ありふれた職業の召喚(ガチャ)士で世界最弱   作:ヴィヴィオ

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第59話

 

 

 

 

 

 

 

 中立商業都市フューレン。商業都市というだけあって商業ギルドの力は絶大みたいで、とても巨大だ。その建物の前に馬車をつけると、優花が先に降りて安全を確保してくれる。

 その後に詩乃が降り、ネコネを身体に宿してから馬車を見送ってギルドの中に入る。ギルドの中はとても金がかかっている内装だ。

 

「それでどうするの?」

「私はわからないから、全部任せる」

「だね」

 

 詩乃と恵里はわからないようなので、俺の左右についた。

 

『まずはギルドについての確認ですね』

『その後は交渉です』

「とりあえず、説明を受ける」

 

 美遊とネコネの声を聞きながら、次の予定を説明する。

 

「了解。全部任せる」

「その方がいいね。私達はあくまでも護衛」

「うん」

「じゃあ、行くぞ」

「「はい」」

 

 とりあえず、受けつけに居る人を確認する。美男美女の人達がいて、しっかりと働いている。さて、ここで何処に並ぶかが問題だ。そう思っていると、詩乃が俺の腕を抱きしめてくる。もう片方の手を優花がおずおずと掴んで同じようにした。

 

「こっちね」

「うん。こっちがいい」

 

 二人に引っ張られていったのは男性が居る受付カウンターだ。まあ、彼女達からしたら他の女に目移りされるよりはいいという事なのだろう。

 

「ようこそお越しくださいました。本日はフューレン商業ギルドにどのようなご用件でしょうか?」

「商業ギルドに入った場合のメリットとデメリットを聞きたい」

「かしこまりました。ご説明させていただきます」

 

 簡単に言えばメリットは銀行みたいに資金を預かったり、両替したりができる事と所属している商会を通してそれぞれの商材をやり取りする事ができる。鉄が欲しいとなると、行商に依頼したりなどだ。

 デメリットとしては年間の売上の四割を商業ギルドに収めないといけない。これはかなり痛い。痛すぎる。

 

「また商業ギルドに登録しない限り、街で商売はできません。商業ギルドに所属していれば護衛なども補助してもらえます」

『この国と街の法律についてシュテルさんが調べてくれています。商売ができないというのは法律で規定されていないのです。ここ、中立商業都市フューレンも例外ではないのですよ』

『それにいざとなれば街の外で商売をしてもいいかも?』

「なるほど。しかし、こちらが調べた限りでは商業ギルドに所属していなくても商売はできるはずだ。できないという法律の規定は存在していない」

「それはそうですが、商品の仕入れや店舗の場所など、既に空いている場所もありません」

「それさえどうにかなれば問題はないのか」

「襲われる可能性は充分にあるので気をつけて頂かないといけませんが」

「確かにそうだな。もう一つ聞きたいのだが、いいだろうか?」

「なんでしょうか?」

「商業ギルドに登録しないと宝石などを売る事はできないのだろうか?」

「いえ、そちらでしたら直接商店に訪ねて頂くか、こちらでも買い取る事は可能です」

「そうか。では、こちらの宝石類はいくらくらいになる?」

 

 宝物庫から、拳くらいの大きさがある宝石を幾つか取り出して渡す。

 

「かしこまりました。お預かりいたします」

「いや、目の前で鑑定してくれ」

「こちらが信じられないと?」

「取り変えられては困るのだ。目の前で査定しないのなら断ろう」

「少々お待ちください」

 

 少し待つと、担当の者がやってきて、目の前でしっかりと鑑定してくれた。値段は相場よりかなり低かったので、断ろうと思ったが、ネコネの言う通りにしたらどんどん値段が上がっていった。最終的に相場と同じぐらいの値段になったのでよしとしよう。

 

『まあ、もう少し値段を上げる事はできそうなのですが、これぐらいが妥当なのです』

「それではこの値段で引き取らせて頂きます。金額はこちらに……」

「少しすくないようだが?」

「商業ギルドに登録されていない場合は手数料がかかりますので……」

「手数料で二割は多いな」

『その値段なら売らなくていいのです。ここはお断りするのですよ』

「それなら売らなくても問題ない。今回の取引はなかったことにしよう」

「同意なさいましたよね?」

「事前情報に食い違いがあるのでな。そちらが手数料を引かない値段で引き取るのなら、構わないが、手数料を取るのならこちらもその分の値段は上乗せした金額にさせてもらう。なに契約書自体はまだ交わしていないのだから問題あるまい」

