アルフレリック・ハイピスト
ハルツィナ樹海にやってきた人族と獣人の者達。彼等はオルクス大迷宮を攻略した者達だった。故に私は口伝に従って彼等を招き入れた。敵対すれば我等が滅ぼされる事がわかっているからだ。例え、それが憎き人族の者達であってもフェアベルゲンを守るためだ。
「ハウリア族は忌み子シア・ハウリアを筆頭に、南雲ハジメの身内と見なす。そして、資格者南雲ハジメに対して敵対はしないが、フェアベルゲンや周辺の集落への立ち入りを禁じ、二日以内に退去を命じる。以降、南雲ハジメの一族に手を出した場合は全て自己責任とする……以上だ。何かあるか?」
交渉した結果。処刑すべきハウリア族。彼等は我等に黙って忌み子を隠し続けていた。故に見逃す事はできないが、聞いた話では彼等ハウリア族は対外的には奴隷とすることを条件として助けるらしい。なので、忌み子を隠していたハウリア族は一族諸共、南雲ハジメの奴隷とする事を罰とした。
「いや、何度も言うがこちらはこいつらの案内で大樹に行ければいいんだ。文句はねぇよ」
「こちらも二日以内に観光すればいいだけだしな。フェアベルゲンの綺麗な街並みを見せてくれればいい。これからもう入れないというのなら、尚更だ」
「……そうか。ならば、ようやく現れた口伝の資格者だ。歓迎できないのは心苦しいが二日の滞在だけは許可しよう」
「気にしないでくれ。全部譲れないこととは言え、相当無茶言ってる自覚はあるんだ。むしろ理性的な判断をしてくれて有り難いくらいだよ。沙条もいいよな?」
「ああ、観光できたし、後は……」
沙条真名の視線が私の耳に注がれる。それを見ながら苦笑いする。どうやら、彼は森人族に興味があるようだ。もしかしたら、森人族が狙われるかもしれないが……大丈夫だろう。
「泊まる場所は何処にすればいい? 街の外か?」
「それは相談して決めさせてもらう──」
他の長老達は渋い表情か疲れたような表情だ。恨み辛みというより、さっさとどっか行ってくれ! という雰囲気だ。
「──いや、我等の場所で良かろう。案内をつける」
「わかった」
護衛の一人である同胞に指示を出して案内してもらう。そうすると、あからさまに他の族長はほっとした表情を浮かべた。その様子に肩を竦めた南雲ハジメ達は仲間を促して立ち上り、外へと出て行った。それからしばらく部屋の中ではそれぞれが部族に指示を出し、手出しをさせないように通達していく。
しばらく沈黙が続き、最初に声を出したのは狐人族の長老ルアだ。
「で、どうする?」
「どうするとは? 先程決まっただろう?」
「もしかして仕掛けるのか? 止めておけ。ジンを再起不能にしたのはムカつくが、あのいきなり現れた武装はやべえ。相当えげつない効果が付与されたかなりの業物だ。見ただけでも未知の技術だ」
長老衆の一人で、
「まあ、うちが言ってるんは
「確かにそうだな。何らかの仕返しをせねば……」
「止めておけ。沙条真名から解放されたあの凄まじい魔力を使われれば我等は何もできずに一瞬で殺されるだけだ。報復する理由を与えるべきではない。南雲ハジメはともかく、沙条真名や他に居た者達……特に赤髪と黒髪の少女二人は我等を殺したくてたまらないようだった」
「俺は魔力を感じられねえが、それだけやばいのか」
「うむ。我等森人族の数百倍はある。それがあの浮かぶ剣と盾からも感じられたのだ。浮かんでいた数から森人族が千体の戦力はあると考えるべきだ」
「アーティファクトか」
それが一人だけならいいが、残りの連中もあのレベルか、もしくは多少下だとしても私達にとって災害と同じだ。
「わかっとるわ。やから、ここで提案や。このまま引き下がれば長老会議としての決定に意を唱える奴等は絶対に出るで。そうなると余計に被害が増えよる」
「だが、ルア。どうするというのだ?」
「ええか。アイツ等のグループは主に二つに分かれとる。力関係はようわからなんが、少なくとも二人の男によって分けられとるのはわかった」
