ヴライからのドロップ(剥ぎ取り品?)は仮面だ。この仮面の使用はかなり気を付けなければならない。何せ超常の力を得られる反面、魂を代価に力を引き出しているので無くなれば消滅する。原作のうたわれるものでも、オシュトルやハクがこれによって魂を使いすぎて消滅した。まあ、ハクに至っては神様の力を奪い取って戻ってきたとも言えなくはない。
「で、今回はここまでか?」
「まあ、次は拠点を作ってからだな。流石にヴライ二体とタタリまで戦ったんだ。この辺りで止めておくのも手だろう」
「珍しいな。お前がガチャを止めるなんて」
「だって、アレだぞ」
「まあ、そうか」
俺が見た方向ではハクが抱えているオシュトルにネコネが抱き着いて涙を流しながら頬擦りしている光景だ。ハクもオシュトルも苦笑いしているが、とても嬉しそうに話している。ハクはどんなにオシュトルのせいで苦労したかを話し、オシュトルはネコネを撫でながら愚痴を聞いている。
その光景に涙が出る。ハクはオシュトルが死んだ時にオシュトルからヤマトの姫であるアンジュを頼むと言われ、自らを死んだ事にしてオシュトルとして生き、それを貫き通して最後の最後で仲間にしらせた。ネコネは自らが大好きな兄が死ぬ原因を作り、目が死んで生きる屍のように働いてきた。ネコネの方はある程度、ハク達のお蔭で元気にはなったのが唯一の救いか。
「アレは良かったな」
「偽りの仮面だけでなく、二人の白皇もアニメにしてほしいかった」
「確か制作発表はされていたぞ」
「これはなんとしても戻らねば」
「アニメのためかよ」
「まあ、基本的にこっちに残るだろうがな」
森が燃えているので火を消して、大地に魔力を注いでおく。するとみるみるうちに再生して樹海へと戻っていった。流石は大迷宮の一つだ。
「お前、また魔力が上がったか?」
「形成はできるようになったからな」
美遊と更に深く繋がったお蔭で扱える魔力が格段に増えた。集めた魂はせっせとくべているのも理由の一つだ。
「この仮面の使い道だが、今はいいよな?」
「俺は使わないしな。
「それもそうだな」
魂を燃料とするのなら、集めた魂を使えば自分に跳ね返ってくるデメリットは存在しない。こう考えると、俺達の中で使えるのは俺と鈴、恵里とルサルカぐらいか。鈴は浄化して力だけ集めている分、鈴自身の魂が代償になるので余りお勧めしないが。いっその事、ルサルカの
「ハジメ、後始末を頼めるか?」
「いいだろう。貸しだからな」
「あいよ」
さて、詩乃達の様子を見る前にオシュトルの様子を見ないといけない。
「ユーリ、デバイスのチェックを頼む。ルサルカは一緒に来てくれ」
「わかりました」
「了解」
デバイスをユーリに預ける。詩乃達も皆のデバイスをユーリにチェックしてもらう。戦闘で負った故障個所や不具合を見つけて修理するのはもちろん、戦闘データからデバイスの改造案を構築してくれるので、ユーリの負担は大きいけれど任せるしかない。
ユーリの所から離れて、ルサルカと共にオシュトル達の所へと移動する。三人もすぐにこちらに気付いてくれた。
「
「助かったよ。ありがとさん」
「ハクさん!
