ありふれた職業の召喚(ガチャ)士で世界最弱   作:ヴィヴィオ

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第20話

 

 

 

 

 量子コンピュータへの細工を完了し、オルクス大迷宮から送られてくる莫大な魔力リソースを使って躯体をデザインしています。幸い、私が居るのは王都であり、人が多いですから助かります。教会関係者や私達の敵から蒐集しました。彼等は私達の敵ですからね。

 大量に作った分身達が蒐集した中から複数を合わせ、高町なのはの身体をメインに私の身体を構成する。やはり、私の身体はデータとしてあるなのはの身体をメインとして私のからだを構成しています。もちろん、戦闘力も本来の私達が持つ物で作り出す予定です。こればかりは量子コンピュータがある方がデザインしやすいので、私の仕事です。

 

「……離せ、わかっている……」

「なら、お願いします」

「ちっ」

 

 工房の扉が開き、人が入ってきます。谷口鈴が張った結界は彼女が奈落に落ちて気絶したからか、解除されています。ですのでずかずかと入ってきた彼等に私はシステムロックをかけて動かないようにしておきました。

 前に来た時はそのまま帰ってくれたのですが、今回はユーリに許可を与えられた人を連れてきたようですね。彼の顔を見る限り、無理矢理連れてきた感じでしょうか? 

 

「動かしてください。我々が触れても動きませんでした」

「まあ、そりゃそうだろう。アンタら、使い方わかってないだろ」

「ええ、ですからお願いします」

 

 彼が量子コンピュータに手を触れてくる。指紋と顔から彼が清水幸利だとわかりました。さて、どうするか……いえ、そういえば看過できない話をしていましたね。確か、これから世界の為に戦う事で南雲ハジメを攻撃した事を許すという内容でしたね。

 それに王国と教会が発表した事を鵜呑みにした天之河と言うのが、全てマスターのせいだと決めつけて、檜山というのがしたこともマスターのせいにされました。許せませんが、天之河に関しては手が出せないので、檜山は排除しましょうか。コイツはユーリがその身を犠牲にして助けた南雲ハジメを奈落へ落として台無しにしてくれましたから。とりあえず、首でも要求しておきますか? 

 

『駄目です。手を出さないでください。マスターが死んだらシュテルの自由にしてくれていいですけど、今は駄目です』

『あの、結構怒ってますか?』

『怒っていません。はい、怒ってはいないです』

『それよりも、天之河と檜山の蒐集はどうなっていますか?』

 

 これは駄目ですね。完全に怒っていますね。

 

『まだ気付かれるわけにはいかないのでやっていませんが、やりますか? それともいっそ、この量子コンピュータとバッテリー作成システムを暴走させて王都を破壊しますか?』

『……いえ、それは駄目です。隙を見て蒐集してください』

『了解しました。それと教会を調査中に面白い物を発見しました』

『面白い物ですか?』

『はい。どうやら教会の地下にも迷宮が存在するようです』

『なるほど……わかりました。そちらの調査もお願いします。バッテリーの対応についてはお任せします』

『任せてください』

「ん? どういうことだ……」

「どうしましたか?」

「いや、動かない……あ、動いたな」

 

 システムを起動し、彼の前に仮想スクリーンを展開し、そこに日本語で書いた文字を見せて内容を知らしめます。すると彼はしっかりと考えてから、真剣な表情で頷いてくれました。

 

「それはなんですか? 使われている言語は見た事がありませんが……」

「これは操作パネルだ。登録されている人しか使えない仕様だな。だからアンタ達じゃ動かせない」

「我々を登録する事はできますか?」

 

 こちらを見てくる清水さんにしっかりと文字で伝えます。

 

「できない。正直言ってこれは俺達が使っている技術よりも格段に進歩している。俺も使い方を教わっただけで全てを知っているわけじゃない。だから、俺ができるのはバッテリーを作る装置を動かしたり、それに必要な物をアンタ達に教えるぐらいしかできない」

「あの無能と裏切り者がそこまでの技術を持っているとは信じれませんが……」

「アンタ達は何も理解していないんだな」

「なんだと!」

「やめなさい。確かに我々には理解できない技術が使われています。それは致し方ないことでしょう」

「……そう、だな。じゃあ、アンタ達はこれを作ってくれ。ハジメが作っていた素材だ。狂いは1㎝以下までしか許容されないからな」

 

 清水さんは私が表示した材料と図面を書き写して彼等に渡していきます。ああ、一応警告をしておきましょうか。

 

