、真剣な表情で頷いてくれました。
「それはなんですか? 使われている言語は見た事がありませんが……」
「これは操作パネルだ。登録されている人しか使えない仕様だな。だからアンタ達じゃ動かせない」
「我々を登録する事はできますか?」
こちらを見てくる清水さんにしっかりと文字で伝えます。
「できない。正直言ってこれは俺達が使っている技術よりも格段に進歩している。俺も使い方を教わっただけで全てを知っているわけじゃない。だから、俺ができるのはバッテリーを作る装置を動かしたり、それに必要な物をアンタ達に教えるぐらいしかできない」
「あの無能と裏切り者がそこまでの技術を持っているとは信じれませんが……」
「アンタ達は何も理解していないんだな」
「なんだと!」
「やめなさい。確かに我々には理解できない技術が使われています。それは致し方ないことでしょう」
「……そう、だな。じゃあ、アンタ達はこれを作ってくれ。ハジメが作っていた素材だ。狂いは1㎝以下までしか許容されないからな」
清水さんは私が表示した材料と図面を書き写して彼等に渡していきます。ああ、一応警告をしておきましょうか。
「まじかよ……」
「どうしましたか?」
「下手にこの工房にある物を弄らない方が良い。特に量子コンピュータに取り付けられているこの棒。こいつで力を生み出しているようだが、下手に弄ると暴走して爆発する可能性がある」
「危険物じゃないですか……」
「撤去するか?」
「撤去もできない。動かしたら即座に王都を吹き飛ばす可能性がある。解体できるのは作ったハジメやユーリだけだろう。それにバッテリーを作るのに必要な動力源となっているんだからどの道外せない」
暴走させたら王都の中心で凶悪な嵐が解き放たれます。盛大に破壊してくれることでしょう。
「わかりました。シャンプーとリンス以外の物についての情報はありますか?」
「それはわからない」
「それなら、そのタブレットに入っている可能性がある」
「天之河……」
天之河という奴が工房に入ってきて、マスターの私物であるタブレットを持ち上げました。
「どうしたんだ清水。沙条はこれを良く見ていただろう。なら、ここに入っているはずだ」
「駄目だ。それは沙条の物だ。死人とはいえ他人がHDの中身を勝手に見るなど許されない。破壊して破棄すべきだ」
「何を言っているんだ。これがアレば皆が助かるんだ。裏切ってクラスメイトを突き落とした彼に助けられるのは癪だが、皆の不満を解決するためにこれは使えるだろう」
「それはそうだが、やっていいことと悪い事がある」
「なら大丈夫だ。これはいいことだ。俺達だけじゃなく、他の人も助かるんだ」
そう言ってタブレットの画面を操作し、電源をつけますが……パスワードが求められます。当然ですね。
「それはなんですか?」
「このボタンから四つの数字を押していけばロックが外れます。総当たりしないといけませんが、お任せします」
「わかりました。皆で協力しましょう。素晴らしい置き土産が残っているかもしれません」
「はい。っと、そうだった。清水、俺は要らないと言っているんだが、皆がバッテリーを欲しいと言っている。すぐに作れるか?」
「……材料があればな。それはその人達の仕事だ。俺は再起動させる事しかできない」
「そうか。まあ、南雲達でできたのなら、簡単だろう。よろしく頼む」
「……」
簡単。簡単ですか……それにマスターのタブレットを持っていくとは……マスターが憤死してしまう可能性があります。あの中には様々なサバイバルアニメや異世界小説などで本当かどうか確認するために使われたWikipediaなどの情報が入っています。他には美味しい料理の作り方などなど、資料が沢山あります。もちろん、アニメやゲーム、画像……エッチな方面もあります。人のHDを勝手に覗いてはいけません。
「……すまん、沙条……力の無い俺を許してくれ……せめて、解除は男だけでやるように進言しておく……」
そう願います。もしもマスターがそれで絶望し、災厄を解き放ったら大変ですからね。いえ、絶望するマスターを私達が慰めて支えるのはありかもしれません。ついでに邪魔なデータの処分もできます。こう考えると天之河に感謝しましょう。それはそれとして許しはしませんが。