ハクの言葉にネコネは袖の中に隠れている小さな手で顔を拭いながら怒る。ネコネの服は袖がかなり余り、手が出ないように作られているので仕方がない。宮中で着るような服だしな。
「
「そもそもネコネの言う
「いえ、私達を作ったという意味では同じなのです。ですから敬うべきなのです」
「あ~そうした方がいいか?」
「いや、必要ない」
「だそうだ。それよりも要件は俺達の事だよな?」
「そうだが、違和感があるから仮面外してやってくれないか?」
「外れない」
やれやれと言った感じだが、実際に外れないのだろう。
「まあ、ちゃんとする時にしてくれればいい。オシュトル、怪我の方はどうだ?」
「傷は治まっていますが、本調子ではありません」
「やはり他人の魂で無理矢理代用しているのだから、不調は当然か」
「当たり前ね。まあ、少し調整してあげるわ」
「頼む」
ルサルカがオシュトルの身体に触れて魔術を使っていく。それを不安そうに見ているネコネだが、どことなく魔術に興味がありそうだ。
「動けるようにはしたけれど、戦闘はやめておきなさい。特に
「しかし……」
「絶対安静だ。戦闘はハクに任せてそれ以外の仕事を頼む。俺達はこれから国を作るつもりだから、内政をしてくれると助かる。それに完全復活するための手段はこの世界にあるから、少しだけ待っていてくれ。っと、先にこの世界の事について説明する」
今まであった事と、この世界の事情を話して改めて協力を要請する。オシュトルは話を聞いてしっかりと頷いてくれた。
「承りましょう」
「私も及ばずながら協力させていただくのです。兄様を助けて頂いたご恩をお返ししたいのです。それに頑張れば兄様の身体を治療できるのですよね?」
「魂魄魔法を使えば可能でしょうね」
「ならば協力するのです」
やっぱり見れば見るほどネコネは可愛らしくていい子だ。あんな死んだような目をさせるのは忍びない。
「というか、俺も働かなくてはいけないのか?」
「当然なのです」
「食事や酒を要らないというのなら、それでもいいが……」
「それは嫌だな」
「ハク、これならどうだろうか。国が安定し、この世界を支配する邪神を倒したら、俸禄だけ受けとれてぐうたらしていても食うに困らないようにする事を約束しよう」
「ほほう」
「今度はオシュトルも居るし、俺達も居る。すくなくともヴライを倒せる実力はある」
「……いいだろう。その話、乗ってやる」
エヒトを倒して国が安定したのなら、ハクの役目は終わりと言っていい。なら、適当に地位と土地を与えて領主に任じてやればいい。後の事は自分でするだろう。人材を集めて働かせるもよし、自ら嫁の紐になるもよし。好きにするがいいさ。
「これで協力は得られたな。さて、次は……」
「その前に神水を与えておきなさい。発作が起きたりしたら直ぐ飲むのがベストだけど、まあ今は定期的に摂取しておけば大丈夫よ」
「わかった。さて、オシュトルは好きだが、ネコネと違って性的興味は一切ない」
「私はあるのですか!? ときおり感じていたのはそういう視線ですか!」
隣に居るルサルカに脇を抓られたが、気にしない。
「男色ではない証明だ。で、先に言った事を前提に伝えるが……神水という回復薬は俺の体液から作られている。そんな訳で唾液、汗、血液、アレなど様々な物が神水となっているのだが……どれで飲みたい? 俺的には血液がお勧めだ」
「それって血液しか選択肢がねえじゃん」
「だな。某も
良かった。カッコつけた手前、血液以外の奴を選ばれたら非常に困った。なのでオシュトルの選択は非常に助かった。
っと、何時までも待たせられないので、宝物庫からコップとナイフを取り出す。魔力でナイフを強化してから腕を切って血液をコップの中へと注ぎ込んでいく。
「さあ、飲んでくれ」
「本当に回復するのか?」
「それは間違いない。こちらに来た時に飲ませてもらったが、確かに傷は治った」
「なら大丈夫か」
「うむ」
オシュトルが血液を飲んでいく。すると顔色が良くなっていくのがわかる。ルサルカに言われた通り、これで大丈夫だろう。
「あの、大丈夫なのですか?」
「ん? ああ、どうせすぐに治る。ほら」