「わかりました。それではお引き取りください」

「ああ、失礼する。行くぞ」

「はい」

 

 詩乃に宝石を入れた箱を待たせて移動する。さてさて、これで連れてくれるといいのだが……どうなるか楽しみだ。

 

『最初から売る気がなかったの?』

『売る気はあったのです。相場の前後でなら、です。ちなみにこの場合の相場は買取相場なので、相手側も十分に利益が得られるレベルなのですよ』

『そうなんだ……』

 

 商業ギルドの外に出ると、優花が隣にやってきて耳打ちしてきた。

 

「つけられてる」

「まあ、当然だな。放置していいから警戒だけしておいてくれ」

「了解」

 

 商業ギルドで面白い事はなかったので、カフェテラスに座ってお茶をしよう。

 

「ヘイゼルと詩乃も好きに頼んでいいからな」

「わかった」

「どうしようかな?」

 

 二人が楽しそうにメニューを見ている中、宝石を取り出して磨いていく。磨き終われば机の上に置いて次のを取り出す。色とりどりの綺麗な宝石を並べていくと、どんどん注目が集まってくる。まあ、当然だな。数百万から数千万はするような宝石がゴロゴロしているのだから。

 といっても、これらはユーリとハジメからしたらそんな価値はないのだが。あいつら、普通に作り出せる。どちらにせよ、作り出せない者達には価値がある。そして、集まってきた連中も俺にとっては有効活用できる。

 

「お集まりの皆様にお伝えします。我々は戦いの為に亜人奴隷を求めています。生きてさえいれば状態は問いません。お売り頂ける方は明日、南門の外までお越しください。数や質によって宝石や武器、アーティファクトなどと交換致します」

 

 こうする事で土地は関係ないし、税金以外は支払う必要もない。宝石などを求めて襲い掛かってきたら、容赦なく殺せる。街の外なら何の問題もないだろう。兵士達が何事かとやってきたが、こちらは何もしていないのだから問題ない。

 軽く休憩を終えたら次は冒険者ギルドを目地して歩く。宝石は詩乃に持ってもらいながら移動すると、狙って近付いてくる連中が居るが、全て優花が殺気を放って防いでくれる。

 さて、そんな感じで冒険者ギルドに到着したので中に入る。視線が沢山集まってくる。特に詩乃と優花にだ。二人は美少女だから仕方がない。さあ、テンプレ展開を……と期待したが、残念ながらそんな事は起きなかった。何故なら既に起きたようで、倒れている冒険者であろう者が黒髪の女の子に頭を踏まれていた。

 

「あ、恵里とイヌイ。来てたんだ」

「もちろんだよ。南雲達は居ないみたい」

 

 優花が声をかけると、踏みつけていた女の子、恵里とイヌイがこちらにやってくる。どうやら、先に来てハジメ達の情報を聞いていたみたいだ。

 

「何処に行ったかわかるか?」

「なんでもギルドマスターからの依頼を受けたらしいけれど、それ以上は教えてくれなかったんだ」

「まあ、それもそうか」

『先程、資金調達ができていませんので、ここで魔物(モンスター)を売るといいのです。南雲様達の知り合いだとわかれば下手な値段では買わないはずですし、こちらの実力を見せる意味でもありなのです』

『売るのはハルツィナ樹海とライセン大渓谷の物がいいよ』

 

 二人の指示に従って、買取カウンターに移動する。

 

「ギルドに登録していないが、買取を希望したい。構わないだろうか? 無理ならギルドに登録している知り合いが戻ってから売るが……」

「いえ、大丈夫です。こちらのカウンターにお出しください」

「大量にあるが、問題ないか?」

「はい」

「わかった」

 

 宝物庫から恐竜みたいなライセン大渓谷の魔物(モンスター)を取り出し、積み重ねていく。

 

「ほ、宝物庫をお持ちなのですね。こ、こちらにどうぞ」

 

 解体場所に案内されたので、そちらに移動させて査定をお願いする。するとこちらにやってくるのは金髪をオールバックにした、目つきが鋭い三十代後半ぐらいの男性だ。

 

