ありふれた職業の召喚(ガチャ)士で世界最弱   作:ヴィヴィオ

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残酷な描写アリ


朝田詩乃

 召喚されてから一週間。私は恵里と鈴の介護をして過ごしていた。その代わり、私は食事と身の安全を保障してもらった。それでも鈴はともかく、真名と恵里が私に求めていることはなんとなくわかる。真名は私の事をそういう対象として見てきているし、恵里に関してはこの一週間で何度か受け入れて真名の女になるように直接言われたりもした。その方が私にメリットがある事もちゃんと教えてくれたし、妥協案も提示してくれた。それでもどうしても踏ん切りはつかない。

 

 メリットとしてはこれからオルクス大迷宮というここを探索する時にしっかりと守ってもらえる事。今のままだと真名の優先度は自分の女である鈴と恵里が優先される。真名を見ていて私の安全は二人ほど気を配られていないのがわかった。

 真名が私に良くしてくれるのは私が理解して召喚されたのではなく、騙した感じで召喚されたことによる罪悪感や責任を感じて守ってくれていること。それに自惚れでなければ私の事を気に入っているから。でも、何時までも現状のままでは見捨てられて放りだされる可能性もある。一応、愛歌とかいう人に与えられた試練らしいけれど、正確な事はわかっていないし、私を何時までも守ってくれるなんてことはないと恵里が言っていた。

 その時に提示された妥協案は服を脱いで一緒の寝袋に寝ることとディープキスをして魔力を供給する事。これさえできればちゃんと守ってくれるとは言われたけれど、そこまで自分を捨てられない。

 確かにちゃんとした寝床は魅力的だ。今は岩肌から凹凸をできるだけ削ってそこに布を引いて寝ている。だから起きたら身体が痛いし、何時襲われるかもわからないからよく寝られない。ただ、懸念していた真名に寝ている間に襲われるということはないみたいだと思った。むしろ、二人とあんな風に密着して寝ているのに手を出していない。恵里なんて自分からして欲しいと案に伝えているのに無視しているし、ユーリという女性の名前を出して断っている。そのくせキスや二人の身体を触ったりして楽しんではいるようだ。

 私が居るから手を出していないだけかもしれないけど、そもそも普通の人間である私なんて彼等からしたらすぐに押さえつけて好き勝手に私の身体を扱えるのはわかりきっている。実際にここに来る前、普通の男に好き勝手にされかけたのだから、彼等よりも圧倒的な力を持っている真名達に私は対抗できない。

 実際に彼等の訓練や周りに狩りへと出ている時の姿を見せられると圧倒的に強いし、心の底から恐怖を感じるほど怖い。なんていうのか、普段の女装している真名とは違い、ルサルカが身体を操っている時は恵里とルサルカの二人から伝わってくるのは禍々しさだ。鈴の方からも格というのか、存在の違いをプレッシャーみたいなので感じる。

 彼女達にとって私などどうでもいい存在で、真名が興味があるから助けているとしか思えない。それをこの一週間で痛感させられた。

 

「ねえ、そろそろ覚悟は決まった?」

 

 戦闘訓練を終えた恵里を引き取り、身体を拭いたりして世話をしていると恵里が話しかけてくる。恵里は決まって二人が居ない時にはしない話をしてくる。

 

「それは……」

「大丈夫よ。真名ならちゃんと愛してくれると思うけど?」

「……」

「とくに詩乃なら僕達より可愛がってもらえるはずだよ」

「好きでもない男に可愛がられるなんて嫌。私は好きな人に……」

「でも、詩乃は人を殺したんでしょ? そんな人がまともな恋愛をできると思ってるの? 無理だよ。騙されて好き勝手に利用されて捨てられるだけ」

「そんなのわからないじゃない!」

 

 不可抗力とはいえ、人を殺した私に人並みの幸せは訪れない。そう言われて激情にかられてすぐに反論した。

 

「わかるよ。自分のせいじゃなくても人を殺したのなら、行き着く先は同じ。だいたい元の世界でも虐められていたんでしょ。だったら、犯されるだけじゃなくてもっとエスカレートするよ。女としての尊厳を徹底的に奪い取られて家畜のような生活になると思う。真名ならそんなことはせずに可愛がってくれるし、僕達もいるから大丈夫。

 それに戻らない方が家族にとってはいいかもね。貴女のお母さんも壊れているんでしょ? だったらすぐに男に媚びを売って生活するようになるかも。わた──」

「ふざけんな! お母さんはそんなことしない!」

 

 恵里の言葉にお母さんの事を思いだし、私は本気で怒る。例え恵里の機嫌を損ねたしても知ったことか! 