心配してきたネコネに見せると、すぐに傷が再生して綺麗に元に戻る。本来、自分の魔力でコーティングしないとを傷をつけることはできない。
「ちなみに物凄く値段が高いわよ。その薬」
「い、いくらなのです?」
「値段で換算するとヤマトの帝が数年に一回飲めるかどうかじゃないかな?」
「ひっ!? と、とんでもない値段なのです!」
ヤマトは大陸にある大国でそこを支配する旧人類である帝。彼はその技術力と残った施設でかなりの力と資金を有している。それこそ数百年単位で延命できたり、ユーリと同じく培養槽で身体を作ったり、新たな亜人を生み出したりできる。いや、そう考えるとそこまでじゃないか。まあ、万能薬に変わりはない。
「その分、期待しているって事だ。特にハクは神殺しをなしてその力を簒奪までしているからな」
「いや、アレは特殊だからな……」
「まあ、これで移動できるよな?」
「大丈夫よ」
「よし、それなら移動しよう」
オシュトルをハクが抱え、ネコネが支えて俺達の先導で進んでいく。移動した先でコテージやテントなどを取り出して新しいキャンプ地を作成する。作り終えればそこでオシュトル達を休ませていく。もっとも、儀式をするので悠長に休んではいられないだろう。
◇
コテージの前に宝物庫から出したテーブルや椅子を配置し、皆が座って目の前にあるご馳走に目を輝かせている。ネコネ達の前にも大量の食事が用意されていて彼等も例外ではない。ハジメ達や嫁達の前にもちゃんと料理が用意されていて、とても美味しそうだ。
ただ、アルテナを含む十人の森人族とカムを含むハウリア族。幼い子供は少し離れた場所で並んでその時を待っている。森人族は覚悟を決めている意思の強い瞳をしているが、ハウリア族は身体を震わせているようだ。
「今回、新しく入った三人を紹介する。まずオシュトル。彼は回復するまでは作る国の内部について色々と手伝ってもらう。治療が終われば将軍としても活躍してもらう予定だし、俺達が居ない時のトップだと思ってくれ」
「オシュトルと申す。若輩者であるが、よろしくお願いいたす。過分な期待を頂いておりますが、誠心誠意力を尽くさせて頂く所存。どうか、皆の力を貸して欲しい」
俺の言葉にオシュトル達も驚いているが、何より驚いているのはアルテナ達だ。まあ、彼女達からしたらまったく知らない人物が自分達の上になるし、負傷しているのだから仕方がないだろう。
「次はハク。彼には戦場で総大将として活動してもらう。彼の指揮に従って動くように」
「自分はハクだ。よろしく頼む。皆が不安に思う気持ちは理解できる。この世界での経験はないが、別の世界でそれなりに戦ってきたので任せて欲しい」
ハクは
「彼は実際に彼の世界で仲間と共に神を倒し、その力を手に入れた先達だ。神の力自体は持ってこれていないが、それでも戦乱を生き抜いて勝利に導いた立役者だ。我等以外、全てが敵である可能性が高い現状、彼の力は役に立つ。だから、どうか従うように」
ハクはコッソリと嫌そうな視線を送ってくるが、知った事ではない。報酬は約束しているし、新しい嫁でも作って支えてもらうがいい。あの双子とクオンを召喚したらもれなく譲渡するが。
「さて、最後にネコネだ」
「ネコネなのです。兄様達と違ってたいした事はできないのですが、治癒の法術と知識は豊富に……あ、この世界では役に立たないかもしれないですが、頑張るのです」
ハウリア族からはないが、森人族の方からネコネ達に対する感情は悪い。アルテナも顔には出していないが不満はあるだろう。そのため、他の森人族から睨まれている。
「彼女はオシュトルとハクの妹だ。それとネコネも俺の嫁だ」
「ふぇっ!?」
ネコネの肩を掴んで引き寄せ、宣言するとネコネはかなり驚いてこちらを見て騒ごうとするが、その前にお腹に顔をあてて声を出せなくする。
「つまり、ハクとオシュトルは俺の親族となるので、指揮官としては何も問題はない。後々、お前達も能力を示せば重要な役職を与えていく。今はまだ、お前達の力を把握できていないから、取り立ててはいない。まあ、森人族は薬学の知識があるから、それで役立ってもらう予定だ。それと互いに足の引っ張り合いはご法度だ。発見次第、罰としてルサルカの拷問を味わってもらう。互いに仲良く高めあうように」
