本日は計画通りにハジメと白崎をデートさせ、ユーリの服や素材を買うために街へと出てきた。移動は馬車で御者は女性騎士の人を手配してもらった。ユーリの服を買うのだから、それなりの店でないといけない。
馬車はとっても揺れてお尻が痛くて大変だったが、ユーリを膝の上に乗せる事でなんとか耐える。
「痛っ」
「白崎さん、大丈夫?」
ハジメが隣に座っている白崎を気に掛ける。席はハジメと白崎が対面に座り、俺とユーリ、谷口がこちら側に座っている。
「うん、なんとか。南雲君は平気? なんだったら回復魔法を使うけど……」
「大丈夫だよ。それより、そっちは?」
「痛いが、ユーリのクッションとして頑張っている」
「ご、ごめんなさい」
「俺が好きでしている事だから気にしないでくれ」
ユーリが痛がる姿なんて見たくないし、俺が痛がる方がいい。それよりも気になるのは谷口だ。馬車に乗ってからはユーリに余り構っていない。乗る前は凄く可愛がっていたのにだ。調子が悪いのか?
「谷口、大丈夫か?」
「ん~? 鈴は大丈夫だよ」
外の景色を見ながら答えて谷口はやはりどこかおかしな気がする。
「本当に大丈夫か? 具合が悪いのなら無理しなくていいぞ?」
「大丈夫、大丈夫」
「だが、ユーリに手を出してきてないだろ。隣に居るのに」
「あの──」
「それはね……ユーリちゃんを着せ替えするためにエネルギーを溜めてるからだよ! ついでにかおりんも着せ替えするしね!」
「私はついでなんだ……」
「ごめんね、かおりん。今はユーリちゃんが優先なの!」
どうやら気のせいのようだ。心配して損したか。
「ユーリ。何か言いかけたようだが、どうした?」
「──いえ、なんでもありません」
ユーリが谷口をジッと見た後、小さく頷く。それからは特に気にした様子もなく、街並みを眺めて興味がある事に瞳を輝かせて俺達に質問していく。その姿は普通の子供みたいだ。
◇
馬車での移動を経験し、無事に御者をしてくれている女性騎士さんがお勧めする良いお店に到着した。
「それでは私は待機していますので、どうぞゆっくりとお過ごしください」
「「「「「ありがとうございます」」」」」
全員で女性騎士さんにお礼を言ってからお店に入る。テンプレだと、こういう時はオカマの凄腕か、美人の凄腕がいるのだが……そんな人物はいない普通のお店のようだ。もっとも、女性用の服飾店だから俺とハジメは居心地が悪い。
「別の店で買い物をしてこようか」
「駄目だ。三人を置いてはいけない。それに男の意見というのも欲しいだろうからな。そうだろう、白崎」
「え?」
「男の意見は要らないか?」
視線でハジメの方を見ると、理解したようでしきりに頷く。
「南雲君の意見を教えて欲しいな」
「わ、わかったよ、白崎さん……」
ナチュラルに俺の意見は無視されたが、まあ何時もの事だ。それに俺には天使の……いや、大天使のユーリがいるから大丈夫だ。そう思ってユーリを探すと、谷口がさっそくユーリに色々な服を並んで話しながら一緒に選んでいた。
「予想以上に仲が良さそうだね。谷口さんがユーリちゃんに襲い掛からないか心配したけれど……」
「確かにその様子はないな」
しっかりとユーリの意見を聞いて、より良い服を選んでいっている。ユーリが嫌がればあっさりと下げて、次の服を合わせていく。その姿は仲の良い姉妹みたいだ。ユーリ自身も心を開き出しているようだな。
「鈴ちゃんは……いや、これは自分達で気付くべきかな」
「白崎さん?」
「教えてくれないのか?」
