アンケート、何気にルサルカが強い。日向ぼっこデートとルサルカの手料理が主になりそう?
身体が戻り、日常がかなり変化した。まず、一番はユーリ達との関係だ。毎日、全員と裸で抱き合うようにして特注で作ったらしい一つのベッドで眠っている。
詩乃とはまだだが、全員の初めてを貰い、ルサルカに色々と注意はされているが関係は良好だ。がっつきすぎると止められたり、他の子が乱入して止めてくるので助かっている。
ただ、ローテーションのようだが、その順番に俺は口が出せない状態だ。まあ、こちらはいい。毎日気持ち良くはしてもらえているし、彼女達の感覚も分かるので、何をして欲しいかもだいたいわかる。
次に周りを気にしないで眠れる事、これは大きい。どれだけ惰眠を貪っても問題ないし、皆の身体が温かくてつい眠り過ぎてしまう。大概がレヴィ、鈴、恵里の四人と寝すぎる。そこでディアーチェやユーリ、シュテル、ルサルカが優しくキスとかで起こしてくれる。
目が覚めたら朝の挨拶としてキスをしてから共に風呂に入って汗を流す。当然のように遅くまで寝ていたレヴィや鈴達と一緒で彼女達の身体を隅々まで綺麗に洗う。鈴達はまだ身体が治っていないから仕方がないのもある。その時に行き過ぎてしまうことも多々あるが、仕方がない。
避妊に関してはルサルカの魔術でやっている。流石にユーリ達はそういう薬の知識とかはないので、ルサルカの魔術が頼りになる。いくらなんでも妊娠は早いからな。そもそもこの身体で子供ができるのかもわからない。
恵里やルサルカは欲しがっているが、ルサルカは問題ないだろうが恵里はもう少し待ってもらうつもりだ。今、子供ができても養う自信がない。ここでなら生活に困らないが、こんな閉鎖環境で育てるわけにもいかないだろうし、二人の両親と挨拶を終わらせてからと思っている。
朝食をハジメ達と一緒に全員で食べたら、昼間はお弁当を貰ってデートや遊びに行く。アストルフォと遊ばないと機嫌が悪くなって拗ねてしまうのもある。夜は一緒に居れないので昼は必ず遊ぶようにしている。
さて、お昼からはデートが基本だが、今回はユーリとのデートだ。だが、少し違う。というのも、ユーリやシュテル達の体調が整い、施設の準備もできた。鈴と恵里の身体も問題ないので治療を始めるためだ。
「バイタルなどの問題はありませんが、やはり色々と弱っていますね。感染症はありませんが、栄養の偏りなどがあります」
研究所で二人の前で白衣を着たユーリが俺と恵里、鈴に説明してくれる。近くではナース服を着たディアーチェとシュテルが色々と準備してくれているようだ。
「奈落で生活していたから仕方がないだろう。
「不味いよね~」
「食べられるってだけだからね」
「お二人の身体は魔法の力、
「鈴達も魔導炉とか搭載するの?」
「いえ、それはしません。鈴さんも恵里さんも女の子なので身体を改造すると子供ができなくなるかもしれません」
「それはやだな~」
「うん。元の身体がいい。でも強さも欲しい」
「魔力はお兄ちゃんから貰えばいいですから、別の手段で強化します。竜の因子というものをお兄ちゃんの身体に愛歌さんが埋め込みました。ですから、それを二人の身体にも適応させます」
それがあれば魔術回路がなくても魔力の生成量は格段に上昇する。それに魔術回路もしっかりとつけるつもりらしい。ルサルカが二人は
「リンカ―コアだったかな。それも欲しい。それがあればデバイスを使えるんでしょ?」
「リンカ―コアはあった方がデバイスで扱う魔法の効果はあがります。今は魔力をデバイスで扱えるように変換していますから、ロスが少し発生していますから……」
「それなら、やっぱりお願いできる?」