 

「──事実だよ。僕は手に取るように君の未来がわかる」

「貴女に何が分かるって言うのよ! 私の事なんてわかるわけない! アンタが愛された事がないだけでしょ! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……ああ、そうだね。確かに僕は()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 恵里の雰囲気が変わった。こちらの事を嫌っていても、心配しているような感じが微かにはしていたけれど、完全にそれが消えた。でも、そんなのは関係ない。お母さんやおばあちゃん達を貶されて黙ってられるか! 

 

「私は──」

「止めた。グダグダ悩んでいるのなら、僕がその悩みを吹き飛ばしてあげる」

「──え?」

 

 恵里の感情を感じさせないような声ではなく、恨みつらみが籠ったドロドロしたかのような声を聞いた時、タイムリミットが来たというよりも、何か地雷を踏んだと本能的に理解できた。

 

「ようは倫理観とここに来る時に襲われた事実がトラウマとなって邪魔をしているんだよね? なら、もう一度襲われて貴女という存在が私と同じただの塵屑だってことを心の底から教え込んであげる」

「ひっ!?」

 

 恵里の言葉と同時に周りに現れたのは()()()()()()()()()()()()。身体の一部がなく、お腹の部分が開いていたり、腐り落ちているような腐臭を漂わすような存在。そいつらはアレを大きく聳え立たせながら私をぎらついた目で見てくる。本能的に湧き上がってくる恐怖に身体が震える。ゆっくりと舌なめずりしながら近付いてくるゾンビを見ながら、助けを求めて二人が居る方を見る。

 

「無駄よ。真名と鈴は戦闘訓練をしている。周りに音がバレないように結界も張ってるから、結界の外であるここの声は届かない。だから助けはこないし、大人しく犯されなさい。まあ、相手は選ばせてあげる」

「いっ、いやぁぁぁっ!」

 

 私に近付いて掴んでこようとする手があいつらの手や、私が殺した人の手に見えてくる。彼の恨みの籠った声が聞こえる気までしてくる。

 

「どうせなら、貴女が殺した男にやらせるのもいいかもね」

 

 恵里が指を鳴らすと、覚えのある記憶通りの姿をした強盗犯の姿へと変化した。そいつは身体を腐敗させながら近付いてきて、私は思わず殴りつける。

 するとゾンビの身体の一部が吹き飛び、私の身体に腐った液体や腐肉が降り注いで気持ち悪くなって吐きそうになる。ふと視線をやると腕がもげた状態でこちらに近付いてくる強盗犯に私は完全にパニックになってなにも考えられなくなった。

 

「あっ、待ちなさい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 気が付けば知らない場所で私は地面に倒れていた。また召喚されたのかと思って目を開けたけれど違った。天井は見慣れた場所ではなく、狭い洞窟だった。周りから漂ってくるのは腐った肉の臭いや汚物の臭い。それに荒い呼吸。

 最悪な予想が当たったのかと視線を天井からずらして移すと、そこに居たのは白い毛を持つ大型犬程度の大きさで二つの尻尾を持つ狼達。

 理解した瞬間、脳が覚醒して痛みが襲ってくる。腕から熱くて激しい痛みを感じながらそちらを見ると、腕が狼に噛みつかれていてそのまま引きずられていたみたい。視線を別の所にやると転々と入口であろう場所から血が続いているから、引きずられてきたのだと思う。

 

「あっ、あぁ……」

 

 思いだした。パニックになって逃げだし、少ししたら白い狼の群れに襲われたんだ。必死に逃げ惑いながら、抵抗したけれど電撃を放たれて感電して……そこからが思いだせない。

