愛ちゃん先生と檜山などについての説明が終わり、一応は檜山も含めた全員を集めることになった。優花は余り納得はしていないが、愛ちゃん先生の言う事もわかる。先生としてはクラス全員を日本に連れて帰る義務もあるし、片方の意見を聞くだけで判断するのは公平性にもかけている。
まあ、優花としてはどちらにせよ殺す事は止められるのだから怒るのも理解できる。しかし、愛ちゃん先生は全員を集めてから判断してその結果で罰を与えるとは言った。日本に連れて帰るのだから、殺す事はできない。だが、それは愛ちゃん先生が与える罰にもよる。それに愛ちゃん先生は公平性に拘っているみたいだが、結果に納得できなければ先程考えたように日本で殺してもいい。何時でも移動できるようになればいいし、それが無理でも檜山の体内に科学技術で作った爆弾を仕込んでおけばいいだけだ。
そもそもエヒト達からしたら使い捨てが出来る駒でしかないんだから、まともな状態で戻ってくるかもわからないしな。
「さて、俺とユエ、シアは明日、依頼の関係で山へ向かう。行方不明になった冒険者の救助依頼を受けたからな。沙条達はどうする?」
「あ~俺も行く気だったが、今回は遠慮しておく。優花のストレス発散に付き合わないといけないからな。それにこのウルで商売をしないといけない。後は暇を見て地形を確認だな」
「あの、地形を確認しないといけないんですか?」
「まあ、色々とやらないといけないだろう」
「どういう事ですか?」
俺とハジメの言葉に愛ちゃん先生達はわかっていないようだが、まあこれは無理もないだろう。これから何が起こるのか、理解できていないしな。
「それは……」
「愛ちゃん先生は楽しみに待っていたらいい」
俺が話そうとすると、後ろからヘイゼルの姿で優花が抱き着いてきて胸を当てながら口を両手で塞いでくる。そこで優花の狙いはわかった。愛ちゃん先生に対する意趣返しだ。
これからこのウルの町で行われる事を知れば平静ではいられないだろう。何せ、あの清水が全力で攻めてくるのだ。アイツの力がどれくらいかは知らないが、北方棲姫と戦艦レ級が相手となると考えられるのは一つしかない。そう考えるとこちらも生半可な覚悟でいられない。まず近づけるかもわからないし、詩乃達遠距離攻撃組が対応しないと死ぬ。
「わ、わかりました。楽しみに待っていますね。それと明日の救助活動は先生も参加しますね。色々と話したい事は沢山ありますから」
「わかった。他に来たい奴等が居れば好きにしろ」
「それなら、私達は優花と話がしたいからこっちに残るね」
「私も~」
「じゃあ、俺達は南雲について行くか」
生徒は男性陣と女性陣で別れる事になった。男性陣はハジメについて行って、女性陣はここに残る感じだな。まあ、愛ちゃん先生の安全は南雲達が確保してくれるので問題ないだろう。
「それじゃあ、詳しい事は各自に聞いてくれ。ただ、優花と話という事だが大人の、ヘイゼルの姿で頼む。くれぐれも優花の名前は出さないように」
「わかってるよ」
「はい~」
「それと売り子を手伝ってもらう。だいたい10時までは寝てるだろうから、昼ご飯までは自由にしてくれていい」
「働かされるのか~」
「売り子ぐらいはいいけどね」
「皆様、お茶とお菓子を追加しますのでどうぞ。リラックスの効果があります」
アルテナからお茶を貰い、色々とたわいない話をしてから少しすればお開きになる。皆、夜は基本的にする事がないようで寝る時間が早いからだろう。まあ、俺達の夜はこれからだが。
「ご主人様、抱いて」
「わかってる」
「無茶苦茶に犯して。気絶するぐらい」
「任せろ」
俺達以外が居なくなったので、ヘイゼルではない姿の優花によって手を引かれてベッドに連れ込まれる。その後は優花が気絶するまで相手をして、詩乃達とも楽しむ。嫌な事は快楽で押し流すというわけだ。これをしたら、一度リセットしたように冷静になってくれる。起きてからピロートークで言い聞かせれば素直に従ってくれる。
「とりあえずは保留する。愛ちゃん先生がどう対応するかを見て決めるから……」
俺の上にうつ伏せで乗り、両手を俺の背中へと回して抱き着いている優花の頭を撫でながら説得したおかげで、どうにか納得してもらえた。
「それでいいだろう。俺達の力なら日本でも檜山を殺す事は容易い。爆弾を仕込む事だってできるしな。それに、やっぱり希望から絶望に落とす方がいい。ただ、愛ちゃん先生が考える罰で満足したら殺すのは止めるようにしてくれ」
「私と同じような目に合わさないと納得できないけど、それはいい?」
「わかっているさ。そこは愛ちゃん先生に期待しよう。それが無理でもどうにかするさ」
「それなら僕に任せて」
撫でている方とは反対の手を掴んで腕を枕にしていた恵里がこちらに向き直りながら伝えてきた。その顔はとっても楽しそうな笑顔を浮かべている。逆に俺達は少しうすら寒いような感じすらしてくる。おかしい。素肌で抱き合っているので温かいというのにこの寒さはいったいなんだというのだ……恐怖?