「私のはお兄ちゃんに移植しましたので再生するまで時間はかかります。となると、シュテルとディアーチェ、レヴィのですね。彼女達は予備の躯体が沢山ありますので可能です。ただ、訓練が大変ですよ。竜の因子にしても、移植した腕などからゆっくりと馴染ませないといけませんから」
「やってみせる。鈴はどうする?」
「鈴も真名君を守りたいから、力が欲しいよ」
「別に俺が守るが……」
「いいの。守られるだけの女にはなりたくないしね」
鈴と恵里の二人を胸に抱きしめて撫でる。嬉しそうにしている二人を羨ましそうに見てくるユーリ。
「では腕の再生と調整をします。ブレインコンピュータは必要ですか?」
「脳内にコンピュータを取り付けるんだっけ。鈴はちょっと怖いけど……」
「私の世界でも実装しているのは一部だけですね。危険ですし、デバイスがあれば事足りますから。ただ、デバイスを取り上げられた時の緊急手段になります」
「それって暗殺用でしょう」
「正解です。暗殺や産業スパイの目的で主に開発されました」
「僕は欲しい」
「鈴はいいや。怖いし……いや、やっぱりやるよ。メリットって色々とあるんだよね?」
「デバイスを持つ以外に演算能力が上がったりしますし、複数の対象を選ぶ時には便利です」
「鈴なら生かせるだろう。
「うん……取り付けて」
「はい。では、服を脱いで培養槽の中に入ってください」
手伝いとして二人の服を脱がせて裸にする。それから抱え上げてキスをしてから、培養槽の中へと寝かせていく。手術などはナノマシンを体内に入れて行ったりするので、培養槽の中で完結できる。無菌状態にもできるから、色々と便利だ。
「お兄ちゃん、二人が眠るまでついてあげてくださいね」
「わかっている」
「お願いします」
ユーリもパタパタと移動して色々と準備を初めていく。俺は培養槽の中で眠りにつく二人を見守り続ける。二人が眠りについて少しすると、培養槽の中が神水で満たされて縦に移動し、二人が水中に浮いていく。酸素マスクはちゃんと取り付けられているし、表示されているバイタルに問題はない。
「よし、システムに問題はない。二人の細胞から培養中の腕や足は大丈夫か?」
「問題ありません。昨日、お二人がお兄様に注いでもらった物から採取した竜の因子も培養できています」
「魔術回路はどうですか?」
「サンプルが無いので、お兄様の物をナノマシンでコピーして与えておきます。元は沙条愛歌の物ですが、多少はお兄様の影響を受けるかもしれません」
「まあ、問題ないでしょう。それではシュテルとディアーチェ、後は頼みます。何か有れば連絡してください」
「任せてください」
「うむ。ユーリはもう一人の方を頼む」
「はい」
ユーリが走ってこっちにやってくる。彼女は大事そうにタブレットを持っている。このタブレットはシュテルが取り返してきてくれたものだ。画面や内部の物が壊れていたが、ユーリ達の技術で修復し、データのサルベージがされた上に色々と魔改造されている。なのでそのままユーリにあげた。俺はスマホがあるしな。ちなみにエロいデータは全て消された。
ゲームや動画は一部残ってはいるが、嫁達がプレイして許可と不可を決めて、デリートさせられた。スマホの方は完全に消され、タブレットの方に移動されている。ゲームは教材や召喚するための触媒として残されている感じだ。後、暇つぶしのためにもなる。実際に何個かプレイしているしな。特に鈴は美少女ゲームを楽しんでいた。
「お兄ちゃん、抱っこしてください」
「ああ、いいぞ」
何時もはこんな風に甘えてこないが、二人きりだし、鈴と恵里に少し嫉妬したからだろう。だから、ユーリをお姫様抱っこし、持ち上げる。
「それで何処に行くのかな、お姫様」
「工房です。ハジメさんの腕と目を作ります」
「確か、オスカー・オルクスが残した工房をそのまま使っているんだったか……」
「はい。改造はしていますけど……」
「そうだろうな」
