ありふれた職業の召喚(ガチャ)士で世界最弱   作:ヴィヴィオ

60 / 88
第60話

 

 

 フューレンの外での販売は順調であり、売上が凄い事になっていた。用意したテーブルの上には金貨が積み上げられ、貴族や商人などには宝石が、冒険者などには武具、回復薬が売れに売れたからだ。

 代金として支払われるのは貨幣だけでなく、亜人の奴隷が多い。また、亜人以外にも奴隷として売られてくる人族までもいた。借金をして奴隷になった者だけでなく、誘拐などで強制的に奴隷にされたような者までいたのでとても大変だ。こいつらの扱いが非常に困る。

 それに怪我人も多く、鈴が張った清浄な力を持つ結界の中で、優花がジャック・ザ・リッパーの技術で手術を行い、アルテナが薬で治療を頑張ってくれている。明日には出発予定なので、最悪、死なない程度に神水を与えておけばいい。もちろん、出発の準備もネコネとイヌイ、恵里達がしっかりとやってくれている。

 そんな嫁達が準備をしてくれている中、俺は鈴、詩乃と一緒に街中を二人でデートだ。鈴と手を繋ぎ、詩乃を腕に抱き着かせながら、巨大な商業都市であるフューレンの夜を堪能しているわけだ。このフューレン、夜の街も結構営業している。といっても、酒場とかにはいかないが。

 

「ねえねえ、鈴、あの人達が気になるよ~」

「ん? アレは娼婦じゃないか?」

 

 街角の一角に派手な衣装をした女性が男性に声をかけている姿や、壁を背にして立ちながら客に声をかけている姿が見える。声をかけた男性と一緒に宿へと入っていくのが見えたので間違いない。

 

「それって……」

「ほほう。つまり、買えるんだね? じゃあ、鈴も……」

「駄目よ。そんな事をしたら、もう鈴とは一緒に寝ないから」

「うっ、それはやだなあ……てか、それって閨に入れないってことじゃん! ほぼ皆で寝てるんだから!」

「まあ、そうね。他の子達も同じでしょうし……というか、鈴は私達を真名と一緒にせめてきたりしているんだから、それで満足しなさいよ」

「は~い」

 

 鈴はルサルカと一緒で女の子同士でも楽しんだりしている。といっても、キスとかはせずに手とか身体を擦りつけたりしてくるぐらいだが。特に優花と大人版のアルテナ、詩乃、優花が被害にあっている。

 

「それで何処に行くのよ? 私はついて来いとしか言われてないけど」

「ああ、それは娼館だな」

「は?」

 

 詩乃がこちらを冷たい瞳で睨みつけてくるので、しどろもどろになりながら答えないといけない。

 

「まなまな、鈴達だけじゃまだ足りないの~? いっぱいご奉仕しているのに~」

「すぐにそっちにいったな」

「で? 回答次第じゃわかってるわよね?」

 

 そう言いながら、詩乃の尻尾が俺の尻をペチペチと叩いてくる。地味に痛い。既に尻尾の扱いは結構慣れているようで、物を取る時に使ったりもしている。

 

「娼館に行く理由はそこで娼婦として働いている彼女達を身請けするためだ。幸い、資金はできたからな」

「なるほど。それなら納得ね。デートで私達を娼館に連れていくとか、売られるのはないとしても客を取らされるのかって少し思っちゃった」

「それはないな」

「うん、わかってる。言ってみただけ」

 

 ギュッと腕を胸に抱きしめながら、悪戯っ子のような目をする詩乃に遊ばれながら、歓楽街を歩いていく。

 

「でも、こういうのって奴隷商から買うんじゃないの?」

「そっちはおそらく買えないからな」

「なんで~?」

「商人ギルドが手を回しているだろうしな。まあ、娼館もその可能性はあるが、まだましだろう。それに買うのは怪我人や病人をメインにするからな」

「そっか。店側からしたらいらないんだよね」

「ムカつくけど、そういうことね」

 

 店側からしたら、病気や怪我でした者はもう必要ない。特に奴隷なら、その扱いは酷くなる。それが亜人なら更にだ。

 