「うん。ちゃんと鈴ちゃんを見て考えてあげて。鈴ちゃんはとっても良い子だから」
白崎が慈愛たっぷりの美しい微笑みを見せながら伝えてきた言葉にもう少し谷口をしっかりと見てみるか。どちらにせよ、ユーリと仲良くなってくれるのはありがたいからな。
「とりあえず、白いワンピースは鉄板かな。フリルとかあればなおいいけれど、ないみたいなんだよね~」
「お兄ちゃん、どうですか? 似合っていますか?」
白いワンピースを着たユーリが俺の前に来てくるりと回転する。服の裾が浮かび上がり、下がっていく。その姿はとても可愛らしい。まさに大天使だ。
「ああ、とっても似合ってるよ」
「えへへ~それじゃあ、これにします」
「何着くらい選べばいいのかな?」
「十着か?」
「多すぎだよ。洗濯を考えて四着くらいでいいんじゃないかな?」
ハジメの意見は正しいのだろうが、色々な服……コスチュームを着たユーリを見てみたい欲望が止められなかった。
「えっと、動きやすい運動用の服と普段着る服、部屋着と寝間着。最低でも四種類はいるよ?」
「そんなに……」
「女性の服が多いのは納得だな」
「全部で十二着ぐらいはいるから、二人は意見を教えてね~」
「お、おう」
「わかったよ……」
白崎と谷口に言われた通り、俺とハジメはただ着飾った二人を見て、意見を言うだけの存在となった。
「あ、谷口も二人の服ばかり選んでないで、自分の服も選べよ」
「それじゃあ、これかな」
谷口が選んだのはいくつか彼女が着た中でもあまり谷口の趣味に合わない、値段が安い奴だった。
「そっちより、こっちの方がいいだろ」
「確かにこっちの方が鈴の趣味に合うけど、でも高いの」
「それなら、ユーリの服を選んでくれたお礼に俺が買ってやるよ。三着ぐらい選んでいいぞ」
「本当!?」
「ああ、本当だ。そうだな。一着はそれでいいとして、残り二着はユーリが谷口に選んでやってくれ」
「任せてください!」
「やった。お願いね!」
「はい!」
二人が服を選び出すのを見送ってから、俺はハジメの脇をつつく。白崎は二人を羨ましそうに見てから、ハジメにちらりと視線をやってから溜息をついて二人の方へ移動した。
「な、なに?」
「俺は谷口にプレゼントするから、ハジメは白崎に頼むぞ」
「え!?」
「流石に二人分も出したらお金はない。協力してもらっているんだから、感謝を込めて贈ろうぜ」
「……でも、僕なんかが選んだ奴だと……駄目じゃないかな? 天之河君と違って白崎さんが喜んでくれないかも……」
「いや、こっちは金を出すだけだから、向こうのセンスに任せるんだ。失敗はない。それに白崎はハジメから送られたらどんな物でも嬉しいぞ」
「そう、かな?」
「ああ。確実だ」
「まあ、白崎さんは優しいし、そうかも」
自己評価が低いが、嬉しがる白崎を見たら大丈夫だろう。そう思っていると、ハジメが移動して白崎に声をかけていく。
「本当! いいの!」
「う、うん。バッテリー作りを手伝ってくれたお礼に僕が出すよ」
「嬉しい! ありがとう南雲君!」
ハジメの両手を掴んで凄く喜んでいる白崎。もう見ているだけでわかる光景だ。
「かおりん、かおりん。それなら南雲君に選んでもらったらいいと思うよ」
「そうね。じゃあ、南雲君が私に似合うと思う服を選んでくれる?」
「それは……」
「お願い。南雲君が選んでくれるのなら、どんな服でもいいから……」
「わ、わかった」
谷口がこちらへとやってくる。どうやら、ユーリが選んだ服を着てきたようで、俺の意見を聞いてきた。
