ありふれた職業の召喚(ガチャ)士で世界最弱   作:ヴィヴィオ

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むう。原作通りの場所、飛ばしたいけど説明がかなりぶった切られる。オリジナルのところだけ書くのはかなり難しい。次回はオリジナルにはできます。次回は詩乃とかな? まあ、やりたい事があるのでそちらが優先ですが。


第46話

 

 

 

 

 

 

 濃霧の中を虎の亜人ギルの先導でフェアベルゲンへ向けて進む。ハジメ達と俺達、ハウリア族、そしてアルフレリックを中心に周囲を亜人達で固めて既に一時間ほど歩いている。どうやら、先のザムと呼ばれていた伝令は相当な駿足だったようだ。

 しばらく歩いていると、突如、霧が晴れた場所に出た。晴れたといっても全ての霧が無くなったのではなく、一本真っ直ぐな道が出来ているだけで、まるで霧のトンネルのような場所だ。よく見れば、道の端に誘導灯のように青い光を放つ拳大の結晶が地面に半分埋められている。そこを境界線に霧の侵入を防いでいるようだ。

 俺達が、青い結晶に注目していることに気が付いたのかアルフレリックが解説を買って出てくれた。

 

「あれは、フェアドレン水晶というものだ。あれの周囲には、何故か霧や魔物が寄り付かない。フェアベルゲンも近辺の集落もこの水晶で囲んでいる。まぁ、魔物の方は〝比較的〟という程度だが」

「なるほど。そりゃあ、四六時中霧の中じゃあ気も滅入るだろうしな。住んでる場所くらい霧は晴らしたいよな」

 

 どうやら樹海の中であっても街の中は霧がないようだ。十日は樹海の中にいなければならなかったので朗報だな。皆も霧が鬱陶しそうだったし、俺達の会話を聞いてどことなく嬉しそうだ。

 

 そうこうしている内に、眼前に巨大な門が見えてきた。太い樹と樹が絡み合ってアーチを作っており、其処に木製の十メートルはある両開きの扉が鎮座していた。天然の樹で作られた防壁は高さが最低でも三十メートルはありそうだ。亜人の〝国〟というに相応しい威容を感じる。

 

 

 ギルが門番と思しき亜人に合図を送ると、重そうな音を立てて門が僅かに開いた。周囲の樹の上から、人間である俺達に視線が突き刺さっているのがわかる。人間が招かれているという事実に動揺を隠せないようだ。アルフレリックがいなければ、ギルがいても一悶着あったかもしれない。おそらく、その辺りも予測して長老自ら出てきたのだろう。

 門をくぐると、そこは別世界だった。直径数十メートル級の巨大な樹が乱立しており、その樹の中に住居があるようで、ランプの明かりが樹の幹に空いた窓と思しき場所から溢れている。人が優に数十人規模で渡れるであろう極太の樹の枝が絡み合い空中回廊を形成している。樹の蔓と重なり、滑車を利用したエレベーターのような物や樹と樹の間を縫う様に設置された木製の巨大な空中水路まであるようだ。樹の高さはどれも二十階くらいありそうである。

 

 

 俺達はその美しい街並みに見蕩れていると、ゴホンッと咳払いが聞こえた。どうやら、気がつかない内に立ち止まっていたらしくアルフレリックが正気に戻してくれたようだ。

 

「ふふ、どうやら我らの故郷、フェアベルゲンを気に入ってくれたようだな」

 

 確かにこれはアルフレリックの言う通り、素晴らしいものだ。周囲の亜人達やハウリア族の者達も、どこか得意げな表情だ。俺達はそんな彼等の様子を見つつ、素直に称賛する。

 

「ああ、こんな綺麗な街を見たのは始めてだ。空気も美味い。自然と調和した見事な街だな」

「ん……綺麗」

「凄いです。写真に保存しておきましょう」

「確かに記念撮影とかしたいね~」

 

