ありふれた職業の召喚(ガチャ)士で世界最弱   作:ヴィヴィオ

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第35話

 さて、シュテルから報告を聞いた俺は園部を助ける事にした。ルサルカは反対したが、彼女が提示した条件を飲めば認めてくれる。その条件は簡単に言ってしまえば、園部を俺の女として身内にする事。奴隷のままで居させる事。ルサルカの玩具にする事。本心で言っているのか、そうでないのか微妙だ。それでも、手早く助けるために行動を起こす。

 そんな訳で、ユーリから許可を貰ってオルクス大迷宮の最深部から俺達が入った迷宮部分に転移し、そこから堂々と冒険者のふりをして認識阻害を使いつつ地上に出る。

 園部が売られる場所までは少しかかるが、地上では派手な行動はできないので基本的に馬車を使っての移動になる。その辺りはシュテルが用意してくれたので、問題ない。だが、身分証が必要なのでルサルカだけ冒険者登録をした。ルサルカだけにした理由は簡単だ。門を潜る時は憑依すれば俺がルサルカとなるので、身分証の問題を突破できる。俺は裏切り者として死んだ扱いを受けているから、ステータスプレートを表示するわけにもいかない。この辺りは偽装しないと駄目だな。

 馬車での旅はルサルカが馬に魔術をかけて強化し、馬も何度も変えることで時間のかかる距離を素早く移動した。そうして、ようやく王都へと戻ってきた。なんにしても感慨深い物がある。

 

「さて、王都に戻ってきたが……時間は?」

 

 楽しそうなルサルカと腕を組んで王都を歩いていく。沢山の出店があり、人が溢れかえっている。

 

「まだ余裕ね。その前に資金調達しないと」

「シュテルからたんまりと貰っただろう」

 

 シュテルからルシフェリオンを預かっている。俺では使いこなせないが、宝物庫代わりには使える。その中にシュテルが集めた物やオルクス大迷宮で得た金銀財宝が入れられている。奴隷の相場を教えてもらった限りでは、問題無い金額だろう。

 

「真名……ううん、ダーリンは小さな女の子から貢いでもらったお金で、別の女を買うのかな~?」

「あ~駄目だな。できる限り、稼ぐか」

「そうそう。あ、おじさん。それ一つちょ~だい」

「あいよ、お嬢ちゃん。彼氏とデートかい?」

「そうなの!」

「やけるねえ~」

 

 ルサルカが出店で細長い砂糖を塗したパンを買い、それを口に咥えて食べてから俺の方に突き出してくる。

 

「ん~!」

 

 ご丁寧に口元に押し付けてくるので食べる。ルサルカの味覚や感覚が感覚共有のスキルを通して伝わってくるので、やって欲しい事も大概分かるし、反対側から食べてルサルカと軽くキスをする。すると、舌を出して俺の唇についた砂糖をペロリと舐め取っていく。周りからの視線が集まってくるが、気にしないようだ。

 

「ねえ、ダーリン。次、アレが食べたい。口移しで食べさせて」

「まあいいだろう」

 

 言われる通りにして楽しませる。余り調子に乗ったら怒るが、この程度なら問題はない。園部を助けるために無茶させているのだしな。

 

「それでお金だが、どうしたら稼げるか……」

「ん~手っ取り早いのは裏組織でも襲撃して奪う事なんだけどね。聖槍十三騎士団に居た時は結構やってたし」

「なるほど。だが、それは悪手だろう」

「そうね。今は騒ぎを起こさない方がいいし、ここは合法的に稼いじゃいましょう。そのためにまずはシュテルが予約してくれた服屋さんに行くわよ」

「仰せのままに」

 

 服屋に移動し、そこで注文していた正装に試着する。ルサルカは黒と赤を基調としたイブニングドレスだ。似合っていてとても可愛い。性格はアレだが、見てくれだけは本当にいい。

 

「あ、なんか失礼な事を考えているでしょ~」

「ルサルカが綺麗で可愛いと思っただけだ。似合っているよ」

「そう、ありがとう。うん、嬉しい。じゃあ、これで」

「かしこまりました」

 

 ドレスに着替えたルサルカと共に店を出て目的の場所へと馬車で移動する。そこは貴族街にある建物で、紹介状がないと入れない場所だ。俺達はシュテルが取り込んだとある貴族の親族という事で、遊びに来ている設定だ。

 紹介状を見せ、家紋も確認されると通される。地下へと進み、大きな扉を開くとそこは煌びやかな空間が広がる金持ち達の遊び場だ。

 

「カジノか」

「ここがオークション会場でもあるの。運営者は連中ね。時間までの暇つぶしも兼ねて稼ぎましょうよ」

「それもそうだな」

 

 金貨数枚をチップに変えてルサルカと一緒に彼女をエスコートしながら回っていく。片手で大きなケースを持っているが、こちらは誰も触れさせないようにする。そんな状態で、まずはスロットからだ。スロットに座り、チップを入れて回していくが、ことごとく外れていくルサルカ。

 

「なんでよ!」

「日頃の行いだろう?」

「むう、こうなれば魔術で……」

「お客様。魔法の使用は禁止されています」

「うっ、わかってるわよ。やらなきゃいいんでしょ!」

「はい」

 

 涙目になっているルサルカがボーイから注意される。まあ、ファンタジー世界なんだから、当然、魔法の対策はされている。

 

「ダーリン、仇を討って!」

「はいはい」

 

 まずは軽くボタンを押してタイミングを見計らう。そして、タイミングよく押していくと絵柄が揃ってチップが出てくる。

 

「流石ダーリン!」

 

 嬉しそうに抱きしめてくるルサルカが口元で囁いてくる。

 

盛大に稼いで

了解(ヤー)

 

 何回か回してから次はスリーセブンを揃えてみる。方法は簡単だ。ルーレットの動きをブレインコンピュータで美遊と共に解析し、動きに合わせてボタンを押すだけの簡単な作業だ。この世界はファンタジー世界なので、魔法の対策はされていても、魔法のレベルに昇華された科学技術はわからない。優花を助ける金は連中から搾り取ろうという事だ。皮肉が聞いている上にルサルカも少し怒っているのかもしれない。境遇が似ているから、自分に重ねている部分もあるんだろうな。

 

『マクロの組み上げ、終わりました。後は自動でやってくれます』

『ありがとう。後で何か用意するよ』

『いえ、大丈夫です。でも、今度私と遊んでください。色々とやってみたいです』

『わかった』

 

 美遊の協力を得て、馬鹿みたいに稼いでいく。ルサルカは俺を応援しながら、チップを集めて箱に入れて台車に乗せていく。ボーイは唖然としていた。もちろん、ルサルカもスロットで遊んでいるが、こちらは少ししか使っていない。

 

「だ~りん、チップなくなっちゃった。次、行きましょう?」

「そうだな。君、大きい物に交換してくれ」

「わ、わかりました」

 

 ボーイから大きい額のチップを貰って、次の遊び場に移動する。

 

