ありふれた職業の召喚(ガチャ)士で世界最弱   作:ヴィヴィオ

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優花ちゃんがひどい目に会います。
でも、これって起こりえることだと思います。原作ではなかったかもしれませんが、宗教なら確実にあります。魔女狩りの歴史が証明していますから。
というわけで、拷問描写が少しだけあります。


第34話

 

 

 最悪。本当に最悪。檜山に騙された。お墓を作るというのは本当に良い考えだったから、聞かれた事に答えたのに……本当に私の馬鹿。鈴や恵里、沙条や南雲が死んで怖くてわけわかんなくなっていたとはいえ、こんな事になるなんて……駄目だ。本当に駄目だ。せっかく沙条に助けてもらったのに、こんな恩を仇で返すなんて……

 その上、香織と違って生きている事を信じられないし、オルクス大迷宮に行って戦う勇気もない。このままじゃいけない。だから、せめてお墓だけ作る事にした。もちろん、鈴や恵里、南雲のお墓は作れたけれど、沙条のお墓は作れなかった。正確には作ったのだけれど、何時の間にか破壊されていた。

 犯人はわからない。おそらく貴族の人か檜山かはわからない。南雲の方が壊された時には天之河も怒っていたけれど、沙条の事には怒っていなかった。意図的に無視しているような感じすらある。そんな天之河達を無視して何度も作り直した。けれど、その度に壊されて貴族の人やメイド、騎士や神官の人から止めるように言われた。彼等は裏切り者だと言うけれど、そんなはずはない。

 愛ちゃん達は怒っていたけれど、犯人がわからないしどうしようもない。だから、張り込んで犯人を見つけて現行犯で捕まえた。犯人は貴族のようで色々と言ってくるけれど、愛ちゃんと一緒に抗議した。でも、次の日にはその貴族の人は解放されて、私を睨み付けた後、上から下まで私を舐めるように見ていやらしい笑みをしてから去っていった。

 気持ち悪いけれど、我慢する。今度もお墓を作ったけれど、また壊された。犯人を捕まえても解放され、次第に別の所で犯人を見たという証人まで現れ、私が嘘をついている事にされた。

 だから、もう意固地になる事を止めて小さな物を用意して部屋で供養する事にした。せめてこれぐらいはしないと気が済まない。

 

「あれ?」

 

 中庭でナイフを投げる訓練をして汗を掻き、シャワーを浴びてから帰ると、檜山が一人で女子の使っている区画から出てくるのを見つけた。もしかして、誰かを襲ったのかと思ったけれど、その近くにメイド服を着た女性が居たので、問題ないのかもしれない。もしかしたら、あの人が捕まっていた人なのかもしれないけれど、親しそうに話しているから本当に無実なのかもしれない。例えそうでも、騙した件は許さないけれど。

 あの監禁事件は結局、被害者も犯人も見付かっていない。ただ、証拠が見つかっていないから、檜山は許されたけれど、最低な奴だとわかっただけ。他の女子は檜山を無視したり、避けたりしている。天之河君を筆頭に男子の一部からも避けられている。そのせいか、オドオドしたりもしていたし、パーティーからも外されて遠征についていっていない。愛ちゃんが居れば怒るかもしれないけれど、愛ちゃんも遠征でいないしね。正直、いい気味だと思う。

 

 そう思っていると、メイドさんと別れた檜山が廊下を歩いてこちらにやってきた。檜山は私を見つけるなり、ニヤリといやらしい笑みを浮かべる。それは今までの彼の態度じゃなかった。自信に満ち溢れていて、何も悪い事をしていないといったような態度で、カチンとくる。

 

「なあ、園部」

 

 無視しようとしたけれど、檜山がグイグイと近付いてくる。だから、思わず下がっていく。それでも檜山が近付いてきて、壁に背中がついて下がれなくなった。

 

「な、なによ……」

 

 檜山が片手を私の顔の横に突き出して壁を触る。思わず短剣に手が伸びて引き抜きそうになるけれど、その前に柄を押さえられた。殴るか悲鳴を上げるか、瞬時に考える。

 

「手を出すつもりはねえよ。ちょっと提案があるだけだ」

「なによ? 沙条達を貶めるような事だったら許さないから」

 

 とりあえず、聞くだけは聞こう。今度こそ騙されないように注意する。

 

「沙条達は関係ねえよ。お前の事だ」

「私?」

「そうだ。園部、お前……俺の女になれ。そうしたら口を聞いて助けてやる」

「はぁ? アンタ、馬鹿じゃないの?」

 

 コイツ、何を言っているのよ。そんなのありえない。檜山の女になるぐらいなら、死んだ方がマシよ。だいたい私を騙しておいてふざけるんじゃないわよ! 

