ありふれた職業の召喚(ガチャ)士で世界最弱   作:ヴィヴィオ

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古戦場が忙しかったです。


第53話

 

 

 

 

 アルフレリックとその護衛達が運んできた森人族の者達はしっかりと受け取り、木の札ではあるが書面まで作って渡しておいた。貰った者達は対外的な理由から首輪を取り付け、その後はアルテナに任せる事にした。もちろん、魔物(モンスター)を食べさせて戦力を強化した。子供に関しては望む者だけにしたが、彼等は親と一緒がよかったみたいだ。なので望まれたようにした。

 その日は二日連続で寝ずにアルテナに付き合って森人族を見守った。子供も居るから仕方がない。ネコネはリムリと一緒に抱き合って寝ている姿も見れた。ユーリ達も誰かと一緒にくっついて寝ているのがほとんどだ。基本的に俺と抱きあったり、身体をくっつけて寝ているのも原因だろう。

 さて、徹夜二日目。本日はもうここでやる事はないが、大樹の下へと進むのにはまだ六日ほど時間がある。そこで、本格的に計画を話し合うのも必要なのだが、その前に森人族とハウリア族を鍛えないといけない。その手段として有効なのはやはり、奈落へと叩き込む事だ。それは理解できる。

 

「でも、これはない!」

 

 ヴライと戦って焼き尽くされ、破壊された場所に作られた地面が整地されている。そこに掘るようにして作られた大きな金属製の魔法陣。その中心に設置された機械の椅子に座らされた俺は両手両足を金属製の拘束具で固定され、一切動く事ができなくされていた。

 そんな俺をニヤリと笑いながら見下ろしてくる犯人のハジメを見る。うとうとしていたらこれだ。確かに言われた事に許可もしたし、ユーリ達と協力はした。

 

「嫌だ、嫌だ! 止めてくれハジメ!」

「却下だ。諦めろ」

「や、やはりこのようなことは……」

「ゆ、ユーリ……」

「必要な事だ。諦めろ。絶対に逃がさん。そもそも俺達はこれからデスマーチをするのにお前だけ逃れられてたまるか」

「そうだそうだ~」

 

 そう言いながら鈴とハジメは機械のスイッチを無情にも容赦なく押しやがった。その結果、腕や足の部分から出た注射器が俺に突き刺さり、そこから血液と魔力を吸いだしてく。

 

「痛いんだぞっ!」

「痛覚は戻しているんだったな。まあ、諦めろ」

「鬼! 悪魔! 魔王!」

「はいはい」

「お兄ちゃん……」

「大丈夫だよ、ゆりゆり。まなまなならこれぐらい我慢できるよ!」

 

 吸われていく大量の魔力が椅子の下に設置された魔法陣を発動する。椅子の下には金属で作られていて、血液の関係もあって赤く光っていく。

 

「膝の上にでも乗って甘えてたら大丈夫だろ」

「うんうん。それで一発だね!」

「……わかりました」

 

 ユーリが膝の上に乗ってきて、頭を優しく抱きしめてくれる。良い匂いがする上にユーリの体温や柔らかさも感じられていい。それに頭を撫でてくれるので安心できる。

 

「そもそもただのフリだろうしな」

「本当に痛いし、辛くてやりたくないのは事実なんだがな」

「でも平気だよね? まなまななら我慢できるよね?」

「余裕だが、動けないのは辛い」

「それは僕達が世話をしてあげるから平気だよ。今更だしね」

 

 確かに奈落で旅をしていた時は下の世話までしてもらったのだから、慣れてはいるが……やはり太陽の光がある場所で俺達以外の人も居るのでとても恥ずかしいのだ。まあ、恵里や鈴達は世話したいのだろうが。

 

「沙条は置いておくとして……ユーリ。ゲートの準備は?」

「は、はいっ。そちらは問題ありません。起動します」

 

 ハジメの言う通り、奈落で経験したことに比べるとこれぐらいは大したことではない。そもそもこんな事になっているのはハジメの言う通り、国作りの為にデスマーチをする準備だ。

 俺からは見えないが、この椅子の背後にはゲートと呼ばれる転移装置が作成されている。ハクもゲートの知識は持っているが、そっち方面は流石に忘れていると思われるし、その手の技術はユーリ達の方が上だ。なにせ次元世界を移動していくような魔法少女達だ。そう、才能があるとはいえ転移魔法を使って異世界に転移するような少女*1が居る世界の出身なのだ。

 

「魔力量、問題ありません。オルクス大迷宮・最下層の座標入力完了。転移ゲート生成開始します」

 

 ユーリが俺に抱きつきながら、スピリットフレアを操作して転移ゲートを動かしていく。生成されたゲートによってオルクス大迷宮の奈落、最下層にある隠れ家へとハルツィナ樹海のこの場所が繋がった。

 

「連中からの干渉はどうだ?」

「ありません。ただ、ハルツィナ樹海からの干渉はありますが……私とお兄ちゃんの敵ではありません」

「当たり前だ。俺とユーリが揃っているんだから、こと召喚と同じような事で負けるかよ」

「それは良かった」

 