「二人の男……なるほどね」
「お、マオはわかったみたいやな。ハニートラップを仕掛ける」
「仲違いさせて争わせるのか」
「阿保。ここでやられたら余波でうちらが死ぬわ。やから、人族の街とかでやらせればいい。そうなったら被害はうちらにはない」
なるほど。確かにそれならば我等に被害はないだろう。だが、問題はハニートラップをする相手だ。嫌な予感がする。
「良い考えですね。それに仲違いさせられなくても、伝手を持っていればフェアベルゲンが危機に瀕した時に救援してもらえるかもしれません」
「人間族なら大丈夫だろう。気にする必要はない」
「いえ、私が気にしているのは魔族です。空から何度か偵察をしていますが、魔族は
「なるほど。確かに少数の犠牲で生き残れるか」
「また、彼等に奴隷とされた亜人達を解放する手伝いをしてもらえるかもしれません」
「せやな。てなわけで、罪人のハウリア族だけに樹海の案内は任せられん。そういう風に言い含めてフェアベルゲンからも案内を出すってことでええやろ」
「なら人員が問題ですわね」
「人員なら
やはりそう来るか。話の内容から予想はできていたが、我等には我等の問題がある。
「待て。それは無理だ。我等森人族には若い子供が少ない」
「アルテナがいるやないか。他にも何人かおる」
「だが、アルテナや皆は……」
「それに見てた限り、あの沙条真名ってのは森人族に反応して耳とかをよう見てはったし、成功する確率が高いやろう。どうや、皆」
「賛成だ!」
「こちらも賛成する」
「私もだ」
「決まりやね。二人選出や。若い女の子やったらええ」
「それなりに立場がある者でないとまずいでしょうが、お願いしますね」
「……わかった」
くそっ、長老会議の決定には従わないといけない。これはどうしようもない。せめて孫娘のアルテナ以外を……いや、それは皆で決めるべきだ。
◇
森人族で彼等を歓待させながら、夜になってから全員を集める。例外はなく、幼い子まで全員を集めた。
「彼等はどうだ?」
「ハウリア族が住んでいた住居に居ます。ここでの話は聞かれる事はないかと……」
「そうか。では、長老会議で決まった決定を伝える」
私は皆に長老会議で決まったハニートラップの用意を森人族から出さないといけない事を伝えていく。
「何故我々だけが負担をせねばならぬのだ!」
「そうだ! アルフレリック様は口伝に従っただけだろう!」
「そうしなければフェアベルゲンが滅んでいただけではないか!」
「だが、口伝に従ってここに招いたのは私であり、彼等が我等に興味を持っているのも事実だ。成功率の話をされたら断る事ができなかった。すまぬ」
「長老……」
「ならば決まりですね。私が行けばいいだけです」
「アルテナ様!」
アルテナは地面に届くほどの長い金髪を持ち、聡明で美しい美貌と心優しい性格から同族から慕われている。故にこそ皆の怒りも理解できる。我等森人族は長命種のせいか、子供がなかなかできぬ。なので全員でしっかりと育てるのだ。
「私は皆様に大切に育てて頂きました。ですから、私の身で恩を返せるのならば構いません」
「アルテナ様でなくても、私が行きます」
「いいえ、私が行きます」
「良いのか?」
「はい。昼間に感じた魔力は私も感じておりました。あのような魔力を持つ方の子供ならば、私達の未来は明るくなります。それにいざという時、ハウリア族の為にあそこまでしてくれるのなら、私達
「確かに婚姻相手としては申し分ないが、わかっているのか? 外に行く事になるのだから、奴隷になるのだぞ? 誘拐されるかもしれんし、飽きられて売られるかもしれん。それでも行くのだな?」
「はい。任せてください」
「そうか……ならばアルテナに行ってもらうとして、他にも考えねばならん。我等の可愛いアルテナをやるのだ。得られる対価は最大限でなくてはならん」
まずはどちらに狙いを絞るかだ。南雲ハジメと沙条真名。どちらの方が利益を得られる?