「そんなわけで、亜人の娼館に行って買っていくぞ。鈴は治療をしてくれ。詩乃は護衛だ。それと鈴。いざとなったら結界を頼む」

「了解。やってみたい事もあるしね」

「そういえばそう言っていたな。何がしたいんだ?」

「うん。悪人さんを浄化したらどうなるかな~って」

「えっと、それって……」

「うん。実験しないと色々と不味いからね」

「実験体が必要か。わかった」

 

 二人でシュテルから来るように頼まれた娼館へと向かう。その店に入ると見覚えのあるような長い茶色の髪を後ろで纏めた高町なのはに似ている女性に歓迎されることになる。

 

「ようこそいらっしゃいました、()()()

「「お兄様?」」

「シュテルか」

「シュテるん!?」

「はい。シュテるんです。フューレンの歓楽街は最優先で押さえておきました。ここは情報が集まりますし、悪い人達が沢山いますからね」

 

 シュテルにとって収集し、始末した後に入れ替わるのは容易いだろう。そうしてそいつが使っていた人材や人脈、資金を使って暗躍していく。その一つとして歓楽街を支配下に置いたみたいだ。

 

「そうなんだ?」

「はい。亜人の店に来る人は嗜虐趣味やストレス発散に暴力的な行為をする人ばかりです。それにお酒を入れると自慢話とかをする人もいいですからね。ああ、安心してください。諜報員として私は他の人と寝てませんからね。ペットとして傍に潜ませていただいただけです。私の身体はお兄様の物ですから」

「ありがとう。それで、ここに来いって事は用意しているんだよな?」

「はい。亜人達は集めてありますが、その前にこちらにいらしてください。食事の用意をしてあります」

「どうする? 鈴としては食べたいけど……」

「でも、他の皆が待ってるし……」

「今日はこちらにお泊まりください。あちらの方にはすでに連絡しておきます。今日は寝かせませんよ」

「それ、怒られないか?」

「大丈夫です。しっかりと伝えてありますし、食事も届けてあります。私は基本的に皆と別れていますので、こういう時は優先してもらいました」

「ならいい」

 

 大人バージョンのシュテルに手を取られて奥へと進むと、広い一室に案内される。そこはシャンデリアや高価な壺まで置かれているステージがある広い酒場のような場所で、近くテーブルの上には沢山の果物や料理が置かれていた。壁際には亜人の少女達が並んでいたり、寝転んでいたりしているが、何処かシュテルを恐怖の籠った表情で見詰めてきている。

 

「この子達?」

「皆、怪我をしているのね」

「大量の薬を使って治療しましたが、身体の一部が無い子が多いので傷口を焼いて止血をしたり、腐った部分を切り落としたりもしました」

「ああ、それで怖がられているのか」

「仕方ありません。そうでなければ死んでいましたから。私も回復魔法は多少、使えますが多少しか回復できませんからね。本拠地でなければ治療できません。そんな訳でお願いしますね」

「あれ、もしかして今日は寝かせないって、もしかして……」

「いや、もしかしなくてもそうでしょう」

「はい。彼女達の治療です。あ、私はお兄様と楽しみますから」

「ずるい!」

「まあ、私はする事がないから別にいいけど」

「それって鈴だけが頑張らないといけないじゃない!」

「まあ、大丈夫だ。俺も神水を使って回復させるしな」

「そもそも一人でやらせるのは冗談で、ちょっとしたお茶目です。ちゃんと手伝いますからね」

「よかった~!」

 

 まあ、どう考えても神水を与えないとやばい奴等もいる。

 

「では、デスマーチを始めましょうか」

「ちなみに何人いるのかな~?」

「確かにすごく多いね」

「ここ以外にも居ますので、全部で124人ですね。彼女達を生かして我等が国に連れて行くのが最上です。我等の難点は人が少ない事。ですので、手足がなくても生きてさえいれば手に入れる必要があります。他にも人手は増やしますが、国民は必要です。流石に人が居ない機械や魔物(モンスター)だけの国は問題ですからね」

 

 機械と魔物(モンスター)の国もいいけれど、流石に亜人達はいる。指揮官が必要だからだ。召喚で補ってもいいけど、限度がある。そもそも我が国の人手は魔物(モンスター)とチビットを含めてマテリアルズ達だ。流石にマテリアルズ達だけでは思考を読まれる可能性もある。AIでは尚更だ。後、流石に国としてどうかとも思うので人が欲しい。

 

「よし、治療を始めよう」

「は~い。まずは結界を展開するね。これで誰にもばれないようになるよ」

「転移魔法陣を使うのはまだ危険だし、これでいいか」

 