「そうだな──」
素直に意見を言っていく。といっても、谷口が俺の事を好きになるなんてないだろうし、気楽に答えられる。谷口も俺には全然興味がないし、普通に駄目だしされる。
「ユーリちゃんのために女性が好むところを覚えないと駄目だよ~」
「ああ、そうだな。色々と教えてくれ」
「鈴がしっかりと教えてあげる。というわけで、ユーリちゃんのファッションショーをしよう!」
「はうっ」
結局、二人に沢山の服を着てもらって良さそうなのを何着か選んだ。ダメもとでコスプレみたいなのを選んだが、着てくれたりもしたのでとても眼福だった。だから、かなりの出費だったが、ガチャもできないのだしいいだろう。
◇
午前中の買い物が終わり、女性陣は支払いしている間に購入した服に着替えてもらってから店を出る。荷物を馬車に積み込み、用意ができたら皆で話す。もうお昼前だが、ここからが本番だしな。
「これからどうするの?」
「もうすぐお昼ですから、何処かで食べる?」
「それなんだが、今日一日で出来る限り王都を見て周り、必要な素材を確保したい。鉱石とかは基本的に各店から一つずつ購入したいしな」
「確かにそうだけれど、それって無理じゃない? いくらなんでも全部を回るのは無理だよ?」
「そこでチームを別ける。男手の俺とハジメは別れる。ユーリと谷口は俺のところで必要な物を集めてもらう。そっちはハジメが白崎と一緒に回ってくれ」
俺がそう言うと、聞いていたユーリと谷口はうんうんと頷き、聞いてない二人は反応が別れた。ハジメは唖然とし、白崎は少しして言葉を理解したようで満面の笑みを浮かべだした。
「え!? 普通女子と男子で別れない!」
「それは無理だ。この中で必要な物を調べられるのはユーリとハジメだけだ。白崎や谷口はわからないだろう」
「じゃあ、帰ってもらえば……」
「せっかく許可をもらえて王都を回れるんだぞ? 息抜きとしても丁度いいだろう」
「でも……」
「白崎はどうだ? ハジメと一緒に回ってくれないか?」
「任せて! 南雲君と一緒に……いっぱいお店を回るよ!」
「白崎さん!?」
白崎はハジメの腕を取って胸に抱きしめ、嬉しそうにしている。それに驚いたハジメは叫び声を上げるが、無視してこちらをニンマリと見てからハジメの耳元で何かを囁いていく。するとハジメも驚いたようにこちらを見ながら、頷く。
「わかったよ。僕は白崎さんと回るから、そっちはユーリちゃんと谷口さんをよろしくね」
「ああ、任せろ。ハジメも気をつけてエスコートしてやれよ」
「う、うん……」
何を言われたのかわからないが、絶対に変な事だろう。まあ、計画通りに進むなら支障はない。
「すいません。それじゃあ、俺達をそれぞれ王都の反対側に降ろしてください」
「わかりました。一応、この地区には近づかないでください。スラムなので危険ですので」
「はい、ありがとうございます」
事前に貰った商店が書き込まれている地図を使いながら注意を受ける。しっかりと王都における注意事項を覚えている間に馬車で移動する。始めに俺とユーリ、谷口が降りる。女性騎士の人はこっそりとハジメと白崎を護衛してもらうためだ。
治癒術師と錬成師の二人と、結界師と魔導師、召喚士の俺では前の二人の方が不安だ。こちらの場合は谷口が防御を固めてユーリが攻撃とかをできるからだ。守っている間に救援を待てばいいだけだしな。