 などなど掛け値なしのストレートな称賛に、流石に、そこまで褒められるとは思っていなかったのか少し驚いた様子の亜人達。だが、やはり故郷を褒められたのが嬉しいのか、皆、ふんっとそっぽを向きながらもケモミミや尻尾を勢いよくふりふりしている。

 ただ、詩乃だけはこちら側だ。

 俺達は、フェアベルゲンの住人に好奇と忌避、あるいは困惑と憎悪といった様々な視線を向けられながら、アルフレリックが用意した場所に向かった。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 現在、俺達はハジメとユエがアルフレリックと話す為に別れた。流石に全員がアルフレリックが用意した会議室に入ることはできない。そんなわけで、俺はハウリア族を守るためにここに残った。

 ここの連中はハウリア族に敵意を向けてきているし、因縁をつけて襲ってくる可能性が高い。それはそれで俺達としては嬉しいが、ハジメからしたら迷惑だろう。だから、今はまだ大人しくしておく。そのようにルサルカ達全員に通達し、ハウリア族を囲うように展開してもらう。流石に結界を張れば敵対行為になる可能性があるからだ。

 建国するのだから、敵対してくれた方が滅ぼす理由にはなるのだが……ああ、それにガチャの糧にもできる。こっちの方が現状では重要だな。ただし、やりすぎると召喚できる者達に見放される可能性もある。というわけで、今はそのまま待機だ。

 ただ、俺達の中で唯一、ハウリア族ではない獣人状態の詩乃に亜人達の視線が集まってきている。なので、横に座らせて腕を回す。彼女の肩を抱きながら様子をみることにする。ここに居る獣人達は詩乃の事を気にしているみたいだし、詩乃に襲い掛かってきたら排除する。これはハジメが何と言おうが実行するつもりだ。

 そんな風にしながら周りを観察していると、大柄な熊の亜人族や虎の亜人族、狐の亜人族、背中から羽を生やした亜人族、小さく毛むくじゃらのドワーフらしき亜人族が剣呑な眼差しで俺達を……ハウリア族を睨みつけていた。

 

「人間族に裏切り者のハウリア族に忌み子か」

 

 熊の亜人がこちらに近寄ってくる。そして、熊の亜人はシアに近付いて殴ろうとしてきたのでルサルカが動こうとする。だが、その前に俺が動いてシアやハウリア族の前に立って拳を身体で受け止める。

 普通にやっても間に合わないので、魔力放出を使って高速で移動して盾になる。頬を殴られた。その瞬間、皆から殺気が発せられる。恵里は手にネクロノミコンを呼び出し、ルサルカは鉈を呼び出した。そんなわけで殺さないように殴り飛ばそう。

 

「何をしている」

 

 そう思って拳を握ったが、即座に上からハジメ達が飛び降りるように降りてきた。なので、一斉に彼等へと鋭い視線が送られる。熊の亜人は俺の前に立ちながら、剣呑さを声に乗せて発言する。どうしようかな。ここで殴ったら、怒られるかな? 

 

「アルフレリック……貴様、どういうつもりだ。なぜ人間を招き入れた? こいつら兎人族もだ。忌み子にこの地を踏ませるなど……返答によっては、長老会議にて貴様に処分を下すことになるぞ。ましてやそちらの虎族は奴隷にされているのだぞ!」

 

 必死に激情を抑えているのだろう。拳を握りわなわなと震えている。やはり、亜人族にとって人間族は不倶戴天の敵なのだ。しかも、忌み子と彼女を匿った罪があるハウリア族まで招き入れた上に詩乃はすでに鈴がついた首輪をつけている。飼い猫という感じだ。亜人側からしたら、虎族となるのかもしれない。まあ、熊の亜人だけでなく他の亜人達もアルフレリックを睨んでいる。しかし、当のアルフレリックはどこ吹く風といった様子だ。

 