 召喚士とは、彼方へと繋いで目的の存在や物を此方へと呼び出すのが本領である。つまり、空間魔法に関してはスペシャリストと言える。

 そんな俺がラスボス系美少女で、多次元世界で様々な技術情報や魔法を蒐集してきたユーリと組んでいるのだから、楽に繋げる事は可能だ。

 問題があるとすれば繋いでしまえば物理的にここを制圧されて、オルクス大迷宮の方まで侵略される事ぐらいだな。そのような事が可能であろうエヒト陣営は大迷宮には手出しできないみたいだから大丈夫だろう。

 まあ、こちらと大迷宮側で争っているタイミングで干渉されたらどうなるかはわからないが、念の為に鈴に結界を張ってもらっているので大丈夫だとは思われる。

 最悪、天使と戦う事になるだろうが、それはそれで美味しいのでよしとしよう。数体ぐらいなら対処はできると思われるしな。

 

「シュテル! ディアーチェ!」

「お久しぶりです」

「そんなに時間は経っておらんが……元気そうでなによりだ」

 

 考え事をしている間にゲートが無事に起動したようで、あちらからシュテルやディアーチェがやってきた。二人はこちら側にやってくる。

 

「何をやっておるのだ、これは……」

「ふむ。魔力を吸い取っているのですか。大丈夫ですか、お兄様?」

「ああ、平気だ」

「それは良かったです」

 

 ユーリが向きを変えて俺の膝の上に座り、シュテルとディアーチェの二人と向き合う。俺も二人の顔を見ると、シュテルがこちらに近付いてきて頬に軽いキスをしてくる。

 

「はわわ……」

「何をしておる」

「挨拶ですよ。ディアーチェもどうぞ」

「戯け。何故、我が……」

「お兄様はされた方が嬉しいですよね?」

「まあな。ディアーチェが嫌ならいいが……」

「……むぅ……これは仕方なくだからな!」

「ああ」

 

 ディアーチェもキスしてくれたので、よしとしよう。そうこうしていると、ハジメが呆れた表情でこちらを見ているのに気付いた。いや、他の者達もか。

 

「そろそろいいか?」

「ええ、構いませんよ」

「オルクス大迷宮の方はどうなっている?」

「こちらは何の問題もない。そちらの情報は伝わってきておったから、準備も順調に進んでいる」

「それはよかった。それじゃあ、さっさと進めるか。いいよな、沙条」

「もちろんだ。まずやる事はこの地の開拓と森人族とハウリア族が戦えるようにする事だ。その為に奈落へと行ってもらうのだが……メンバーはこちらから恵里と優花、詩乃を護衛につける。もちろん、アルテナにも行ってもらう」

「はい。頑張ります」

 

 恵里は全体的な護衛とし、優花はハウリア族に暗殺者としての戦い方を教え、詩乃は森人族に狙撃技術を教えてもらう。

 アルテナは教えてもらう側のメンバーであり、森人族を指揮してもらうことになる。ハウリア族は族長のカムが指揮する事になる。

 恵里と詩乃は奈落の経験者だし、優花も居て武装も問題なければ大丈夫だろう。最悪、シュテルとディアーチェの分身やチビット達を援護につけておけばいい。

 それにこれはあくまでも俺達の側から出す戦力だ。ハジメ達とは別になる。

 

「こちらからはユエとシアを出す」

「私は皆と一緒なので構いませんが……」

「ん。ハジメと離れるのは嫌だけど、私達から護衛を出さないのも駄目。仕方が無いから私が行く」

「ありがとうございます!」

 

 ハジメ達からしたら、奈落での修行はシアを鍛える事だからな。こちらのメンバーと一緒に鍛えればいい。もっとも、普通にやったとしても森人族はともかく、ハウリア族はものになるかは微妙だ。だからこそ、恵里をつけた。

 

「ルサルカ、恵里に伝えてあるか?」

「もちろんよ。黒円卓式訓練方法じゃなくて、ちゃんとナチスドイツ親衛隊の訓練方法を伝えておいたから大丈夫よ」

「うん、しっかりと教えてもらったし、ちゃんとメモしてるから平気。それに最初は僕が呼び出したゾンビやスケルトンを相手にさせるからね。すぐに戦いには出さないし、まずは武器の習熟訓練と集団行動の訓練方法から」

「それなら大丈夫か」

 

 スケルトンだけでなく、ゾンビが入っている時点でお察しくださいといった感じだな。ハウリア族がしっかりと殲滅できなければ腐肉塗れになって凄く臭くなるのだろう。罰もしっかりと受ける事になるし、後は飴を用意しておけばいい。

 飴か。やはり美味しい食べ物だろうな。作れそうなのは……というか、フェアベルゲンはどうやって食料を確保しているのだろうか? 