 

「よく考えろ。お前が助かるチャンスなんだぞ。お前は──」

 

 何かを言おうとしていたけれど、無視して膝で思いっきり檜山の股間を叩き付ける。

 

「──~~~~!?」

 

 檜山が声にならない悲鳴を上げるので両手で檜山の胸を押しだす。檜山は倒れて廊下をのたうち回る。私は気にせずにそのまま廊下を走って部屋に向かう。

 

「こ、後悔する、ぞっ! どうなっても、知らないからな!」

「するか」

 

 全く、要らない無駄な時間だった。まあ、のたうち回る檜山を見て少しはスッキリしたけれどね。にしても、意味わかんない妄言を吐いて、どういうつもりなのか……

 

 

 部屋に戻ると少し違和感を感じたけれど、檜山の事で疲れたから着替えずに部屋に鍵をかけてからそのままベッドに倒れ込む。疲れていたせいですぐに眠りについた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

「園部様、いらっしゃいますか?」

「ん~?」

 

 ドンドンという扉を叩く音とニアさんの声が聞こえてきて目を覚ます。身体を起こすけれど、まだ眠い。設置されている鏡を見ると、寝癖がついた髪の毛に乱れた服が見えた。

 

「確か、あのまま寝たんだっけ……」

「園部様!」

「今開けるからちょっと待って!」

 

 手早く髪の毛と服を直して扉を開けると、私達の世話をしてくれているニアさんが慌てた表情で部屋に入ってきた。

 

「ニアさん、どうしたの?」

「それは……」

「園部様。申し訳ございませんが、部屋を検めさせていだきます」

 

 ニアさんが部屋に入ってきた後ろから、別のメイドさんや騎士の人達が入ってきた。一応、女性ばかりなので事を荒げる必要もないけれど、いい気分はしない。それに騎士の人達やメイドの人達の見る目が剣呑としている

 

「どうしたの? 何か変だよ?」

「すいませんが、こちらに来てください」

「従ってください。大丈夫ですから……」

「わ、わかりました」

 

 意味が分からないけれど、言われた通りに部屋から出る。不思議に思っていると、他の部屋から奈々や妙子達もでてくる。

 

「どうしたの?」

「わからないけれど、部屋を調べるって……」

「何かやらかしたの?」

「別におかしなことはやってないけど……」

 

 少しすると、険しい顔をした騎士の人とメイドの人が部屋から出てきた。ニアさんは顔を真っ青にしている。

 

「園部様。こちらに見覚えはありますか?」

「えっと……」

 

 見せられたのは何かの道具だった。もちろん、私に見覚えはないので、そう答える。

 

「ありません」

「そうですか。では、こちらは……」

「あ、それは位牌です」

 

 部屋に置いておいた沙条達の位牌だ。これは見覚えがある。

 

「では、少しお話を聞きたいので場所を変えます」

「どうぞ」

「えっと、何処に行くの?」

「聞きたい事があるだけなので、何もなければすぐに終わります」

「わかりました」

 

 別に何も変な事はしていないし、見た事もない物だし、大丈夫。奈々達にもそう伝えて移動する。私達が居た場所から馬車に乗って移動し、王宮の一室に連れていかれた。周りは騎士の人達に固められて少し怖いけれど、大丈夫。たぶん。

 

「どうぞ、おかけください」

「はい」

 

 座ってから、ここ数日の行動を聞かれたので説明していく。次に次々と見せられた品物はやはり、見覚えがない。いや、あるのもあった。

 

「これ、確か宝物庫で見た奴ですね」

「ええ、そうです。それが園部様の部屋から見つかりました。宝物庫から貴女が盗んだ物ですね」

「待って! 私はやってない! そんなの知らない!」

 

 慌てて否定するけれど、聞いてくれない。私の部屋から見付かったのはどれも宝物庫に収められた国宝で、中には破損している物が多数あるそうだ。

 

「だから、私はやってないって言ってるでしょ!」

「ですが、物的証拠も出ています」

「それは誰かが置いていっただけで……」

「失礼します、園部様」

 

 メイドの一人が私の腕を掴んで押さえつけてくる。

 

「離して!」

 

 すごい力で振りほどけない。メイドは私の服をあさり、何かを取り出した。よく見ると、それは宝物庫で見た事がある豪華な指輪だった。

 