「ジャンヌと一緒にとっても素敵な罰を与えてあげるから、心配しないで優花」
「う、うん……恵里が言うのなら信じる」
「おはようございます皆様。そろそろ汗を流して着替え、食事を取らなければなりません。ですので、起きてください」
「着替えは用意できているのです。流石にこれ以上遅くなると皆さんの見送りができなくなるのですよ」
「というわけで、えい!」
アルテナ、ネコネの声に続いて内容を理解する前に楽しそうなイヌイによって布団が強制的に取られる。寒さに手短にある温もりである優花と恵里を抱きしめる。続いてネコネがカーテンと窓を開けて光を取り入れ、部屋に籠っていた臭いを追い出していく。
「ふにゃぁっ」
「うにゅ~」
そうすると、俺の足に抱き着いて寝ていた猫の詩乃と鈴の二人が声をあげながら起きてくる。二人は瞼を手で擦りながら、猫のように身体を伸ばしていく。
「起きるか」
「ん~」
「ふぁ~い」
皆、かなり寝ぼけているので、上に乗っている者達から順番に降り、アルテナに塗れた布で顔を拭かれていく。流石に覚醒してくるので、それぞれが顔を洗っていく。
「身体中が汗でベトベタだ~」
「シャワー浴びたいけど、馬車まで行かないといけないしね……」
「いっそ、水着に着替えて湖に飛び込む?」
「いいねそれ!」
「あの、皆様、流石にそれは……」
「大丈夫だって。魔法で乾かせばすぐだしね」
どうやら、鈴達は止めるアルテナを置いてさっさと水着に着替えていく。
「あの、主様……」
「この馬鹿共に言ってやるのです!」
「私は楽しいと思うけれど……」
「まあ、効率的だからいいんじゃないか?」
「わかりました。では、水着を用意しましょう」
「アルテナ!?」
「主様の決定ですから」
「はぁ……わかったのです。手早く水浴びをして上がるのですよ」
「「「は~い」」」
着替えたら早速、バルコニーへと出る彼女達。その後、目の前にある湖へと飛び込んでいく。ここは三階なのだが、彼女達の身体能力からしたら余裕だ。
「主様、わたくしは部屋の掃除をしておきますので、上がられたらこちらではなく馬車の方でお着換えください」
「あ、私も手伝うのです」
「わかった。アルテナやネコネも来ていいぞ?」
「いえ、この部屋を綺麗にしなくてはいけません。流石に見知らぬ宿の者に任せる訳にはいきませんから」
「それは……」
「デリカシーがないのです」
「ああ、なるほど。わかった。それじゃあ、こっちは任せる」
「はいなのです。さっさと二人で片付けるのですよ」
「ですね。念の為に香も炊いておきましょう」
二人に任せて俺も湖に飛び込む。ついでに食料の調達もしておこう。怒られるかもしれないから、殺さずにおいて宿の人達に聞けばいいだろう。
湖から出て食事を取り、外に出る。そこで既に起きて出かける準備をしていたハジメ達と合流する。どうやら、ハジメが相川達にバイクを説明している。
「ハヤブサを改造しているのか」
「そうだ。まあ、元はゲームで作られた物を参考にして作った。性能はこっちの方がいいぞ。なんなら乗ってみるか?」
「いいのか!?」
「ああ、大丈夫だ。ただ、こっちは人数的に車で進むからちゃんとついて来いよ」
「わかった。運転できるのならなんでもいい」
「ハジメ」
「来たのか」
「まあな。それより、気をつけていけよ。それとスパイスとかがあったら確保しておいてくれ。ユーリに送って増産してもらうからな」
「ああ、わかった。探しておく」
会話しながら、時計の時間を互いに同じになるように合わせて定時連絡の時間を決めておく。信号弾を含めた緊急時の合図を決める。
「後は何かあったか?」
「特にないな」
「そうか。それじゃあ行ってくる」
「ああ」
「ハジメ、早く」
ユエに手を掴まれてハジメが連れていかれた。それから車とバイクが発進していくのを見送り、俺は店を恵里達に任せて詩乃と一緒に二人でウルを回っていく。優花も連れて行きたいが、そういう訳には行かない。何せ優花は女子に捕まっているからだ。
「ん~ここは狙撃ポイントとしてはいいかな」
村の近くに丘へと詩乃と腕を組みながら移動し、景色や地理を確認する。山と山の間に広めの道とも言える渓谷があるので、おそらくそちらから清水は襲撃してくるだろう。
「トラップでも仕掛ける?」
「指向性の地雷を配置しておくか」