ファンタジー世界のマジックアイテムでの加工もいいが、精密な物を作るには機械系がいい。ハジメなら思った物を作れるだろうが、設計図とかを作るにはパソコンの方が面倒じゃない。
そんな訳でユーリを抱っこしながら工房へ移動すると、椅子に座ったハジメの上にユエが座り、あついキスをしていた。
「お邪魔しました」
「はうっ」
「待て! 助けろ! お前達のせいでユエが余計に積極的になってんだ!」
「やれやれ……ユエ。ハジメとするのは後でしてくれ。まずはハジメの腕と目について話しをしたい。それからなら好きにしてくれていい」
「むぅ、仕方がない。アイツが来るまでにハジメをいっぱい独占して私だけの物にしないといけないけれど……ハジメの身体の為なら我慢する」
「助かった……って、降りないのか」
「ん。このまま」
ユエはハジメと向き合った状態からこちらに向いて座り直しただけで、膝の上から移動するつもりはないようだ。なので、俺は反対側に座ってユーリを隣に降ろすと、ユーリはふふんと笑うユエを見て、少しむっとしてからいそいそと俺の膝の上へと移動してきた。
「なんだこれ」
「まあ、可愛いしいいじゃないか」
「これを許容できるのか、お前は……」
「俺は嫁達の全てを愛しているからな」
「それはもういい。それと嫁と付けた事に関しては認めてやる」
嫁とつけなければユエが五月蠅いからな。しかし、アストルフォをつけてもいいが、今度はアストルフォに掘られる可能性がでてくるのでつけない。親友としては好きだが、やはり男という事がネックだ。
しかし、幼女を膝の上に乗せながらの話し合いというのはかなり変な感じだ。まあ、俺の手はユーリが握ってお腹と頭に移動させてきたので、そのまま撫でてやる。するとユエも同じ事をしたが、ハジメはやらない。それによってユーリが微笑み、ユエの頬が膨れていく。
「ハジメ」
「お前ら、遊ぶのなら出ていけ。真面目な話をするぞ」
「ごめんなさい」
「ごめんなさいです」
「ユーリは謝らなくても追い出されないがな」
「その場合、お前を追い出すだけだ」
「だよな~。だが、ユーリと二人っきりになんてできない」
「同感」
というわけで、大人しく膝の上に乗せるだけで話し合いを始める。まずはハジメの身体の事からだ。
「腕と目はどうするんだ?」
「腕は作ってみた。こいつを改造して欲しい」
そう言って机の上に取り出したのは黒い義手だ。
「設計図をお願いします」
「これだ」
ユーリが設計図を確認していくが、俺には何がどうなっているかわからない。
「義手ならロケットパンチとかできるのか?」
「やるわけないだろ」
「だが、逃げる時には便利だぞ。スタングレネードでも搭載しておけばいい」
「確かにそれがあれば逃げるのは便利そうだが、ロケットパンチか」
「ついでにジョイント式にしておけば新しい腕を装着すれば使った後も問題ない」
「制御はどうするんだ?」
「デバイスでもブレインコンピュータでも可能です。片方の瞳を義眼にするのですから色々と改造できますよ」
「それなら頼む」
ハジメからの要望を聞いてユーリがどんどん改造していく。ハジメも意見を出していくので、基本的に俺とユエは暇だ。だが、やる事もないので大人しく椅子になっている。
「次に武器だ。ドンナーを改造したい。他にもシュラーゲンとかを作ったが、デバイスに改造してもらいたい」
「銃とかですね」
なんていうか、ごちゃごちゃしているので一つに纏めたらいいし、ドンナーは今のハジメには合っていない。
「ハジメ、もっと銃を改造しようぜ」
「なに?」
「今のハジメならもっと化け物銃に改造した方がいいって。ジャッカルとか」
「アレか」
「それに一つに纏めて形態変化できるようにするのもいいだろう」
「オルクスの指輪で持ち運びは可能だが、デバイスとして一つにまとめるのはいい。サブウエポンは必要だが……」