「まじかよ……」

「どうしましたか?」

「下手にこの工房にある物を弄らない方が良い。特に量子コンピュータに取り付けられているこの棒。こいつで力を生み出しているようだが、下手に弄ると暴走して爆発する可能性がある」

「危険物じゃないですか……」

「撤去するか?」

「撤去もできない。動かしたら即座に王都を吹き飛ばす可能性がある。解体できるのは作ったハジメやユーリだけだろう。それにバッテリーを作るのに必要な動力源となっているんだからどの道外せない」

 

 暴走させたら王都の中心で凶悪な嵐が解き放たれます。盛大に破壊してくれることでしょう。

 

「わかりました。シャンプーとリンス以外の物についての情報はありますか?」

「それはわからない」

「それなら、そのタブレットに入っている可能性がある」

「天之河……」

 

 天之河という奴が工房に入ってきて、マスターの私物であるタブレットを持ち上げました。

 

「どうしたんだ清水。沙条はこれを良く見ていただろう。なら、ここに入っているはずだ」

「駄目だ。それは沙条の物だ。死人とはいえ他人がHDの中身を勝手に見るなど許されない。破壊して破棄すべきだ」

「何を言っているんだ。これがアレば皆が助かるんだ。裏切ってクラスメイトを突き落とした彼に助けられるのは癪だが、皆の不満を解決するためにこれは使えるだろう」

「それはそうだが、やっていいことと悪い事がある」

「なら大丈夫だ。これはいいことだ。俺達だけじゃなく、他の人も助かるんだ」

 

 そう言ってタブレットの画面を操作し、電源をつけますが……パスワードが求められます。当然ですね。

 

「それはなんですか?」

「このボタンから四つの数字を押していけばロックが外れます。総当たりしないといけませんが、お任せします」

「わかりました。皆で協力しましょう。素晴らしい置き土産が残っているかもしれません」

「はい。っと、そうだった。清水、俺は要らないと言っているんだが、皆がバッテリーを欲しいと言っている。すぐに作れるか?」

「……材料があればな。それはその人達の仕事だ。俺は再起動させる事しかできない」

「そうか。まあ、南雲達でできたのなら、簡単だろう。よろしく頼む」

「……」

 

 簡単。簡単ですか……それにマスターのタブレットを持っていくとは……マスターが憤死してしまう可能性があります。あの中には様々なサバイバルアニメや異世界小説などで本当かどうか確認するために使われたWikipediaなどの情報が入っています。他には美味しい料理の作り方などなど、資料が沢山あります。もちろん、アニメやゲーム、画像……エッチな方面もあります。人のHDを勝手に覗いてはいけません。

 

「……すまん、沙条……力の無い俺を許してくれ……せめて、解除は男だけでやるように進言しておく……」

 

 そう願います。もしもマスターがそれで絶望し、災厄を解き放ったら大変ですからね。いえ、絶望するマスターを私達が慰めて支えるのはありかもしれません。ついでに邪魔なデータの処分もできます。こう考えると天之河に感謝しましょう。それはそれとして許しはしませんが。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 詩乃が来てから一週間が経った。この一週間、聖遺物を手に入れて永劫破壊(エイヴィヒカイト)を取得した鈴と恵里がルサルカに修行をつけてもらっている。

 修行方法はルサルカを俺に憑依させて身体を貸し与えてやってもらっている。最初は俺も一緒に修行したが、即座にルサルカから匙を投げられた。召喚以外、一切の才能がないようだ。逆に言うと召喚の才能はあると思いたい。

 ルサルカの修行はまず俺の身体で鈴と恵里の二人と口付けを交わし、粘膜接触による教授の魔術で必要な魔術知識を強制的に二人へと植え付ける。こちらはルサルカに実体化してもらい、俺もしてもらったがほとんど才能がなくて使えない。

 鈴と恵里の二人は魔女として数十年を最低でも生きているルサルカの魔術をしっかりと吸収し、この一週間で無事に活動と形成を習得した。

 改めて説明すると、永劫破壊(エイヴィヒカイト)は活動、形成、創造、流出の四位階からなる。正直、流出は神様のレベルになる。ちなみにルサルカは第三位階の創造だ。

 第一位階活動。Assiah(アッシャー)とも呼ばれ、聖遺物の特性を限定的に使用可能になる。また身体能力は常人より遥かに高くなっているものの、聖遺物の力の暴走の危険性が高く非常に危険だ。

 第ニ位階形成。Yetzirah(イェツラー)とも呼ばれ、術者の魂と融合した聖遺物の武器具現化、及びそれを可能にする状態を指す。人と魔術武装の霊的融合が成される事により、この位階に入ったものは人の範疇から外れた超人となる。契約している聖遺物が目視可能になったことで威力が大幅に増大し、使い手の五感及び霊感も活動位階に比べて上昇する。その振り幅は聖遺物の特性及び術者の技量、魂の保有量次第で変わるが、ルサルカの同僚に居る黒円卓の騎士は音速を超える体術を発揮する程度のことは難しくない。