「はじめまして。私はイルワ・チャング。ここの支部長をしている。君達が南雲ハジメ君が言っていた仲間かね?」

「ええ、そうです」

「彼には今、依頼をしていてね。君達が訪ねてきたら便宜を図ってくれと言われたよ。断ろうとも思ったが、彼から君達が自分達以上に強い存在だと聞いていたから答える事にした。これを見るまで少し信じられなかった部分もあるが……」

「便宜をはかってくれるのなら、冒険者ギルドで商売の許可を頂けませんか? 武器や防具も取り扱っていますし、色々と使えると思います」

「構わない。だが、そう儲かるとは思えないが、いいのかね?」

「ええ、構いません。我々は亜人奴隷を求めていますので、生きてさえいれば交換に応じます」

「わかった。伝えておこう」

「それでは商売の準備をさせていただきましょう」

「場所は酒場の一角を使うといい」

「ありがとうございます」

 

 こちらは商業ギルドと違って結構まともみたいだ。まあ、適当に売ってみよう。どうせ俺達にとっては弱い装備だ。放出しても問題ない。

 詩乃と恵里、イヌイ、ネコネに売り子をしてもらいながら、色々と売っていく。武器類はもちろん、森人族が作った回復薬、アーティファクトの武具類もだ。

 売り子が可愛い女の子達なのでどんどん売れていく。手を出そうとしたら、ヘイゼルと俺でお話を行う。物理的なお話になるがな。

 

「俺の奴隷になってくれ!」

 

 こんな風に言ってくる奴には殺気を込めながら注意し、聞かなければ見せしめとして片腕を圧し折ってやる。それで諦めたらしっかりと治療して元に戻し、最後に次は去勢すると告げれば大概は大人しくなる。中には俺の容姿から変態になる奴もいる。ヘイゼルがお話をした奴は特にその傾向が多い。

 優花が変化しているヘイゼルは大人の女性で、冷たい印象も与えるため、正に女王様といえなくもない。そんな彼女がさげずんだ瞳で見ながら注意してきて、最後には物理的な行動にでるとなればドエム連中にはご褒美だったみたい。それを更に気持ち悪そうに見るから、無限ループになっている。

 

「馬鹿ばっかなのです」

「あはは」

 

 普通にお金で買う人も居れば、亜人奴隷で支払う者達も居る。そちらは治癒の法術が使えるネコネに診察してもらって値段を設定。相場よりも高めで引き取り、金や武具などで交換する。手に入れた奴隷は即座に治療して栄養剤という名の神水を与えておく。

 

「ん~思ったよりも収益がでないね」

「まあ仕方がないだろう。基本的に奴隷は高めに設定しているからな」

「僕ならもっと安く買い叩くけどね。腕がないのとか、ざらだし」

「冒険者が盾として連れていっているのだから、仕方がないとも言えるが……本命はもう一つあるから問題ない」

 

 恵里と話しているが、奴隷以外にも本命はある。それはこの街、引いては国における亜人奴隷の需要の増加だ。亜人奴隷の値段が跳ね上がれば自ずと大事にしなくてはいけないし、彼等が死ぬ可能性は減る。また、亜人奴隷を狙って愚か者共がハルツィナ樹海へとやってくる。そう、鴨が葱を背負って来るような状態だ。

 魂を自ら献上しに来てくれるとは大変結構。現在のハルツィナ樹海が持つ防衛力は人間の軍隊が来ても瞬殺できる程度にはある。故に囮として安心して使えるというわけだ。

 

「貴族や商業ギルドの商人っぽいのも何人か来てたけど、こちらに声をかけてこなかったね」

「まだ様子見の段階なのだろう。それか夜にでも襲撃するつもりかもな。どちらにせよ、冒険者ギルドで手を出してくる事はないみたいだ」

「そっか。それじゃあ、夜のお散歩にでも出てこようかな?」

「それはいいかもしれない。そうだ、鈴を連れて一緒にデートでもするか?」

「それ、絶対にゆ……ヘイゼルも着いてくるよ?」

「そうなると他の子だけ残すのも問題か」

「まあ、そもそも僕はこの街を裏から支配するのもいいと思うけどね」

「流石にそこまでするのは問題だろう。あくまでも他国だからな」

「……相手から手をだしてきたら?」

「それは潰す。俺の嫁達に手を出そうとしたのなら、その代価を魂で支払ってもらう」

「スワスチカを開くのも面白そうだけどね」

「止めろ」

 