「このパイルバンカーは分けておいた方がいいですね。設置した時、敵に襲われたら駄目ですし……」
「なら、ドンナーを改造するか。アレって確か対化物戦闘用13mm拳銃だったか?」
「それだな。正確なスペックは……」
「全長39cm。重量16kg。装弾数6発。専用弾が13mm炸裂徹鋼弾。弾殻は純銀製のマケドニウム加工弾殻ですね。装薬はマーベルス化学薬筒NNA9? 弾頭が水銀ですか……完全再現はできませんが、作れますよ」
「「マジで!」」
ユーリがタブレットで調べてくれたようで、本当に作れるようだ。
「じゃあ、それを二丁頼む」
「はい。それとアンチマテリアルライフルですね。どちらも電磁加速ですか?」
「頼む」
「実弾と魔力弾、両方でできるようにしておきます。アンチマテリアルライフルの方は収束砲が使える方がいいですよね?」
「できればいいが、流石に魔力が持たないだろう。ソイツみたいに馬鹿魔力じゃないからな」
「そこはユエと一緒に撃てばいいだろう」
「私?」
うつらうつらしていたユエに話をしていくと乗り気だった。スターライトブレイカーを撃つとかは止めて欲しいがな。
「まあ、デバイスは色々と用意するだろう? 俺も槍が欲しいからな」
「わかりました。いっぱい作ります!」
「俺も身体が治ったら手伝う。色々と教えてくれ」
「もちろん、俺も手伝うからな」
「皆で作りましょう」
「私もやる」
「ユエさんはハジメさんと一緒ですね。治療を見守ってもらわないといけませんし」
「ん。任せて」
「やれやれ……で、瞳とかいいのを頼む」
「任せてください」
ハジメの瞳と腕の設計図を優先して作成していく。設計図ができたらハジメに部品を錬成してもらって、それからハジメが作った物と接合したり、組み込んだりと改造する。これが終わればハジメを培養槽に叩き込んでシュテルとディアーチェに任せる事になる。
「じゃあ、明日からハジメは培養槽だ。ユエとしばしの別れを堪能しておくといい」
「おい」
「ん。たっぷりしておく。ハジメ、今日は寝かさない」
「待て。マジで……」
ユーリを抱き上げて俺は俺達の工房へと移動する。まあ、研究所の方にあるユーリの工房だ。一応、ハジメ達はオルクスの屋敷を使い、俺達は研究所を使っている。庭を挟んで反対側に作ったが、食堂は同じにしてあるが、風呂はそれぞれの所に作ってある。食堂は研究に熱中して食べないためだ。ちなみに施設自体はどちらも使えるので、こちらにハジメが来る事も多い。
だが、こちらの技術は進み過ぎていてハジメでもわからない事が多いので、基本的に向こうの工房を使っている。もちろんハジメはディアーチェやシュテル達に教えてもらって勉強する予定だ。デバイスマイスターになるつもりらしいが、流石にすぐにはなれないだろう。
研究所でユーリが使っている部屋に移動し、ハジメが作った試作の腕やパーツを作業台に乗せてから作業スペースから出る。
「じゃあ、ユーリ。俺はどうすればいい?」
「お兄ちゃんはこの部屋に居てくれたらいいです」
「なら、デバイスの勉強でもしているか」
「それならテキストを転送しますね」
ユーリが椅子に座り、無数のデータファイルを送ってきてくれる。それをダウンロードして、インストールする。ブレインコンピュータの内部に膨大な資料が展開されたので、初心者用のを美遊と一緒に読んでいく。
ユーリの方を見ると、座ったままで無数のスクリーンを展開して思考で操作していっている。それによってガラスの先にある作業スペースでは沢山のアームが動いて腕が改造されていく。
別の作業台でも同じようにアームが動いてドンナーから丸い球体が取り除かれ、新しい物にデータが移し替えられていく。無数のプログラムがユーリによって作られていき、デバイスのコアへと注ぎ込まれる。コアを取り除かれたドンナーも部品に分解され、新たに新しい形へと錬成されていく。ユーリ達はハジメを蒐集したから、錬成も普通にできてしまう。そのせいか、作業効率が凄まじい。