「ルサルカ、次は何したい?」

「流石にスリ過ぎたから、ポーカーかな~ルサルカちゃんの強さを見せてあげる♪」

「楽しみだ」

 

 ポーカーではルサルカはやばかった。相手のブラフを見抜いて値段を吊り上げ、逆に騙していったりと、どんどんチップが増えていく。相手の人が青ざめた顔で何人も交代していく。

 

「ねえねえ、貴方、恋人は居る? あ、居るよね。あててあげようか」

 

 相手を話術で惑わせ、誘導して陥れて勝利していく。まさに悪魔のような方法で稼いでいく。

 

「ダーリンもポーカーやる?」

「俺は無理そうだから、ルーレットの方へ行くかな」

「そ。じゃあ、私も止めようかな~」

 

 勝ち逃げに忌々しそうな表情をするが、気にせずに移動する。次はルーレットで、こちらは俺が解析して入る場所を教えればどんどん増えていく。順調だが、途中でルサルカが手を出して止めてきた。

 

「アレはズレるわ」

「そうなのか?」

「ええ。次にいきましょう」

 

 賭けずにそのまま止める。確かに計算上でほぼ確実に入る場所からずれた。どうやら、イカサマをしたようで、ディーラーが悔しそうにしている。これだけ稼いでいたら、次第に目をつけられて最初からイカサマありで仕掛けてくる。

 

「ま、こんなもんかな」

「両替するか」

「そうね。オークションの時間だし、そろそろいいでしょう」

 

 チップを大量の金貨に交換して、移動していくが腑に落ちない事がある。

 

「襲われなかったな」

「あの中じゃ襲えないわよ。他の貴族様もいるし、外に出たわけでもないしね。帰りしなにでも強盗が来るんじゃないかしら?」

 

 楽しそうに笑うルサルカの目当てがそれだと理解できた。拷問して殺す気なのだろう。まあ、問題はないし、好きにさせる。

 

「どんな玩具が売ってるかしらね~」

「園部を玩具にするんだよな?」

「それは会ってみないとわからないわね。あの子って、境遇が似ているからどうなるか気になるの。私は助けてもらえなくて、カール・クラフトに魔術を与えられた後はほったらかしでずっと苦労して、苦労して生きてきた。でも、新しい家族やしっかりと教えて導いてくれる人が居たら、私の未来ってどうなったのかな? そう考えると、とっても気になるの」

「園部に自分を投影して試してみる気か」

 

 もしもの話を園部を通して追体験する。それが目的か? 

 

「それもある。でも、もう一つは同じ境遇の子の人生を徹底的にぐちゃぐちゃにして狂わせ、幸せにしてやったら足を引っ張るだけの私も、少しは変われるのかなって思うの」

「それで奴隷で居させるのか?」

「や~ね~。そんな理由で居させるわけないじゃない。口先と行動で誘導してみせるわよ。拷問されてとっても弱っているか弱いだけの女の子。誘導するのなんて容易いわ」

「ならなんでだ?」

「それがその園部優花って子のためになるからね」

「どういうことだ?」

「はっきり言って、園部優花を奴隷から解放したら殺されるか、奴隷に戻されるか、どちらにしても悲惨な目にしか会わないわ。なにせ異端認定され、奴隷にされたのよ。主人の庇護がないと生きてすらいけないの。宗教弾圧というのは人に大義名分を与え、罪の意識を排除して容易に凶行へと至らせる。言っておくけれど、実体験だからね。

 私達がずっと保護するとなると、オルクス大迷宮に閉じ込めるしかない。それもほぼ一人で。でも、ダーリンの、真名の奴隷としてなら連れていける。それに外じゃ詩乃だけが奴隷扱いを受けるけど、二人になれば随分と気が楽になるでしょう。まあ、こっちはついでね。そもそも私達がダーリンの奴隷みたいなものだしね」

「それは違うだろう」

「愛の奴隷って奴?」

 

 ケラケラと笑うルサルカだが、ルサルカの言っている事は教会をぶっ潰すまで解放はないと言っているようなものだ。

 

「思ったよりも乗り気みたいだな」

「皆、甘いのよ。何処かで線引きしないと際限ない甘さは付け入られる隙になるわ。誰かが警告し続けないといけないでしょう。事を起こす時のメリットとデメリットを伝え、その上で行動するのなら全力でデメリットを減らし、メリットを増やす。そうやって生きてきたから、私が嫌われ役は適任でしょう。まあ、愛歌がこっちについたらそんな心配もいらないんだけど……」

「千里眼はやばいからな。だが、玩具発言はどうなんだ? 」

「玩具にするか、それとも、家族になるか、それは彼女と真名次第ね」

「玩具を買うとか言っていたくせに、あっさりとしているな」

「あら、私は園部優花だけを買うなんて一言も言ってないわよ」

「おい、まさか……」

「自分から玩具候補が来てくれるじゃない」

 

 こちらにくるりと振り向き、上目遣いでペロリと唇を舐めるルサルカ。それで彼女の本当の目的が理解できた。園部を助けるついでに玩具として襲ってきた何人かを殺したり、拉致したりするつもりだ。

 

「本当に楽しみよ。園部優花は私のようになるのか、それとも普通の幸せを手に入れるか。どちらかしらね? ああ、でもまずは彼女を拷問した奴等を拉致して、彼女に仕返しをさせるところからかな。何を使おうかな? 牛で股を裂く? それとも蜂の巣穴に突っ込む?」

「園部に強要するな」

「え~」

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「ひっ!? ご、ごめんなさい! 言う事を聞きます! なんでもしますから、それは止めてください!」

「よろしい」

 

 ガタガタと震えて青ざめるルサルカをお姫様抱っこして進んでいく。しかし、ルサルカをちょ……矯正するのはこれでいいかもしれない。

 

 

 

 オークション会場に到着した俺は予約してあった席につく。吹き抜けのテラス席で舞台の上がよく見える。始まるまで少し時間があるので、椅子に座って待つ。すぐにルサルカがしな垂れかかり、身体を擦りつけて猫のように甘えてくる。

 

「よしよし」

「にゃ~って、違う!」

「おお、元に戻ったか」

「本当に止めてよね。心臓に悪いんだから」

「園部には思考誘導も強要も一切禁止だ。彼女はお前じゃないし、代わりでもない。変わりたいのなら、変えてやるから止めろ」

「は~い。マスターのだ~りんに従います。でも、ちゃんと私を幸せにしてよ?」

「もちろんだ」

「良かった。でも、抱かないと壊れちゃうと思うけどな~いや、すでに壊れているかも?」

「そうかも、しれないな」

「精神的主柱がぶっ壊されてるはずだから、新しく作らないと立ち上がれないわ。それを抱いてダーリンがなれば、色々と解決できるわ。感覚共有のスキルでちゃんと愛され、必要とされる事がわかれば、だけど」

 

 精神的な主柱か。経験者のルサルカは理解しているからこそ、園部に必要な物がわかる。

 