 手首を切ってグラスに血を注ぐ。それらを怪我人達に飲ませて治療する。鈴の結界により感染症が起きないように無菌状態にしたのもあり、怪我こそしているが命に別条がないレベルまで回復させていった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 頭を撫でられる感触がして、目が覚めた。どうやら気が付けばシュテルにベッドで膝枕をされて頭を優しく撫でられていたみたいだ。

 

「おはようございます」

「ああ、おはよう」

 

 確か、治療が終わってから愛し合って一緒に眠ったはずだ。下を見れば鈴と詩乃が俺の腕を枕にして眠っている。他にもベッドの上には様々な道具が置かれているが、それらは鈴が試しに使った玩具だったりする。

 

「朝食の用意ができました」

「ありがとうございます」

 

 亜人の子がメイド服姿で料理を用意してくれたみたいだ。それ以外にも着替えまで用意されている。

 

「でも、まずはお風呂からですね」

「そうだな。詩乃を連れていくから、シュテルは鈴を頼む」

「わかりました」

 

 広いお風呂で詩乃達の身体を洗っていくと、流石に二人も起きてくる。何時もの事なのでそのまま身を任せてくるので、隅々まで触って綺麗にする。シュテル達には俺を洗ってもらう。

 風呂からあがれば食事をしてから、奴隷の子達と一緒に出ていく。シュテルとは店先でお別れなので、抱き合って軽くキスをしてから別れる。

 

「では、後は任せる」

「はい。お任せください。お兄様も気をつけてください」

「ああ、もちろんだ」

「ばいば~い」

「またね」

「はい。また」

 

 シュテルが用意してくれた複数の馬車に乗り、彼女達を連れて街の外に出る。検問も問題なく抜けて、待ち合わせの場所に移動した。そこでは既に出発の準備は整っているようで、奴隷の子達は牢屋の方に入れられている。外で恵里とイヌイ、ネコネ、優花が椅子に座りながらぼ~と待っていた。

 

「ただいま」

「お帰り。昨日はお楽しみだったみたいね」

「まあな」

「いっぱい楽しんだよ。まあ、疲れたけどね」

 

 恵里は俺達の身体に残っているキスマークなどを見て、こちらに抱き着いてくる。それを見たネコネとイヌイも一緒だ。そして、クンクンと匂いを嗅いでくる。

 

「知らない女の匂いはしないのです」

「シュテルさんのですから、新しい人はいませんね」

「それなら、大丈夫かな」

「鈴達がちゃんと見張ってるから大丈夫だよ~」

「それもそっか」

「まあ、鈴には玩具にされたけど」

「鈴も玩具にされたよ!」

「アレはただの仕返し」

「ぐふっ! 反論できない~全てはケモ耳が悪いの~」

 

 そう言いながら、鈴は詩乃の尻尾を触ろうと抱き着くが、その前に逃れられる。俺は抱き着いているネコネとイヌイの頭を撫でながら、恵里と軽くキスをする。恵里は当然のように舌を入れてくるので、そのまま少し楽しむ。

 

「ん……準備は終わってるから何時でもいけるわよ」

「それならいくか。イヌイとネコネは大丈夫か?」

「大丈夫です。しっかりと昨日の内に準備はしておきました」

「それと私の方で出発する時間を伝えてフューレンの街に流しておいたのです。これで旦那様や姉様達の望む通りになる確率が高くなったのですよ」

「そうか、ありがとう。ヘイゼルや他の皆は大丈夫か?」

「大丈夫だよ~」

「平気。何時でもいける」

『こちらも問題ありません』

「なら、さっさと行こうよ」

「わかった」

 

 ヘイゼル、鈴、恵里、アルテナも大丈夫みたいなので、馬車に乗り込んで移動する。今回は俺が御者をするので前に座り、天井には詩乃に居てもらう。後ろは亜人達の事もあるので人間である俺達よりも、アルテナ、イヌイ、ネコネに見てもらう事で彼女達の負担を減らす。真ん中にヘイゼルと鈴に居てもらう。そして、恵里が俺の隣に座る。これで何処を狙われても対応が可能だ。

 

「準備完了したみたいだね」

 

