ライセン大峡谷を抜け、帝国兵を必要な情報を抜いてから皆殺しにし、そこから装甲車を取り出してハウリア族を乗せて移動する。装甲車は騎乗Aのスキルを持ち、乗り物ならなんでもござれなアストルフォに運転してもらう。後ろには牽引させているトラックもある。
俺は優花と鈴、恵里の三人と助手席側に乗って膝の上に鈴を座らせ、左右に優花と恵里を座らせている。三人は殺人を行った事で不安なのか、俺に身体を預けて眠っている。まあ、恵里は違うだろうが。優花は特に心がどうなるかわからないので、抱き寄せた頭を優しく撫でている。まあ、余った手で鈴や恵里も撫でているが。
それ以外の者達は俺の中でゆっくりとしたり、寝たりしている。詩乃だけは荷台にいるハウリア族と一緒に乗って、不安がっている彼等を安心させていた。ちなみに装甲車とトラックの上にはテイミングしたハイベリアが乗っている。
ハジメ達は装甲車の前をバイクで三人乗りして色々と話しているみたいだ。
さて、こんな感じで進みながら、俺はスマホを確認していく。というのも、帝国兵を虐殺して14個の魂を手に入れる事ができた。この中にはハジメ達、
「ねえねえ、もっと飛ばしていい?」
「駄目だ。ハジメの先導に従っておけ」
「むう~」
「なんなら運転を変わってやるが……」
「いやいいよ。だって、退屈なんだもん」
「まあ、樹海に着けば暇つぶしも多いだろうさ」
「樹海か~確か、大樹を目指すんだっけ?」
「そうだ。聞いた限りじゃあ、そこが本当の迷宮と関係しているみたいだしな」
当初、俺達はハルツィナ樹海そのものが大迷宮かと思っていた。だが、よく考えれば、それなら奈落の底と同レベルの
なので、オルクス大迷宮にあった奈落のように真の迷宮の入口が何処かにあるのだろうとハジメが推測した。これはユーリ達も同意見だったので、それが正解だろう。そして、シアの父親で族長のカムから聞いた大樹というのが怪しい。というのも、フェアベルゲンができる前から枯れた状態で延々存続しているらしい。
「しかし、樹海かぁ……ピポグリフ、居るかなあ?」
「さあな。とりあえず、ハイベリアで我慢しておけばいいんじゃないか」
「なんかやだ」
「そうか。まあ、任せる」
スマホを確認していくと、ガチャのピックアップが変わっていた。混沌・悪のピックアップガチャに変わっている。これはもう引かない。絶対に引かない。何せ画面には
とりあえず、スマホを仕舞って優花達を撫でながら時間を潰していく。レヴィ達の方に迎えを送ってもいいが、ハルツィナ樹海でフェアベルゲンの連中と戦う可能性が高いので、そちらが片付いてから合流すればいい。
◇
ハルツィナ樹海と平原の境界に到着した。樹海の外から見る限り、ただの鬱蒼とした森にしか見えないが、一度中に入ると直ぐさま霧に覆われるらしい。ここから歩いて進む事になる。ハイベリアはこの辺りで一旦別れてその辺りで潜んでいてもらう。
「それでは皆様。中に入ったら決して我らから離れないで下さい。皆様を中心にして進みますが、万一はぐれると厄介ですからな。それと、行き先は森の深部、大樹の下で宜しいのですな?」
「ああ、聞いた限りじゃあ、そこが本当の迷宮と関係してそうだからな」
「わかりました。それとできる限り気配は消してもらえますかな。大樹は、神聖な場所とされておりますから、あまり近づくものはおりませんが、特別禁止されているわけでもないので、フェアベルゲンや、他の集落の者達と遭遇してしまうかもしれません。我々は、お尋ね者なので見つかると厄介です」
「ああ、承知している。俺達も、ある程度、隠密行動はできるから大丈夫だ。そうだよな?」
ハジメが聞いてくるが、隠密行動……実は苦手なんだよな。だが、俺達には強い味方がいる。
「鈴先生、お願いします!」
「もう、まなまなは仕方ないなぁ~鈴にお任せだよ! えい!」
ハウリア族を含めた全員を包むように結界が展開される。効果はわからないが、強度とかもやばそうな気がする。
「……鈴、効果はなに……?」
「ゆえゆえの質問に答えましょう! 気配、振動、臭いを遮断し、光の屈折を利用して背後の光景をそのまま見せる光学迷彩を再現! 触れられない事と足跡が残る以外はばれるとしたら魔力のみ! 魔力は遮断したいけれど、それをするとレヴィレヴィの召喚まで解除されちゃうからね」
「……チートじゃねえか」