「ねえ、これだけは言わせてね」

「なんだ?」

「怒らないでよ?」

「ああ」

「助けるなら助けるで、しっかりと最後まで責任を取りなさい。一時的に助けてもらっても、その後が詰んでたら死んだ方がマシなの。それでも自殺をするほどの勇気もないと、私みたいにどうしようもなくなるから。恵里だってそうよ。まだ行き着くところまで行きついていないけれど、後少し遅ければ止まらなかったし止まれなかったわ」

「天之河と同じになるのは嫌だな。しっかりと責任を持つ」

「そんなわけで、孕ませて子供を生みましょう!」

「おい」

「だって、そうしたら捨てられる事もないし、捨てられたとしても訴訟を起こせばいい。すくなくとも社会的な責任は強制的に持つ事になるわ。それからダーリンは逃げられない。そんな事をすればユーリ達に嫌われちゃうしね」

「悪魔か」

「その代わり、可愛い女の子を沢山侍らせられるんだからいいじゃないの」

「まあ、そうだな。元から責任は取るが、やはり園部の意思次第だ」

 

 最悪、死にたいと言われたら殺す覚悟もしておこう。いや、殺すのはやはり駄目だな。眠らせて少しずつカウンセリングをやっていく。ガチャで心を回復するアイテムが手に入るかもしれない。詩乃も求めているが、必要数が増えただけだ。身体の維持はそうだな……誰かを憑依させておけば時間稼ぎはできるだろう。

 

「あ、始まるみたいね。ねえ、園部優花以外にも買っていいでしょ?」

「人は駄目だ。余裕がない。それに園部が売られるタイミングにもよる」

「りょ~かい」

 

 予算は荒稼ぎした物とシュテルが用意した物を合わせて金貨900枚。価値としては9億円ぐらいか。物価を考えたらもっと高いかもしれない。こんなに要らないと思うが、相手がどう動くかだ。それに財宝もいくつかあるのでそれを代金として渡せばもうすこし出せる。

 

「あ、あのメイドが居たわ」

「本当か?」

「ええ。見ないようにね。素人のダーリンなら気付かれるかもしれないから、見るなら視覚共有でお願い」

「わかった」

 

 すぐにルサルカの視覚情報を共有し、ブレインコンピュータで録画する。同時にシュテル達にも送信しようとして止めた。相手は空間魔法の使い手だ。通信だけで感知される可能性が高い。

 ルサルカに腕を抱きしめられながら、カモフラージュも兼ねて適当に希少鉱石などに入札しては負けておく。ただ、ルサルカがガチで欲しいと思ったものもある。

 

「何アレ! ギロチンよ、ギロチン! 930人以上の亜人を処刑したギロチンですって! 欲しい! 凄く欲しい!」

 

 現状、金貨2枚のようだし、買えない事はないな。というか、こんなのに入札する奴がいるのに驚きだ。

 

「園部の事を妹のように扱うのなら、買ってやるぞ」

「のった!」

 

 バッと手を上げたルサルカが示したのは倍にするというサイン。

 

「金貨四枚が出ました! 他にいらっしゃいませんか! おっと、金貨四枚と銀貨二十枚!」

「負けるか!」

「金貨五枚! 他に、他にいらしゃいませんか! では、テラス席の八番のお客様が落札です!」

 

 ハンマーが何度も叩かれて、ルサルカがガッツポーズを決めた。超ご機嫌のようで鼻歌すら歌っている。いや、歌詞も口ずさんでいるが、それってマリーの歌だろう。ギロチンと拷問具と考えるとシンパシーがあるのかもしれない。

 

「満足したか?」

「うん♪ 後でたっぷりとサービスしてあげるからね♪」

 

 満面の笑みを浮かべるルサルカを見ながら、次々と商品が運ばれていく。時間が経つにつれて、奴隷のコーナーに入り、出品された亜人奴隷が終わる。本当なら助けたいと思うかもしれないが、ルサルカの言葉とルサルカと感覚共有のスキルを発動しているせいで、そんな事も思わない。むしろ、どんな風に切れば血がどのように噴き出すとか、そちらの方ばかり思ってしまう。これはルサルカが抱いている感覚だろう。本当にやばい奴だ。買ったギロチンを試したくて仕方がないのだろう。アレ、これって園部を買った理由がギロチンを確かめるためだと思われないだろうか? 

 

「それでは次、犯罪奴隷のコーナーです。こちらは異端者認定を受けた者ですので、拷問して殺すのもよし、ペットの餌にするのもよしです。様々な用途に使えます。また、元神の使徒で処女です」

 

 司会者の言葉で会場が盛り上がる。神の使徒は愛子先生や白崎達の人気があるから仕方がないだろう。そう思っていると、舞台の横から鎖を付けられた園部が引っ張られて四つん這いで入ってきた。彼女は一枚だけボロボロの服を着ていて、足には鉄球がつけられていて、奴隷であろう大男が鉄球は運んでいる。

 

「ああ、やっぱりね」

「完全に目が死んでいるな」

 

 外国人の血を引いているクォーターか何かはわからないが、綺麗だったエメラルドグリーンの瞳は虚ろで、元気にしていた時の綺麗さなどない。呼吸も荒い。

 

「では、処女かどうかを確認します」

 

 鞭で園部が打たれると、よろよろと立ち上がって自分で服をたくし上げる。下は何も履いておらず胸までしっかりと見えるまであげ、その身体に刻まれた焼印を見せてきた。彼女はかなり濡れているようで、女性にチェックされている間も微かに喘いでいく。

 

「薬が使われて調教されたのかも。用途が完全に性奴隷ね」

「薬を抜かないといけないか」

「鈴の結界で問題ないでしょ」

「絶対に助けるぞ」

「アイツが見張ってる限り、合法的に買うしかないからもしもの場合は……」

「諦めないからな」

「そう……まあ、私も妹扱いするって言っちゃったし、うん。買える事を願いましょう。無理ならその時はその時よね! じゃあ、ちょっと考えるからオークションはお願いね」

「任せろ」

 

 そうしている間にもオークションが始まり、金貨10枚からのスタートだった。すぐに値段が上がっていくが、その時に聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「金貨30枚!」

 

 そちらを見てからブレインコンピュータで拡大処理をすると、そこには檜山が知らない貴族といた。いや、城で見た事はあるか? どちらにせよ、園部を買おうとしているのは事実だ。

 

「100だ」

「ひっ」

 

 可愛らしい声が後ろから聞こえてきたが、ユーリの可愛らしい声ではなく合成した男性の声。そう、獣殿の声を出したのでルサルカが震えるのは仕方がない。なので、彼女をしっかりと抱きしめて堂々と宣言する。

 

「き、金貨100枚! 他に居ませんか!」

「110!」

「120!」

「400」

「よ、400枚!」

「くそ、450!」

「600」

 

 声が完全に消えた。いや、何人かが手を上げて値段を釣り上げた。仕方ないのでさらに吊り上げる。事前にオークション会場で確認しているので問題はない。いや、ハジメ達に殺されそうだが、致し方あるまい。甘んじて怒られよう。金塊以外にも売る物はそれこそ無限にあるからな。