それに一応、何か有った時のために発煙筒の魔導具を受け取っている。騎士団の見張り達に支給される緊急用の物だが、王都内で使えば普段よりもかなり数を増やした見回りの騎士達がすぐに駆け付けてくれるそうだ。本当に至れり尽くせりといった感じだ。そんな訳で安全面は確保されている現状。俺達は安心して店を見て回れる。
「さて、それじゃあ行くか」
ハジメと白崎を乗せた馬車を見送ってから二人に振り返る。ユーリは白いスプライトが入ったピンク色のパーカーに薄紫色のミニスカート。黒いタイツとキュロットが無くなり、スカートがキュロットに変わっているがINNOCENTの春花日和みたいな感じだ。谷口も着替えていてユーリと同じような服を着ている。ピンク色が白色に代わり、スカートが赤になっている。どちらもとても似合っている。
「はい!」
「鈴としてはかおりんと南雲君のデートがどうなるか、見守りたいんだけどね~」
「それは諦めろ。口実にはしたが、実際に人手も時間も足りないからな」
「そうですね。私も早くデバイスを作らないといけませんし、そのための機械も必要ですから」
「デバイスってのはわからないけれど、理由は理解しているから大丈夫だよ。それで、最初はこの店?」
「そうだ」
店の中に入ると、ユーリがさっそく飛び出して金属や鉱石、素材を物色していく。俺は店員の所に移動して購入許可証を見せる。
「これはレアメタルですね。これとこれとは多めに買って……」
次々と選んでいくので、荷物持ちをしながら購入した物は城へと運んでもらうよう手配する。
「普通の小学生に見えるけれど、本当に違うんだね~」
「まあな。ユーリは研究所に勤務して最先端どころか、数世代先の技術を開発するような子だからな」
「うわぁ……鈴、ビックリだよ。天才の上に将来は美人確定の美少女。まるで天之河君みたい」
「あんな馬鹿と一緒にするな。ユーリは性格も完璧な優しい大天使だ」
「ちょ」
「欠点は体内に世界を滅ぼしかねない物体を所持していて、暴走する危険がある事か?」
「それ、致命的だよね!」
「大丈夫大丈夫。冗談だから」
「そっか、良かったよ」
今は無いから冗談で済む。その後、一応全部の商品を購入し、追加でユーリが選んだ奴も追加で買う。
「終わりました。他はもう目ぼしい物はありませんね。私が知らない物質があると思うので確実とはいえませんが……」
「構わないよ。そのために一応、全部買ったんだからな」
「そうですね。実験しないといけません」
「ユーリちゃんは凄いね~」
「わぷっ」
谷口が抱き着かずにユーリの頭を撫でていく。ユーリは大人しくされるがままだ。
「ほら、次の店に行くぞ」
「その前にご飯食べない?」
「それもそうだな。ユーリは何を食べたい?」
「えっと、お肉がいいです。血の滴るステーキとかなら……魔力効率はいいかもしれません」
「お、ガッツリだね。鈴はそれでもいいよ」
「じゃあ、行くか」
店から出ると大通りなだけあって人通りが沢山ある。だからユーリと逸れないように手を繋ぐ。今のユーリは好奇心旺盛で興味があればどこにでも突撃しそうだからな。
「逸れないように手を繋ぐぞ」
「えへへ~こういうのもいいですね。谷口さんも繋ぎましょう!」
「鈴も? ま、いいか。うん、いいよ~」
ユーリが差し出した手を谷口が握り返し、三人で道を歩いていく。ユーリが楽しそうにしているからいいか。何か視線が集まってきているが、見た限りではクラスメイトなんていないし、大丈夫だろう。
「あ、そうだ。ユーリちゃん、鈴は鈴でいいよ」
「はい。わかりました。鈴さん」