「ただし、中の人は魔力を使えないし、攻撃したりされたりしたら壊れるから気をつけてね。それと効果時間は鈴の魔力だと一時間。まなまなの魔力を貰えば大丈夫だけど、鈴はこれに集中しないといけないから動けなくなるよ」
「沙条、任せた」
「任された」
鈴をお姫様抱っこで抱き上げて、移動していく。もちろん、全員に注意して結界から出ないように伝えておく。兎人族は一度認識すればそうそう見失うことはないらしいが、樹海の中では、彼等の索敵能力を以てしても見失いかねない。
しばらく、道ならぬ道を突き進む。直ぐに濃い霧が発生し視界を塞いでくる。しかし、カムの足取りに迷いは全くなかった。現在位置も方角も完全に把握しているようだ。理由は分かっていないが、亜人族は、亜人族であるというだけで、樹海の中でも正確に現在地も方角も把握できるらしい。
「それでは、行きましょうか」
順調に進んでいると、突然カム達が立ち止まり、周囲を警戒し始めた。魔物の気配を感じたようだ。当然、俺達も感知している。どうやら複数匹の魔物が近くにいるようだ。樹海に入るに当たって、ハジメが貸し与えたナイフ類を構える兎人族達。彼等は本来なら、その優秀な隠密能力で逃走を図るのだそうだが、今回はそういうわけには行かない。皆、一様に緊張の表情を浮かべているが──
「こっちに反応しねえどころか、一目散に逃げて行きやがるな」
「なんでだろうな」
「なんででしょうね」
「どう考えてもお前等だろう」
──
答えは簡単だ。ベヒモスに踏みつぶされる前の俺達のように即座に撤退を選択する。むしろ、ハウリア族だって俺達から離れてこちらをビクビクしながらチラ見しているぐらいだ。
「ねえ、これってどう考えても真正面から入ってフェアベルゲンを滅ぼした方が楽じゃない?」
「確かにそうだね。戦力は充分にあるし」
「いや、危険な事を言うな。沙条、しっかりとルサルカと恵里の手綱を握っておけよ。面倒は御免だ」
「了解だ。ほら、ピクニックでもして楽しもうぜ」
「「は~い」」
そんな訳で歌いながら森を歩いていく。
◇
「ある日、森の中。虎さんにであった。ららら~ら~ら~ら~」
「遊ぶな。この状態だぞ。全員、しっかりと──って、気付かれたな」
虎模様の耳と尻尾を付けた、筋骨隆々の亜人達が俺達の方を見てくる。正確には踏みしめられた草木だ。
「そこに何か居る! 総員、警戒!」
これ、全員が飛んでいたらバレないだろうが、相手からしたら大量の草木が風もないのに倒れていくのだから流石に気付かれるか。
「鈴、解除してくれ」
「うん。南雲君、いい?」
「ああ。それとここは任せろ。帝国兵とはお前達が戦ったしな」
「了解」
鈴が結界を解除すると、目の前に現れた俺達に、虎の獣人達は驚いた表情をした後、すぐにハウリア族に目を付けた。
「お前達……何故人間といる! 種族と族名を名乗れ!」
人間と亜人族がハルツィナ樹海で共にいるという光景に、目の前の虎の亜人と思しき人物はカム達に裏切り者を見るような眼差しを向けた。その手には両刃の剣が抜身の状態で握られている。周囲にも数十人の亜人が殺気を滾らせながら包囲網を敷いてきている。
「あ、あの私達は……」
カムが何とか誤魔化そうと額に冷汗を流しながら弁明を試みるが、その前に虎の亜人の視線がシアを捉え、その眼が大きく見開かれる。
「白い髪の兎人族……だと? ……貴様ら……報告のあったハウリア族か……亜人族の面汚し共め! 長年、同胞を騙し続け、忌み子を匿うだけでなく、今度は人間族を招き入れるとは! 反逆罪だ! もはや弁明など聞く必要もない! 全員この場で処刑する! 総員かッ!?」
そう言った瞬間。ハジメが威嚇射撃を行う。そうするともう後はハジメが交渉していくのを見るだけだ。俺はどうしようかと周りを見渡すと、優花が居なかった。どこにいるか、感覚共有で確認すると姿を消して俺達の背後を包囲している連中の外に出ていた。まるで事が起こったら背後から強襲するように準備している。
アストルフォはハジメの後ろをウロチョロしているし、ルサルカは手に鉈を取り出して掌にポンポンしている。恵里は鈴と詩乃と一緒に近くの花を見ている。ユーリだけは心配そうにオロオロしているので、俺がしっかりと抱きしめて安心させてやる。
そんな風にしていると、ユエがハジメに抱き着いて、シアが私もと抱き着いていく。苦笑いしながら二人を撫でるハジメを見てから、ユーリと一緒に花を観察していく。
「アンタ達、ちょっとは緊張感持ちなさいよ。いくら雑魚とはいえさ~真面目な優花が可哀想じゃない」