「南雲ハジメは二人だが、沙条真名は……」
「多いな。だが、逆に言えば欲望に素直で与しやすい可能性がある」
「どうせやるなら、私も……」
「それは駄目よ。貴女達は幼すぎるもの」
「しかし、そういう趣味の可能性は高いぞ。どちらもあまり成長していない子を連れている」
「うむ。これは……」
真剣に話し合いを行う。相手の趣味嗜好を分析をしてこちらの言う事を聞いてもらわなければならない。最低でもアルテナの身の安全は保証してもらわねばならぬのだ。こればかりは孫をやるのだから絶対だ。
「面白い話をしているわね」
「「「っ!?」」」
声が聞こえて後ろを振り向くと、そこに赤い髪の毛をした黒い服の悪魔が居た。彼女から感じる禍々しい膨大な魔力は魔族を思わせる。そして、我等を瞬殺できると思えるほどの殺気を放ってきた。
「人の旦那にハニートラップを仕掛けようなんて、覚悟はできているのかな~?」
「はい。ですが、私は長老達が望むハニートラップを仕掛けようとは思いません。尽くして尽くして信頼を勝ち取り、私の同胞達を守ってもらえればと思います」
「裏切る可能性がある奴の味方をするとでも思っているの? 言っておくけれど、敵意を向けている奴を守るつもりはないわよ」
「でしたら、問題ありませんね。私達、森人族は貴女達に敵意を抱きませんし、裏切らない事を誓います。誓いを違えたら私を殺してください」
「ふ~ん、
「はい。
「アルテナの身の安全を保障してくれるのであれば構わぬ」
皆がしっかりと頷くと、彼女の殺気が霧散して雰囲気が変わる。どうやら、わかってくれたようだ。我等は生き残るために他の種族と過ごしているが、我等ばかりに犠牲を強いるというのなら離脱もやむを得ない。それは別の庇護があることが前提となってしまうが、彼等がなってくれるというのなら問題は一つもない。
「それじゃあ、交渉しましょうか。ハウリア族を譲ってもらった代価とそのアルテナだっけ?」
「はい。アルテナ・ハイピストと申します。これからよろしくお願いします」
「はいはい、私はルサルカ・シュヴェーゲリン。こちらこそよろしくね。それでアルテナの代価として、森人族と交易をしようと思いますし、何人かを彼女の世話係と護衛として受け入れます」
「世話係は要りません。むしろ私がお世話をしますので」
「そう……それなら護衛ね」
「わかった。選別する。だが、交易かね?」
「そうよ。私達は大樹の下に拠点を作成する予定よ。だから、そこでなら森人族に様々な物資を渡す事も可能ね。例えば人間共を殺せる
拠点か。確かに我等フェアベルゲンが今はハルツィナ樹海の一部を占拠して生活をしているが、全てを占拠しているわけでもない。それに拠点を作られてしまえばフェアベルゲンにはどうする事もできない。大迷宮を攻略するための拠点だと言われたらどうしようもない。我等はあくまでも間借りしているだけであり、このハルツィナ樹海の持ち主からしたら彼等こそ正当な後継者であり、挑戦者だ。
「それはまことか?」
「ええ。森人族全員でこちらに来てもいいし、襲われた時の緊急避難先とするだけでもいいし、好きにしたらいいわ。もっとも、差別はしないこと。それが条件よ」
「その条件は助かるが……代価はなんだ」
「恨みと偏見を捨てなさい。貴女達が忌み子と嫌う魔力を操作する力はただの力でしかない。それに
「お前達は……人族全てと戦争をするつもりなのか?」
「いいえ、人族だけじゃないわ。魔族や果ては神様まで敵対する者は全て排除するわ。でも、それがどうしたの? 貴女達は神から異端認定された亜人であり、ただの玩具……いいえ、樹海に引き篭もって怠惰を貪るだけの塵屑よ」
「なんだと!」
「ふざけるな! 我等は……」
「なら、私達と共に来なさいよ。人間達が憎いんでしょ? だったら、力を上げるから殺しなさい。
ルサルカ・シュヴェーゲリンと名乗った女は悪魔だ。彼女の言葉が紡がれるにつれて若者達の心に火がついていく。いや、家族を奪われた者達も同じだ。勝てると、少なくとも負けないと思わせるだけの魔力を彼女達は持っている。
「お前達の目的はなんだ?」
「ハジメは元の世界に帰る事。これは伝えたし間違いじゃない。でも、私達の、沙条真名の目的はこの世界に多種族が共に暮らす平和な国家を作る事。人族だろうが、魔族だろうが、亜人族だろうが、
「国家の建国か。それがどれだけ難しいか、わかっているのか?」
「難しい? そんな事、神を殺すのだから当然でしょう。国家なんてその為の手段でしかないともいえるわ」
既に我等は神に見捨てられている。ならば彼等と共に行っても問題ないが、やはり保険は打つべきだな。
「まずはアルテナと数名の護衛をつける。その者達は好きにしてくれ」
「こちらの経過を見ながら私達とフェアベルゲンを比べるのね」
「駄目か?」
「いいえ、問題ないわ。多分、アルフレリックだったかしら。貴方は私の義理の父親になるかもしれないし、リスクマネジメントは当然だからね。しかし、年下の父親ができるのって変な話よね~」
「「「は?」」」
「えっと、我等森人族の年齢は……」
「生きているっていっても二百年でしょ? 私は……あ、やっぱりなしで。ルサルカちゃんはぴちぴちの17歳の女の子で~す」
「じゅうなな?」
「あ”?」
「「「なんでもありません!」」」
「よろしい♪」
どうやら、悪魔というのはあながち間違いではないらしい。いや、むしろ彼女は魔女か。だが、このまま終わりが来るまで座しているよりも、動くべきであろう。
アルテナの情報、ほぼないですね。身長とかどれぐらいなんだろうか? まあ、いいですね。性格は少し違うかもしれません、読んだの大分前ですからね。いっそ容姿かえてリアルコッコロたんにしてみるか。ルサルカからしたら自分より大きい妹を認めるか……優花一人でいいとかいいそうだし。
それか原作通り、ハジメの方にするか。
メンバーが加入しました。
アルテナ・ハイピスト
護衛エルフ九人。
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