「材料が足りませんね……」
「取ってこようか?」
「大丈夫です。チビット達に持ってこさせますから」
確かにすぐに扉が開いて沢山のチビット達が空を飛びながらワゴンを押してやってきた。彼女達のワゴンには様々な鉱石が置かれている。それを錬成陣に乗せて錬成し、新たなパーツへと変えていく。よく見れば部屋にはぬいぐるみだと思ったのが、ほとんどチビット達だった。
やる事がないので、飲み物とお菓子を用意して大人しく勉強する。それに詩乃の事もあるから、やっぱり銃を用意する。弓もいいが、ハジメが銃を使いだすと詩乃のトラウマを刺激する。しかし、ハジメに止めろとは言えない。なので克服してもらう。
「ユーリ」
「なんですか?」
「ちょっと俺もデバイスを作りたいから、ユーリに協力して欲しい」
「構いませんよ。もう自動で終わらせるところまでは行きましたから」
マジかよ。数十分ぐらいでデバイスのコア一つを作るとか、ヤバすぎる。
「本当にいいのか?」
「ストレージデバイスって簡単なんですよ。インテリジェンスやユニゾンとは違いますから」
「なるほど……それなら俺でもできるか?」
「任せてください! しっかりと教えます! だから、また膝に乗せてください……」
可愛らしく言ってくれるユーリにキスをしてから、抱き上げてユーリを膝の上に乗せる。その状態でユーリにデバイスの作り方を教えてもらいながら作っていく。美遊には資料を検索してもらう。
ユーリの感触を楽しみつつ、二人のサポートのお陰でどうにか一つのデバイスを組み上げた。その間にユーリは遠隔操作で複数のデバイスを組み上げてしまった。
「それはもしかして……」
台の上に置かれたのは赤い球体と青い三角形のデバイス。それぞれ待機形態だが、それがなんなのかはわかる。
「ルシフェリオンとバルニフィカスです。シュテルとレヴィのデバイスですね」
「そんなにすぐできるのか?」
「施設と素材さえあれば、後は私の中にあるデータをコピーしてペーストして、プログラムを確認してこちらの世界と今のシュテルやレヴィと合わせるだけですから、簡単ですよ」
絶対に簡単な作業じゃない。どれだけ膨大なデータを確認して弄らないといけないか……末恐ろしい。
「劇場版の装備はできませんが、ゲームの装備は作れました。ディアーチェは紫天の書を使いますし、私のスピリットフレアは後回しにします。それでお兄ちゃんの槍はどんなのにしましょうか?」
「俺の槍は……やっぱり後でいい。今はユーリのデバイスを優先してくれ」
「わかりました」
「どれぐらいでできるんだ?」
「ん~三日くらいですね」
「充分に速いな」
「加工を錬成でできますし、生成魔法も使えますから。本当にずるい技術です!」
ぷんぷんと怒っているが、ハジメ達からするとユーリの方がずるいと思う。というか、生成魔法ってなんだ?
「生成魔法ってなんなんだ?」
「あ、そういえばお兄ちゃんは知りませんでしたね。案内しますね!」
「重要な事なら頼む」
「覚えられるかはお兄ちゃん次第ですが、きっと大丈夫です」
ユーリに手を引かれてハジメが住んでいる館の方へと移動する。そこである一室に入り、魔法陣の上に乗るとオスカー・オルクスの情報が脳内に入ってきた。
『早送りしますか?』
『できるのか?』
『できます』
『じゃあ、スキップで』
美遊に飛ばしてもらう。内容なんてハジメやユーリから軽くは聞いているからな。肝心の生成魔法だが……
『て、適正がありませんでした。私は適正がありましたが……』
なんで美遊には適正があって俺には適正がないんだ! 美遊は完璧超人だから納得できるな!