「これは決定的ですな」

「待って、そんなの知らない!」

「ですが、物的証拠がでました。貴女を窃盗犯として捕縛します」

「なっ!?」

「暴れるなっ!」

「んんっ!?」

 

 何かの魔法を使われたのか、目の前が急に真っ暗になって身体から力が抜けていく。薄っすらと閉じていく視界で見たのは、笑っているメイドと騎士の人達の姿だった。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

「っ!?」

 

 痛みと水滴が頭に当たる感触で気が付く。急いで周りを確認すると、石で出来た牢屋に居るみたい。両手に枷を嵌められ、天井から伸びる鎖によって吊るされ、つま先立ちでどうにか届くような距離だ。足には鉄球がついた足枷が嵌められて逃げられないようにされていた。

 

「おや、ようやく目覚めましたか」

 

 声の方を向くと、見覚えのある貴族の男が椅子に座って居た。私が捕まえて引き渡した奴だ。他にも男性の騎士と私を掴んでいたメイドが居る。

 

「あ、アンタは……もしかして、今回の事はアンタが!」

「これはこれは使徒様。私は調査を命じられただけで、宝物庫の道具に関しては何もしていませんよ」

「どうだか……」

「まあ、どうでもいいことですね。それよりも、今は身体検査をしましょうか」

 

 そう言って立ち上がった奴は壁にかけてあった鞭を取る。

 

「ちょっ、やめっ!」

「安心してください。鞭はまだ、使いませんよ」

 

 そう言って、私の胸元に手を入れて一気に服を破り捨てた。

 

「ひっ、いやぁぁぁぁっ!」

 

 悲鳴をあげるなか、気にせず服が破られていき、下着姿を男達の前にさらされていく。手も足も拘束されていて、隠せなくて恥ずかしくて死にたくなる。

 

「これも盗まれた物ですね」

「おやおや。これは罪が確定ですね」

 

 私の服からまた何かを取り出していく。

 

「こ、こんなことをしてタダですむと思っているの! 他の人や教会の人が……」

「残念ですが、園部優花様。こちらをお読みください。畏れ多くも教皇様より頂いてまいりました」

 

 メイドが広げた紙には書かれていたのは、教皇イシュタル・ランゴバルドの名の下、園部優花を下記の罪状を持って神の使徒より除名し、正規の手続きの下、犯罪者とする事を承認すると書かれていた。

 

「さて、本来我々は人間を奴隷や売り物にすることは禁じられています。ですが、犯罪者だけは別です。貴女はエヒト様を裏切りました。故に奴隷として販売します」

「ふざけんな! アンタ達が私を気に食わないってだけでしょうが!」

「いやいや、そんなことはない。再三に渡る警告を無視したのは君だよ。魔族に与した裏切り者を肯定するような神の使徒など、あってはならない」

「そんな事で……」

「抵抗は無意味です」

 

 メイドの手には何時の間にか、赤色に変化した鉄の棒が握られていて、そこから煙が立っている。

 

「や、やめ、やめてっ!」

「異端者と奴隷の烙印を刻みます。生かされる事をエヒト様に感謝なさい」

「ふざけないで! 勝手に召喚しておいて!」

「エヒト様に選ばれておきながら、そのいいよう。やはり異端者ですね」

「ああ、やって問題ない」

「ひっ!? や、やめてっ、お願いだから! いっ、あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ぁぁぁっ!」

 

 鉄の棒が胸の間とお尻に押し付けられ、肉が焼ける臭いと激痛が走り、悲鳴をあげる。余りの痛みで失禁して目の前が真っ暗になっていく。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「おや、気を失いましたか。起こしましょう。奴隷に相応しいようにしっかりと教育しないといけませんからね」

「彼女の身体を楽しませてもらうとしようか」

「それは駄目です」

「何故だ! 話が違うぞ!」

「彼女はオークションで売られます。欲しければそちらで買ってください」

「どういうことだ?」

「不穏分子をあぶり出すのですよ。その為に園部優花を餌とするだけです」

「まさか、魔族の手の者が王都にいるのか?」

「わかりませんが、教会や王宮内部に怪しい人物が何人もいます」

「そいつらは?」

「当然、処分しました」

「了解した。そういうことなら、今は諦めるとしよう」

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 私は地獄を味わっている。服を剥ぎ取られ、毎日拷問されて人としての尊厳を奪われ、犬のように食事や排泄をさせられる。少しでも気を損ねれば鞭で打たれ、気絶したら殴られたり、蹴られたり、酷い時には火で焼かれる。死にそうになれば回復魔法で治療される。