アルテナの方は頷いた後、他の森人族を説得してくれる。彼女はネコネと同じ立場になるので、森人族としても対面は保たれるので説得は容易いだろう。
「ネコネもいいな?」
「……わかったのです。兄様達への権威付けなのですね」
「そうだ。それが一番手っ取り早いからな。ただ、ネコネは嫌だろうから実際にはそれらしい事はふりだけでいい」
「は、はいです」
ネコネを二人の下へと戻すと、ハクはなんとも言えない表情をしていた。オシュトルもちゃんと理由を理解しているので、怒りはしない。先程のネコネとした話も聞こえていたはずだしな。本当に俺からネコネに手を出す事はない。撫でたり耳や尻尾を触らせては欲しいが、怖いお兄さんが二人も居るから無理だ。
「紹介は終わり……いや、もう一つあったな。ここに結糸がある。ネコネ」
結糸はうたわれるものロストフラグで使われる召喚アイテムだ。先のガチャで出たのでネコネに引かせてみる。今の恰好からして彼女がでてくる可能性が高い。いや、聖杯を使っても引き寄せる。
「え、え?」
ネコネの指に結び付けてから、俺は精神を統一して形成を行う。両手を空中で向かい合わせ、中心に空間を作って強烈にイメージする。頭の中で美遊も抱きしめるようなイメージを行う。
『私をしっかりと思いだしてください』
美遊と一緒に美遊の本質となっている聖杯を具現化するイメージを行う。
「『
両の掌の間に膨大な力が籠った黄金の杯が現れる。そこには膨大な魔力が、力が渦を巻いて存在している。まるで一つの宇宙のような混沌とした感じだ。問題はなさそうなので、手首をナイフで切って血液を聖杯へと注いでいく。これで準備が整ったので、聖杯を掴んでくるくると揺らして中身を混ぜる。
「さて、この中に糸を垂らしてくれ」
「は、はいです……」
糸が聖杯に飲み込まれていき、ビクンッとネコネの指が引っ張られた。なのでネコネの手を掴んで引き抜く。すると、そこにはネコネとまったく同じ服装に姿をした少女が立っていた。よくよく見れば胸の部分だけ少し違うか。
「私はリムリ。クナシコルの皇をしています。此度はネコネを助けるため、召喚に応じました。クナシコルでは世話になりましたので、ご恩をかえさせていただきます」
「イヌイさん……」
亡國の双姫で出て来たイベント限定キャラクター。イヌイ。その正体はクナシコルの皇を継承した少女。彼女の皇継承を阻み、自らが皇になろうとした者によって暗殺者を差し向けられていた。そこで依頼によってクナシコルへとネコネ達を呼び寄せ、リムリと似ていて変装するとほぼ同じ姿のネコネに継承の儀式が終わるまで影武者を依頼した。暗殺者を引き寄せる囮などネコネがしている間に暗殺者を送り込んできた相手の証拠を掴むと同時に他の諸侯を説得して襲ってきた連中をネコネ達と共に排除した。二人は本当に双子みたいでイベント名、亡國の双姫と呼ぶにふさわしい。
「彼女達は互いにオシュトルとハクを手伝ってもらう。呼び方はそれぞれに任せる。では、そろそろ、お前達にとってのメインイベントを始めよう。ネコネとリムリはオシュトル達と一緒に食事をしたり、見学したりしておいてくれ」
「了解した」
「あいよ」
「いいのでしょうか……」
「かしこまりました」
あちらはユーリ達に任せればいい。こちらはこちらで解決する事が沢山ある。
「さて、諸君。君達は命知らずにも全員が志願しているようだが、苦しみもがいて死ぬ可能性があることと、力を得られない可能性があることを忘れてはならない。それでも仲間や同胞を守る力を求めるのならば、俺達が作る国の騎士として迎え入れよう。今ならば引き返せるがどうする?」
「私は主様達と共に進みます。その為に力が必要だと言われるのなら、手に入れます」
「我等は姫様と共に歩ませていただきます」
「はい。覚悟は既にできております」
アルテナを筆頭に森人族は全員、しっかりと死ぬ覚悟までしている。一応、アルテナは必要ないと伝えてはいるのだが、やはり長の娘としても引くわけにはいかぬのだろう。
「カム、幼い子供まで居るようだが、いいのか?」
「皆で話し合って決めました。俺達はシアと同じ存在になりたい。アイツを寂しくさせないためにも……」