 創造に関してはまだ覚えていないが、簡単に言うと意思によって世界を捻じ曲げて自分にとって都合のいい理を設定し、それを世界に押し付ける。Fateでいう固有結界という奴だ。そう、固有結界。つまり鈴は既に創造の領域に突入しかけている。もっとも、渇望がないのでそこまで至ってはいないらしい。

 どちらにせよ鈴と恵里は人間を止めたという事だ。二人はそれぞれ神獣鏡(シェンショウジン)とネクロノミコンと融合し、鈴が鏡で出来た扇子を持ち、恵里が本を持つ。

 恵里はネクロノミコンを通して死霊を呼び寄せ、ゾンビやスケルトン、ゴーストなどを召喚して使役する。流石に神の影(デモンベイン)とかは出せない。この方法を利用、悪用して俺達はオルクス大迷宮で死んだ魂達を集めて吸収し、魔力として使っている。魔力を吸い潰した魂は食人影(ナハツェーラー)か、そのまま鈴によって浄化される。いや、ほぼ鈴によって浄化されている。

 

「お願いもうやめて! 私が悪かったから!」

「ふっふっふっ、逃がさないよ!」

「いやぁぁぁっ! やめてっ、これ以上私の魂を浄化しないでぇぇっ!」

 

 そう、鈴はシンフォギアの神獣鏡(シェンショウジン)と同じ効果を持っている。つまり、扇子や扇子に束ねられていた鏡を放出する。周りに生み出した鏡から放たれる高出力の魔力レーザーは喰らった対象の罪などの魔を祓う。何が言いたいかというと……食人影(ナハツェーラー)に使われている魂が浄化されていくのだ。

 それも鈴の結界で覆われているので逃げる事もできない。身体に受けたらごっそりと魂が浄化されるので回避するしかない。直撃しても耐えられるが、それでも消費が痛い。

 

「この無数に配置された鏡の結界から逃がられる?」

「創造使っても物量で押される! 本当に最悪な聖遺物ね!」

 

 ルサルカが食人影(ナハツェーラー)以外に火の魔術や風の魔術を使うが、それらは鏡で反射されるか消滅させられる。無数に放たれるレーザーを涙目になりながらルサルカが避けていくので、外から見ると面白いのかもしれない。何せ普段は強気な女の子が涙目なんだからな。

 

「相性が悪すぎ~!」

「鈴の大勝利~!」

 

 服が破れてかなりきわどい姿だけど仕方がない。ちなみに鈴と戦うと恵里も涙目になる。俺達のメンバーで鈴に勝てるのはアストルフォだけだ。逆に言えば鈴は物理攻撃に弱い。その物理攻撃も生半可な威力では障壁や結界で弾かれるので、すくなくとも英霊クラスの力は必要だ。まあ、この奈落なら平気で突破してくる敵は多いだろう。

 

「お疲れ様。ルサルカ、鈴はどんな感じだ?」

「固定砲台としては充分ね。魔法使いには天敵よ。防御もしっかりとできてるし、足さえ無事で体術を覚えれば一人でもある程度は行動できるはずよ」

「なるほど。良かったな」

「えへへ~」

 

 ルサルカの姿のまま、鈴の頭を撫でる。改めて鈴の実力を考えるとかなり強くなった。最終的にサポートタイプで攻撃もできるって感じになるだろう。普通に考えて強い。さて、次は恵里の番だが、ルサルカは大丈夫だろうか? 

 そう思って次の順番である恵里を探す。だが、恵里が居ないな。世話をしているはずの詩乃もおらず、不思議に思う。

 

「鈴、恵里の場所に移動する」

「うん、わかった」

 

 汗をかいている鈴を抱き上げて移動すると、恵里が一人だけで背を岩に預けていた。周りに詩乃の姿がない。

 

「えりえり、なにかした?」

「した。もう一週間も経った。それでちょっと責めすぎたのか、走って逃げていった。追わないと死ぬかも」

「かなりやばいじゃないか!」

「真名君、追わないと!」

「行ってくる! どっちに行った!」

「あっち」

 

 恵里が指を刺した方向に走って進んでいく。その途中でアストルフォの姿に変化し、急いで駆ける。しばらく進んでいると、やばい状況になっていた。

 

 

 

 

 

 

清水君ヒロインアンケート 人になるます

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