 何度も何度も許しを乞うても許してもらえない。壊れる事も許されず、奴隷として教育されていく。ただひたすら助けを待つけれど、誰も助けてくれない。だから、痛みから逃れるために罪を認めて奴隷になる事を誓い、首輪をつけた。それがどういう事になるかも知らずに──

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 銀髪のメイド姿を捉えたサーチャーは跡形もなく消され、園部優花の情報が完全に途絶えました。馬車で移動させられて王宮の中までは足取りは確認できましたが、それ以降は転移を使われたようで彼女の行方が知れませんでした。

 ですから、王宮中にサーチャーを放ったのですが、それでもみつかりません。手を広げて王都を調べると園部優花と問題を起こした貴族の屋敷に彼女が捕らえられている事を発見しました。ですので、彼女の詳しい現状をサーチャーを通して得る事ができたのですが、メイドに消されたというわけですね。

 仕方ないので数キロ離れた場所から望遠レンズを使って監視し──

 

「見つけました」

「っ!?」

 

 ──転移反応を観測して振り向きながら杖を振るい、炎を放ちます。そこに現れたメイドが炎を突き破って私の胸に手刀を叩き込んで心臓を握り潰しました。

 

「これは魔族……いえ、違いますね。ですが、人間でもありません。浸食ですか」

 

 即座にメイドは腕を斬り落として離れました。私は自爆シークエンスを起動しながら彼女を見ると、腕は即座に再生していました。

 

「やはり、エヒト様が関与しないイレギュラーか魔族の手の者が存在しているようですね」

 

 即座に駆け抜け、メイドに近付いて盛大に自爆します。ですが、その前に転移されてしまいました。ですが、情報は得られました。相手も人ではありません。少なくとも()()()()()()()()()()を受けて即座に腕を斬り落とし、再生させるなど普通の人ではありませんし、最初に放った炎は人間であれば容易く焼失する火力です。それを平然と突破してきたのでこれは確実です。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

「お兄様、お楽しみのところ申し訳ございませんが、緊急の報告があります」

 

 喘ぎ声の聞こえる寝室に入り、お兄様に報告します。今日はルサルカの当番で、昼間からしていたようです。まあ、昼しか二人でできないのですが。

 

「今、取り込みちゅうなんだけど~」

「ルサルカ、緊急だと言っているんだ。後で相手するから、待ってくれ」

「もう。仕方ないわね……で、本当に緊急じゃなかったら、覚えてなさいよ」

「ええ、その時は私が相手をしてあげます」

「ふ~ん。どうやら、本当に厄介ごとのようね。なら、三人でお風呂に入りながら聞きましょうよ。その方が効率的でしょ?」

「それもそうだな」

「わかりました」

 

 三人でお風呂に移動しながら報告していきます。報告内容は園部優花についてです。私の躯体が殺された事もしっかりと報告します。

 

「なるほど」

「ん~それって緊急? 正直、私達には関係ないでしょ」

「そういうわけにもいきません。彼女はお兄様を庇護したから捕まったのです」

「それはそうだけど、その園部優花ってのが馬鹿なのよ。一神教の狂信者共が居るところで、裏切り者……敵対者として認定されている人を庇うのなんて、始末してくださいって言ってるものよ。だいたい、これで見逃してたら、示しがつかないし、信仰が揺らぐ場合もあるんだから、妥当な判断じゃない?」

「ですが……」

「それにシュテル。気づいているのでしょうけど、アンタが本当に報告しないといけないのは失態でしょう」

「どういうことだ?」

「この子、やらかしてるのよ。さっさと園部優花を斬り捨てて、放置がベストの選択だった。だというのにまんまとメイド達が張った罠にかかってんのよ」

「うっ」

 

 確かにその通りなのです。罠だとしても私は彼女を見捨てられませんでした。彼女はお兄様の事を大事に思ってくださっていたのです。それに彼女の冤罪は私がやったことです。

 ですから、私の力で助けられると思ったのですが、結果は逆に捕捉されて殺されました。

 

「ルサルカの言いたい事はわかるが、居なくなった時に報告しなかったのはどうしてだ?」

「お兄様の手を煩わせるわけにはいきませんでした。捕まえられている場所を確認してから、報告すべきだと思ったのです。今、私達は動かせる戦力がほとんどありません。お兄様のことですから、助けにいきますよね?」

「……行くな」

「はい。ですので、情報収集を優先しました」

「ん~ハッキリと言って、私は助けに行くのは反対。というか、絶対に行かせない」

 

 服を脱いで洗い場でお兄様の身体を二人で洗っていきます。

 