「ん~鈴さんじゃなくて、お姉ちゃんでも鈴はいいよ! むしろそれがいいかな!」
「えっと、鈴さんはお兄ちゃんと結婚するんですか?」
「「え”」」
ユーリの言葉に驚く俺と谷口。ユーリは不思議そうに俺達を見上げながら告げてくる。
「だって、私のお姉ちゃんになるのなら結婚しないといけませんよ? そうしたら義理のお姉ちゃんです」
「ゆ、ユーリちゃんにとって沙条君は本当のお兄ちゃんなの?」
「はい。そう望まれましたから。私はお兄ちゃんにいっぱいお願いを叶えてもらいましたから、今度はお兄ちゃんのお願いを出来る限り聞いてあげるつもりです」
「沙条君?」
「知らんが、ユーリは良い子だな。だが、ユーリの望むままに行動していいぞ」
「それは嫌です。絶対に嫌です。危険すぎます」
「?」
谷口は不思議がっているが、ユーリは闇の書、夜天の書に組み込まれた制御プログラムだという記憶もある。それは即ち、自分を使われる存在と認識しているのか、それとも暴走する危険があるから俺に自分の権限を譲渡しているのかはわからない。この世界にロード・ディアーチェを始めとしたマテリアル達や高町なのは達が居ればまた別なんだろうが、まだまだ俺はユーリを自由に過ごさせてやるには実力が足りないという事なんだろう。当たり前か、魔法少女……いや、魔砲少女達と同じにされてはかなわないな。
「お姉ちゃんと呼ぶのなら、お兄ちゃんのお嫁さんになってください」
「それはごめんなさい。ユーリちゃんは好きだけど、沙条君の事はね……」
「知ってた」
「あう、ごめんなさい」
「いいさ。俺にはユーリがいるからな」
「はい!」
ユーリが嬉しそうにこちらを見上げてくるので笑い返して歩いていく。
「あれ、鈴って単に出汁にされただけ? あはは、そんなまさか……」
「どうしたんだ? 行くぞ」
「うん!」
谷口が急いで歩調を合わせてくる。俺も当然、ユーリに合わせているので歩みはゆっくりだ。移動しにくいがユーリのためだし仕方がない。
レストランっぽい店に入り、三人で食事をしてからは色々な店を回る。道具屋から武器屋など。その中で安売りされていた壊れかけの剣や廃棄物などを全て購入していった。
最後の方でユーリとついでに谷口へとペンダントを購入して送っておく。こいつをデバイスに改造できなくても、谷口の結界を施せば防御力は上がるだろうしな。
◇ 恵里
「沙条と南雲が香織と谷口を連れて出かけたんですよ! 何故俺達には許可が降りないんですか!」
「彼等は必要な物資を買い出しに行っただけだからだ。それにユーリと言ったか。彼女の服を買いに行くのに二人の協力が欲しいと言われたら断れん。本人達も納得していたからな」
「ですが! 危険です!」
「ちゃんと警備はさせている。それに休息日が欲しいなら、少人数ずつだが、しっかりと取らせてやる。こちらも警備がある都合上、四人から五人ずつが限界だ。それ以上の者が城から出る事は許可できん」
「しかし……」
「光煇、メルド団長がこう言っているんだから大丈夫よ。そうよね、恵里」
「うん。四人というか、五人はしっかりと計画を決めてたよ」
「これが五人が行動するルートだ。多少の前後はあるだろうが、問題ある地域に入る場所には騎士を立たせているから入ることもない」
「それなら安心ですね」
雫と二人で光煇君を止める。与えられた役割なので、それを全うしつつ接触を図るために抱きついて制止した。でも、光煇君はこちらを見もしない。それほど香織が大事なの?