 

「わふっ!」

「「「くぅ~ん」」」

 

 声が聞こえてそちらを見ると無数の小さな白い狼達が居た。何をされるのかがわからなくて怖い。どちらにしても嫌な予感しかしない。必死に動いて逃げようとするけれど、腕を二匹の狼に押さえられて動けない。

 

「がうっ!」

 

 足の方も噛みつかれて激痛が走る。痛みの方へと視線を送ると、小さな子供の狼が私の足に噛みついて抉り取っていく。

 

「あぐっ! いっ、痛っ、痛いっ!」

 

 少しずつ子供の狼に食べられていく激痛に助けを求めて必死に暴れる。それでも大した抵抗も出来ずに服を噛みちぎられて身体を食べられていく。一思いに殺してくれた方が楽だとすら思えるけれど、コイツラの目的は子供に生きたまま私を食べさせる事で狩りについて教えることだという絶望的な事がわかるだけ。

 恵里や鈴の身体を見て理解したつもりだったけれど甘かった。なんで恵里があんなに言ってきていたのか、本当の意味で理解させられた。ここでは力が無い物はただの餌でしかない。身体や心を差し出してでも庇護下に入らないと一日も生きていけない。

 

「たす、けて……助けてぇぇぇぇっ! あっ、ああっ……かひぃっ、ひゅー」

 

 鈴や真名達が助けてくれる事を願って必死に叫んだ。けれどもすぐに喉を噛みつかれて声を出せなくされた。これじゃあもう助けも呼べない。諦めかけるとお母さん達の姿が浮かんでくる。走馬灯なのかな。もう強盗犯を殺したことや銃へのトラウマとかに苦しまなくていいのなら、この痛みさえ耐えられれば──

 

「かひぃっ!?」

 

 ──一瞬、意識を失ってそのまま食べられると思ったら電撃で強制的にたたき起こされた。どうやら、私には絶望しかないみたい。そう理解すると色んな物が身体から出ていく。

 

「ガルゥゥゥゥッ!」

「きゅー」

 

 声が聞こえてそちらに向かうと兎が入ってきて狼達を惨殺していく。助かったのかと思えば兎も私を食べていく。その直後に入口から巨大な蛇が入ってきて兎達を地面ごと丸呑みにして壁に激突する。バリバリと食べられていくその姿に次は自分の番だと嫌でも理解させられる。

 ここは弱肉強食。強ければ生き、弱ければ食べられて死ぬ。普通の人が生き残るには厳しすぎる環境だという事。

 

 本当に何が悪かったのだろうか? 

 私が恵里の提案を拒否した事? 

 犯されそうになって詳しい話も聞かずに召喚に応じた事? 

 人を殺した事がバレて虐められた事? 

 それとも、やっぱりお母さんを守るために強盗犯から拳銃を奪って撃ち殺したこと? 

 

 

 

 なんで、なんで私が食べられないといけないの? 悪い事は確かにしてきた。でも、ここまでされる理由は……いや、人を殺したのだから地獄に落ちて当然ね。でも、お母さん達にまた会いたい。死にたくない。死にたくない! 

 死にたくないから足掻く。助けは来てくれないかもしれない。それでも希望はある。真名は私の事を気に入っているというのは恵里も認めていた事実。それなら助けにきてくれる可能性は大きい。だから、生き残れる可能性はある。

 私は、私は……なんとしても生き残る! 

 心に決めてから、痛みを我慢して体勢を変える。どうにかして生き残る方法を考える。一般人である私にはどうしようもないけれど、何か方法があるはず。

 考えていると視界に子供の狼が血を流して倒れている姿が見えた。血、血……強盗犯を撃った時の事がフラッシュバックしてくる。それを気力で押さえ込んで考える。血……失血。そこで私は自分がどんな状態か思いだした。不味い。このままじゃ失血死してしまう。

 どうすればいいのか、必死に考えて思いだしたのは……モンスターを食べたら死ぬということ。でも、不思議と私は大丈夫だと思う。だから子供の狼に噛みついて命を奪い、血と肉を逆に喰らう。するとすぐに身体の中から激痛が走る。