◇
詩乃が来てから一週間が経った。この一週間、聖遺物を手に入れて
修行方法はルサルカを俺に憑依させて身体を貸し与えてやってもらっている。最初は俺も一緒に修行したが、即座にルサルカから匙を投げられた。召喚以外、一切の才能がないようだ。逆に言うと召喚の才能はあると思いたい。
ルサルカの修行はまず俺の身体で鈴と恵里の二人と口付けを交わし、粘膜接触による教授の魔術で必要な魔術知識を強制的に二人へと植え付ける。こちらはルサルカに実体化してもらい、俺もしてもらったがほとんど才能がなくて使えない。
鈴と恵里の二人は魔女として数十年を最低でも生きているルサルカの魔術をしっかりと吸収し、この一週間で無事に活動と形成を習得した。
改めて説明すると、
第一位階活動。
第ニ位階形成。
創造に関してはまだ覚えていないが、簡単に言うと意思によって世界を捻じ曲げて自分にとって都合のいい理を設定し、それを世界に押し付ける。Fateでいう固有結界という奴だ。そう、固有結界。つまり鈴は既に創造の領域に突入しかけている。もっとも、渇望がないのでそこまで至ってはいないらしい。
どちらにせよ鈴と恵里は人間を止めたという事だ。二人はそれぞれ
恵里はネクロノミコンを通して死霊を呼び寄せ、ゾンビやスケルトン、ゴーストなどを召喚して使役する。流石に
「お願いもうやめて! 私が悪かったから!」
「ふっふっふっ、逃がさないよ!」
「いやぁぁぁっ! やめてっ、これ以上私の魂を浄化しないでぇぇっ!」
そう、鈴はシンフォギアの
それも鈴の結界で覆われているので逃げる事もできない。身体に受けたらごっそりと魂が浄化されるので回避するしかない。直撃しても耐えられるが、それでも消費が痛い。
「この無数に配置された鏡の結界から逃がられる?」
「創造使っても物量で押される! 本当に最悪な聖遺物ね!」
ルサルカが
「相性が悪すぎ~!」
「鈴の大勝利~!」
服が破れてかなりきわどい姿だけど仕方がない。ちなみに鈴と戦うと恵里も涙目になる。俺達のメンバーで鈴に勝てるのはアストルフォだけだ。逆に言えば鈴は物理攻撃に弱い。その物理攻撃も生半可な威力では障壁や結界で弾かれるので、すくなくとも英霊クラスの力は必要だ。まあ、この奈落なら平気で突破してくる敵は多いだろう。
「お疲れ様。ルサルカ、鈴はどんな感じだ?」
「固定砲台としては充分ね。魔法使いには天敵よ。防御もしっかりとできてるし、足さえ無事で体術を覚えれば一人でもある程度は行動できるはずよ」
「なるほど。良かったな」
「えへへ~」
ルサルカの姿のまま、鈴の頭を撫でる。改めて鈴の実力を考えるとかなり強くなった。最終的にサポートタイプで攻撃もできるって感じになるだろう。普通に考えて強い。さて、次は恵里の番だが、ルサルカは大丈夫だろうか?
そう思って次の順番である恵里を探す。だが、恵里が居ないな。世話をしているはずの詩乃もおらず、不思議に思う。
「鈴、恵里の場所に移動する」
「うん、わかった」
汗をかいている鈴を抱き上げて移動すると、恵里が一人だけで背を岩に預けていた。周りに詩乃の姿がない。
「えりえり、なにかした?」
「した。もう一週間も経った。それでちょっと責めすぎたのか、走って逃げていった。追わないと死ぬかも」
「かなりやばいじゃないか!」
「真名君、追わないと!」
「行ってくる! どっちに行った!」
「あっち」
恵里が指を刺した方向に走って進んでいく。その途中でアストルフォの姿に変化し、急いで駆ける。しばらく進んでいると、やばい状況になっていた。
清水君ヒロインアンケート 人になるます
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波の鳥 フ
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謳の鳥 コ
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空の鼠 ク
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深海のナニカ レ