やっぱり、邪魔だなアイツ。それにあの子も光煇君を……っと、いけないいけない。今は光煇君を止めないと。そう、光煇君は止めないと。何故かこちらを警戒しているユーリちゃんを誤魔化すためにも実績は作っておかないとね。
「だが、やはり心配だぞ。白崎達が沙条達に襲われるかもしれない」
「それはないでしょう」
檜山の意見に雫が否定する。
「わからない。アイツはユーリちゃんのような幼い子を誘拐してきた奴だぞ。絶対に酷い事をするつもりだ」
「いや、わからないでしょ。それに知り合いみたいだし、同意を取って召喚されたと彼女本人が言っているんだから……」
「脅しているかもしれないだろ!」
「大丈夫だよ。鈴もいるからね。それに言ってしまえば妹や子連れでダブルデートしているようなものだから」
「なんだと!」
「どういう事だ?」
「恵里?」
私はしまったという表情を作り、詰めよってくる檜山と光煇君に説明する。
「私が言ったって言わない?」
「もちろんだ!」
「これは買い物だけど、途中で二組に別れるんだって」
「確かにそう言っていたな。王都の店を回るのに一組で行動していたら回り切れないと」
メルド団長が捕捉してくれるので少し捏造して話す。
「だから、午前中にユーリちゃんの服を買った後、沙条君達は別れるの」
「おい、まさか……」
「沙条君が鈴とユーリちゃんを連れて、南雲君が香織を連れてね。沙条君は南雲君と香織をくっつけようとしているし、二人っきりになるように誘導している。沙条君自体はユーリちゃんを使って鈴を狙っているのかな? 鈴は鈴でユーリちゃんが気に入っているみたいだけど。だから、とりあえず今はデートを楽しんでいるんじゃないかな? 二人の感情は知らないけれど」
「おのれ沙条! 香織が優しい事に付け込んで……」
「南雲の野郎……」
男共の嫉妬が一斉に南雲君に向く。沙条君にも向いているようだけど、香織の力で南雲君の方が多い。沙条君が鈴を狙っているかなんてわからないけどね。どちらかというとユーリちゃんがメインでしょうし。
「恵里……」
「やはり迎えに行くべきだ」
「いや、違うでしょう。二人が香織や鈴達を狙っているのなら尚更、何も起こらないわよ」
「何故だ!」
「嫌われたくないからよ。それに騎士団の監視があるんだから、何か有ればすぐに止めに入るわ。ですよね?」
「もちろんだ。ちゃんと定期報告も受け取っている。全て予定通りに進んでいるそうだ。捕捉として仲良さげで楽しそうだとも書かれているな」
メルド団長が報告書を見ながら教えてくれる。これで香織が満更ではないと光煇君に教えられたかな? ここから香織の気持ちを理解して身を引いてくれれば、邪魔者は一人になる。
「香織が優しいから合わせてやっているんだろう」
「「なんでそうなるの……」」
思わず雫と一緒に呟いてしまった。くっ、どうするべきか……ここは方法を変えようかな。やっぱり、さっさと消えてもらうのがいいか。用意しておこう。
「この話は終わりだ。それよりも近々オルクス大迷宮へと遠征に向かう。それに合わせてしっかりと訓練をするように」
「はい……」
部屋から外に出ると、檜山が壁を殴りつける。
「くそっ、あの野郎! 帰ってきたらただじゃおかねえ……」
「メルド団長はわかっていない。こうなれば強行するしかないか」
「待ちなさい! それはまずいわよ!」
「止めないでくれ雫! 俺が香織を助けにいかないといけないんだ!」
「だから、まずいのよ! だいたい香織は……」
「ねえ、雫。ばれなければいいんだよね?」
「まあ、それなら……」
「光煇君も護衛がいたら安心できるよね?」
「ああ、そうだな」
「じゃあ、遠藤君」
「俺?」
「そう。遠藤君なら、見つからないように抜け出して見張れるよ。これならメルド団長達と衝突することもないし、いい案だと思うんだけど……どうかな?」
「確かに遠藤なら……遠藤頼めるか?」
「いやいや」
「やれ、遠藤。そして邪魔してこい。白崎の方だぞ」
「わ、わかった」
光煇君と檜山に言われて遠藤が落ちた。計画通り。これで光煇君が香織達を問い詰めたら、デートを邪魔されたり、余韻を台無しにされたりした香織は怒るはず。これで光煇君が目覚めてくれたらいいけれど、これで駄目なら……うん。事故に遭ってもらおうかな。檜山達を利用するか、悪霊を取り付かせて色々やればいい。