 

「シャァァッッ!」

「くっ……」

 

 蛇がこちらに気付いて私を食べようと大きく口を開いてくる。迫ってくる顎が私の身体を飲み込もうと、ゆっくりゆっくりと接近してきた。まるで私が浮かべる恐怖を味わっているかのように。

 

 そして、少ししてから目と鼻の先まできた。でも、不思議と恐怖は湧いてこない。だって、私を守ってくれる騎士(ナイト)がやってきてくれた。いや、悪魔か。身体と心を代価に守ってくれるのだから、悪魔の騎士(ナイトデーモン)か。

 そんなどうでもいい思考で激痛を紛らわせて生き残っていると声が聞こえてくる。

 

「なに蛇風情が詩乃に手を出してんだ」

 

 確かな怒りを込められた声には少し嬉しく感じてしまうのは微かにある。だけど、うさ耳の女装少年なんて嫌だ。

 

「大丈夫……じゃないな」

 

 蛇の口からうねうねと動く剣の先端が出てきて串刺しにした後、方向を変えて瞳を貫いて頭を貫いた。私を餌とした狼を殺した兎。その兎をあっさりと殺した蛇。その蛇を瞬殺して三枚おろしにした真名とアストルフォ。

 

「ねえねえ、マスター。間に合わなかったみたいだよ?」

「いや、詩乃は死なせない」

 

 真名は私を抱き上げて身体の状態を確認していく。視界がすでにぼやけて感覚もわからない。取り込んだ狼の子供の血肉が身体の中を暴れ回って破壊していっている。

 

「無理よ。延命の為に食べたんでしょうが、子供の血肉じゃ足りないし、そもそも身体を作り変える方法がないわ。この子は永劫破壊(エイヴィヒカイト)に適応しない。そもそも聖遺物もないし、私の魔術でも癒せないわ。さっさと殺してあげるのも慈悲よ」

 

 見上げると、ルサルカも実体化していた。だけど、その目は冷たい。まるで愚か者を見るかのような瞳をしている。それも間違いじゃない。彼女にとって私は愚か者だろう。

 

「詩乃、生きたいか? それとも死にたい?」

「ひゅーっ」

 

 生きたいと返事をするけど、声がまともに出せない。

 

「マスター、たぶん生きたいって言ってるよ。どうにかできないかな?」

「私は反対よ。コイツはもう足手纏いにしかならない愛歌についても勝手に逃げだして死んだと言えばある程度はなんとかなるでしょう」

「それはそうだけど……」

「アストルフォ。決めるのはマスターである真名よ。私達はその決定に従うだけ。そもそもこいつは……」

「詩乃。生きたいなら頷いてくれ。それだけでいい」

 

 ルサルカが何を言っているのか理解はできなかったけれど、真名の言葉に必死に生きたいと頷く。それで伝わったようでにこりと微笑んだ。

 

「二人共、詩乃はこのまま生かす」

「本当にそうするの? 殺した方がこの子の為にもなると思うけれど?」

「いい。彼女が死にたくないと言っている。それにユーリの時みたいに何もできずに彼女が死んでいくところは見ていられない。幸い、手段はある」

「手段って、まさか……やめなさい。貴方、今でさえ私達が居ないとまともに活動できないのよ? それを……」

「いいねいいね! まるで施しの人みたいな事をするんだね!」

「見返りはもらうから、かの英雄とは違う」

「後悔はしない? ユーリって子の復活は確実に遠のくわよ」

「わかっている。でも、ユーリもこの状況なら絶対に詩乃を助ける。だから、俺も助ける。ユーリに嫌われたくはないしな。不純な動機も多分に含まれているが、許してくれ」

 

 その言葉に頷く。それを見た彼は死んでいた狼達を集めてその近くに私を抱き上げて運んでいった。どうやら魔法陣の上みたいで、何をするのかはわからないけれど、準備はできたみたい。

 