「「「お願いします!」」」
「皆さん……」
既にシアが何度も止めようとはしたのだろうし、俺から言う事はない。ただし、振るいは賭けさせてもらう。
「ルサルカ、頼む」
「まかせて、だ~りん♪」
楽しそうにそう言ったルサルカが取り出したのは首と手が同時に拘束できる枷や両足を拘束できる枷とギロチンを台ごとだ。そして最後に口を開いたままで固定する口枷だ。これらを見て、全員が顔を青ざめさせる。
「今からやることは確実に暴れる。故に安全の為に拘束させてもらう。また、暴走して
「ハウリア族と森人族でそれぞれ二人ずつ順番を自分達で決めておきなさい」
ルサルカが指示をしてくれている間にこちらも準備を整える。
「準備できたみたいだし、やっちゃって」
「そうだな」
「よろしくお願いします、主様」
「ああ」
一番はアルテナとカムのようで、二人の身体がルサルカによってギロチンの台に拘束されていく。一応、ギロチンの刃は無くなっているので、多少の配慮はされている。だが、幼い女の子が枷を嵌められて仰向けにギロチンの台で寝かせられる姿はかなりやばい。しかも隣はうさ耳のおっさんだ。
「じゃ、口枷を嵌めるからね。大丈夫。苦しいのは少しの間だけだから」
「「は、はい」」
「では始める」
宝物庫から取り出したのは色々な
アルテナは口から赤い小さな舌をだし、そこから唾液が滴り落ちている。とてもはしたない姿で森人族のお姫様がしていい恰好ではない。そもそも幼い少女を拘束している時点でアウトだ。理由を良く分かっていないネコネ達からの視線が痛い。
そんなわけで手早くしようと思ったが、アルテナが身体を震わせてながら必死に何かを伝えてきたので、口枷を外して聞いてみる。
「どうした? 止めるか?」
「い、いえ、あの……こ、怖いので手を握っていて、ください……」
「わかった」
ついでなのでアルテナのすぐそばで正座し、彼女の口に口枷を戻してから頭を膝の上に乗せる。それから彼女の手を片手で握りながら、アルテナの口に上から注ぎこんでいく。
アルテナなら、唇につけてもいいのだが、美遊が嫌そうな表情をしたので止めておく。聖杯は美遊そのものだから、同じ女性のアルテナとはいえキスするのは嫌だろう。いや、女性同士だから尚更嫌なのか。他の子も抱き合いながらしても互いにキスをしたりはしないし。まあ、よくよく考えたらそうだよな。レズやホモじゃないんだし。
「んくっ……ぐっ、あっ……がはっ!? あっ、あぎぃっ! いっ、いだっ、ひぎっ!?」
アルテナが身体を暴れだす。身体はしっかりと拘束されているし、足の方はルサルカが拘束具に乗って動かないようにしている。お腹も鉄製のもので固定され、ボルトが嵌められているので微かにしか動かせない。それもクッションがそこかしこに施されている拘束具なので、拘束具から与えられる痛みはましだろう。
顔を見ると瞳を見開き、涙を流しながら絶叫を上げていくアルテナの身体は所々が異常に膨らんだり、血管が浮かび上がって破裂したりする。盛大に
「っ~~~~!」
身体を何度も痙攣させて仰け反らせながら、声にならない悲鳴や様々な液体を巻き散らかしていくアルテナ。しばらく続くと、だんだんと髪の毛がハジメと同じように白くなっていき、身体の膨張も元に戻っていく。同時にアルテナの口からも痛み以外のものが混じり出している。
「ひっ、ぎゅっ! あっ、あぁっっ、んぁっ」
頬を上気させて苦痛の悲鳴と気持ち良さそうな喘ぎ声を上げていく。防衛本能か何かわからないが、開けてはいけない扉を開いている気がする。
次第に仰け反りがなくなり、痙攣も無くなった。肌は綺麗な白色になり、生まれた直後のような感じだ。目を閉じているアルテナを見詰めていると、彼女の瞼が開いていき、視線がこちらを見詰めてくる。視線が混じり合うと、アルテナの身体からただの亜人にはない魔力の光が溢れ出してくる。その光を受けた植物は急速に成長し、そしてすぐに枯れおちた。
「あ、あるじ、さま……」
「よくやった。アルテナは見事に乗り越えた」
優しく頭を撫でてやると、嬉しそうに微笑んですぐに気を失った。そんなアルテナから拘束具を取り外し、優しく抱き上げて鈴達に渡す。彼女はこれから寝ている状態で服を脱がされ、身体を綺麗に拭かれてから寝間着に着替えさせられてベッドで眠らせられる。