 

「1000! これでいいだろ!」

「1500!」

「2000だ」

「に、2000枚! 他にいませんか!」

 

 信じられないと言った感じでこちらを見てくる。ルサルカも笑っているが、これは別の意味でだろう。

 

「は、ハンマープライス! テラス席の八番のお客様が金貨2000枚で落札です!」

 

 ハンマーの音が響く中、用は済んだので準備する。

 

「高すぎない? 最後の500枚、いらないでしょ! というか、目立ちすぎよ!」

「仕方ないだろう。檜山に渡すのは我慢ならなかった。それに金で買えるのなら安い物だ」

「いや、高いわよ。どうやって払うつもりよ」

「金塊以外にも神水を売ればそれで解決だ」

「そういえば、ダーリンの身体から無尽蔵に取れるんだった……」

 

 この身体の汗や唾液を集めて瓶に入れただけで神水の完成だ。お手軽エリクサーだが、売れるに決まっている。おや、これは園部を俺が抱いたら解決する事が色々と多いかもしれない。一応、ケースには金貨の袋と金塊を入れ、マントを翻してからルサルカの手を握る。

 

「では行くぞ」

「はいはい。戦闘になるかもしれないから、召喚の準備だけはしておいてね。その場合、私とレヴィ、アストルフォで足止めするから、詩乃と一緒に園部優花を連れて逃げるように」

「心得ている」

 

 何事もなければそれでいいが、いざとなれば聖杯の力も使い、盛大に暴れてやろう。いや、待てよ。相手がその気であるのならば、テロってやるのもありだな。ラグナロクオンラインで行われる古木の枝や血塗られた古木の枝を使ったカーニバル。それを召喚で再現するというのも面白いかもしれない。本当に教会や王国と敵対関係になるが、園部の件もある。ハジメ達も納得してくれるとは思う。だが、これは最終手段だな。

 

「あ~やっぱり男の人にエスコートしてもらうのっていいわね」

「そうか。だが、修正するところがあったら言ってくれ。素人だから、作法はわからない。この身体に相応しい男になりたいから、頼むぞ」

「はいはい」

 

 廊下を歩いていると、目の前に檜山達が現れた。こいつらは忌々しそうにこちらを見詰めてくる。

 

「おい、お前! 園部をどうするつもりだ!」

「お前達に答える理由はない」

「彼女は異端者です。どのように扱われるか、エヒト様の為にもしっかりと確認せねばなりませんから」

「使った後はどうするかわからぬが、この者に与えるかもしれない」

「ふふ、そうしたら今日買ってもらったギロチンで楽しもうかしら? あぁ、神の使徒様ってどんな声で鳴いてくれるのかしらね~♪」

「元、です。不敬に当たりますよ」

「これは失礼しました。異端者なのですから違いますね」

「まあ、いいでしょう」

「殺すつもりか!」

「気に入れば使い潰すかもしれないが、彼女次第であろう。奴隷というのはそういう存在だ。殺したら教会に提出すればいいか?」

「皮膚を斬り取って、焼印の所を送りましょうか」

「はい。お願い致します。エヒト様もお喜びになるでしょう」

「では失礼する。さっさと引き取って味見をしたいのでね」

「ばいば~い」

 

 二人とその護衛の隣を通り、支払い用の場所へと移動する。

 

『あの、本当に殺すんですか?』

『俺は使った後、ルサルカに渡すといったが、そもそも道具ではなく人として扱うし、使うには当たらない。よしんば、使ったという認識でも、ルサルカに渡す事など有り得ないのだから仮定の話に意味はない』

『嘘ってことなんですね。良かったです』

『嘘ではないな。事実を言っているのだから。ルサルカも断定はせずにいたしな。嘘を見破るスキルがあってもこれで大丈夫だ』

『なるほど、けむに巻いたのですね』

『ああ』

 

 さて、部屋に到着したので金貨と金塊をケースから取り出して次々と置いていく。

 

「すまないが、金貨だけでは足りない。金塊でも問題ないと聞いたが、可能だろうか? 無理なら別の手段で支払うが……」

「問題ありませんよ。ただ、相場の値段になるので店舗に持ち込むより少し安くなるかもしれません」

「構わない」

「では、それで査定します」

 

 椅子に座って待っていると、まずギロチンが運ばれてきた。結構な大きさなので一部が解体されている。それをルサルカはケースに入れていく。それを見て持ってきた人は驚いているが、ルサルカが大迷宮で見つかった掘出し物だと説明すると納得してくれた。こんな馬鹿げた買い物をするような金持ちなら、持っていても不思議とは思わないだろう。

 

「お待たせしました。確認できましたので、こちらへどうぞ」

「ああ」

 

 案内された先には服を脱がされた園部が立っていて、両手で身体を隠している。俺を見るとガタガタと震えながら、手を退けて身体の全てを見せてくる。

 

「ご、ご主人様……わ、私、園部優花をお買い上げ、ありがとうございます……これから、せ、誠心誠意、お仕えさせていただき、ます……お、お好きなように、おつかいください……」

 

 涙を流しながら、感情が籠らないように伝え、跪いて俺の足に口付けしようとしてくるので止める。

 

「やめろ」

「ひっ!? ご、ごめんなさい! ごめんなさい! 許してくださいっ!」

 

 園部は必死に謝って頭を抱え、泣きながら謝ってくる。どれだけ酷い事をされていたのか、想像もできない。だが、完全に心は折られている。女子高生に耐えられるものではないだろう。すくなくとも多少なりとも奈落で経験したからわかる。

 

「鞭を使いますか?」

「よい。さっさと契約する」

「はい」

 

 彼女の胸の間に言われた通り、手を添えて詠唱をする。胸の柔らかさに肌が焼けた感触も伝わってくる。焼印が反応して、苦しみだす。

 

「登録完了です。後は首輪の方もですね」

「首輪を変えるのは可能か? こんな無骨な物は趣味に会わない」

「でしたら、こちらに……」

「ふむ。ルサルカ、どれがいい?」

「この子に似合うのはこれね」

 

 そう言って渡されたのは赤い皮で作られたペット用の首輪だ。結晶が埋め込まれているので、一応魔導具なのだろう。

 

「小型の魔物用ですが、よろしいですか?」

「使えるのか?」

「はい。人用の物よりも強力です」

「ではそれでいい」

「かしこまりました」

 

 園部に……優花の白い首から無骨な首輪を外して可愛らしい首輪をつける。彼女は自分から両手を後ろに組んで、首を差し出してきたし、自分から誓約も誓ってきた。そのおかげでスムーズに終わった。

 

「終わりました。お買い上げ、ありがとうございます。こちらは彼女の持ち物だった服です」

「うむ」

 

 足枷の鍵を貰ったので、それを外してやる。貰った服は学校の制服だったので、それを渡してやると、抱きしめて泣きだした。

 