 スワスチカとは大量の人間の魂を吸い発生する異常領域だ。数十人どころか数百、数千人の命が必要になる。つまり、恵里が言っているのはこの都市の人間全てを殺すと言っているよいうなものだ。

 

「まあ、本当にやばくなるまではいらないか」

「そもそも軍隊や狂信者共で事足りる可能性もある」

「それもそうだね。それじゃあ、今晩は普通に楽しもうかな」

「可愛がってやる」

「うん、いっぱい愛してね」

 

 恵里は基本的に俺が愛していれば大人しく言う事を聞いてくれる。ちゃんと構っていないと色々とやらかしそうだが、鈴も一緒なので問題は特になし。

 

「旦那様、そろそろお時間です」

「ああ、ありがとうイヌイ。じゃあ、片付けをして帰るぞ」

「了解。また明日、朝から南門の外で店をやるので欲しい物がある人は来てください」

「お願いします」

 

 皆でしっかりと宣伝してから、イルワさんにお礼と場所代としてお金を支払う。同時に魔物(モンスター)を売った代金を受け取ってから宿へと向かう。その途中で期待していた襲撃は無かった。夜がメインかと思えばそちらもない。どういうつもりなんだろうか? 貴族連中も可愛い詩乃達を狙って無茶な要求もしてこない。どういうことだ、本当に。

 

 

「にゃ~」

 

 

 鳴き声が聞こえて振り返ったら、猫が居た。ただそれだけだ。ただ、沢山の猫達が集まってきて、俺達に、俺に甘えてくるだけだ。

 

「よくよく考えたら……シュテルが中立とはいえ商業都市を見逃すはずなんてないよね」

「だよな」

『完全には制圧していません。まだ49%です。ただ警備隊などは完全に制圧してあります』

「充分よね」

「充分だな」

 

 暗躍ニャンコが街の有力者たちを既に押さえているのなら、襲撃を受けないのも納得だ。ご褒美にカリカリをやろう。いや、それよりも猫じゃらしで遊んであげる方がいいのだろうか? 

 そんな事を思いながら帰ると、宿の前で鈴とアルテナが待っていた。その二人の表情はすぐれない。

 

「どうした?」

「その、ごめんね? 鈴達、宿から追い出されちゃった」

「何かしたのか?」

「最初は問題なかったんだけど、亜人が増えることに難色を示してたの」

「ですが、それは建前ですね。おそらく商業ギルドから圧力がかかったようです」

「なるほど、そう来たか」

 

 まあ、宿がなくなったのなら仕方がない。馬車を外に出して寝ればいいだけだ。普通の馬車と違って俺達が使っているのはかなり良い奴だし、入れているベッドに関しては高級な宿に入っている奴よりグレードが高い奴だ。何せ、よく使う寝台はユーリ達が本気で作っているからだ。回復魔法が常にかかるようにもできるらしい。エロと睡眠、どちらも満たす最高級品だ。

 

「街から出て野宿する。行くぞ」

 

 手に入れた奴隷達も含めて全員で移動し、外にキャンプを作る。防衛はラプトルモドキ達と、恵里が呼び出した死霊騎士達。彼等は鎧に憑依させて鈴が張った結界の外から警備させる。

 警備はこれでいいとして、組み立ててあるテントを複数取り出して、簡易的な寝台を設置して奴隷達を休ませる。次に明日の商店として店舗も配置しておく。こちらも宝物庫にあるテントなどを使えばすぐに完成だ。

 亜人達はアルテナとネコネ、イヌイに任せ、詩乃と優花、俺と恵里、鈴は普通に過ごす。夜もいつもの通り、過ごす。その時に鈴からとある提案があったのでそちらも聞いておく。

 一応警戒していたが、襲撃はなかった。仕方がないのでお店を開いて奴隷を集めていく。商売している間に商業ギルドから文句を言いに来た連中が居たが、そいつらは追い返した。それとハジメ達に連絡を取って何処に居るかを聴き出したので、明後日にはそちらに向かう事にした。

 

 

 

 

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