ユーリが蒐集してきた魔法の中に地雷があるのでそちらを設置しておけばいいだろう。俺の魔力量から考えて、事前に大量配置しておくのがベストだ。
「ちょっと数発撃ってみるから、着弾観測をお願いしていい?」
「ああ、構わない」
詩乃が弓をアイテムストレージから取り出して構える。綺麗な詩乃の姿を見惚れていると、矢が放たれた。その矢を慌てて追う。望遠の魔法を使いながら矢を確認すると、町を通り越して更に700メール先に飛んでいた。
「お見事」
「これじゃ駄目。やっぱり射程が短い」
「充分じゃないか?」
「魔法で強化してこれだから……やっぱり銃を使う」
「わかった」
今度は詩乃がへカートⅢを取り出した。ユーリ達によってデバイスに改造されているのでへカートⅡの後継機だ。弾丸も含めてかなり魔改造されているので飛距離も数キロは行ける。
「ん……」
詩乃が草の上にうつ伏せで寝転ぶ。そしてヘカートを構えるのだが、これってSAOのゲームでもあったな。妖精アバターなのに銃を手に入れるイベント。まるっきりそんな感じだ。
そう思っていると、詩乃が何発か撃って弾丸を排出していく。詩乃はオートマチックではなく、わざわざボルトアクションを選んでいる。こちらの方が安定するし、一発の威力が上昇させられるらしい。スナイパーとして一撃の方が好きみたいだ。
「よし」
今度は渓谷の奥まで飛んで行ったので詩乃も満足そうに耳をピクピクさせている。その姿を見ているとお尻を差し出しているようで思わず視線をやってしまう。しかもそこには魅力的な尻尾がユラユラと揺れてバランスを取りながら引き金を引くタイミングを測っている。
「ふにゃぁっ!?」
思わず尻尾を握ると声を上げて銃弾が明後日の方向に飛んでいった。
「な、何するの! もしかして発情したの?」
「発情したわけでは……いや、詩乃のお尻を見て少し興奮した」
「夜にでも相手をしてあげるから我慢して。流石に人が居る所でやるのは嫌。絶対に見られないように安全を確保しないと……」
「結界を使えばいいだけだろ」
「……やっぱり駄目。他の子に気付かれるし、心配してここに来るかもしれない。それに怒られはしないけど、色々と面倒な事になる」
「仕方ない。代わりにこれぐらいならいいか?」
そう言いながら詩乃の上に覆いかぶさるようにして寝転がる。詩乃はヘカートを仕舞ってから俺ごとぐるりと回転して仰向けになった。
「一緒にお昼寝するのなら歓迎」
「それもいいか」
詩乃が俺の腕に頭を乗せてきたので、そのまま太陽光を浴びながら草や土の匂いを感じながらまったりする。そのままうとうとしていると、急に通信が入った。
『少しいいですか?』
「ユーリか。何か問題でも起きたか?」
『はい。ラピュタに関する事ですが、施設の解析が終了して改造を開始しています』
ロボット兵の使用が可能という事だな。
「どんな感じにしているんだ?」
『現状のままでは防御力が低いので金属化したり、魔導炉の工場にしています。魔導炉の数が不足していますしね』
「それは構わないが、ハクはなんと言っている?」
『好きにしていいとの事です。それとハクさんはシュテルが連れて行きました。なんでもき、きどうなんちゃらを作っているみたいで、そこにハクさんの力を借りたいとの事です』
「という事はライセン大渓谷か」
『はい。そちらにおられます。それとロボット兵を利用して大渓谷の開発計画が提出されました。確認して許可をください』
「わかった。他は?」
『その、送られてきた人達を世話する人が足りません。できればちゃんとした人を送ってください』
まあ、奴隷のほとんどは身体に欠損を抱えていたりするので無理はないだろう。そう思いながらライセン大渓谷の開発計画を確認すると完全に地下を開発する秘密基地計画だ。それもハルツィナ樹海と物理的に繋げた地下の大都市と工場化だ。
こんなのどれだけの資源と人材を使うか検討もつかない。ただ、人材として書かれているのはロボット兵を改造して作られた工業機械やチビット達。それに支配下に置いている
「許可するからやってくれ。それとまともな人材は送る。といっても、愛ちゃん先生や相川達だが」
『合流できたんですね。わかりました。それとおね……ミレディ・ライセンさんの肉体は完成しました。魂の移し替えをルサルカさんにお願いしますが、いいですか?』