「ほら、さっさと着替えなさい。それとも、取り上げられて裸で歩きたい?」

「い、いや……言う事、聞きますから……もう、私から何も取らないで……」

「それは無理で。すくなくとも取るものは決定しているから。それは理解しているでしょう」

「は、はい……」

 

 すぐに俺の前で着替えだした優花は恥ずかしそうにスカートを気にしている。媚薬の事もあるだろうが、ここで治療するのは駄目だ。抱き上げて移動するのは周りの目があるが、仕方がない。目立つのは今更だろう。

 

「んぁっ」

 

 優花を抱き上げると、声が漏れるが、無視して部屋から出る。彼女は震えながら大人しく身体を預けてくる。それを見ると、前の彼女に戻してやりたいと強く思う。すくなくとも心は今すぐにでも治療したい。

 

『私を使いますか?』

『それはまだだ。このまま王都を出られたらいいが、そう簡単にはいかないだろうしな』

『わかりました』

 

 歩き出した俺にルサルカがケースを持って続いてくる。そのまま建物を出て馬車に乗って、御者に命じて宿に移動させる。

 

『ルサルカ、どうだ?』

『つけられてるわね』

『やはり無理だったか』

『まあそうよね~。いくら正規で購入しても見逃してくれないか。そもそも今回のオークションだって明らかに罠だし怪しいもん』

 

 そう言いながら、ルサルカが優花の服に手を入れて何かを探っていく。そして、悶えている優花からみつけたようだ。

 

『探知術式と集音術式。それに爆破術式ね。本当、最初から生かす気なんてないじゃない』

『残しておいたら他の連中から信頼を失うからだろう。シナリオとしては魔族に狙われているのを確認し、冤罪を理由に保護したが、彼女が逃げて魔族に殺されたか、そのまま魔族に襲撃されて殺されたとでもするつもりか』

 

 そうして、残った勇者達を追い詰め、戦うように誘導すると同時にモチベーションを上げさせる。実際に王都が被害を受けたら信じるだろう。今回の事は不穏分子を炙り出す事だろう。入っている可能性がある魔族か俺達かはわからないが。

 

『オークションの関係者も客も全部黒でしょうね』

『王都で仕掛けてくると思うか?』

『タイミング次第じゃない?』

『被害を気にせずに仕掛けてくるというのなら、望み通りにしてやろう。だが、時間を稼ぐ必要がある』

『そっちは任せて。良い考えがあるから』

『では任せた。美遊はばれないように召喚魔法の準備をしてくれ。レヴィとアストルフォ、詩乃を呼び出すかもしれんし、もう一つの方法も使う』

『わかりました』

 

 意識を表に向けると、ルサルカが自分と優花の服を開けさせて俺にキスをしてくる。そして、片手はアソコに伸びている

 

「な、なにを……」

「ナニ? ほらほら、いいから貴女もやるのよ。ファーストキスがアッチになってもいいなら、それでもいいけれど。奴隷の役目はこれよ?」

「わ、わかりました……」

 

 目を瞑って震えながらキスをしてくる優花の唇を受け止め、そのまま舌を入れていく彼女は涙を浮かべながら、受け入れてくれる。色々と諦めてしまっているようだが、こればかりは仕方がない。唾液を通して大量の神水を飲ませていく。その間もルサルカの奉仕を受けて出してしまう。

 

「ほら、貴女のよ」

「ひっ」

 

 俺のを顔に塗りたくって口にも入れさせる。大変エロいが何をしているんだか、わからない。

 

「ルサルカ?」

「どんどんいきましょ~」

 

 自分にもたっぷりと塗った後、優花を撫でていく。俺もこんな事をする理由を考えて、理解できたので優花の身体を堪能させてもらう。馬車の中には微かに抵抗する優花の声が響く。

 そんな状態が続き、馬車が宿に到着して開けられる。二人は乱れた服装で降りて俺の臭いを漂わせていく。そこから簡単に服を整えてルサルカが先に歩いていくので、顔を真っ赤にして荒い呼吸の優花を抱き上げて移動する。

 

「見ての通り、買ってきた奴隷を使って楽しむから、この区画。貸し切りでお願いね。あ、ちゃんと防音用の魔道具とかは使うから」

「かしこまりました」

 

 話はついたようなので、御者にチップを払って帰ってもらう。俺達は案内された部屋に入り、優花をベッドに寝かせて覆い被さって服を無理矢理脱がせていく。

 

「いっ、いやぁああぁっ!」

「結界を展開するから、好きに楽しんでいいからね」

 

 優花の悲鳴が術式を通してあちらに流れたところで結界が展開され、遮断されたはずだ。なので、優花の上から退く。彼女は不思議がっているが、デバイスから別の服を取り出して下着と一緒に渡す。

 

「すぐにそれに着替えてくれ」

「え? え?」

「はいはい、急ぐ。時間が無いんだから。媚薬だってもう切れて思考はちゃんとできるようになってるでしょ」

 

 ルサルカが手を叩きながら、食人影(ナハツェーラー)を呼び出してカーテンの閉めた近くでまぐわせる。これで外から見たらやっているようにしか見えない。

 優花は混乱しながらも指示に従って着替えていく。渡した服はベージュ色のタートルネックのワンピースと赤いコート。それに黒いマフラー。下は黒いストッキングと金属の入った靴だ。

 俺は指を噛み切って床に魔法陣を書いていく。その間にルサルカは複数の食人影(ナハツェーラー)に床を剥がさせて、腕をドリルにして掘り進んでいく。

 

「な、なにをしているん、ですか?」

「答えは後」

 

 ルサルカは優花の制服と優花の焼印を触りながら調べていく。

 

「よし、終わり。美遊、詠唱は?」

『終わっています』

「わかった。術式開始。来い、レヴィ」

 

 描いた魔法陣が光り輝き、中央からレヴィが飛び出してくる。

 

「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン! さあ、敵はどこだ~!」

「敵はまだだが、掘るのを手伝ってくれ。お前なら錬成ができるだろう?」

「え~戦いじゃないんだ。ま、いいか! 任せて!」

「よし、良い子だ」

 

 食人影(ナハツェーラー)が掘っている最中の穴に飛び込み、どんどん錬成していく。本当にハジメの錬成はチートだ。

 

「ルサルカ、そっちはどうだ?」

「難しいわね。服の方は処分すればいいだけだけど、こっちの刻印に仕込まれた爆破術式って時限式なのよ」

「ば、爆破術式……?」

「それがアンタの身体に仕掛けられているのよ」

「う、うそ……お、大人しく奴隷になったら、命だけは助けてくれるって……」

「そんなの助けてくれない奴等の常套句でしょうが」

「私、あんなことまでして生き残って、助けが来るのを待ってたのに……」

「安心しろ。助けは来た。もっとも、発覚から少しは時間が経ったが」

 

 数日は仕方がないとはいえない。距離があるとはいえ、その間に優花が被った被害は大きい。数日でも閉じ込められて拷問され、薬や魔法による洗脳など色々とされたはずだ。あの程度なら神水で回復はできるが、

 