 

「アルテナ、フェアベルゲンは食料をどうやって確保している?」

「樹海から取っています」

「というと、果物とか狩猟か?」

「はい。主に果物や薬草ですね。後は魔物(モンスター)ではない動物を狩れれば肉が食べられます。私達は食べませんが……」

「我等、ハウリアもそうですね。肉なんて食べられません」

「肉類は高級品になりますので、熊人族や虎人族など戦闘系の種族が主に食します」

 

 なるほど。肉食だと思ったが草食でもいけるのか。確かにハルツィナ樹海は大迷宮なのだから、基本的に動物が少なく、魔物(モンスター)が多いのはわかる。

 むしろ、普通の動物が居る方が異常と言えるかもしれない。おそらくだが、制作者が意図的にしているのだろうな。

 

「フェアベルゲンの戦力が増えないのも当然か」

「「え?」」

「食料が足りないから数を増やせないんだ。数は力だからな」

「人や動物は食べずに生きていくことはできませんから……」

 

 俺の言葉にハジメやユーリが捕捉してくれて、わかっていなかったフェアベルゲン組も理解できたようだ。全体的に人を養える分の食料と狩猟や採取で得られる食料では安定して手に入れる事ができない。

 地球でも人が爆発的に増えたのは麦や稲を生産して食料を安定的に手に入れるようになったからだ。人族は田畑を作っているのに亜人達は作っていない。この差は大きい。戦争するのにも食料が必要だ。だからこそ、食料生産のチート天職を手に入れた愛子先生は歓迎されている。

 

「まあ、解決策は魔物(モンスター)を食べるようにしたらいいだけだな」

「それが一番手堅いな」

「普通なら食べたら死にますが……私達はもう大丈夫ですからね」

「昨日、食べたが……凄く不味い」

 

 大迷宮は魔物(モンスター)に関しては放っておいても作成してくれる。そいつらを食べられるのなら、狩猟も命を賭ける必要はあるがどうにか可能だ。

 

「では、纏めると食料生産が必要ということですが、こちらは一先ず先送りしましょう。まずはこちらを見てください」

 

 シュテルがそう言いながら、指を鳴らすとゲートから大きな振動が伝わってくる。そちらを確認すると、ブルドーザーのような大きな生物が歩いてくる。そいつは後ろに大きな貨物車を引きながら近くにやってきた。その数は六匹で、貨物車もしっかりとある。どう考えても普通じゃない。

 

「こんな事もあろうかと、開発用の重機を製造しておきました」

「よく用意できたな……」

「実際はベヒモスを改造しただけだ。国を作ると聞いていたから、さっさと開拓できる用意はしておいた。それと貨物車の中身は新型の大型魔導炉だ」

「新型と言っても、こちらでの話なので申し訳ございませんが、本当に新型ではありません」

「我等でも流石に設備が更新されていない状態ではこれが限度だ」

「十分だ。ありがとう」

 

 そもそも魔導炉からしてこの世界ではオーバーテクノロジーだ。それを巨大な貨物車に搭載して動かせるようにしているのだから、二人は凄く頑張ってくれたはずだ。

 

「こいつは計画が早まるな」

「そうだな国土錬成が可能になるだろう」

 

 俺達が計画しているのはハルツィナ樹海に一気に城塞都市を作り上げる事だ。その為に国土錬成陣が必要になる。

 これは鋼の錬金術師というアニメから着想を得ている。国土にトンネルを掘って錬成陣、魔法陣として各基点で大量の生贄を捧げ、術者となる人柱を用意。それによって住民全てを賢者の石というエネルギーに変換し、真理を支配しようとしていた。

 まあ、永劫破壊(エイヴィヒカイト)と違って魂をそのまま使うのではなく、加工して賢者の石に変えないといけない。そう考えると永劫破壊の方が使い易い。

 もちろん、俺達は生贄を使うつもりもないし、住民を錬成するつもりもない。やる事は壁や城を錬成で作る事だけだ。だが、用意するのは変わらない。大量の魔力と術者が必要というわけだな。

 俺達は魔力を俺が出し、術者としてハジメやユーリ、ディアーチェ、シュテル辺りを計画していたのだが、シュテルとディアーチェが用意してくれた魔導炉のお陰でかなり楽になる。

 

「よし、俺達は素材と土地の整地を行う。ハクとオシュトル、ネコネ達は城の設計を頼む」

「了解した」

「任せるのです」

 

 霧が晴れるまでにある程度は土地を整え、オルクス大迷宮やこの辺りから資材を集めないといけない。木材は木々を切り倒せばいいし、土は採取していけばいい。鉱石はオルクス大迷宮から回収するが、周りの事を考えると資材は大量に要る。

 最低でも壁は外堀と内堀は必要だ。天使はもちろん、魔族や人族……亜人族にも攻め込まれることを考慮して作らなければいけない。

 

 

 

*1
魔法少女リリカルなのはの無印にでてくるフェイト・テスタロッサが転移魔法で自宅のある時の庭園と地球を行き来している。

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