「なに、口伝に従ったまでだ。お前達も各種族の長老の座にあるのだ。事情は理解できるはずだが?」

「何が口伝だ! そんなもの眉唾物ではないか! フェアベルゲン建国以来一度も実行されたことなどないではないか!」

「だから、今回が最初になるのだろう。それだけのことだ。お前達も長老なら口伝には従え。それが掟だ。我ら長老の座にあるものが掟を軽視してどうする」

「なら、こんな人間族の小僧が資格者だとでも言うのか! 敵対してはならない強者だと!」

「そうだ」

 

 あくまで淡々と返すアルフレリックに熊の亜人は信じられないという表情でアルフレリックを、そして目の前の俺を睨んで鼻で笑う。何せ殴り返していないから仕方がない。

 それにフェアベルゲンは、種族的に能力の高い各種族の代表が長老となり、長老会議という合議制の集会で国の方針などを決めるらしい。裁判的な判断も長老衆が行う。今、この場に集まっている亜人達が、どうやら当代の長老達らしい。だが、口伝に対する認識には差があるようだ。

 

『こいつら、皆殺しにしたらフェアベルゲンを乗っ取れないかしら?』

『あの、怒るのはわかりますが止めてくださいね? お兄ちゃんがわざわざ殴られた意味がありません』

『まあ、仕方ないわね』

 

 アルフレリックは口伝を含む掟を重要視するタイプのようだが、他の長老達は少し違うのだろう。アルフレリックは森人族であり、亜人族の中でも特に長命種だ。二百年くらいが平均寿命だったと記憶している。だとすると、眼前の長老達とアルフレリックでは年齢が大分異なり、その分、価値観にも差があるのかもしれない。ちなみに、亜人族の平均寿命は百年くらいだ。

 そんなわけで、アルフレリック以外の長老衆は、この場に人間族や罪人がいることに我慢ならないようだ。

 

「……ならば、今、この場で試してやろう!」

 

 いきり立った熊の亜人が突如、目の前に居る俺に拳をまた振るってきた。あまりに突然のことで周囲は反応できていない。アルフレリックも、まさかいきなり襲いかかるとは思っていなかったのか、驚愕に目を見開いているのが横眼でみれた。

 身長二メートル半はある脂肪と筋肉の塊の様な男の豪腕が、俺に向かって振り下ろされる。亜人の中でも、熊人族は特に耐久力と腕力に優れた種族らしい。その豪腕は、一撃で野太い樹をへし折る程で、種族代表ともなれば他と一線を画す破壊力を持っているはずだ。シア達ハウリア族と傍らのユエ以外の亜人達は、皆一様に肉塊となったと思っただろう。

 

『防衛システム起動開始』

 

 目の前に魄翼が展開され、熊の亜人が放つ一撃を受け止める。盾になった魄翼、神喰の一つは傷一つ付かず、殴られた神結晶が埋め込まれている円形部分から大量の魔力が放出される。

 

『カウンタープログラム開始します。ジャガーノート、はつ……』

「待て」

 

 ジャガーノートとかぶっ放したら、この辺り一帯が消し飛ぶ。流石に綺麗な自然が破壊されるのは困る。だから、シュテルのルシフェリオンクローを形成する。

 

「奇怪な技を使いやがる! だが、無駄だ!」

 

 振るわれる拳をクローで受け止める。拳を握り潰す。ルシフェリオンクロ―には直撃の効果がある。故に防御は無意味。

 

「ぎゃあああああああぁぁぁっ!」

 

 握り潰した手を掴んだまま、思いっきり壁に投げつける。吹き飛んだ瞬間、魔力放出を使って追いついて拳を放つ。拳の一撃によって熊の亜人を壁に埋め込み、蒐集を行う。亜人だけあって魔法はなかったようで無駄な行為だった。なので、即座に飛び退り、周りに浮かせていた神喰を手で振るって放つ。()()で形成された刃が熊の亜人の両手両足にの近くにある場所に突き刺さり、どんどん近付いていく。

 

「やっ、やめろっ!」

 

 驚愕の表情を浮かべながらも危機感を覚え、必死に距離を取ろうとするが後ろは壁だ。このまま進めば両手両足は程なく斬り落とされる。

 