「あ、あなたたちは……誰、なの? 愛ちゃん先生達でも、ないし……」

「ベヒモスの戦い以来だが、姿が完全に変わっているから無理はない」

「べひ、もす……?」

「あの時も助けてやったのに忘れたのか?」

「も、もしかし沙条、なの……?」

「久しぶりだな。再会がこんな事になるなんて思わなかったが……」

「ほ、本当に生きて……」

「ああ、鈴や恵里、ハジメだって生きてるぞ」

「本当に……良かった……私……私……」

 

 急に元気になったかと思ったが、すぐに泣き出した。慰めるために近付いて背中を撫でる。

 

「ごめん、なさい……私、檜山に……タブレット……」

「それなら知ってるが、そんな事よりも表向きでも無視を決めこんでおけばよかっただろ」

「できない、よ……だって、私のせいでタブレットを檜山が開いたし、それに……それに私が、あの時、足を引っ張ったから、沙条が鈴の所に行くのが遅れて……鈴を助けようとして……だから、せめて……」

「あ~そう思ってたのか別に気にしなくていいのに」

「気にするわよ!」

「まあ、信じてくれていたのは嬉しかった。ありがとう」

「ううん、こっちこそ助けてくれてありがとう」

「まだ助かってないし、このまま何事もなく終わらないから、さっさとやることやる!」

 

 ルサルカの言葉で優花がそちらを見る。

 

「か、彼女は?」

「は~い。改めて自己紹介するわね。私は聖槍十三騎士団・黒円卓第八位。ルサルカ・シュヴェーゲリン。魔女やってるの。そして、真名の妻よ」

 

 ルサルカが抱き着いて宣言すると、優花はこちらを見詰めてくる。

 

「妻……結婚したの?」

「まあ、そんな感じだ」

「それで、私にキスしたりしてきた、の?」

 

 思い出したのか、顔を赤らめながら唇に手をあてる。

 

「そりゃ~あなたは奴隷だもの。そういう用途にも使うわよ」

「っ!? そ、それって……」

「言ったでしょ。助かっていないって。あなたは私達に買われた。最低でも金貨2000枚の分は働いて返してもらわないとね。主な仕事は身体を使ったお仕事ね」

 

 そう言いながら、優花の胸につつっと指を這わすルサルカ。彼女はこちらを見詰めてくるが、実際にこのまま解放するわけにもいかない。

 

「いいか。園部……優花って呼ぶぞ」

「うん。好きに呼んだらいいよ」

「わかった。で、異端者認定されたわけだから、教会の敵になった。それは俺もだ。だから、狙われる。俺の場合は見ての通り、身体を失って新しいのを得た。だから、簡単にはバレない。だが、優花は違う。焼印もあるから、確実にバレるし、奴隷から解放したらまた捕まって殺されるか、拷問される」

「っ!? い、いやっ、あんなのはもう絶対に嫌っ!」

「だから、俺の奴隷として居てもらう。待遇はちゃんと扱うし、優花の望む事だってできる限り聞く」

「本当に?」

「ああ」

「その代わり、身体を寄越せって?」

 

 優花の言葉や視線が冷たくなる。まあ、そうなるよな。

 

「それがあなたを助ける為に私が出した条件だしね。悪いけど、愛しの旦那様を信じてくれていたのは嬉しいけれど、その旦那様達を危険にさらしてまで助ける価値をあなたに見いだせないわ。言ってしまえば敵地に潜入して、あなたを連れ帰るってお仕事だもの。わからなくてもいいけど、納得しなさい」

「私が沙条の物になるなら、助ける価値はあるってこと?」

「そうよ」

「ルサルカさんはそれでいいの? 夫が不倫している事になるけど……」

「あ~それなんだが……」

「もう妻はいっぱいいるのよ」

「え?」

 

 それから、何があったのか伝えていく。まず、しっかりと話さないといけない。もちろん、警戒して爆破術式も解析しながらだ。

 

「つまり、沙条はハーレムを作っているから私もその中に入れ、と」

「そういうことね」

「いや、嫌ならいい。ルサルカを黙らせる事もできるし、無理矢理は入れるつもりもない」

「ちょっと、私は納得しないわよ!」

「買ってやったら、妹扱いすると約束したよな? 妹なんだから、無理強いはしないだろう?」

「うっ……わかったわよ。はいはい、ちゃんと助けてあげるわよ! でも、今回だけだからね。言っておくけど、本当に危険な橋を渡っているんだから!」

「というわけで、無理しなくてもいいからな」

「ありがとう。それと奴隷になった時から覚悟していたから、沙条に抱かれるのも女になるのもいいよ。ちゃんと人として扱ってくれて、拷問しないでくれるのならそれ以上は望まないから……」

 

 そう言いながら、マフラーで口元を隠す。強がっているようだが、かなり堪えているようで弱弱しい感じだ。前の優花とは全然違う。諦めや諦観といったものが感じられる。考える事を放棄しているのかもしれない。

 

「それでいいのか?」

「沙条は鈴や恵里のようにちゃんと私を守ってくれる? 子供ができたら、一緒に育ててくれる?」

「もちろんだ」

「じゃあ、あなたの奴隷になる。ううん、奴隷のままがいい。だから、守って。お願い」

「俺は地球に戻るつもりはないから、こっちで住む事になるぞ」

「それは……大丈夫。だけど、お店はしたい、かな……あ、ごめんなさい。贅沢だよね」

「そんな事はない。お店、いいじゃないか。どうせなら地球から食材とかを取り寄せてもいいな」

 

 確か、優花は洋食店の娘だったな。こっちでも店を出したらいいだろう。別に行き来する事が大変じゃなくなればすぐに会えるしな。

 

「あれ、帰らないんじゃ……」

「こっちで生活をするだけだからな。娯楽は向こうの方が多いし」

「私が娯楽になるんじゃないの?」

「一緒に居て楽しいなら、それはそれでいいかもな」

「そうとるんだ。うん、なんでもいいから守って欲しい」

「守られるだけで満足なの? 仕返ししたくないかしら?」

「仕返し……はどうでもいい。思いだしたくないし。でも、力は欲しい。抵抗できずに捕まってあんな事になるのは……」

 

 涙目になって伝えてくるので、抱きしめて涙を拭ってやる。最初と違って、俺が沙条だとわかったからか、抵抗を一切しなくなった。

 

「復讐がどうでもいいのか~これはお姉さんの予想が外れちゃったかな~拷問仲間ができるとおもったんだけどな~」

「ルサルカ、それでもちゃんと妹扱いはしろよ」

「もちろん。ねえ、お姉ちゃんって呼んでみてくれない?」

「……お姉ちゃん……?」

「よし。お姉ちゃんに任せなさ~い! とりあえず手っ取り早く強くなれるのは永劫破壊(エイヴィヒカイト)だけど、聖遺物がないし……買ったギロチンじゃ無理だしな~。それに爆破術式の解除もあるし……あ、アレがあったか。ねえ、だ~りん」