夕方。五人が帰ってきた。五人共、とても楽しそうにしている。そんな所に光煇君が突撃して凄い言い合いになる。その状態で馬車に乗って戻ってきた遠藤君が報告してくれる。
「で、どんな感じだったの?」
「それが……沙条君達はわからないけど、南雲の場合はどちらかというと白崎の方が押していたな。南雲は終始、翻弄されっぱなしだった。まるで白崎の方が南雲を好きなようだった」
「嘘だ! 有り得ないだろ! あの南雲だぞ! 無能野郎だぞ!」
「駄目な子ほどかわいいっていうから?」
「まあ、確かに光煇は一人でも大丈夫そうよね」
「楽しそうに話していたが、白崎が着ている服も南雲の趣味に合わせたらしいからな」
「っ!?」
どんどんヘイトが溜まっていく。これでいい。檜山は考え無しだから、オルクス大迷宮に行ったら何かをしでかすでしょう。その時に纏めて邪魔者を排除する。光煇君は私の物なんだから。
◇
戻ったら天之河に問い詰められた、意味がわからない。谷口も女子達に問い詰められて何があったか話している。まあ、普通に買い物をして食事をしただけだし、問題ないので荷物を降ろして運んでもらう。
「私が誰と買い物をしようが、光煇君には関係ないでしょ!」
「関係ある! 俺は幼馴染だから、香織を守る義務がある!」
「ないよ!」
「まあまあ、二人共そこまでにして……」
南雲が必死に仲裁しているが、時間がないのでさっさと止める。
「そこまでだ。白崎と谷口、南雲はこれから買ってきた素材を使って早急にバッテリーを仕上げる。邪魔をしないでくれ」
「そんな事は後回しでいいだろう! いや、お前達だけで作るべきだ!」
「オルクス大迷宮への遠征に間に合わせる必要がある。お前は自分のエゴだけで他のクラスメイトに危険を負わせるのか?」
「そんな事はない! 二人で作ればいいだけだろう!」
「無理だよ。白崎さんと谷口さんの協力がなければそんなすぐには作れないよ」
「だが……」
「それなら、俺が監視しよう」
清水が手を上げてそう言ってきた。
「どうせ俺の力は低い方だ。今から訓練しても少ししか力は上がらないだろう。それならバッテリー作りを手伝って、バッテリーが欲しい。魔力効率を上げたらまだ強くなれるからな」
「清水は闇術師だったな。確かに使えそうだ。わかった。それなら清水が来てくれ。それだけでも助かる。もちろん、報酬として優先してバッテリーを渡そう」
「ああ、頼む」
「ほら、行くぞ。時間がない」
何かを言ってこようとする連中を無視して、谷口と白崎の腕をそれぞれで掴んでさっさと移動する。天之河達が邪魔をしようとするが、谷口の結界で防いでもらって工房に籠ればいい。食事は買って来てあるから平気だ。
ユーリはジーと中村の方を見てから、こちらにやってきた。工房で楽しい楽しい工作の時間だ。作るのはバッテリーだが、大量の廃材や廃棄用の金属武器を使ってユーリが設計した工作機器をハジメが作りあげる。それを使ってバッテリーを量産していくのだが、完全にデスマーチだ。
だというのにユーリは鼻歌混じりで別の何かを同時に作り出していた。南雲の作業量がやばいが、機械さえできれば後は俺と清水が作って谷口が結界を俺が書いた魔法陣に固定化するだけの簡単な作業だ。
「これが簡単な作業とか嘘だ!」
「はっはっは、諦めろ谷口! ご褒美が欲しければな! ほら、これが欲しいんだろう?」
「くそぅ、くそぅ、鈴はまけないんだから!」
チョコレートとかガチャ産の菓子類がまだあるから頑張れるのだろう。今も口にチョコレートを突っ込んでやったら食べながらどんどん結界を張っていく。白崎はハジメの世話をしているので忙しい。世話は飲み物を口に運んだり、汗を拭いたりだが。それと定期的に全員へ回復魔法をかけることだ。そう、どんなに疲れても倒れられないデスマーチだ。だが、俺がガチャをしていないのだから、これぐらい当然だろう。
クラスメイトの清水が現れた! 仲間になりたそうにこちらをみている。 仲間にしますか? Yse/Np
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Yes
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No