「そこまでにしておけ。で、お前らは俺達の敵か?」

 

 ハジメの言葉で俺が止まったので、アルフレリックが何とか執り成し、蹂躙劇が回避された。熊の亜人は内臓破裂、ほぼ全身の骨が粉砕骨折という危険な状態であったが、何と一命は取り留めたらしい。高価な回復薬を湯水の如く使ったようだ。もっとも、もう二度と戦士として戦うことはできないし、目の前に迫る刃に恐怖を感じて先端恐怖症になったらしい。

 現在、当代の長老衆である虎人族のゼル、翼人族のマオ、狐人族のルア、土人族(俗に言うドワーフ)のグゼ、そして森人族のアルフレリックが、ハジメと向かい合って座っていた。ハジメの傍らにはユエとカム、シアが座り、その後ろにハウリア族が固まって座っている。その隣に俺達が座る。

 長老衆の表情は、アルフレリックを除いて緊張感で強ばっていた。戦闘力では一,二を争う程の手練だった熊の亜人が、文字通り手も足も出ず瞬殺されたのであるから無理もないだろうし、神喰を展開したままだ。

 

「で? あんた達は俺等をどうしたいんだ? 俺は大樹の下へ行きたいだけで、邪魔しなければ敵対することもないんだが……亜人族としての意思を統一してくれないと、いざって時、何処までやっていいかわからないのは不味いだろう? あんた達的に。殺し合いの最中、敵味方の区別に配慮する程、俺はお人好しじゃないし、俺達のメンバーの中には容赦しない奴も多い」

 

 ハジメの言葉に身を強ばらせる長老衆。言外に、亜人族全体との戦争も辞さないという意志が込められていることに気がついたのだろう。実際、俺としては大歓迎だ。

 

「こちらの仲間を再起不能にしておいて、第一声がそれか……それで友好的になれるとでも?」

 

 グゼが苦虫を噛み潰したような表情で呻くように呟く。

 

「は? 何言ってるんだ? 先に殺意を向けてきたのは、あの熊野郎だろ? 沙条は返り討ちにしただけだ。再起不能になったのは自業自得ってやつだよ」

「だいたい、殺意を向けてきたのだから殺されても無理はない。命を助けてもらえただけありがたく思うんだな」

「き、貴様等! ジンはな! ジンは、いつも国のことを思って!」

「それが、初対面の相手を問答無用に殺していい理由になるとでも?」

「そ、それは! しかし!」

「というか、それ、私達には関係ないでしょ」

 

 ルサルカの言葉は事実だ。国の事を思ってあのような事をしたのなら笑止千万だし、こっちにとっては知ったことではない。

 

「勘違いするなよ? 沙条は被害者で、あの熊野郎が加害者。長老ってのは罪科の判断も下すんだろ? なら、そこのところ、長老のあんたがはき違えるなよ?」

 

 おそらくグゼはジンと仲が良かったのではないだろうか。その為、頭ではハジメの言う通りだと分かっていても心が納得しないのだろう。だが、そんな心情を汲み取ってやるほど、俺達はお人好しではない。

 

「グゼ、気持ちはわかるが、そのくらいにしておけ。彼の言い分は正論だ」

 

 アルフレリックの諌めの言葉に、立ち上がりかけたグゼは表情を歪めてドスンッと音を立てながら座り込んだ。そのまま、むっつりと黙り込む。

 

「確かに、この少年達は紋章の一つを所持しているし、その実力も大迷宮を突破したと言うだけのことはあるね。僕は、彼を口伝の資格者と認めるよ」

 

 そう言ったのは狐人族の長老ルアだ。糸のように細めた目で俺達を見た後、他の長老はどうするのかと周囲を見渡す。その視線を受けて、翼人族のマオ、虎人族のゼルも相当思うところはあるようだが、同意を示した。代表して、アルフレリックがハジメに伝える。

 