 恵里が手に聖遺物であるネクロノミコンを形成で生み出し、手に持ちながら告げてくる。鈴の方も神獣鏡(シェンショウジン)を生み出しているので、俺も美遊に何時でも戦えるように準備してもらっておく。

 

『こちらも問題ありません。魔力は百万ほど即座に使えるように用意してあります』

「わかった。なら、出発だ」

 

 席の左右に神喰も展開して用意してあるので、まあ大丈夫だろう。そもそも鈴が展開する神獣鏡(シェンショウジン)の結界を抜けるほど、火力が出せる敵なんて滅多にいないだろうしな。

 

「さて、獲物はかかってくれるかな?」

「どうだろうな?」

『かかってくれると助かります』

 

 三人で笑いながら普通の馬車の速度で進んでいく。するとフューレンから三時間ほど離れた位置で街道の真ん中に木が倒れていた。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 深い街道横の森の中。街道を挟んだ両サイドの俺達は潜み、街道の真ん中に配置した倒木を監視している。狙いの馬車が来るまでじっと待つ。

 

「ボス、見張りからの報告です。もう間もなく目的の商隊がやってきます」

「おう。上級魔法の詠唱を始める。全員、準備しろ」

「了解です。しかし、いきなり上級魔法を使うのですか?」

「当たり前だ。馬車を引いていた魔物(モンスター)やアイツ等が冒険者ギルドで売った魔物(モンスター)を考えると、全員で初手から全火力を叩き込む。利益は後ろの馬車だけでも十分だ」

「まあ、確かに……ただ、何人か女が死ぬのはもったいないですね」

「仕方ない事だ。それよりも始めるぞ」

「はい」

 

 今回のターゲットはフューレンの街で商業ギルドに入らず、街の外で商売をした連中だ。奴等は冒険者ギルドで魔物(モンスター)の素材やアーティファクト級の装備を売った資金で亜人を中心とした奴隷達を買い漁った。それに加えて売られていたが、貴族じゃないと買えないような宝石なども沢山あった。その利益だけでも凄まじい金額になっていたはずだ。何より、連中は宝物庫と呼ばれるアーティファクトすら所持している。

 故に商業ギルドからの依頼で傭兵達が集められた。その中には俺も含めて高位の魔法使いも数人いることから、商人ギルドの本気度が伺える。

 

「詠唱開始」

 

 同時詠唱による強化を使い、連中が木の前で停止した瞬間を狙う。

 

「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れ。螺炎」

「劫火狼」

「大嵐」

「炎天」

 

 螺旋状に渦巻く炎、炎の津波、8mほどの太陽のごとく火炎球、風の嵐。この四つを合成して絶大な火力を持つ炎の嵐を発生させる。

 

「よし、狙い通りだ」

「ですね」

 

 炎によって視界がまったく見えないが、巨大な火柱によって先頭の馬車は完全に焼き尽くされるはずだ。例え魔族だろうと、確実に殺せる。実際に俺達はこの方法で何度も魔族を殺してきた。もっとも、一度しか使えない魔法ではそこまで戦果は上げられない。策を弄さなくてはいけないのだが……

 

「全員、突撃準備! 火が消えたら行くぞ!」

「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉっ!」」」」

 

 炎の方をしばらく見ていると、火柱が消えて信じられない光景が見えた。炎がある程度衰えて見えるようになったそこには無傷の馬車が存在していたのだ。

 

「う、嘘だろ……」

「人が生きていられるはずもない火力だぞ!」

「鉄すら溶かすはずだぞ!」

 

 勢いが収まった炎の中から、人影が二つ進んでくる。炎の中を何でもないかのように歩いてくるそいつ等は二人の少女だった。

 

「やれやれ、まさかいきなり炎で襲撃されるなんて思わなかったよ」

「警告も無しとは正直言って驚いたな」

 

 黒髪と金髪の少女二人は炎の中を会話しながらこちらにやってくる。黒髪の手には見ただけでやばいと感じる禍々しい気配を放つ魔導書。金髪の方は周りに巨大な剣が浮いている。どう見ても、どちらもアーティファクトの中でもトップクラスのやばい奴だ。

 

「あ、真名。出来る限り、身体は傷つけないように殺してね。後で使うから」

「ふむ。面倒だが、心得た。魔力ダメージで生け捕りにしてから殺そう。鈴も実験がしたいと言っていたからな」

 