「ねえねえ、何をするの?」

「このままじゃ詩乃は死ぬ。だから、一か八か進化を行う」

「なるほど、霊基再臨だね!」

「存在としてのステージを上げるのなら、永劫破壊(エイヴィヒカイト)を使うの? でも適正はないし……」

「ボク達英霊には進化する方法があるんだよ。それを彼女に試すみたい」

「素材は……狼達と蛇、兎を召喚用の触媒に変更。今回は愛歌のブーストはない。だから確定召喚を使う。無理矢理にでも生き残る事ができる詩乃を、シノンを呼び出す」

 

 何を言っているのかは、だんだんと聞こえなくなってきた。それにすごく寒い。身体がガタガタと震え出すと、真名が抱きしめて温めてくれる。

 

「もう時間もないし、やるか。サクリファイス。指定はジル・ド・レェの魂」

「待って! それは待ちなさい! 私のよ!」

「すまない」

「いやぁぁぁぁっ! 私の魂がぁぁぁっ!」

「これだけじゃ有料石はやはり足りないか。ならば追加だ。持ってけ。残っている腕と足、後、睡眠欲、飢餓感、記憶も一部持っていけ。想い出を焼却し、召喚用のエネルギーへと変換しろ。さあ、代価の課金は充分だろう。詩乃を助け、彼女に戦える力を与えろ! 

 

 暖かな温もりに包まれながら、私は目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 気が付いたら知らない場所に居た。怖くなって身体を抱きしめると、ちゃんと身体は元に戻っていた。不思議に思って周りをみると正面に境界線が出来ていた。その左右にはそれぞれ別の女の子の姿が映し出されている。どちらも同じ感じのする女の子で水色の髪の毛をして黄緑色をメインに白色と黒色が割り当てられた服を着ている。どちらも動きやすい服装で露出は少し多い。

 片方は夕暮れ時に廃墟に座り、風に白く長いマフラーを流しなら大きな銃を抱えている。彼女が居る廃墟の周りは砂漠みたい。そこで一人、寂しそうに夕日を見詰めている。

 もう片方は獣の耳に尻尾が生えている女の子で、楽しそうに空を飛びながら笑って弓を構えている。

 興廃した終末のようなサイエンス・フィクションのような世界と妖精が生きるファンタジーのような世界。

 彼女達の姿を見詰めていると、不思議と彼女達は別世界の私だという感覚がしてくる。

 

「それは間違いじゃない」

「私達は貴女の未来」

「……私の未来……」

 

 このままこの世界で過ごしていたら、おそらくこの姿になったのかもしれない。

 

「朝田詩乃。貴女はどちらの私を選ぶ?」

「妖精の世界で自由に空を飛んで戦いながら旅をする私か」

「それとも最終戦争後の荒れ果てた遠い未来の地球で殺し合いをする私か」

 

 二人はどちらも私に力を貸してくれるみたい。それは凄く嬉しい。

 

「「好きな方を選びなさい。私達の力はどちらにせよ、貴女の力だから」」

「わ、私は……よ、妖精がいい……」

「……なんでかは聞かないであげる」

「ごめんなさい。銃が怖いの。弓ならまだ気にせずに使えると思う。それに……空を飛んでみたい」

「なるほどね。確かに空は気持ちいいわ」

「……銃も克服してもらわないと困るわ。そうしないと私は何時までも弱いまま。それだけは覚えておきなさい」

「うん」

 

 そう言うと、荒野の私は消えていった。残ったのは妖精の私。

 

「じゃあ、改めて言うわね。私の名前はシノン。ケットシーのシノン。これからよろしくね」

「こ、こちらこそよろしくお願いします」

「貴女も私なんだから敬語は要らないわ。私の全てを貴女にあげる。だから受け入れなさい。借りを返すために」

「借り……」

「私を呼びだすためにあの人はかなり無茶をしている。アイツも結構無茶をする奴だけど、英霊を憑依させれば行動できるからって、限度という物を知らないのかしら?」

「アイツ?」

「き……いえ、貴女には関係ない事よ。それよりもこれだけは伝えないとね。強盗犯を殺したのは事実だけれど、それで助かった人も居るの。私達はちゃんとお礼を言ってもらえた。そのおかげで私達は苦しまずに幸せになってもいいって思えるようになった。これは貴女も同じよ」