「我らフェアベルゲンの長老衆は、お前さんを口伝の資格者として認める。故に、お前さんと敵対はしないというのが総意だ……可能な限り、末端の者にも手を出さないように伝える。……しかし……」

「絶対じゃない……か?」

「ああ。知っての通り、亜人族は人間族をよく思っていない。正直、憎んでいるとも言える。血気盛んな者達は、長老会議の通達を無視する可能性を否定できない。特に、今回再起不能にされたジンの種族、熊人族の怒りは抑えきれない可能性が高い。アイツは人望があったからな……」

「それで?」

 

 アルフレリックの話しを聞いても俺達の顔色は変わらない。すべきことをしただけであり、すべきことをするだけだ。アルフレリックはその意志を理解した上で、長老として同じく意志の宿った瞳を向ける。

 

「お前さんを襲った者達を殺さないで欲しい」

「……殺意を向けてくる相手に手加減しろと?」

 

 有り得ないと、ルサルカや恵里達は思っている。もっとも、ユーリは悩んでいるみたいだ。

 

「そうだ。お前さんの実力なら可能だろう?」

「あの熊野郎が手練だというなら、可能か否かで言えば可能だろうな。だが、殺し合いで手加減をするつもりはない。あんたの気持ちはわかるけどな、そちらの事情は俺にとって関係のないものだ。同胞を死なせたくないなら死ぬ気で止めてやれ。それにこっちには殺すのが好きな奴等もいるからな」

 

 俺達が奈落の底で培った敵対者は殺すという価値観は根強く心に染み付いている。殺し合いでは何が起こるかわからないが、俺としては魂の回収のために容赦はするつもりはない。手加減などして、窮鼠猫を噛むように致命傷を喰らわないとは限らない。その為、ハジメが頼みを聞いたとしても、俺達は約束していないのだから問題ない。しかし、そこで虎人族のゼルが口を挟んだ。

 

「ならば、我々は大樹の下への案内を拒否させてもらう。口伝にも気に入らない相手を案内する必要はないとあるからな」

 

 その言葉に、俺達は訝しそうな表情をした。もとより、案内はハウリア族に任せるつもりだから、フェアベルゲンの者の手を借りるつもりはない。そのことは、こいつらも知っているはずだ。どういうつもりだ? 

 

「ハウリア族に案内してもらえるとは思わないことだ。そいつらは罪人。フェアベルゲンの掟に基づいて裁きを与える。何があって同道していたのか知らんが、ここでお別れだ。忌まわしき魔物の性質を持つ子とそれを匿った罪。フェアベルゲンを危険に晒したも同然なのだ。既に長老会議で処刑処分が下っている」

 

 ゼルの言葉にシアは泣きそうな表情で震え、カム達は一様に諦めたような表情をしている。この期に及んで、誰もシアを責めないのだから情の深さは折紙付きだ。

 

「長老様方! どうか、どうか一族だけはご寛恕を! どうか!」

「シア! 止めなさい! 皆、覚悟は出来ている。お前には何の落ち度もないのだ。そんな家族を見捨ててまで生きたいとは思わない。ハウリア族の皆で何度も何度も話し合って決めたことなのだ。お前が気に病む必要はない」

「でも、父様!」

 

 土下座しながら必死に寛恕を請うシアだったが、ゼルの言葉に容赦はなかった。

 

「既に決定したことだ。ハウリア族は全員処刑する。フェアベルゲンを謀らなければ忌み子の追放だけで済んだかもしれんのにな」

 

 ワッと泣き出すシア。それをカム達は優しく慰めた。長老会議で決定したというのは本当なのだろう。他の長老達も何も言わなかった。おそらく、忌み子であるということよりも、そのような危険因子をフェアベルゲンの傍に隠し続けたという事実が罪を重くしたのだろう。ハウリア族の家族を想う気持ちが事態の悪化を招いたとも言える。何とも皮肉な話だが、俺としては好ましい。

 

「そういうわけだ。これで、貴様が大樹に行く方法は途絶えたわけだが? どうする? 運良くたどり着く可能性に賭けてみるか?」

 