「頼む。それとわかっているとは思うが……」
『はい。紫天の書の中でお話はしていますから大丈夫です』
「わかった。じゃあ、リハビリを頑張るように言ってくれ。こちらが問題なくなれば一度戻ってオスカー・オルクスを復活させる」
『お願いします。ミレディさんのお話が本当なら開発状況がかなり進みます』
「そうだな。他は?」
『えっと……えっと……これで終わり、ですね……』
「そうか。それじゃあ、俺からだ。ユーリはちゃんと休んでいるか?」
『大丈夫です。ちゃんと寝ていますから。ただ、お兄ちゃんが居ないのは寂しいです……』
「タイミングが良い時に連絡して。こっちに召喚するからな」
『戻るのが大変ですから、今は我慢します。ですから、今は
「ああ、もちろんだ」
『それではまた連絡します』
「また」
ユーリとの通話を終えると、こちらをジッと見詰める視線がある。詩乃の方を向くと、彼女は身体を起こす。
「訓練しようか」
「そうだな」
流石にユーリ達がデスマーチのような状況になっているのにサボっているわけにもいかない。詩乃の狙撃訓練を再開しながら、データを取って地雷や他の設置型トラップの配置場所を考えていく。そんな風にして過ごしていると、ハジメから連絡が来た。
『変態を拾った』
「捨てて来い」
『そういう訳にも行かなくなった』
話を聞くと清水に洗脳された黒い竜が依頼主を狙ってやってきたらしい。それを撃退する時にケツ穴にパイルバンカーをぶち込んだとか。何を考えているのかわからない。だが、その衝撃で洗脳が解除されると同時に新たな扉を開いてしまったらしい。
「とりあえず、責任取ってやれよ」
『いや、自業自得だろ』
「流石に新しい扉を開いたらなあ?」
『いやいや、俺は悪くないだろう』
「詩乃はどう思う」
「流石にそのやり方は駄目。有罪」
「というわけだ。どちらにしろ連れて来い。竜族、どれもドラゴンになれるのだろう? 一族諸共引き入れてもいい」
『竜族は別格の責任だしな……というか、竜族でリリカルなのはか。そういえば、一人居たな。戦略級のドラゴンを召喚できる奴が。沙条とは相性がいいんじゃないか? 同じ召喚士だし』
「キャロは確かに猛威を振るいそうだが……ピックアップがない限り狙って引ける者でもないしな。それに召喚と言えばファイナルファンタジーやテイルズの方もあるだろ」
『あ~だけどあれ、オメガウェポンとか出たらヤベーぞ』
「確かに」
オメガウェポンはアルティミシア城にて、特定の条件を満たすと同礼拝堂に出現する。販売当初はその膨大なHPと鬼畜とも言うべき攻撃の数々でプレイヤーを奈落の底へ引きずりおろした。
特に初見殺しの様相が強く、同作のキャラクターの強化のし易さも相まって強さに慢心したプレイヤーが、戦闘開始直後にレベル5デスで瞬殺されたり、テラ・ブレイクによりフルボッコにされたりして茫然自失となる事も多くあった。現在はワンターンキルされる場合もあるとか。
『ただ、何度もエンカウントする雑魚敵にもなってるから、どちらが召喚されるかによるな』
「まあ、こちらも出ないとわからん。とりあえず、竜族は確保だ。最低でも細胞は欲しい。こっちの竜の心臓を強化できるかもしれないしな」
『わかった。嫌だが連れて帰る』
さて、変な所で竜族と接触できたな。いろんなゲームで竜族は最強クラスの存在だ。これは使えるだろう。例え変態でも。
「使えると思う?」
「一応は大丈夫だろう。戦力的には期待できないかもしれないが……流石に竜族となれば奈落の
「そうだね。それなら助かる」
「よし。それじゃあ、俺はトラップを仕掛けてくる。詩乃はどうする?」
「それなら一緒に行く。護衛だし」
「わかった。頼む」
寝転がっている詩乃に手を差し出すと、彼女が掴んでくれるので引き起こす。抱きしめてから空に浮かぶと、彼女も背中に妖精の羽を展開して一緒にしばしの遊覧飛行を行う。目的の渓谷についたらトラップを仕掛ける。本当は左右の崖に岩を置いたり、池を熱くして水を流し込むとかやってみたいが……相手は空爆できる航空戦力を持っているのでそうもいかない。本当に厄介だ。
次回はウル襲撃! 清水君が本気出す! 戦力比は1対30くらいだけど北方棲姫とレ級ならやってくれるはず! 北方棲姫とレ級の戦闘力は果たして……次回、北方棲姫とレ級の悪夢!