「優花もこっちに来いよ」
「わかった」
「「「っ!?」」」
すぐ近くの背後から聞こえた声に亜人達が驚き、飛び退るとそこを優花が歩いてくる。その手にはしっかりと短剣が握られていて、事を起こせば瞬時に斬り殺されていたという事実を亜人達に知らしめる。敵地のど真ん中で、いきなりイチャつき始めた俺達に呆れた表情を見せてくるが、実力が違いすぎるし、警戒は一応している。鈴が別の結界を展開しているので、攻撃が来たとしても遮断できる。
優花がこちらに来て、ピッタリと俺の横に引っ付いてくる。俺はそれを見ながらスマホを取り出して写真を取っていく。自撮りも合わせて可愛いユーリを始めとした嫁達の姿を記録に残すためだ。後、白崎達に見せるためにもハジメとユエの写真も取っておく。
一時間も経つと調子に乗ったシアが、ユエに関節を極められて「ギブッ! ギブッですぅ!」と必死にタップし、それを周囲の亜人達が呆れを半分含ませた生暖かな視線で見つめている。
俺達はテーブルを取り出してお茶をしながらそれを眺める。ルサルカは帝国兵から奪ったお酒を取り出したので、奪い取って紅茶にしてやった。シュテルやディアーチェ、優花が作ってくれたお菓子をハウリア族の子供達にも配ってティータイム。ただ、ユーリは子供達と一緒に押し花を作ったりもしている。お花が可哀想という大人達は俺が睨み付けて黙らせた。小さな子供達は純粋に楽しんでいるのでこれでいい。
そうこうしていると、急速に近づいてくる気配を感じた。再び緊張が走り、シアの関節には痛みが走る。
霧の奥からは、数人の新たな亜人達が現れた。彼等の中央にいる初老の男が特に目を引いた。流れる美しい金髪に深い知性を備える碧眼、その身は細く、吹けば飛んで行きそうな軽さを感じさせる。威厳に満ちた容貌は、幾分シワが刻まれているものの、逆にそれがアクセントとなって美しさを引き上げていた。何より特徴的なのが、その尖った長耳だ。
「ハジメ! エルフだ! エルフだぞ!」
「ああ、そうだな」
「だけどなんでそこは美少女じゃないんだ!」
「おい馬鹿」
「お・に・い・ちゃ・ん?」
「ごめんなさい」
エルフについ興奮してしまったが、底冷えするほどのユーリの声ですぐさま冷静になる。鈴からは頬っぺたを抓られ、詩乃からは尻尾でぺしぺしと叩かれた。ルサルカはやれやれといった感じで、優花は大人しくしているけれど、服の裾を掴んできている。アストルフォは……俺の耳に囁いてくる。
「マスター、エルフが好みなの? じゃあ、ボクがエルフになってあげようか?」
「イイデス、ハイ。その姿が一番可愛いよ」
「だよね!」
美遊は何かを見詰めてから、こちらに情報を渡してきた。だから、俺はハジメ達の話を無視してそちらに集中する。
そう、それはピックアップガチャが更新されたからだ。亜人達が住むハルツィナ樹海に入ったからか、ピックアップが混沌・悪から亜人族のピックアップへと変更された。それも作品選択別だ。候補としてはプリンセスコネクト・リダイブ、うたわれるもの(ロストフラグ)、けものフレンズ、亜人ちゃんは語りたい。などなど様々だ。どれを選ぶか、悩ましいが……今回はうたわれるものにしておく。欲しい子が居るからだ。だが、石が足りない。いっその事──
「お兄ちゃん、駄目ですよ」
「はい……」
──ユーリに止められて、小さな手で握られながらハジメ達の後をついていく。これで勝ったと思うなよ、フェアベルゲン! まずは魔物狩りだ。狙うはアルルゥ、カミュ、ムツミ、ネコネ、オシュトル、ハクオロ、ルルティエ、ハク……あ、ハクオロとハクは無理だな。あの二人は人間(神様)みたいなものだし。というか、仮面が欲しい。変身して暴れたい。強くはならないだろうけど。
まあ、あれだ。ぶっちゃけるとオシュトルとか、国の管理を任せられる人材が欲しい。というわけで、オシュトル、ハク、マロ、ネコネは召喚してやりたい。ネコネはオシュトルと話させてやりたいし、男三人で酒を飲んでる姿とかも見たいからな。
ネコネが当たらない。ちくしょうめ! アクアプラスめっ、金を搾り取っていきやがります! 今回のイベントのネコネが凄く可愛いので欲しいです。ですが、お金がないので諦めモード。イベントのネコネの服で欲しいなあ。
フェアベルゲンは今のところ、助かっています。ハジメがメインですからね。起爆スイッチを押すかどうか、楽しみです。