 それが嫌なら、こちらの要求を飲めと言外に伝えてくるゼル。他の長老衆も異論はないようだ。

 

「お前、アホだろ?」

「な、なんだと!」

 

 ハジメの物言いに、目を釣り上げるゼル。シア達も思わずと言った風にハジメを見る。ユエはハジメの考えがわかっているのかすまし顔だ。

 

「俺達は、お前らの事情なんて関係ないって言ったんだ。俺達からこいつらを奪うってことは、結局、俺の行く道を阻んでいるのと変わらないだろうが。そうだろう?」

 

 ハジメは長老衆を睥睨しながら、スっと伸ばした手を泣き崩れているシアの頭に乗せた。ピクッと体を震わせ、ハジメを見上げるシア。

 

「俺から、こいつらを奪おうってんなら……覚悟を決めろ」

「ハジメさん……」

 

 ハジメにとって今の言葉は単純に自分の邪魔をすることは許さないという意味で、それ以上ではないだろう。しかし、それでも、ハウリア族を死なせないために亜人族の本拠地フェアベルゲンとの戦争も辞さないという言葉は、その意志は、絶望に沈むシアの心を真っ直ぐに貫いたようだ。これは計画通り惚れてくれたか。

 

「本気かね?」

 

 アルフレリックが誤魔化しは許さないとばかりに鋭い眼光でハジメを射貫く。

 

「当然だ」

「フェアベルゲンから案内を出すと言っても?」

 

 ハウリア族の処刑は、長老会議で決定したことだ。それを、言ってみれば脅しに屈して覆すことは国の威信に関わる。今後、ハジメ達を襲うかもしれない者達の助命を引き出すための交渉材料である案内人というカードを切ってでも、長老会議の決定を覆すわけにはいかない。故に、アルフレリックは提案した。しかし、交渉の余地などはじめっからない。

 

「何度も言わせるな。俺の案内人はハウリアだ」

「なぜ、彼等にこだわる。大樹に行きたいだけなら案内人は誰でもよかろう」

「約束したからな。案内と引き換えに助けてやるって」

「……約束か。それならもう果たしたと考えてもいいのではないか? 峡谷の魔物からも、帝国兵からも守ったのだろう? なら、あとは報酬として案内を受けるだけだ。報酬を渡す者が変わるだけで問題なかろう」

「問題大ありだ。俺達が約束したのはこいつらの安全だ。住む場所だって用意すると約束しているからな」

「それで我等と戦争をすると?」

「むしろ、戦争をしたいのなら、乗ってあげるわ。ねえ、そうよね」

「ああ。やるなら大歓迎だ」

 

 ルサルカの質問に俺が発した事で全員の視線が俺に集まる。フェアベルゲンの連中からは信じられないと言った感じだ。

 

「我等はハウリア族をなんとしても殺すぞ。そうなれば、お前達は大樹の下へはいけんぞ」

「問題ない。例えハウリア族が全滅しようと、樹海もろとも吹き飛ばし、道を繰り出せばいいだけだ」

「「「っ!?」」」

「で、できるわけがない!」

「お前、スターライトブレイカーを使うつもりか?」

「ああ、アレなら森を消し飛ばす。すくなくとも再生するまでの間に道はできる。どうせ敵しか居ないのなら、何も問題ない」

 

 むしろ、こちらとしては大歓迎だ。ユーリにも怒られず、合法的に潰せるんだからな。

 

「まあ、そういうわけだ。俺達にとってその気になればどうとでもできる」

 

 その後も話し合い、色々と決まっていった。ハウリア族は俺達の奴隷という扱いになり、俺達に手を出したら自己責任ということとなった。俺達は街や村に立ち入らない事。だが、観光はしたいので少しだけ滞在する許可だけはもらった。

 だから、ハウリア族が住んでいた場所には絶対に行かないといけない。そこで恵里に頼んで、シアの母親と会わせてやるのもいいだろう。

 

 

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