 こちらの事を歯牙にもかけずに自らが勝つ事が確定だと言うかの言葉にイラつく奴等も居て、命令も聞かずに突撃していく奴等が居る。数合わせのために連れてきた連中だから別に構わない。

 

「ボス……」

「全員、退却だ。相手が悪すぎる」

「了解」

 

 既に高位の魔法使いを有する者達は俺達と一緒に撤退を初めている。いや、一部は頭を掻きむしりながら、頭を抱えていたり、涎をたらしながらブツブツと呟いていたりしている連中までいた。

 

「魔力感知ができる奴はあまり見るな。あの魔導書に精神をぶっ壊されるぞ!」

「はい!」

 

 森の深い場所へと突き進む。俺達が連中を引き連れている間に反対側に居た連中が馬車を襲うはずだから、どちらに転んでも何とかなる。

 悲鳴が聞こえ、ふと後ろを振り返るとそこには化け物が居た。金髪は浮かべている大剣から無数の魔力光線を放ち、森ごと破壊していく。黒髪は楽しそうにしながら半透明な魔物(モンスター)達を呼び出して食い殺させている。どちらも歩みを止めずにこちらへとゆっくりと歩いてきていた。

 

「何処へ行こうというのだね。卿等から戦を挑んできたというのに」

「そうそう。そもそも逃げられると思っていること事態が間違いなんだよ」

「っ!? へボック! 突撃しろ!」

「了解です、ボス!」

 

 へボックが部隊を率いて突撃し、魔法の攻撃をどうにか回避しながら接近する。何人かを犠牲にしながら接近し、戦斧を金髪の首へと一撃を叩き込む。金髪は避けもせずに戦斧が命中したので首が落ちる。そう思ったのだが、皮膚を傷付ける事すらできずにダメージを与えられていない。それどころか、金髪の倍以上の身長と体重があるというのに動かすことすらできていない。

 

「どういう事だ! いくらなんでも出鱈目すぎるぞ!」

「無駄だ。我等にダメージを与えたければ聖遺物を持ってくるといい。卿等の武器ではそもそも格が違う。そして──」

「ボス! 大変だ! 森の奥に行けない! 見えない壁がある!」

「まさか……」

「卿等から仕掛けてきたのだ。殺す気だったのだから、殺される覚悟も当然していよう?」

 

 へボックの戦斧を掴み、巨体ごと振り上げて持ち上げ、地面に叩き付けられる。その直前に戦斧を離して離脱するが、その前に金髪が接近してへボックの顔面を掴んで地面に埋め込む。まさに化け物だ。

 

「逃げられないし、倒せない。だから、さっさと死んじゃおうよ」

「ふざけんな!」

「ふざけてないよ。どうせ鈴の結界は出られない。だったら、諦めよ?」

「自ら魂を供物として運んできてくれたのだから優しく終わらせてやろう」

「そうだね。じゃあ、この魔法でいいかな」

 

 黒髪が指を鳴らすと無数の怨霊が現れてきた。そいつ等は見覚えがある奴等だ。そう、魔族の幽霊だった。

 

「君達が殺してきた者達の怨霊に魔力を与えて顕現させた。彼等と楽しい語らいをするといいだろう」

「優しくではないが、まあいいか。殺戮衝動を満たさなねばならぬし、相手が盗賊であれば何の問題もなかろう」

「そもそも王様を狙ったんだから、殺されて当然だよ」

「ま、待て、俺達は……」

「ああ、そちらの言い分は聞かない。それにもはや戦いは始まっている」

「だ、だが、今頃別働隊が馬車を襲っているはずだ。向かわなくていいのかな?」

「問題ない」

「はい。問題ありません」

 

 いつの間にか背後に刀を持った亜人が居た。彼女の手にはあちらの部隊を率いていた男の首が握られていたのだ。

 

「敵将を含めて敵は全て打ち取っておきました。もう少し歯応えが欲しかったですね」

「ああ、弱かった」

 

 更にもう一人が背後から現れ、首に衝撃を感じて視界が暗くなって力が入らずに倒れていく。

 

「総勢で147人か。まあいい感じだな」

「そうだね。70人ずつわけようか」

「ああ。感謝して頂くとしよう。何、卿等も本望であろう。何せ邪神エヒトを打ち倒す力となるのだから」

 

 ああくそっ、こんな依頼、受けるんじゃ……なかった……

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。