「アルテナは見事、試練を乗り越えて魔力とそれを扱う術を手に入れた。次はカムだ。アルテナのような小さな子がやり遂げたんだ。まさか、大人のお前ができないわけないよな?」
「も、もちろんです! 一思いにやってくだせえ!」
「いいだろう」
カムの方に移動して、超楽しそうなルサルカ。
「ルサルカ、準備はいいか?」
「ええ、何時でもいいわよ。今度はどんな声で鳴いてくれるのかしら♪」
「ひっ……」
手早くカムの口に
◇
儀式が終わり、全員が無事に生きて適応できた。これで残るはレヴィが連れてくるハウリア族の連中だけだ。
「うぅ、兄様……怖かったのです……」
ネコネがオシュトルに抱き着いているが、こればかりは仕方がない。リムリの方は冷静にこちらを観察している。
「ネコネ、大丈夫だ。彼等は同意していた。某達が巻き込まれる事はないだろう。しかし、この儀式はいったい……」
「推測するに魔力という物を手に入れる儀式みたいだが、完全な肉体改造だな。破壊と再生を繰り返して無理矢理身体に適応させている……髪の色が変化したのはストレスからか? それとも……」
ハクの考えが概ね正解だ。今回の儀式は人の身体に無理矢理、
「説明を要求した方が早いと思います。すいません、いいですか?」
「リムリの質問に答えると、これはオシュトル達にわかりやすく言うと変身できない
「なるほど……確かに
「
要は森を焼き払い、人を大量に殺せるヴライのような存在を弱くして量産しているのだ。強さをこの世界で考えるとベヒモスくらいだろう。
「
「リムリは要らないと思うがな」
リムリはイヌイとしてうたわれるものロストフラグでユニット化しているので、そのスキルは普通に使えるはずだ。剣士としてならそれなりに強い。天に代わりて成敗す*3と正道の護り手*4というスキルだが、これらは少し変化していても持っているはずだ。
「いえ、私では足手纏いでしょう。鍛えながら内政の方をお手伝いします。これでも皇として教育は受けてきていますから……」
「それでお願いしよう。まあ、リムリ達は
「じゃあ、あんちゃんが実験するか?」
「おい」
「わ、私がしましょうか?」
「「「ネコネは止めておけ」」」
とりあえず、こちらは納得してくれたのでよしとする。ハジメの方を見ると、あちらはあちらでユエとイチャイチャしているので放置。シアは流石に家族の所についているから、二人っきりみたいなものだ。
俺も今回はアルテナの所で彼女に膝枕をしながら、ユーリ達と喋ったりまったりしながら過ごす。流石に今のアルテナ達を置いてはいけないしな。しかし、優花の時は身体の中からやったから大丈夫だったが、外からすると髪の毛が変色する。これは後で染め直したらいいのだろうか?
まあ、いいか。とりあえず、明日は休みにして身体を確かめてもらおう。次の日からオシュトルとハク、ルサルカに頼んで軍事調練をしてもらう。それが終われば銃器の訓練だな。
◇
「どうする? 明らかにやばいんじゃないか?」
「だが、ジンさんの落とし前をつけさせなくてはいけない」
「だけど、見ただろう。奴等は森を火の海にしやがった化け物を倒してやがる……とてもじゃないが俺達に勝てそうにないぞ」
「それは……」
「むしろ、今がチャンスなのです。彼等とて生物なのですから、あのような化け物と戦ったのなら疲弊しているはずです。それに悲鳴が何度も聞こえてきたと報告したのはそちらでしょう?」
「た、確かにそうだな」
「ならば怪我人も多数だと思われます。今を除いて好機はありません」
「だ、だが、それで勝てるという保障は……」
「我等は姫様を無理矢理つれさり、辱めてあのような行為に及ぶ奴等を許せぬ。故に其方等が諦めようと、我等は実行する」
「「「その通り」」」
「……行きたい奴だけ行けばいい。俺は行く」
「レギンさん!」
「俺はレギンの兄貴についていくぜ」
「俺もだ!」
「(計画通り)では、夜襲を仕掛けましょう。今ならば行けるでしょう」
◇
進軍する熊人族と森人族の連合は順調に進んでいた。しかし、そこには邪魔をする者が立ちふさがる。そう、ボクだ!