「断る。嫌な予感しかしない」

「ガチャ引いて聖遺物を出しましょうよ。ほら、可愛いお嫁さんのためよ」

「お嫁さん、でいいのかな?」

「いい。何も問題はない。そしてガチャだが、やるか」

 

 話がガチャとなれば別だ。愛歌にも引くように言われているしな。そんな訳でスマホを取り出して確認してみる。えっと、なんか色々と追加されているな。オルクス大迷宮突破記念。オルクス大迷宮召喚。オスカー・オルクスピックアップがされている。他にはアイテム召喚。進化素材ガチャ。流石に確定召喚はないようだ。オスカー・オルクスのピックアップか。使えるだろうが、ここで引いても流石に出ないだろう。ここはやはりランダムガチャか。

 

「とりあえず、いいのが出る確率は低いだろう。他の方法をとろう」

「じゃあ、魔物を食べてみたい」

「「え”」」

「南雲はそれで強くなったんでしょ。私、料理人になる夢があるの。だから、魔物を食べて料理してみたい。真名の体液を飲んでいたら死なないんでしょ?」

「どう思う?」

「いいんじゃないかしら? 確かに身体を作り変えるのだから、爆破術式だって真名の魔力を流し込んで壊せばいいし。このままだと私達も優花ごと殺されるしね」

「本当にいいんだな」

「うん。お願い」

「ついでに本番もして感覚共有して身体の魔力制御を手伝ってあげると早く終わるし、痛くないわよ」

「お願い。痛いのは嫌だし……」

「まあいいか。それじゃあ、やるぞ」

「うん」

 

 そんなわけで、まずはキスして房中術で優花の快楽を高める。それから、やりながらヒュドラの肉を取り出し、噛み砕いて食べさせる。すぐに変化が起きた。激流のような魔力を制御し、優花に少しずつ流し込む。むしろ、俺の魔力も一緒に流し込んでヒュドラを余すところなく与える。

 

「魔力過多じゃない、馬鹿」

 

 ルサルカも美遊も手伝ってくれて限界までヒュドラを圧縮し、房中術で手に入れた優花の魔力に混ぜて作り変え、戻していく。何度も体液を交換していると、急激に優花の髪の毛が伸びて瞳の色がエメラルドグリーンから深紅へと変化していく。しかし、次第に瞳の色は戻っていく。これは常時、力の解放をするのではなく小出しにする感じで圧縮したからだ。それでも格段に強くはなっているし、爆破術式も破壊できた。

 ただ、優花は完全に気を失ったので、そのまま俺が抱き上げて移動する。これ以上、ここに居るのはまずい。優花の制服は食人影(ナハツェーラー)に着せて置いていく。優花には悪いが、この術式があるとみつかるからだ。後で同じ服を作ってやればいい。怒られるかもしれないが、仕方がない。

 

「レヴィがどこまで掘ってくれているかしらね~」

「そうだな」

 

 ルサルカが自前の爆破術式を食人影(ナハツェーラー)に仕掛けて結界を解除してから、深い穴に降り立つ。降りてきた場所から頭上の穴を塞いでさっさと移動する。空気の穴はしっかりと確保されているので大丈夫だ。走っていると少ししてレヴィに追いついた。

 

「おっそ~い」

「悪い。それで、どうだ?」

「王都の外までは繋げたけど、少し偵察したら止めた。待ち構えられてたからね。相手はボク達を逃がす気はないみたい」

「そうか」

 

 レヴィの話を聞くと街には神官戦士の一団が入り、王都の外にはあのメイドが待ち構えているそうだ。宿の方ももう少しで爆破術式を発動させ、突入するつもりだろう。そう思っていると、衝撃と爆発音がやってきた。

 

「あ、爆破したわね。これで私達が死んだと誤認してくれると嬉しいけれど……」

「どうする~?」

「認識阻害をしながら待機だ。明日の朝、住民が出ていくタイミングで合流して進む」

「りょうか~い」

「今日は大人しく優花の様子をみながら寝ましょうか」

「そうだな」

 

 次の日。優花は目覚めているが、まだ動けないようだが行動を起こす。王都から脱出して掘り進んだ地下の洞窟を使って森の中に入っていく。そこから街道を進んでいる商隊に紛れる。その商隊で聞いた話では昨日夜、宿が大爆発して辺り一帯が吹っ飛んで被害が結構でているようだ。

 

「なんでも魔族が潜んでいて、それを神の使徒様が討伐なさってくれたそうだ」

「神の使徒様は?」

「魔族の自爆で死んだって話だ。お蔭で王都の警備はかなり厳しくなっていて、出るのは大変だった。今でないと娘の薬が間に合わないからどうにかなってよかったぜ」

「それはそうですね。ところで避難誘導などは……」

「一応、されていたって聞くけど、範囲が広すぎたし、急だったから何人も死んだそうだ」

 

 その言葉を聞いて優花がビクッと俺の背中で震える。証拠を消すためだけに王都の一部を吹き飛ばすとは、正直言ってやりすぎだ。魔族への反感を高めるためにしても、被害がそうとうでるだろう。まるで住んでいる人や税収の事などどうでもいいと思っているかのようだ。

 

「私のせいで、人が死んだの……?」

「優花のせいじゃない」

「むしろ、これは俺とルサルカのせいだな」

「私のせいでしょうね。カモフラージュのために同じ爆発力になるようには仕込んだけれど、まさか人口密集地の王都で使うなんて思わなかったわ。普通、被害を気にして突入するでしょ。それがなに。容赦なく爆発って。どう考えても包囲してたっていう騎士達も被害にあってるわよ」

 

 これは認識を改めるしかないだろう。敵は人を人とは思わないような連中だ。しかも空間魔法の使い手ときた。今回は食人影(ナハツェーラー)という魂を持つ身代わりがいたから、騙せたのだろう。これからは特攻してくる存在にも気をつけるか。

 

「しばらく油断してくれるといいんだけどね~」

「シュテルには大人しく普段通りの生活を心掛けさせましょう。情報収集は一時中断して溶け込ませるべきね」

「そうだな。王都はしばらくいいだろう。それよりも帝国と魔族の情報収集が肝心だ。それと早急に空間転移ができるように整えなければならない。逃走手段の確保は急務だ」

「だね~。あ、そうだ。ゆーかもいっその事姿を変えたらいいんだよ!」

「それもありだな」

「ごめん、なさい……できれば、あまり変えたくはない。両親からもらった容姿だから……」

「そっか、そうだよね。ボクもへいとからもらって、もうこれがボクだしな~」

 

 レヴィにとって、フェイトのデータを基にして作られた今の姿がレヴィ自身の姿だということだろう。

 

「成長させるのはどうだ?」

「それぐらいなら、いい。元に戻れる?」

「ああ、大丈夫だ」

 

 なのはの世界には大人モードなんてある。それぐらいできる、はずだ。

 

魔物(モンスター)だ!」

「レヴィ」

「ほ~い!」

 