「あの、お兄ちゃん……?」
「駄目だった……」
「だ、大丈夫です! 元気だしてください!」
「身体が変わっても駄目なんだ……」
「あの、本当にお兄ちゃんが魔法を使えなくても大丈夫です」
「だが……」
「そ、その、私達が居るじゃないですか……」
「え?」
「だから、私達がずっと一緒に居るんですから、お兄ちゃんは覚える必要なんてありません!」
「ユーリ!」
「きゃっ!?」
思わずユーリを抱きしめてしまったが、仕方がない。
「確かにユーリ達が傍に居るんだから、俺には必要ないな」
「作って欲しい物があったら言ってください。なんでも作りますから」
「じゃあ、デバイス以外にもユーリ達の服や移動の事を考えてテント……キャンピングカーとか、携帯できる家を作らないといけないな。旅先で野宿とか女の子にさせられない」
ただ、やっぱり生成魔法は欲しかったな。これがあればユーリ達に送る婚約指輪や結婚指輪を自分で作れる。こうなったらハジメに手伝ってもらうか。
「お兄ちゃんとのお家……一軒家がいいですね。お庭もつけて、広い庭をグランツ研究所みたいにガーデニングして……」
「それもいいが、携帯する奴じゃないな」
「はっ!? そうでした。携帯を考えるならキャンピングカーがいいですね。内部空間を弄ったりすれば広さは確保できますが……いっそ次元の狭間に建物を作るか、ここに転送できる魔法陣を用意しておけば補給の問題などは解決できます」
「確かにその通りだが、危険かもしれない。エヒトに見られていたら厄介だぞ」
「残念です。転移魔法陣は緊急用ですね」
「ああ。ただ、早めに白崎達を迎えにいかないといけない」
「ですね。会うのが楽しみです」
まあ、会いたくない奴もいるが仕方がない。
「それよりもユーリ。色々と案内してくれ。やっぱり、ここの事を知りたい」
「任せてください。あ、でも……その……」
「なんだ?」
「肩車、して欲しいです」
「いいぞ。お安いご用だ」
「やりました」
ユーリを肩車してハジメ達が居ないのをいいことに色々な部屋を見ていく。まあ、流石にハジメ達の部屋には入らないが、使われていない部屋が結構ある。館な事もあって以外に楽しめた。隠し通路なんかもあったしな。
「花壇もあるんですよ!」
「今度一緒に世話をするか」
「はい! どんな花を植えましょうか」
ユーリと話ながら、館を出て庭に移動すると猫たちの声が聞こえてきた。それで肩車しているユーリの顔をみると、頷いてくれた。なので、そのまま猫の声がする方へと進んでいくと、噴水の近くにベンチが設置されており、そこに目的の人物は猫に囲まれながら居た。
「シュテル」
「よお」
「おや、お二人共。よくお越しくださいました」
シュテルが読んでいた本を膝の上に置こうとして、そこに子猫が寝ている事に気付いて横に置こうとする。そこにも猫がいる。というか、シュテルの周りは猫だらけだ。それも普通の猫だけでなく、虎のようなものまで近くで寝ている。
「相変わらずですね~」
「虎は見た事ないけどな。というか、この世界に猫はいるのか?」
「この猫達は私がデータを元に生み出しました。チビット達と同じです。この公園では基本的に自由を許しているのですが、私の周りに集まってきます……本来は鈴達にアニマルセラピーの効果があると思って作ったのですが……」
「その子達はシュテルのお友達ですからね。虎さんは知りませんでしたが……」
「虎は大きく、強くなりたいと願った子達です」
「なるほど」
どちらにせよ、この子達はグランツ研究所やその付近で住んでいた猫なのだろう。だからか、俺にもすぐに近寄ってきて身体を擦りつけてくる。なので、俺はユーリを降ろして猫達を撫でていく。
「お兄ちゃん、シュテルにアレを渡してあげてください」
「俺がか?」
「はい。お兄ちゃんからがいいです」
「わかった。シュテル」
「なんでしょうか? 結婚指輪でしょうか?」
「それはもう少し待ってくれ。それより、今はこれだ」