「それは……本当?」

「私達はあそこで人質になった女性を助けたよね? その人は子供を妊娠していたの。その子がね、手紙をくれたの。ありがとうって」

「……あぁ、悪い事ばかりじゃないんだ……」

「そうよ。何時までも後悔していても過去は変わらない。それならそれを受け入れてこれからどう過ごすかが重要なの。悪いと思っているのなら、殺した以上の人を救えばいいだけ。もっとも、私としては私が誇れる自分になればいいと思ってる。赤の他人よりも、自分の大切な家族や友達、好きな人の方が大切よ」

「た、確かに……」

「でも、一つだけ言っておく。好きな人ができたら遠慮なんてせずに奪い取る気でいきなさい。そうじゃないと後悔するから。そっちだと余りこちらの常識なんて気にしなくていいから、自由にできるかもしれないけれどね」

「好きな人、いるんだね」

「彼女持ちの癖に人の心にずかずかと入ってきて、人の心を奪うだけ奪っていくような最悪な奴だけどね。最初から彼女がいるなら教えておけっていうのよ! そもそも入ってくるな! 気がついたら増えてるし!」

「あははは」

 

 未来か平行世界の自分の愚痴を言われても困るけれど、しっかりと聞いて答えていく。

 

「まあ、貴女も気を付けなさい」

「わかった。気を付ける」

「それでいいわ」

 

 彼女が私の額に彼女の額を押し付ける。すると彼女の身体が(フラグメント)となって私の身体に入ってくる。すると彼女が持っている技能を含めた様々な技術がしっかりと私の物となっていく。

 それだけじゃない。髪の毛の色が水色に変わり、人の耳がなくなって頭に二つの獣耳ができる。それにお尻の上辺りから尻尾も生えてくる。

 

【アバター変更・ケットシー・シノン】

 

 それだけじゃない。私が食べた白い狼から纏雷、胃酸強化、魔力操作の技能を得る事ができた。どうやら、私も人を止めてしまったみたい。ケットシーって猫妖精族で特徴として俊敏性に長け、モンスターの<テイミング>に長けた種族みたい。視力が良いけど、動物の耳と尾を持って背の低い容姿みたい。少しは伸びたと思いたい。

 新しくなった自分の身体を周りながら確認すると、だんんだんとまぶたが重くなってきて、引っ張られる感覚がしてくる。おそらく、元の場所に戻るのだと思う。

 

「ありがとう」

 

 最後に伝えると、なんとなく二人は喜んでいる気がした。私も私で頑張って生きよう。まずは真名に助けてもらった借りを返すために頑張ろう。

 

 

 

 

 




恵里が詩乃をひどい扱いにしていますが、恵里は幼少期の事を詩乃に重ねてもいますから自分なりに詩乃を助けようとはしています。そして互いに地雷を踏み抜いた。仕方ありません。
また恵里は脅す程度で留めるつもりでした。その前に詩乃が逃げたので自体はもっと悲惨になりました。

恐怖心がないから平気でサクリファイスしちゃう。味覚がないから飢餓感を感じなくてもいいや。睡眠欲も別にいらん。という思考。食事と睡眠は女の子達に管理してもらわないと倒れて死ぬね。なお、ユーリが送ってくれている仕送り魔力もいっぱい使ったもよう。正妻から送ってもらっている支援金を別の女に使うという……酷い人です。ユーリじゃなかったら激怒してるかもね!

詩乃のアバターはしばらくALO仕様。理由? モフモフが正義だから。
いや、GGOも好きなのですが、現状だと銃について克服していないのでGGOのシノンは選ばないという判断。
ちなみに詩乃はダイスをふったところ45だったのでノーマル難易度。良かったね。クリティカルなら、無傷で力を得られたよ。ファンブルならもっと悲惨な目にあった。

さて、鈴と真名の癒しが手に入りました。

清水君ヒロインアンケート 人になるます

  • 波の鳥 フ
  • 謳の鳥 コ
  • 空の鼠 ク
  • 深海のナニカ レ

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