「ふっふっふっ、マスター達の邪魔をしようなんて良い度胸だね。このボクが相手をしてあげよう」
「お前は……」
「ボクこそがマスターの剣にして、十二勇士が一人。アストルフォ・セイバー! ここを通りたければボクを倒していくんだね!」
「たった一人で何ができる」
「兎人族のくせに生意気な奴め」
「たっぷりと虐めてやる。お前に勝ち目なんかないんだ」
「それはどうかな。月を見上げる兎とて、理性の無い時もある。例え、負けが確定していようが戦わなくてはいけない時はあるんだよ。そして、ボクにとっては今がその時! マスター達が休憩している時に敵をやっつけて褒めてもらうんだ~! だから、暴れる巨人ならぬ熊さんを取っ捕まえて、勇気凛々凱旋だ! 行っくぞー!」
「ふざけた奴め!」
二人が同時に前方から左右に別れて斬りかかってくるから、気にせず突撃! 彼等の横を通り抜けながら、剣を鞘に納めた状態で叩きつけて吹き飛ばす。相手は木に激突して動かなくなったけど、呼吸音がボクのうさ耳に聞こえるから無問題! なんだか殺したら駄目な気がするし、良かった良かった!
「はやっ!」
「見えないっ」
「ちがうね~ボクが速いんじゃない。君達がスロウりぃなだけだよ」
飛び上がって木を蹴って高速で移動し、相手の背後に回って逃げようとしていた人達を一撃で伸していく。なんとなく、あっちに居たら駄目な感じもするしね。
「くそっ、どうなってやがる!」
「こいつ、本当に兎人族か!」
飛んでくる矢を剣で払ったり、手で掴んで捨てたりしながら相手に会わせてゆっくりと進んでいくと、風切り音が響いて人が倒れた。それに撃たれた人以外にも倒れる人がいる。不思議に思うと、その人の背中に短剣が突き刺さっている。暗闇から複数の短剣が飛んできて、彼等の背中に刺さると動けなくなったのか、倒れていく。
「な、なんだ、なにが起こってる!」
「あ、後ろ」
「なっ、何言ってやがる! そんな事に騙され……」
「眠れ」
「がはぁっ!?」
後ろからにじみ出るように現れたゆかりんが首に腕を嵌めてキュッと占め落とす。そちらに視線が集まると、また風切り音が響いて一人が倒れる。遠くから矢で射られているみたいで、その矢が頭に刺さるとその人は倒れて矢は溶けるようにして消えていく。
「ん~ボク一人で狩るつもりだったけれど、そうもいかないみたい」
「出ていくのが見えたから、ついてきた」
「そっか~」
黒いマフラーに赤いジャケットを着たゆかりん。彼女の手には複数の短剣が指に挟まれている。狙撃はしののんだろうし、褒めてくれるかな? 褒めてくれるよね!
「殺さないようにご主人様から頼まれてる」
「そうなんだ。良かった、まだ誰も殺してないよ。じゃあ、殺さないように無力化しちゃおう」
「お願い、します」
「いくよ~!」
「了解。殲滅開始」
ボクが前衛でゆかりんが中衛、しののんが後衛。三人もいればあっという間に倒せちゃった。ただ、ボクでも驚いたのは上から矢がふってきて命中することかな。どこから射てるんだろう? ま、細かい事はいいか。
ハウリア族と森人族の魔人化して、魔力と
原作よりも熊人族の被害は少ないです。だってヴライとの戦いを感じたら、そら逃げます。
アルテナは根源(M)への扉を開いた。まあ、実際は痛み止めの薬と、媚薬を併用しているからです。痛みを感じないようにはしていますが、それを平気で貫通してくるので、快楽を混ぜて耐えるという二段構え。森人族だけでなく、ハウリア族も服用。むしろ、これがないと耐えられないレベル。
プリンセスフェス、爆死。92連してペコリーヌ・プリンセスが来てくれないので、もう天井覚悟。
アルテナ・ハイピストの行き先
-
ハジメルート
-
真名ルート