シュテルの小さな手を握って持ち上げ、掌にルシフェリオンを乗せる。シュテルはそれを見ると涙をポロポロと流して、ギュッと手を握りしめて胸に抱いていく。
「ルシフェリオン……お帰りなさい。ずっと、待っていました」
機械音声が響き、シュテルは指で涙を拭ってからセットアップを行って濃い紫色の制服みたいな服装になる。シュテルのバリアジャケットは高町なのはの色違いだ。胸元には紫色の結晶があり、制服には赤色のラインが入っている。明るめのなのはの服とは違う。手には球体が入った三日月型の杖を持ち、まさに魔法少女リリカルなのはに出てくるシュテル・ザ・デストラクターの姿になった。
「ユーリ、お兄様。ありがとうございます。相棒と再会できたのは望外の喜びです。ルシフェリオンもとても喜んでいます」
その言葉を表すかのように、シュテルの周りに炎が現れている。魔力が変換資質の炎によって変換されたのだろう。
「やっぱり、シュテルにはルシフェリオンがないとな」
「はい。この子は私の半身です。もう半分はお兄様とユーリ達ですが」
「シュテルがどこにも居ませんよ?」
「それで構わないのです。私は王やユーリ達の幸せを一番に願っていますので」
「シュテルも幸せにならないと駄目ですからね」
「それは俺が頑張る事だな」
炎を気にせずシュテルを抱きしめると、彼女は赤くなりながらもすぐに炎を消してくれた。
「そう、ですね。ユーリ達と一緒に幸せにしてください」
「ああ。シュテル、愛してる。必ず幸せにするからな」
「はい♪」
「むぅ。私を忘れないでください!」
「ユーリを忘れるわけないだろ」
「私も愛してるって言って欲しいです……」
「もちろんだ」
「それなら、一緒に語らいましょうか」
笑いながらシュテルが俺をベンチに座らせ、その上にユーリとそれぞれ開いた俺の太股の上に乗ってくる。シュテルとユーリは向かい合うように座り、そんな二人の背中に手を回して支える。二人は俺の胸に手を置きながら、頬や首にキスしたり身体を擦りつけてくる。すぐに猫達もやってきて、モフモフに包まれた。そんな状態だが、三人で色々と話していく。もっぱら、INNOCENTのイベントについての想い出とかだ。
「何をしておる、貴様等。もうとっくに食事の時間は過ぎておるぞ」
「「「あ」」」
気が付けば語らいが楽しくて何時の間にか夕食の時間になったようだ。そのタイミングで景色が一気に夜へと変わった。
「今日の食事当番はシュテルとユーリだったはずだが……」
「ご、ごめんなさい」
「ふむ。レヴィ達が待っていますね。今日は手早くBBQとしましょう」
「確かにそれならレヴィ達も文句は言うまいな」
「じゃあ、用意するか」
ユーリ達が鉱石を運んできて錬成するので、俺は食材を運んでくる。庭園で肉を斬って猫達にもあげながら、作ったコンロで肉を焼いて皆で食べていく。ここには俺が召喚した子達ばかりだが、しっかりと笑顔を浮かべて笑っている。こういう姿をみると、ここがオルクス大迷宮の奈落の底だとは思えない。それに安心できる。後はここに鈴達が居れば完璧だ。それにはもうしばらくの時間がかかるだろう。
オルクス大迷宮デート。サモンナイト風に言う夜会話
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シュテルとレヴィの猫と戯れピクニック
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鈴と恵里の日向ぼっこデート
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ルサルカの手料理
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ディアーチェとお勉強
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アストルフォと遊ぶ