 バチッという音と共にレヴィが消え、すぐに倒したようだ。向こうの方でレヴィが褒めちぎられている姿をみると、一つ思い付いた。戦争を激化させるのも一つの手かもしれない。王国と帝国……いや、教会と魔族の戦いを促進させ、殺し合わせて魂を吸収する。その方が魂を効率良く収集できるだろう。見つからないようにして、隙を見て両方の軍をバランス良く削り、裏では食料や武器を提供して利益を得る。神出鬼没で現れて戦場をかき乱す。聖槍十三騎士団がやっていたように……駄目だな。完全に死の商人じゃないか。

 精々、戦場に出向いて参戦……駄目だ。片方に肩入れする事になる。両方に戦力を削ってもらいたい。難しい。やはり、まずは神代魔法を手に入れる事からはじめ、仲間を増やしていこう。世界を邪神エヒトから解放する。地味な努力と戦場を回る。オスカー・オルクスの願い通りになるが、可愛い嫁や産まれてくる子供達のためだ。掃除はしないといけない。正直、正義の味方とか、興味もないが……神殺しはカッコイイしなぁ。

 本当、神滅具とか、ハルパーの鎌とか、ガングニールとか欲しい。やっぱりガチャだな。ガチャしかない。比較的、安牌のアイテム召喚で集めて、絆召喚を狙う。それが一番いいだろう。というわけで回そう。聖遺物が出たら儲けものだ。

 

「ご主人様、なにしているの?」

 

 背中に背負っている優花が気付いてこちらに声をかけてきた。当然、俺の手元にはスマホがある。

 

「ガチャだ」

 

 そう言いながら、回す。久しぶりのガチャだ。それに今ならレヴィに視線が集まっているから問題ない。一応、魔力で回すガチャだ。ノーマルガチャだが、1回10万ぐらいつっこめばいいのが来るだろう。さあ、来い。

 召喚演出が始まり、黒いパックがでてきた。どこのトレーディングカードゲームだ! 確かにあれもガチャといえなくもないし、ガチャのカード排出もあるが! 

 

「なにやってんのよ?」

「ガチャだって……お姉ちゃん」

「へ~。うん、これからもお姉ちゃんで……え?」

 

 パックを開いてみるとN、N、R、N、N、N、R、C、R、N。期待が持てるのはRだ。やはりしけている。まあ、すぐに回復するからこの程度は仕方ないか。

 

「聖水。呪いを解除する。まあ、あっていい。ポーション。いらん。エリクサーが使い放題だ」

 

 ポーションのカードを適当に置くと実体化した。どうやら、俺から離れると実体化するようだ。カードの状態ならスマホに保存できるか? まあ、ルシフェリオンを借りているから問題ないが。

 

「Rは……魔物(モンスター)の卵か。これは放置。Nは不思議な飴。レベルアップアイテムじゃない、不思議なランダム味の奴。塵だな。次はN。美味しいコッペパン。体力を少し回復。N小石、R古く青い箱。これはランダムにアイテムが入っている奴だな。つまりガチャ。Cはスキルの急所攻撃。クリティカルがおこりやすくなる。優花、居るか?」

「スキル? 欲しいけれど、いいの?」

「一番優花が……そのな……?」

「弱いのはわかってるから」

「じゃあ、やる」

 

 優花に渡すと、カードは優花の中に消えた。ちゃんとスキルを覚えてくれたようでなによりだ。次は……Rでゾンビパウダー。振りかけた死体をゾンビに作り変える。いらんし危険すぎる。恵里にでもくれてやろう。ラストNは生ゴミ。適当に投擲してやると、一メートル先に落ちて臭い生ゴミへと変わった。

 

「くさい」

「捨てかたを考えなさいよ!」

 

 ルサルカが燃やしてくれたので事無きを得たが、侮れん。バイオテロか。さて、古く青い箱だ。レッツオープン! 中身はなんと! 

 

「また青い箱?」

「よくあることだ。そして次は……」

「物理的にありえない箱がでてきたわね」

「うむ。これもあることだ」

 

 古い紫色の箱が出て来た。こちらを開けると……なんとフラグが回収された。

 

「なんかすごい力を感じるんだけど……この真っ赤な枝」

「大当たりだ。血塗られた古木の枝。幾年の歳月が経ち、魔力が秘められた木の枝に血の契約をし、強力な何かを召喚する。MVPボス召喚用アイテム!」

「ボス?」

「ボスってあれよね。ユーリやラインハルト様みたいな……」

「それクラスが出る可能性はあるなあ……まあ、ラグナロクオンラインのアイテムだし、出てくるのはもっぱら魔物(モンスター)だ。だが、こいつの悪用方法は他にある。何せ召喚士の俺が使うんだ。聖杯にくべるか、食べるか、それとも……デバイスの素材にするか」

「これって聖遺物にはならないわよね」

「流石にならないだろう。出て来た奴を殺せばなるかもしれんが」

『わ、私が食べるの? 怖い』

 

 さて、この枝は俺のパワーアップアイテム足り得る物だ。どう考えても災厄しか呼ばないがな! 魔王モロクとか、ロード・オブ・デスやカトリーヌ、セシルとか出ただけで笑う。どうせ、こいつらもフレーバーテキスト通りなんだろ。ゲームデータなんて知ったこっちゃないってな! 死蔵確定!

 

 

 

 

 

 

 




まあ、ゲーム通りならレベル100が数人から転生したレベル250オーバーの人が狩るような物が呼びだされるもよう。

優花の成長した姿は独断と偏見でサモンナイトのヘイゼルさんです。能力も暗殺系統に偏らせようかな。そのくせ考えている聖遺物がヘレナの聖釘。ヘルシングのアレ。投擲武器の聖遺物ってタスラムやルーの槍とか、ゲイボルクとか、そのへんしか思いつきません。短剣みたいなのなにかあったかな?



本当は優花さん、考えたのはここで神の使徒に襲われて敗北ないし、強制転移させられる。そこで魔族に捕まって改造。愛子先生を殺す暗殺者に……って考えたけど流石に可哀想なので止めました。高確率で愛ちゃん先生が死んじゃうしね。失踪した生徒と再開。そして感動の再開で抱き合っているところを仕込んだナイフでサクッと。洗脳から解放されても確実に壊れますね。救いがないルートです。


愛子先生達には犯人を見つけると、探索にでて少ししてから、魔族と遭遇。王都で盛大に戦って自爆に巻き込まれて死亡と伝えられます。オークション参加者は信者なので、異端者認定も魔族を与する者達をはめるために仕掛けた罠ということを神官たちから説明されて納得し、優花を称えます。異端認定を受けてまで魔族を排除するとは神の使徒の鏡! 当然、納得しない人もいますが、証拠隠滅は神の名のもとガチで消されます。洗脳なども使われるので探してもでません。爆発で消し飛ばされてますからね。

オルクス大迷宮デート。サモンナイト風に言う夜会話

  • シュテルとレヴィの猫と戯れピクニック
  • 鈴と恵里の日向ぼっこデート
  • ルサルカの手料理
  • ディアーチェとお勉強
  • アストルフォと遊ぶ

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