「どうしてだ?」

「メリットがないからよ。デメリットしかないじゃない」

「そうなのか?」

「はい。今、私達は鈴と恵里、それにハジメを治療中です。ですので、ディアーチェとユーリはここから動けません。私も本体は動かせませんので、端末を動かす程度が限界です。そのような中で園部優花を救出しようとすれば、メイドとの戦いは必須でしょう」

「空間魔法の使い手か。無理だな」

「無理でしょ。ユーリや愛歌が出るならどうとでもなるでしょうが、そこまでする価値はないわ。助けたとしても感謝されて終わり。そのくせ、敵に真名達を完全に捕捉される。使い捨ての躯体だったかしら、それを使ったところで取り返せない。安全に確保できる手段がない。だから、私は絶対行かせない。そんな真名の身内でもない奴を危険を犯してまで助けてなんになるってのよ」

 

 ルサルカの言い分もわかります。デメリットがおおきすぎます。オスカー・オルクスの話から、エヒトは本物の神の使徒や、信者を動員してくるでしょう。そうなれば私達は彼等がたどったように大迷宮で隠れ潜むしかありません。もちろん、戦力が整うまでですが。

 

「ルサルカ、どうしても駄目か?」

「駄目ね。私は真名をロートスのように無くしたくないの。だから、絶対に止める。創造を使ってでも止めるから、そのつもりでいなさい」

「では、助けられないのですね……」

「そう落ち込むな。方法はあるだろう。探そう」

「はい」

「なんでそこまでするのかな~。ねえ、その園部優花って子、好きなの?」

「どうだろう? 考えた事もないな」

「そう。じゃあ、彼女の身体、貪りたい?」

「貪りたいか、したくないかで言われたらしたいな。俺にとっては彼女も高嶺の花だったからな」

「むう」

「まあ、今はシュテル達がいるから、思わないけどな」

 

 お兄様が私が嫉妬したのを気付いたのか、頭をくしゃくしゃと撫でてきます。ついでにシャンプーもされました。

 

「流すぞ」

「はい」

 

 身体を綺麗に洗ったら、湯に使って相談します。本当にどうにかして助ける事はできないでしょうか? 私だけでなく、話を聞いたらユーリやレヴィ達も助ける事は賛成でしょう。王は心では助けたいと思われるでしょうが、表向きは反対されるかもしれません。

 

「ねえ、真名。一つだけ条件を飲むのなら、その子を問題無く助けられる方法があるんだけど、どうする?」

「本当か?」

「それなら、助けて欲しいです。お兄様……」

「ああ。その条件はなんだ?」

「簡単な事よ。デメリットしかないなら、メリットを作るのよ。私、()()が欲しいのよね♪」

 

 ルサルカの提案は確かに私達にメリットがあり、デメリットは極限まで減らせます。ただし、園部優花本人の意思を無視していますし、彼女が奴隷だという事に変わりはありません。少なくとも、ルサルカは解放を許さないでしょう。ですが、それでも待遇は変わります。酷い事はされませんし、させません。

 

「問題はあるが、やるか」

「よ~し、楽しいデートね! とっても楽しみよ!」

「気をつけて行ってきてください」

 

 私は行けないので、護衛だけはしっかりとつけさせてもらいます。アストルフォとレヴィは問題を起こすので、護衛は……ルサルカとユエしかいません。デートというのはあながち間違いでもありません。ユエを説得……できそうにないですね。やはり、ルサルカと二人っきりのデートとなるようです。ずるいです。でも、優花さんの冤罪は私のせいですし我慢します。

 

 

 




愛子先生達には事実は伝わっていません。出て行ったとだけ伝わっております。
冤罪の国宝などは全てシュテルがやりました。犯人はニャンコです。だから、冤罪にかけられた優花を必死に助けようともしております。普段なら相談して助けますが、今は状況が状況なので普通ならシュテルもスルーする方向にします。危険すぎますからね。

ちなみにメイドはシュテルが色々な所に浸食しているので、信仰が下がってきたのを真の使徒が不信がって調査しにきました。魔族かイレギュラーかはまだ確実ではないので、両方を疑っております。まあ、魔族は担当が違うのでわからないだけですが。

なので、ニャンコたちは影に潜みだす。表向きの行動は自粛して。そう決起の時を待つのです。立てよニャンコたち!まで

オルクス大迷宮デート。サモンナイト風に言う夜会話

  • シュテルとレヴィの猫と戯れピクニック
  • 鈴と恵里の日向ぼっこデート
  • ルサルカの手料理
  • ディアーチェとお勉強
  • アストルフォと遊ぶ

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